Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

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別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

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6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

Ⅰ 滋賀県感染症発生動向調査事業の概要

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

Microsoft Word - WIDR201839

定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

<4D F736F F D E9197BF815B A8AB490F58FC B C982A882AF82E B835895AA97A E A2E646F63>

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

48小児感染_一般演題リスト160909

インフルエンザ(成人)

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Microsoft Word - H24年報表紙・目次・合紙

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鹿児島県感染症発生動向調査事業 ( 内容に関するお問い合わせ : 健康増進課感染症保健係 ) 感染症のホームページアドレス 第 20 週の手足口病の定点当た

1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

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インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症

Microsoft Word - WIDR201826

Ⅰ 滋賀県感染症発生動向調査事業の概要

検査項目情報 インフルエンザウイルスB 型抗体 [HI] influenza virus type B, viral antibodies 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F410 分析物 インフルエン

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

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2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 0-5 ヶ月 6-11 ヶ月 1 歳 歳以上 合計 (

耐性菌届出基準

神戸市感染症発生動向調査週報 1 年 月 11 日作成 全数把握対象感染症発生状況 ( 三類感染症細菌性赤痢 ) 女 5 代 - 1 年 月 5 日 1 年 月 日 sonnei(d 群 ) 分離 同定による病原体の検出 ( 便 ) なし 接触感染 第 13 週報告患者の家族 全数把握対象感染症発生

1

鹿児島県感染症発生動向調査事業 感染症のホームページアドレス 咽頭結膜熱の報告数は, 前週と同数の 59 人 ( 定点当たり 報告数 1.09) でした 保

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザ

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顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

Microsoft Word - p docx

Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.8(2012) 3. 結果および考察 3.1 長野県における手足口病患者およびヘルパンギーナ患者からのエンテロウイルス検出状況 手足口病患者およびヘルパンギーナ患者 67 検体のうち, が 45 株 (67 %

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第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.5 伝染性紅斑 りんご病

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疾患名 平均発生規模 ( 単位 ; 人 / 定点 ) 全国 県内 前期 今期 増減 前期 今期 増減 県内の今後の発生予測 (5 月 ~6 月 ) 発生予測記号 感染性胃腸炎 水痘

表 3 衛研番号 複数のウイルスが検出された検体 検出ウイルス採取月日診断名年齢性別住所咽頭糞便 Polio 1 Polio 2 H 腸重積 11 ヶ月女福島市 Adeno 2 Noro virus GⅡ H 急性腸

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

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事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

医療機関における診断のための検査ガイドライン

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

熊本県感染症情報 ( 第 50 週 ) 報告期間 インフルエンザ 水 痘 突発性発しん ヘルパンギーナ マイコプラズマ肺炎 クラミジア肺炎 ( ロタウイルス ) 第 43 週第 44 週第 45 週第 46 週第 47 週第 48 週第 49 週第 50 週第 47 週第 48 週第 49 週 7

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インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 9 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 5 インフルエンザ 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

クチ ワ ン で安心 予防接種は集団生活前に子育て応援券を有効活用 感染症発生動向速報 ( 平成 31 年第 10 週分 3 月 4 日 ~3 月 10 日 ) インフォメーション 予防接種をご確認くださいこの春から保育所 幼稚園に通い始めるお子さんも多いと思います 一般に乳幼児は感染症に対する抵抗

Microsoft Word - 【H29-5F】報文 修正版4

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PowerPoint プレゼンテーション

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インフルエンザ施設内感染予防の手引き

インフルエンザ院内感染対策

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

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東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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Microsoft Word - 届出基準

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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東京大会と感染症サーベイランス ~ 普段とどこがちがうのか ~ 疾患疫学が変化する可能性 多数の訪日外国人の流入 多くのマスギャザリングイベント 事前のリスク評価に基づいたサーベイランスと対応の強化の必要性を検討する 体制構築の観点から 行政と大会組織委員会の責任範囲と協力体制の構築が必要 国内移動

Weekly Report on Aomori Prefecture Infectious Disease 青森県感染症発生情報 (2019 年第 3 週 ) 発行青森県感染症情報センター (2019 年 1 月 24 日 ) ( 青森県環境保健センター : 担当微生物部 ) TEL

報告風しん

気をつけて! : 1.88 ( 注意報値 :1. 警報値 :3.) 定点医療機関からの報告数は定点当たり 1.88( :9.9) と微増し再度注意報値を超えてます 地域別にみると (27.2: 19.4) 安芸 (1.: 7.25) (7.25: 4.25) 幡多 (3.38: 3.) で増加し 高

流行の推移と発生状況 疾病名推移発生状況疾病名推移発生状況 インフルエンザ RS ウイルス感染症 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 水痘 手足口病 伝染性紅斑 突発性発疹 百日咳 ヘルパンギーナ 流行性耳下腺炎 急性出血性結膜炎流行性角結膜炎 細菌性髄膜炎 無菌性髄膜炎 マイコ

高知県感染症発生動向調査 ( 週報 ) 2015 年第 40 週 (9 月 28 日 ~10 月 4 日 ) お知らせ 手足口病に気を付けて! 定点医療機関からの報告数は第 39 週の 3.03 から第 40 週は 2.63 とほぼ横ばいです 高知市 中央東 中央西では注意報値を超え 高知県全域でも

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

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第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

二類感染症届出基準

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

Transcription:

かぜ症候群の原因ウイルス ~ サフォードウイルスもそのひとつ?~ 新潟県保健環境科学研究所ウイルス科主任研究員広川智香 1 はじめにかぜ症候群とは, 鼻やのど, 気管支や肺に急性の炎症をきたす疾患の総称で, その原因となる病原体は 80~90% がウイルスといわれています 主な原因ウイルスとしてはライノウイルス, コロナウイルス, パラインフルエンザウイルス,RS ウイルス, インフルエンザウイルスなどがあげられます これらのウイルスが口や鼻から入って気道粘膜に付着し, 細胞内に侵入し増殖することから感染が始まるとされています 症状としては, くしゃみ, 鼻水, 鼻づまり, 喉の痛み, 咳, 頭痛, 発熱等があげられます 乳幼児や高齢者, 慢性疾患のある人では重症化することもあるので注意が必要です 当所では, 新潟県感染症発生動向調査の一環としてかぜ症候群の原因となるウイルスを調査しています そのなかで 2013 年に新潟県では初めてサフォードウイルスというウイルスを検出しましたのでご紹介します 2 調査方法新潟県感染症発生動向調査において 2013 年 1 月から 12 月に県内の医療機関で採取された咽頭ぬぐい液, 鼻汁等を材料として, ウイルス分離培養, 遺伝子検査等によりウイルスの検索を行いました (1) ウイルス分離培養ウイルスはとても小さく, 普通の顕微鏡では見ることができません また, ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖することができないため,6 種類の培養細胞にウイルスを感染させ, 細胞が変化していく様子を顕微鏡で観察し, ウイルスが増殖しているかどうか確認します (2) 遺伝子検査ウイルス分離培養では検出できないウイル スの場合, 患者さんから採取された検体から直接ウイルスの遺伝子を抽出して検査を行います また, ウイルス分離培養でウイルスの増殖が確認された培養液からウイルス遺伝子を検出してウイルスの種類や型に分類します 3 結果県内の医療機関でかぜ症候群に含まれるインフルエンザや上気道炎, 下気道炎といった急性呼吸器感染症と診断された患者さんから採取された 331 検体についてウイルスの検索を行いました その結果,265 検体からウイルスを検出し, 検出率は 80.1% でした 最も多かったのはインフルエンザウイルスで, 次いでライノウイルス, パラインフルエンザウイルス,RS ウイルス, アデノウイルスの順で検出されました また,2013 年に新潟県では初めてサフォードウイルスが咽頭炎や扁桃炎の患者さんから検出されました このウイルスは 2007 年に発見された新しいウイルスで, その疫学や病原性についてはまだ解明されていません 4 今後の取り組みかぜ症候群の原因となるウイルスは非常に種類が多く, 検査には多くの手間と時間がかかります 現在, 複数のウイルスを効率的に検出できる検査方法を検討しており, 集団感染事例が発生した際にも迅速に対応できるよう検討を進めています また今回検出したサフォードウイルスは一定の病原性を持つことが示唆され, かぜ症候群の原因ウイルスのひとつと考えられました 今後も新たなウイルスの出現に注意しながら原因ウイルスの検索を実施していく必要があると考えます

本日の内容 かぜ症候群の原因ウイルス ~サフォードウイルスもそのひとつ?~ 新潟県保健環境科学研究所ウイルス科広川智香 かぜ症候群とは ウイルスの検査方法 新潟県での検出状況 サフォードウイルスについて 今後の取り組み 1 2 かぜ症候群とは 鼻やのど 気管支 肺などの呼吸器に急性の炎症をきたす疾患の総称です あらゆる年齢層に発症し大半の人が罹患する最も身近な疾患です 3 インフルエンザ かぜ症候群とは ~ 診断名はさまざま ~ RS ウイルス感染症 普通感冒 ( いわゆる かぜ ) 咽頭結膜熱 ヘルパンギーナ 上気道炎 ( 咽頭炎 扁桃炎など ) 下気道炎 ( 気管支炎 肺炎など ) 4

かぜ症候群の原因となる病原体 新潟県での集団感染事例 ウイルス :80~90% ライノウイルスなんとコロナウイルス 200 種類以上! インフルエンザウイルス RSウイルスパラインフルエンザウイルスアデノウイルスヒトメタニューモウイルスエンテロウイルスその他 細菌 その他 :10~20% 5 発生時期施設発症者 / 入所者症状原因ウイルス 2013 年 9 月 2014 年 9~10 月 2014 年 10 月 病院 1 病棟 21 名 /49 名発熱 咳等 介護老人保健施設 特別養護老人施設 ヒトメタニューモウイルス 17 名 /188 名発熱 鼻水等ライノウイルス 入所者 10 名 /70 名職員 5 名 /48 名 微熱 鼻水 咳等 ライノウイルス 高齢者や乳幼児 慢性疾患のある方は重症化することもあるため注意が必要 かぜ症候群の感染経路 かぜ症候群の予防対策 接触感染 飛沫感染 手洗い うがい 咳エチケット 7 8

検査方法 1: ウイルス分離培養 検体を培養細胞に接種 接種後 10 日 ~2 週間顕微鏡で観察 細胞に変化なし培養陰性 ウイルスの検査方法 33 5%CO 2 ふ卵器で培養 細胞の種類 増殖できるウイルス MDCK Caco-2 インフルエンサ ウイルスハ ラインフルエンサ ウイルス 細胞に変化あり培養陽性 LLC-MK2 ヒトメタニューモウイルス 9 Vero9013 RD18S A549 エンテロウイルス RSウイルスライノウイルス エンテロウイルスアテ ノウイルス 同定検査遺伝子検査 中和試験等 検査方法 2: 遺伝子検査 検体または培養液から遺伝子を抽出 標的ウイルスの遺伝子を増やす 遺伝子が増えた事を電気泳動で確認 遺伝子解析 必要に応じて 新潟県でのウイルス検出状況 H275Y ヒスチジン チ 塩基配列を調べ遺伝子型などを確認 特定の位置にバンドあり 11 12

期 感染症発生動向調査 病原体サーベイランス 県内でどんなウイルスが流行しているか調べます 間 :2013 年 1 月から 12 月 対象疾患 : インフルエンザ 材 RS ウイルス感染症 上気道炎 下気道炎 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 料 : 咽頭ぬぐい液 鼻汁 便 髄液 尿 うがい液の合計 331 検体 13 診断名別の割合 (2013 年 ) N=331 14 かぜ症候群患者から検出されたウイルスの割合 (2013 年 ) 上気道炎 下気道炎患者から検出されたウイルスの割合 (2013 年 ) 上気道炎 下気道炎 検出率 80.1% (265/331) 15 16

上気道炎 下気道炎患者から検出された主要ウイルスの月別検出状況 (2013 年 ) サフォードウイルスについて 17 18 サフォードウイルスとは サフォードウイルス (SAFV) は ピコルナウイルス科の新たなウイルスとして 2007 年に発見されました これまで小児の呼吸器感染症や胃腸炎 無菌性髄膜炎等の患者検体から検出されていますが その疫学や病原性については解明されていません 新潟県では 2013 年にかぜ症候群患者から初めて SAFV を検出しました ウイルス分離培養 遺伝子検査 SAFV 検出の経緯 1 RD-18S 細胞において細胞の変化を認めた 接種前 ライノウイルスエンテロウイルス 接種後 3 日目 陰 何ウイルス??? 細胞が丸く変化している 性 19 20

SAFV 検出の経緯 2 新潟県での SAFV 検出状況 電子顕微鏡における観察 ウイルス粒子は 直径 30nm の小さい球形 2013 年 かぜ症候群と思われる患者 5 名からサフォードウイルス 2 型を検出かぜ症候群以外の患者 1 名からも検出 培養で検出している機関はごくわずか ピコルナウイルス科 サフォードウイルスの 遺伝子検査と遺伝子解析 30nm サフォードウイルス 2 型 21 過去の未同定ウイルスついて精査した結果 2007 年 2008 年に分離したウイルス 4 株がサフォードウイルス 3 型と判明 3 株 : かぜ症候群患者由来 1 株 : 無菌性髄膜炎患者由来 22 遺伝子検査による検体からのウイルス検出 各症例の臨床症状 年 2007 2008 検出ウイルス 症例 材料 サフォート ウイルス ライノウイルス / エンテロウイルス ヒトメタニューモウイルス RS ウイルス ハ ラインフルエンサ ウイルス SAFV-3 1 咽頭ぬぐい液 + - - - - - SAFV-3 2 髄液 + - - - - - SAFV-3 3 鼻汁 + - - - - - SAFV-3 4 咽頭ぬぐい液 + - - - - - コロナウイルス SAFV 3 型 症例 診断名 発熱 咽頭炎 1 咽頭炎 39.0 + 頭痛 扁桃炎 気管支炎 腹痛嘔吐嘔気 2 無菌性髄膜炎 40.3 + + + 3 急性気管支炎 38.2 + 4 咽頭炎 40.0 + + 5 咽頭炎 40.0 + + 髄膜炎 SAFV-2 5 咽頭ぬぐい液 + - - - - - 6 咽頭炎 38.4 + 2013 SAFV-2 6 鼻汁 + - - - - - SAFV-2 7 鼻汁 + - - - - - SAFV-2 8 ふん便 + - - - - - SAFV 2 型 7 8 急性気管支炎 咽頭炎 39.0 + + + 病巣のはっきりしない細菌感染症疑い 39.5 + 9 扁桃炎 40.0 + + SAFV-2 9 咽頭ぬぐい液 + - - - - - 10 咽頭扁桃炎 39.2 + + SAFV-2 10 咽頭ぬぐい液 + - - - - - かぜ症候群 :80% 100% 60% 40% 20% 20% 10% 10% 10% 10%

( 人 ) 3 2 1 0 SAFV 陽性患者の年齢分布 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >10 年齢 SAFV-3 中央値 :3.5 歳 SAFV-2 中央値 :5.5 歳 SAFV の VP1 領域における遺伝子系統樹 (327nt) 2013 年 2008 年 2007 年 969/Niigata/2013 998/Niigata/2013 959/Niigata/2013 930/Niigata/2013 887/Niigata/2013 965/Niigata/2013 QCW/2011(JX163901) Pak5842(FJ463606)SAFV-4 10H66354DK(JF693612) Yamagata.JPN/2062.09.(AB545779) FIN08-13B(FJ374267)SAFV-2 Yamagata.JPN/2775.09.(AB545787) Pak1141(FJ463604)SAFV-8 Gunma/176/2008(AB570426) 245/Yamagata/2008SAFV-3 165/Niigata/2008 166/Niigata/2008 Aichi10247/2007 911/Niigata/2007 987/Niigata/2007 JPN08-404(HQ902242) Saffold virus EF165067 SAFV-1 Afg1449(FJ463602)SAFV-7 1601/Yamagata/2008(AB614366)SAFV-6 Pak5003(FJ463615)SAFV-5 Theilers-like virus of rats (AB090161) SAFV-2 SAFV-3 25 0.1 26 SAFV はかぜ症候群の原因ウイルスのひとつか? SAFV が陽性となった 10 症例はいずれも 38 以上の発熱があり このうち 8 例は咽頭炎 扁桃炎 気管支炎といったかぜ症候群の症状がみられました 検出された SAFV は型ごとに類似性が高く 検体が採取された時期にこれらのウイルスによる感染が広がっていたことが推察されました 10 症例から SAFV 以外のウイルスが検出されなかったことから SAFV が一定の病原性を持つことが示唆されました かぜ症候群の原因ウイルスのひとつ 27 今後の取り組み かぜ症候群の原因ウイルスはたくさんあり 集団感染事例を引き起こすこともあります 迅速に対応できるように複数のウイルスを同時に 検出できる効率的な検査方法について検討を進め ていきます 今後も SAFV をはじめ 新たに出現するウイルスにも注意しながら原因ウイルスの検索を実施していく必要があります 28