電気の安全について 自家用電気工作物設置者 電気主任技術者等の皆さまへ 平成 30 年 7 月九州産業保安監督部電力安全課 平成 29 年度における電気事故について 感電等の人身事故 平成 29 年度の九州管内における法令に基づく報告対象の電気事故は 69 件発生し そのうち感電等死傷事故は前年度に比べ 2 件減少の 10 件発生しました 2 年続けて発生した感電死亡事故は 29 年度発生しませんでしたが 引き続き事故防止の必要性を提唱するものです 波及事故 電気事故 69 件のうち波及事故は 25 件で 原因別では 雷 14 件 作業者の過失 3 件 保守不完全 塩 ちり ガス がそれぞれ 2 件などでした 雷によるものが 7 件から 14 件に増加したことなどにより波及事故は増加しましたが 避雷器の設置 作業ミスの防止や適切な時期での設備更新など事故防止対策の実施が望まれます 波及事故の年度別発生状況 年度
平成 29 年度に発生した事故事例 事故事例 1 ~ 公衆感電負傷事故 (H29.10)~ 被災者 事故現場付近の足場 足場組み立て中の作業者 事故概要 被災者は 同僚と雨漏り調査のため足場を組み立て始めた 被災者は 区分開閉器付近の足場組み立て中に右腕の肘を区分開閉器 2 次側と高圧ケーブルの接続点付近に接触させた その時右手に握っていた鉄パイプが足場フレームに接触し電撃を受けた 同時に地絡継電器の動作により区分開閉器が開放し 停電となった 原因 ( 被害者の過失 ) 1 事業所は足場を組むことは分かっていたが 電気主任技術者に連絡が必要だと認識していなかった 2 請負業者は 電気の知識が乏しく区分開閉器及び付近の電線が危険なものとの認識が薄かったため 絶縁用防具の取付けが必要だと考えなかった 3 請負業者は電気設備に対する危険意識が薄かったため 高圧充電部付近の作業を監視者を置かず行った 再発防止対策 1 事業場の連絡責任者に対し 工事や作業前の事前連絡 等について説明する 2 請負業者に対し 高圧充電箇所の危険性 等について保安教育を行う 3 高圧引込設備付近の作業は 可能な限り停電作業で行い 区分開閉器の一次側は電力会社へ絶縁用防具の取付けを依頼する 4 停電せずに作業する場合は絶縁用防具を取り付け 安全監視者を置き複数の人員で作業を行う
事故事例 2 ~ 作業者のアークによる負傷事故 (H29.08)~ 分電盤での作業状況 分電盤内改修済みブレーカー 事故概要 被災者は 特定の場所の動力コンセントを使用した時のみ漏電ブレーカーが動作するため 電気工事業者に相談したところ 漏電ブレーカー本体に不良の可能性があると回答を受けた 被災者は 電気工事業者の工事を見たことがあり 自分でもできると判断しブレーカー取替作業を開始した 古い漏電ブレーカーを取り外し 新しい漏電ブレーカーを分電盤に固定しようとした際 ドライバーと一次側電線を短絡させ 発生したアークにより火傷を負った 原因 ( 被害者の過失 ) 1 被被災者は 電気工事を見たことがあり 自分でできると判断し電気工事を行った 2 上司に対して漏電ブレーカーの不具合について報告を行っていなかった 3 電気工事の知識について乏しかったため 漏電ブレーカーの取替作業は資格が必要なことの認識が不足しており 無資格で電気工事を行ってしまった 再発防止対策 1 事故教訓を風化させないために社内規定 ( 就業規則 ) の改正を行う 2 労働安全衛生特別教育 ( 低圧 ) を全員に受講させる 3 電気主任技術者の指導のもと 従業員全員に対し保安教育を実施する 4 電気トラブル報告を受けた場合 電気主任技術者若しくは電気工事業者に調査依頼を行う 工事が発生する場合は電気工事業者へ依頼する 5 構内のすべての分電盤に 感電注意 シールを貼付し 注意喚起する 6 分電盤の一次側に区分開閉器 ( ブレーカー ) を取り付け 分電盤作業時は分電盤ごと停電させる
事故事例 3 ~ 作業者のアークによる負傷事故 (H29.06)~ 事故時の作業状況事故時の作業状況 電磁接触器の外観 事故概要 被災者と共同作業者は 原料ヤードクレーンのリフマグの動作不具合の調査のため ミーティングを行い クレーン電気室内の電源を遮断し 検電を行ったが検電器が反応しなかったので 電源が遮断できていると判断した しかしながら 実際はリフマグには直流電源が通電状態で 被災者が電磁接触器の接点を止めているボルトを絶縁モンキーレンチで取外そうとした際 アークを発生させ負傷した 原因 ( 作業者の過失 ) 1 被災者と共同作業者で詳細な安全処置の共通認識ができていなかった 2 必要な安全処置を当該クレーンの実作業の経験が豊富な共同作業者に任せた 3 当該クレーンリフマグ関係作業を行う上で 知識 経験が乏しい上に図面の確認を怠った 4 電源回路の誤認識により主幹等の電源は遮断したが リフマグ電源は遮断していなかった 5 検電器の反応がなかった ( DC 非接地回路で検電不可 ) ので 電源は遮断されていると判断した 再発防止対策 1 作業前ミーティングで安全処置に対して間違いがないか確認して共通認識を持つ 2 安全処置に疑問がある場合や対象設備の保守経験が少ない場合は図面にて確認する 3 図面を見て解らない場合 図面に記載されていない場合などは有識者に確認する 4 当該クレーンのリフマグ関係作業に関する作業動作基準書を作成し 周知教育を実施する 5 ラミネート加工した電源系統図をクレーン電気室内に常備する 平成 29 年度は 電気に関する知識や理解の不足による公衆感電死傷事故が4 件発生しました 事故の内容としては 電気設備の近接作業時の注意が十分でなかったり 絶縁用防護具の取付けがされないまま工事が行われたことで感電した事例が見受けられます 電気設備近接作業は まず電気主任技術者への連絡 停電措置や防護措置実施後に工事をするなど 類似事故の未然防止に努めていただきますようお願いします
8 月は 電気使用安全月間 です 経済産業省では 感電死傷事故の発生しやすい8 月を 電気使用安全月間 と定め 関係団体の御協力のもとに電気に関する安全運動を展開し 広く電気事故防止を呼びかけています < 平成 30 年度の重点活動テーマ> 日頃から電気の安全を心がけ かしこく上手に使いましょう 自家用設備の電気事故は 適切な保守点検と計画的な更新で防ぎましょう 地震 雷 風水害などの自然災害にそなえ 日頃から電気の安全に努めましょう 九州管内の事故の発生状況を月別に見ますと 感電等の人身事故及び波及事故は 7 月から 8 月の夏場に多く発生していることが分かります これは 夏場は高温多湿で発汗しやすい環境にあるため感電事故の可能性が高くなることや 雷の発生が多いことから受電設備への落雷による波及事故も多くなることが原因であると考えられます 注 ) 感電 アーク等事故は過去 10 年間の件数 波及事故は過去 5 年間の件数 感電に関するミニ知識 電流の大きさによる人体への影響を分類すると... 人体が電気を感知できる最小電流は 1mA 程度で 感知電流 5mA 程度ではショックはあるが運動の自由を失わない 可随電流 20mA 程度以上になると運動の自由を失ってしまう 不随電流 100mA 程度を超えてしまうと心臓の動きを麻痺させてしまう非常に危険な 心室細動電流 人体の抵抗は... 乾燥時 :5,000Ω 程度 発汗時 :800Ω 程度 衣服が濡れている時 :300Ω 程度 人体を通過する電流は... 乾燥時に 100V の充電箇所に接触すると 人体を流れる電流 =100V 5,000Ω=20mA 付随電流相当 となり 感電時間と通電経路によっては一命にかかわる可能性があります 衣服が濡れた状態であれば 人体に流れる電流 =100V 300Ω 333mA 心室細動電流 となって 心臓の動きを麻痺させてしまう非常に危険な状態となります * 感電した時の接触電圧が高くなると 人体抵抗値が減少すると言われており 人体に電流が多く流れやすくなります 従って 6,600V で高圧受電している事業場は 一般需要家に供給している電圧 100V の 66 倍の電圧ですから 危険度が非常に高くなります 平成 29 年度に発生した 公衆の感電事故 の事故例を本パンフレットに掲載しておりますので 保安教育等にお役立てください!
お知らせ 主任技術者の選任 変更届 保安規程届 変更届 をお忘れなく! 自家用電気工作物を設置するときは 主任技術者を選任するよう法律で定められています [ 電気事業法第 43 条 ] 主任技術者を選任したとき ( 変更含む ) は 遅滞なく 九州産業保安監督部電力安全課自家用係 へ届け出て下さい 様式等はホームページをご覧下さい 自家用電気工作物を設置するときは 保安規程を定めるよう法律で規定しています [ 電気事業法第 42 条 ] 電気を使用する前に保安規程を作成し また保安規程を変更した場合は 遅滞なく 九州産業保安監督部電力安全課自家用係 へ届け出て下さい 様式等はホームページをご覧下さい 電気事故 は報告しなければなりません! 判断に迷う場合は連絡を! 電気事故が発生した場合 24 時間以内に 九州産業保安監督部電力安全課 への報告が必要です [ 電気関係報告規則第 3 条 第 4 条 ] 電気事故に該当するのかどうかわからない場合は 九州産業保安監督部電力安全課技術係 へ連絡して下さい 様式等はホームページをご覧下さい 絶縁油に PCB( ポリ塩化ビフェニル ) が含まれていることがわかった場合は 届出をして下さい! 絶縁油を使用する 変圧器 コンデンサ 遮断器 などの電気工作物には 微量の P CB が含まれている可能性があります PCB が含まれていることがわかったら 遅滞なく 九州産業保安監督部電力安全課技術係 へ届け出て下さい 様式等はホームページをご覧下さい 発電機 ( ばい煙発生施設 ) の届出をお忘れなく! 大気汚染防止法第 2 条第 2 項に規定する ばい煙発生施設 を設置 ( 変更含む ) する場合は電気事業法第 48 条の規定に基づき工事を開始する前に工事計画書を 九州産業保安監督部電力安全課発電係 へ届け出て下さい 例えば ディーゼル機関は燃料の燃焼能力が重油換算 1 時間当たり50リットル以上であれば ばい煙発生施設 となります 様式等はホームページをご覧下さい 九州産業保安監督部のホームページ 電力安全部門の最近の話題 ( 新着情報 や お知らせ ) 主要政策課題 各種手続様式等を掲載していますので 是非ご覧下さい ホームページアドレス http://www.safety-kyushu.meti.go.jp 経済産業省九州産業保安監督部電力安全課 812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東 2-11-1 福岡合同庁舎本館 8F TEL:092-482-5519~5522 FAX:092-482-5973 http://www.safety-kyushu.meti.go.jp