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ドーハ ラウンド交渉の一分野である貿易円滑化については 平成 26 年 11 月のWTO 一般理事会において 貿易円滑化協定に関する改正議定書 が採択され 今後 3 分の2 以上の加盟国が受諾した時点で本協定は発効することになりました 各 WTO 加盟国がこの協定を実施することにより 貿易規則の透明

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JNTO

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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原産地証明書の種類と内容 内容 用途 根拠協定 / 法律など 一般原産地証明書 原産地証明書発給の要請 : (1) 輸入国の法律 規則に基づく要請 (2) 契約や信用状の指定ただし 記載事項はあくまで発給機関の定める発給規則に基づいて作成される 契約および L/C 条件が発給規則に矛盾しないように注


1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

関西 EPA 研究会 ( 仮称 ) 参加のご案内 2 国間から TPP まで - アジアの EPA/FTA を総合的に 2011 年 1 月 主催 : 関西地区 16 商工会議所 拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます ご高承の通り わが国の経済連携協定 (EPA) は シンガポール (2

地域別世界のエアコン需要の推定について 年 月 一般社団法人 日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会ではこのほど 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果を まとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行 なっているもので 今回は 年から 年までの過去 ヵ年について主

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はじめに ASEAN と中国との貿易は拡大しているが これは 1993 年発効の AFTA(ASEAN 自由貿易地域 ) や 2005 年に発効した ASEAN 中国 FTA(ACFTA) の影響もあると考えられる また ASEAN と日本との貿易の進展は ASEAN と日本との 2 国間 EPA


< 目次 > 概要 1 1. 香港 2. 台湾 3. 韓国 4. 中国 5. シンガポール 6. マレーシア 7. ブルネイ 8. インドネシア 9. タイ 10. ベトナム ミャンマー 12. フィリピン 13. インド 14. 中

政策目標 5-2: 多角的自由貿易体制の維持 強化及び経済連携の推進並びに税関分野における貿易円滑化の推進 1. 政策目標の内容自由貿易の推進は我が国の対外経済政策の柱であり 力強い経済成長を実現するためには 自由貿易体制を強化し 諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があるというのが 政府全体と

ご参考資料 オーナー経営者経営者の意識調査 - 概要 - 調査期間 2003 年 9 月 1 日 ~10 月 31 日 調査機関日本では ASG グループが本調査の主体になり 日経リサーチ社に調査を委託した 調査の一貫性を保つために 各国のデータの取りまとめは 国際的な調査機関である Wirthli

地域別世界のエアコン需要の推定について 2018 年 4 月一般社団法人日本冷凍空調工業会日本冷凍空調工業会ではこのほど 2017 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果をまとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行なっているもので 今回は 2012 年から 20

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仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

平成18年8月31日

利用状況から見えてくるEPAにおける今後の課題

ASEAN との経済関係が再び強まる韓国 ASEAN ASEAN ASEAN ASEAN ASEAN1 16 RCEP 1. ほぼピークに達した対中輸出依存度 (1) 上昇傾向にある対 ASEAN 輸出依存度 ASEAN 2 WTO 21 RIM 213 Vol.13 No.49


1 アンチ ダンピング措置の新規調査開始件数の推移 AD 調査開始件数は 1 貿易自由化が進展した時と 2 景気後退の時に増加する傾向がある 世界金融危機時に増加した後しばらく下降傾向であったが 近年は再び増加傾向 世界的には 2 日に 1 件以上の割合で調査が開始されている

第 4 章地域経済統合への道筋 経済分析を中心に 第 章地域経済統合への 経済分析を中心に 一. はじめに日本は 2010 年ごろから TPP( 環太平洋戦略的経済連携協定 ) への参加を検討しはじめ それを契機として TPP に関する国民的な議論も拡大していった 2013 年 7 月には正式に交渉

< 図表 1> 米国の仕出し国 地域別自動車部品輸入実績 ( 単位 :100 万ドル ) 輸出国 シェア 1 メキシコ 11,740 13,692 16,045 17,056 19, % 2 カナダ 7,638 8,253 8,932

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「第12回信用金庫取引先海外事業状況調査結果 資料編」

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特集 ロシア NIS 圏で存在感を増す中国特集 ロシアの消費市場を解剖する Data Bank 中国の対ロシア NIS 貿易 投資統計 はじめに今号では ロシア NIS 諸国と中国との経済関係を特集しているが その際にやはり貿易および投資の統計は避けて通れないであろう ただ ロシア NIS 諸国の側

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及び必要性 低税率を適用して需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方 一定数量を超えた輸入分については高税率を適用することにより 国内の皮革産業及び革靴産業の保護を目的としている 2 政策目的達成時期我が国皮革産業及び革靴産業が構造改善を行い アジア諸国からの低価格品及び欧州からの高価格品と対抗しう

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特集 平成 2 5 年 5 月 2 2 日東京税関調査部調査統計課 金の輸出入 2012 年の世界の金需要は 4,405 トン 2012 年に合金も含む金を日本は 132 トン輸出し 11 トン輸入しています 日本の 2006 年から 2010 年の平均年間金産出量は 10 トン足らずですが 200

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第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

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1.EPA の輸出創出効果と課題 (1) 日本の EPA の現状 分類 EPA 締約国 地域 ( 発効月 ) 発効済み (13 協定 ) 交渉中 (10 協定 ) 2002 年シンガポール (11 月 ) 2005 年メキシコ (4 月 ) 2006 年マレーシア (7 月 ) 2007 年チリ (

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EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

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TPP11 協定 (CPTPP) の概要目次 協定の発効要件 税率差 : 国別譲許における税率適用国決定ルール 国別セーフガード その他 国別関税割当 牛肉の適用税率 ( 日豪 EPA 税率との比較 ) 輸入後のTPP 特恵税率の要求 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 Comp

2. 両協定の主な内容両協定締結後は 貨物やサービス貿易における更なる開放 優遇措置のほか 投資 政府調達 知的財産権 人の移動 ビジネス環境整備など 幅広い範囲での提携により 締約国間の貿易 投資の往来が従来より円滑に進むことが見込まれる (1) AHKFTA 貨物貿易香港 ASEAN 間の貨物貿

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日本の国際競争力調査

お知らせ 平成 27 年 2 月 2 日 公益財団法人京都文化交流コンベンションビューロー 平成 26 年 12 月外国人客宿泊状況調査 の発表について ( 公財 ) 京都文化交流コンベンションビューローでは 京都市内 25 ホテルの協力 を得て月別 国籍別宿泊外国人の状況調査を行っております 平成

訪日数 JNTO 日本政府観光局統計より〇 2 月の訪日外客数 138 万 7,000 人 ( 前年同月 157.6%) 〇中国が月間過去最高 史上初単月で 35 万 9 千人 (359,100 人前年同月 259.8%) 〇東アジア ( 中国 台湾 韓国 香港 ) だけで構成比が約 8 割 ( 前

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

特集 切花の輸入 平成 29 年 2 月 24 日東京税関 成田空港の輸入品にも春が来る! 輸入される切花は 菊 と カーネーション で 6 割を占める 毎年 3 月は ばら が輸入のピークを迎える 3 月が最初のピーク 春が近づき 花の話題が増える季節となりました 輸入品においても季節ごとの商品が

インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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目次 1. 貿易への取り組み 7 ~ 輸出拡大意欲は引き続き高水準を継続 ~ 2. 海外進出への取り組み 今後の国内事業展開 12 ~ 海外進出拡大意欲が増加 国内事業拡大の割合が過去最大に~ 3. 海外進出への取り組み ( 国 地域別 機能別 ) 17 ~ベトナムは事業拡大意欲が2 年連続で増加

Title 日系食品企業の直接投資およびFTA/EPAがASEAN 諸国の食品貿易に与える影響に関する分析 ( Digest_ 要約 ) Author(s) 髙松, 美公子 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL ht

目次 1 貿易への取り組み 7 ~グローバル企業に円安の恩恵 ~ 2. 海外進出への取り組み 今後の国内事業展開 14 ~ 中小企業の国内外への事業拡大意欲が増加 ~ 3. 海外進出への取り組み ( 国 地域別 機能 ) 23 ~ 米国での拡大意欲が増加 メキシコも上昇 ASEANが3 年連続で中国

特許庁工業所有権保護適正化対策事業

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摂南経済研究第 4 巻第 1 2 号 (2014) 較検討するのも興味深いことであるが ここではあくまでも 2011 年のデータの提示のみに終始し 分析 検討は改めて順次おこなってみたい 後者の目的にかかわる国際観光輸出 輸入 収支については 前掲の 国際観光論 において 2000 年から 2008

,112 1,630 1,992 1,879 2,674 3,912 はじめに ア


国内の皮革産業及び革靴産業は中小 小規模事業者が大部分を占めていることから業界の構造改善及び競争力強化を実施し アジア諸国をはじめとする海外から大量に輸入される製品と対抗しうる日本製品の優位性が備わるまで 本制度を維持する必要がある 3 改正の必要性ア. あるべき姿と現状のギャップ国内の皮革産業及び

目次はじめに 第 1 章 新興国 途上国の経済成長と輸出市場の拡大 ASEAN 第 2 章 ASEAN の貿易構造の変化 ASEAN 第 3 章 新興国 途上国向け輸出生産拠点としての課題 ASEAN はじめに ASEAN 28 ASEAN ASEAN RIM 213

第 3 章九州の産業別貿易動向 1. 自動車 自動車の部分品 2017 年の九州の自動車輸出額は 1 兆 7,006 億円 ( 前年比 27.4% 増 ) で前年より増加し 4 年連続の増加となった 輸出先は 米国が最も多く 次いで中国 アラブ首長国連邦等であった 2017 年の九州の自動車生産台数

図表 02 の 01 の 1 世界人口 地域別 年 図表 2-1-1A 世界人口 地域別 年 ( 実数 1000 人 ) 地域 国 世界全体 2,532,229 3,038,413 3,69

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2012)のポイント|国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

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7. ミャンマー カンボジアの ACFTA/AFTA の運用実態に関する現地調査事業結果 イ. 調査の目的 ミャンマーは 1997 年 カンボジアが 1999 年に ASEAN に加盟している ASEAN と中国との間の FTA(ACFTA) は 2005 年に発効した AFTA(ASEAN 自由貿易地域 ) や ACFTA の協定に基づき ミャンマーとカンボジアは 2015 年 ~2018 年にかけて大きな関税削減を実施する予定である 関税の削減が進展する FTA の活用は 企業の製品のコストダウン 競争力強化に決定的に重要であるが 実際に貿易を行っている在ミャンマー カンボジアの日系企業が FTA を利用している割合は 他の在アジア オセアニアの日系企業と比べると低いという結果が出ている もしも ミャンマー カンボジアの関税分類や適用関税率を調べることにより FTA を活用した場合の関税削減メリットが事前に把握できれば 日本企業の対ミャンマー カンボジア貿易での FTA 活用を高めることが可能になる したがって 本調査事業の目的の 1 つは これまでに ITI( 国際貿易投資研究所 ) が実施した ACFTA/AFTA の関税削減効果に関する調査をミャンマー カンボジアの政府機関や現地日系企業に説明し 現実の FTA 活用の実態について意見交換をすることにある そして ミャンマー カンボジアの日本 中国 ASEAN との貿易における FTA 活用に少しでも参考にしてもらうことにある また 第 2 の目的は ミャンマー カンボジアにおける貿易統計や実行関税率表 譲許表などの電子媒体の入手可能性を探り 今後の日本企業の FTA 戦略に資する情報提供のための基盤調査を実施することにある もしも これらの統計データの電子媒体を入手することができれば 企業の 1 次情報としてのニーズに応えることが可能だ さらには ACFTA/AFTA 調査の対象国にミャンマー カンボジアを加えることにより 日本企業の東アジアでの多角的なサプライチェーンの形成に役立つ分析を行うことができる ロ. 調査結果の概要 1. 日本の FTA の現状日本は 2002 年にシンガポールとの EPA を発効させたことを手始めに メキシコや他の ASEAN との交渉を順次進めていった その結果 日本は 2005 年にはメキシコ 2006 年にはマレーシア 2007 年にはチリとタイ 2008 年にはインドネシア ブルネイ フィリピン 2009 年にはスイスとベトナムとの間で 2 国間 EPA を発効させた 日 ASEAN 包括的経済連携 (AJCEP) 協定は 2008 年 12 月から順次発効した 2011 年にはインド 2012 年にはペルー 2015 年 1 月にはオーストラリアとの間で EPA を発効させている

また 日本はモンゴル カナダ コロンビア トルコとの間で 2 国間 EPA を交渉中であるし TPP( 環太平洋戦略的経済連携協定 ) や RCEP( 東アジア地域包括的経済連携 ) 日中韓 FTA 日 EU EPA らの 4 つのメガ FTA の交渉を開始している 一方では 日韓 FTA の交渉を中断しているし 湾岸協力会議 (GCC) との FTA 交渉を延期している したがって 日本は 2015 年 2 月現在において 全部で 14 の EPA/FTA を発効しているし 交渉中断と交渉延期を含めて 10 の EPA/FTA を交渉中である 日本が交渉中のメガ FTA を発効させれば FTA を利用できる国との貿易額は 8 割を超えることになる これまで韓国に後塵を拝していた日本の FTA 戦略は 一挙にその遅れを取り戻すことになる TPP 交渉は 日米協議の遅れや国有企業や知的財産権などの問題から 一時は暗礁に乗り上げた ところが 2015 年に入り 合意に向けた話し合いが活発化している 日中韓 FTA は 2014 年内の妥結 RCEP は 2015 年末の合意を掲げていたが TPP 交渉の遅れから両方の交渉スケジュールも当初の目標からずれ込むことになる しかしながら もしも一旦メガ FTA が発効すれば その関税削減効果やサービス分野の自由化のメリットは日本企業にとって大きい 現時点においては 中小企業を中心に日本の FTA 利用は十分には進展しておらず 来たるべきメガ FTA の効果を生かすためにも 今後の利用促進が望まれる なお 日本がまだ EPA/FTA の交渉に至っていない主要な国としては 台湾 ロシア ブラジル 南アフリカ イスラエル パキスタンなどが挙げられる これらの国の関税率は比較的高く 日本が EPA/FTA を結ぶメリットは大きい 2. ミャンマーとカンボジアの貿易構造ミャンマーとカンボジアの経済は好調に推移している 外国からの観光客が増加し 外資の進出が活発化しているためだ 両国とも 好調な経済を背景に輸出入が大きく拡大している 2015 年 ~2018 年にかけて 両国は既存の FTA における関税を大きく削減する予定である これを契機に 両国の貿易は一段と伸びていくものと思われる 本報告書においては なかなか実態がよくわからないミャンマー カンボジアの貿易構造を同じ業種分類で比較分析し 両国の貿易の現状と課題を浮き彫りにしている また それに基づき今後の両国の貿易構造がどのように変化しなければならないのかを展望している ミャンマーの輸出先を国別にみると タイ 中国 インド シンガポール 日本 香港 韓国 マレーシアの順でシェアが高い 輸入では 中国 シンガポール タイ 日本 韓国 マレーシア インド インドネシア ドイツの順番となっている 輸出入とも中国 ASEAN 日本 韓国のシェアが高く 米欧は低いのが特徴である カンボジアの輸出先を国別にみると 米国 香港 シンガポール 英国 独 加 日本 中国 タイの順でシェアが高く 先進国が上位に並んでいる 輸入では 中国 米国 タイ向けのシェアが高く 日本は 10 番目であった ミャンマーの財別の輸出は 豊富な天然ガス資源を背景にした素材輸出の割合が 4

分の 3 というモノカルチャー的な構造を持っており 食料 飲料 や 縫製品 履物 に代表される最終財輸出の割合が 16% にとどまるのが特徴である また カンボジアは委託加工貿易などによる縫製品 履物等の最終財の輸出割合が 9 割近くに達しており モノカルチャー的な輸出構造ではミャンマー以上に強い特性を持つ ミャンマーとカンボジアは主に中国 ASEAN から中間財を輸入しており その輸入割合は全輸入額の 5 割 ~6 割を占める これに対して 中間財を輸出する割合は両国とも 7% 前後にすぎなく 中間財の東アジア域内相互のサプライチェーン網には組込まれてはいない ミャンマーとカンボジアの貿易構造が高付加価値型に進化するには 素材や繊維 履物などに見られるようなモノカルチャー的な貿易形態から 多くの品目を取り扱う多層的な貿易構造に転換しなければならない それには多方面からの製造 サービス投資をさらに呼び込む必要があるし 外資の誘致にはインフラと法の整備 規制緩和などが不可欠である 同時に 川上から川下までの国内産業の裾野を広げ 利益を生む体質を作り上げ 競争力を高めなければならない 現在のミャンマーにおける素材中心 カンボジアの最終財中心の輸出から もう少し中間財のシェアを高めた貿易構造に転換するようになれば ミャンマー カンボジアの輸出入はさらなる持続的な成長を遂げるものと思われる 3. ミャンマー カンボジアで FTA の利用率が低い背景ミャンマーとカンボジアの現地政府関係者との面談において FTA の利用率を聞くと 一様に低いとの回答が返ってくる FTA の利用率が低い理由を列挙すると まず第 1 に 中国やタイ ベトナムなどとのボーダートレード ( 国境貿易 ) の割合が高いことを挙げることができる 国境での貿易においては FTA を利用するケースは少ない 第 2 に ミャンマー カンボジアの貿易形態は 繊維 履物に代表されるように 関税が免除される経済特区を活用した委託加工貿易型である場合があり 輸入時に FTA を利用する必要がないことが考えられる そして第 3 に ミャンマー カンボジアの貿易構造が 資源関連や繊維 履物に偏ったモノカルチャー的なものになっていることを指摘することができる ミャンマーが資源を輸出する時 中国やインドネシア タイの鉱物性燃料の輸入関税率は MFN 税率も ACFTA/AFTA 税率も 0% か非常に低い税率であるため FTA を利用するメリットはあまりない また ミャンマー カンボジアが繊維製品 履物を先進国に輸出する時は 特恵関税制度を活用し無税にすることが可能である 例えば 日本はミャンマー カンボジアを特別特恵関税適用国に指定しており 繊維 履物関連の多くの品目の関税が撤廃されている 第 4 には ミャンマー カンボジアにおいては 海外から輸入した製品には関税の他に商業税 (Commercial Tax) や登録税が上乗せされる 例えば ミャンマーで 2000 cc以上の自動車を輸入した場合は 関税率が 40% であり それに対する商業税が 25% さらに登録税の 75% が加算される したがって FTA を利用して関税率を削減したと

しても 自動車の輸入においては 依然として高い商業税や登録税が課税されるので FTA の効果は薄れてしまう この結果 FTA の利用を進める上での 1 つの障害になっている これらの要因や両国とも既存の FTA の関税削減スケジュールが遅れていたことなどが複雑に絡み合っているので 一般的には ミャンマー カンボジアの FTA の活用が一朝一夕に急拡大することはないと考えられている 実際に ミャンマー政府の資料によれば ミャンマーの中国への輸出において ACFTA の利用率は 2012 年度では 4% 2013 年度では 4.4% 2014 年度 (4 月 ~8 月 ) では 4.3% であった つまり ミャンマーの中国への輸出で FTA を利用している割合は 5% 以下にすぎないということである 一方 ミャンマーの中国からの輸入においては 輸出と違う動きが見られる ミャンマーの輸入における ACFTA の利用率は 2010 年度は 0.2% にすぎなかったが 2011 年度は 1.3% に高まり 2012 年度は 11.0% 2013 年度は 16.5% と急速に上昇している ミャンマーの最近の中国からの輸入における ACFTA の利用率の上昇は 2015 年以降の関税率の削減効果に対するミャンマー政府関係者等のネガティブな見方をやや見直すことが可能であることを示唆している また 現在の高いミャンマーやカンボジアの経済成長が今後とも続き 国内市場での販売を狙った海外からの投資が増えるならば 経済特区による関税の免除を受けられないので 関税を支払わなければならない輸入が増える したがって ミャンマー カンボジアでは 関税を削減するための FTA の利用が拡大することになる さらに 日本企業のミャンマー カンボジアを含めた東アジアでの FTA 活用を引き上げるには FTA を利用するかどうかの判断に資する有効な情報を いかに的確でシステマティックに伝達できるかが重要なファクターになる 特に 中堅 中小企業への重点的な情報提供サービスやアドバイスが不可欠であると考えられる 4. 今後のミャンマー カンボジアにおける FTA 効果分析の展望日本企業を含めたミャンマー カンボジアへの外資の進出が活発化する中で AFTA/ACFTA のスキームにおいて ミャンマー カンボジアは 2015 年 ~2018 年にかけて大きな関税削減を実施する予定である この関税削減スケジュールが進展すれば 日本企業が EPA/FTA を活用し ミャンマー カンボジアとその周辺諸国との貿易 あるいはミャンマー カンボジアと日本との貿易を拡大する好機となる 同時に ミャンマー カンボジアの EPA/FTA 効果の分析を取り上げる良いタイミングであると思われる 今回のミャンマー カンボジアの現地調査においては 幸運にも貿易 関税 譲許表の統計データを入手することができたので ACFTA/AFTA 調査にミャンマー カンボジアを追加することが可能になった ミャンマー カンボジアの EPA/FTA 効果を算出すれば 他の ASEAN の効果と比較をすることにより 日本企業の東アジアでのより戦略的な FTA 活用につながると思われる これまでは ミャンマー カンボジアにおける FTA の利用が進展しなかったし そ

もそも FTA を利用する必要がない場合が多かった しかし カンボジアで操業を開始したイオンのように 国内市場向けの製品を扱っている企業の場合は その材料や商品は EPA/FTA を活用して海外から調達する必要がある ミャンマー カンボジアが周辺諸国から FTA を活用して輸入する場合においては ACFTA/AFTA の効果分析でそのメリットを計算することができる 日本から輸入する場合は ASEAN 日本 EPA(AJCEP) を用いた関税削減効果を算出し そのメリットを ACFTA/AFTA と比較することができる また ミャンマー カンボジアから日本へ輸出する場合においては AJCEP を使うことができるし 開発途上国を対象にした日本の特恵関税制度 (GSP) を利用することができる 日本の関税制度においては ミャンマーとカンボジアは いずれも後発開発途上国を対象にした特別特恵関税受益国となっており 通常の GSP よりも広範な商品で関税が無税になる ちなみに 中国は GSP の受益国であり 特別特恵関税受益国よりも関税削減対象の商品の対象数で少なくなる つまり ミャンマー カンボジアの日本への輸出では AJCEP か特別特恵関税制度のどちらかを利用できるので 多くの商品で EPA/GSP を活用した貿易の拡大のメリットを受けることが可能である したがって ミャンマー カンボジアの ACFTA/AFTA 効果のような第 3 国間 FTA 分析だけでなく AJCEP や特別特恵関税制度のような 2 国間 EPA/GSP の効果分析も実施することが望ましい さらには FTA を活用した場合のミャンマー カンボジアの特定品目の輸入単価の削減率を分析し 中国 ASEAN 日本だけでなく 韓国 台湾 豪 NZ インド 米国 独 EU などの国 地域を対象に FTA 利用による競争力の変化を調査することが有用である 例えば ミャンマーが海外からある製品を輸入する場合 FTA を活用できる日本 韓国 中国 ASEAN からの輸入と FTA を利用できない米国 独からの輸入を比較すると FTA を活用できる国の方がその製品の輸入単価に上乗せされる関税率を削減できる分だけ競争力で優位になる この結果 FTA を活用することで ミャンマーが輸入する製品の価格競争力にどのような変化が現れるのかを国別 FTA 別に分析し FTA の効果を明らかにすることが考えられる これは 企業がまさに東アジアでのグローバル戦略やサプライチェーンの構築に必要な情報であると思われる ( 一般財団法人国際経済交流財団からの委託 )