入院当日 このパンフレットを忘れずに持参してくださいね! 兵庫医科大学病院消化管内科 内視鏡センター 0
目 次 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 1. 大腸がんの治療方法 2 2. 大腸がんの内視鏡治療の対象 3 3. 内視鏡治療の種類 4 4. 大腸 ESDの適応病変 5 5. 大腸 ESDの手順 6 6. 治療に伴うリスク ( 偶発症 ) 7 7. 病理組織検査 8 手術準備 ~ 当日の流れ 1. 手術当日の注意 9 2. 手術当日の服装について 9 3. 手術当日の内視鏡センターでの流れ 10 4. 現在飲んでいる薬について 11 手術後の流れ 12 退院にあたって 13,14 入院治療経過表 ( クリニカルパス ) 15 この冊子は大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) を受けられる患者さんのために作られました 患者さんが受けられる治療について詳しく紹介していますので 入院時 来院時には必ず持参してください 1
1 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 大腸がんの治療方法 大腸がんの治療方法は 内視鏡治療 外科的治療 化学療法 ( 抗がん剤 ) 放射線療法 があります 大腸がんの中でも 大腸粘膜 または粘膜の下の層 ( 粘膜下層 ) の浅い部分までにとどまるがん ( 早期大腸癌 ) であれば おなかを切らずに内視鏡で病変を摘除する内視鏡治療が用いられます 内視鏡治療は外科手術に比べ 体の負担も少なく おなかに傷がつかず 大腸の機能が保てる上に入院日数も短期間ですみます 外科手術 化学療法 ( 抗がん剤 ) 内視鏡治療 放射線 早期大腸癌の患者さんが対象 おなかに傷がつかない 外科手術に比べ 短期間で退院できる 患者さんの病変部位は 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 2
2 大腸癌の内視鏡治療の対象 内視鏡治療の適応の原則 : リンパ節転移の可能性がほとんどなく 腫瘍が一括切除 ( 病変をひと固まりで摘除すること ) できる大きさと部位にあること 内視鏡的切除の適応基準 (1) 粘膜内癌 粘膜下層への軽度浸潤癌 (2) 大きさは問わない (3) 肉眼型は問わない 早期大腸がんと進行大腸がん がん組織粘膜層 (m) 粘膜筋板粘膜下層 (sm) 固有筋層 (mp) 漿膜下組織 (ss) 漿膜 早期大腸がん 進行大腸がん 大腸 ESD の適応病変 ESD を用いることにより 腺腫 ( 前癌病変 ) 粘膜内癌 粘膜下層への軽度浸潤癌は 大きさに関係なく完全一括切除 ( 病変をひと固まりで摘除すること ) が可能となり 切除標本における詳細な病理組織診断が可能であります 大腸 ESD の適応は 内視鏡治療の適応病変のうち一括切除が必要であるが スネア EMR では分割となってしまうような病変 です 2010 年以降 大腸 ESD は先進医療技術として施行されるようになりました その後 2012 年 4 月に最大径 2cm から 5cm の早期癌または腺腫に 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術として保険収載され 施設認定基準も設けられています 当院は大腸 ESD 認定施設です 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 3
3 内視鏡治療の種類 内視鏡治療にはいくつかの種類があり 腫瘍の大きさや形によって適切なものを選択します ポリペクトミー : 茎を持っているような隆起している腫瘍 ( 隆起型 ) の場合は 内視鏡的ポリペクトミーが用いられます これは スネアと呼ばれる金属製の輪を腫瘍の根元にかけ 高周波電流を流して焼き切る方法です 内視鏡的粘膜切除術 (EMR) : 平たい腫瘍 ( 表面型 ) に対しては 粘膜下層に生理食塩水などを注入し 腫瘍を持ち上げてからスネアをかけて焼き切る内視鏡的粘膜切除術 (EMR) を用います 内視鏡的粘膜下層切開剥離術 (ESD) : 2cm 以上の大きな腫瘍や 粘膜下層が硬くなり ( 線維化 ) ポリペクトミーや EMR では切除が難しい病変に対しては 内視鏡用の電気メスを使って粘膜下層を剥離して腫瘍を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) を用います ESD により 今まで外科的切除となっていた大きな腫瘍も内視鏡でひと固まり ( 一括 ) で摘除可能となりました 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 4
4 治療に伴うリスク ( 偶発症 ) 大腸 ESD は 大腸壁が薄いことなど解剖学的な理由により 手技的に繊細な操作や高度な技術を要求されます 胃に対する ESD と比べ腸管穿孔等の偶発症をおこす危険性が高いことから 経験豊富な専門医が施行すべき医療技術であります * 出血 病変の切除によって出血を生じることがあります また 治療後に出血を生じる場合もあります ほとんどの場合は止血鉗子によって止血可能ですが どうしても出血が止まらない場合は ごく稀に輸血や緊急開腹手術が必要となる可能性があります * 穿孔 大腸の壁に小さな孔が空くことがあります 通常 内視鏡的に専用のクリップを用いて閉鎖の処置を行いますが 稀に緊急開腹手術が必要となることがあります * 鎮静剤 鎮痛剤の副作用 治療に使う薬によってアレルギー症状や呼吸抑制等 副作用が起きる場合があります * その他 非常に稀ですが 病変が大腸の管腔の全周や亜全周に及ぶような大きな病変では 術後の治癒過程で狭窄を起こす場合があります ESD の途中で腫瘍摘除が困難と判断した場合 ( 腫瘍が筋層近くまで浸潤していたり 粘膜下層の線維化が強度であったり 偶発症が起きてしまった場合等々 ) ESD を途中で中止する場合があります その場合 後日に外科的手術となります 万が一 偶発症が生じた場合 その治療のため入院期間が延長する場合があります 以上のような偶発症に備えて 常に下部消化管外科と連携をとっております 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 5
5 大腸 ESD の手順 内視鏡挿入後 下記の手順で行われます 1 局注 2 切開 3 病変を取り囲むようにナ 内視鏡を大腸の中に入れ 病変周辺の粘膜下層に薬剤を注入して 粘膜を浮かせた状態にします イフで病変部の周囲の粘膜を切っていきます 粘膜下層のはく離専用ナイフで病変を少しずつ慎重にはく離していきます 4 切除完了ナイフを使って最後まで剥離するか 最後にスネアを使って切り取ることで病変部の切除が完了します 5 切除された病変切り取り回収された病変です この病変を病理組織検査に出します 粘膜下層剥離 腫瘍粘膜下層局注粘膜切開 スネアー切除 ESD 終了 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 6
6 病理組織検査 切除した病変は顕微鏡による病理組織検査を行います 病理組織検査の結果で 完全に切除できているかどうかを判断し 必要があれば追加治療が行われます 治療前に リンパ節転移の可能性が極めて低い と診断されていても 顕微鏡による検査で病変が粘膜層より深い層にまで達していたり 血管やリンパ管にがん細胞が入っていることがわかった場合は追加治療 ( 外科治療 ) が必要となる場合があります 大腸癌治療ガイドラインより 大腸 ESD( 内視鏡的粘膜下層剥離術 ) にあたって 7
手術準備 ~ 当日の流れ 1 1 2 手術当日の注意 手術当日の食事 : 朝食から絶食で 通常の大腸内視鏡検査の前処置と同様 下剤を服用していただきます 手術開始の時間 : 月日 ( ) : からの予定です ( ただし検査室の状況で変更もあります ) ご家族の方は 手術が終わるまで病室等でお待ちください 手術に要する時間は病変の大きさなどで決まり 一定ではありません 手術終了の連絡がありましたら 内視鏡センターにお越しください 手術当日の服装について寝衣の上 検査用パンツ 手術前に取りはずしてきてもらうもの 病院の検査着を着ていただきます 寝衣の下 パジャマのズボンを用意してください ジッパーやスナップなど金属のついたものは避けてください 下着 検査用のパンツをはいてきてください 女性の方はブラジャーやガードルはとってきてください その他 メイク マニキュアやコンタクトも忘れずはずしてきてください 深部静脈血栓症の予防のため特殊なストッキングを下腿に着用していただきます ( 当日病院からお渡しします ) また 必要に応じて尿道バルーンの挿入もさせていただきます 手術には 電気メスのような高周波装置を使用しますので 必ず貴金属類は取りはずしてきてください 入れ歯 ピアス 指輪などの装飾品時計カイロロッカーの鍵 手術準備 ~ 当日の流れ 8
3 手術当日の内視鏡センターでの流れ 3 1 まず 受付にお越しください ネームバンドで受付をして お名前を確認をさせていただきます 看護師が 問診票の確認をします 2 治療室にご案内します 医師 看護師 臨床工学技師と一緒に患者様の情報を確認します ペースメーカーや人工関節 ステントなどの金属が入っている方は申し出てください 3 モニターなどを装着します 安全に治療するために モニター機器を装着して全身状態を管理します また 電気メスを使用するため 背中には手のひらほどのシール ( 対極板 ) を貼ります 皮膚の乾燥している方や湿疹のある方 金属が入っている方など患者様の状態によって貼る位置は変わってきます 4 左を向いて ( 左側臥位 ) ベッドに寝ていただきます 静脈麻酔を使用し うとうと眠っている状態で行います 場合によっては 鼻から酸素吸入を行ったり おしっこの管 ( 尿道カテーテル ) を入れます 手術準備 ~ 当日の流れ 9
5 治療を開始します 医師 看護師 臨床工学技師が協力して患者様の状態を注意深く観察しながら治療を行います 麻酔の量も患者様の状態によって調節させていただきます 6 治療が終了したらベッドで病室に帰ります 治療終了直後は 麻酔の影響で寝ている事が多いです 目を覚まして返答されている場合も後で聞くと忘れている場合があります 7 病室に帰ったら 病棟看護師が患者様の状態を観察していきます 手術準備 ~ 当日の流れ 10
4 現在飲んでいる薬について 手術を受けるにあたって中止して頂きたい薬があります ( 内服をしていると手術ができず延期となることがあります ) 手術当日までに中止して頂きたい薬 * 抗血栓薬 を 月 日から中止してください を 月 日から中止してください を 月 日から中止してください 説明医師 入院後 病棟の薬剤師が確認をしますので 現在 飲まれている飲み薬と外用薬は全て持参してください 入院後 担当医師が手術の方法 および入院中の予定等につき説明させていただきます 患者さんだけでなく ご家族の方も同席してください ( 説明時間は入院後担当医師にご確認ください ) 入院中の検査 治療は基本的には入院治療経過表 ( クリニカルパス ) に準じて行います ( 入院期間は約 7 日間 ) 手術準備 ~ 当日の流れ 11
手術後の流れ 安静 手術後当日はベッドで安静に 手術後当日はベッド上で安静にしてください ( 治療中の麻酔が覚めていないとふらつくことがあります ) トイレ等でベッドから離れる際には ナースコールください 排便された場合 血便がないか等もチェックいたしますので 流さないでください 水分摂取の制限 控えめに 水分摂取は控えめに 手術の直後は 水分摂取は 控えめにしておいてください 万一 急激な腹痛がおこった場合 すぐにナースコールください 手術前後の点滴 飲み薬 点滴 飲み薬の服用は指示通りに 手術前から 点滴をし 術後 約 2~3 日間は点滴します 特に問題なければ 術後 2~3 日後より食事を開始します 手術後の流れ 12
退院にあたって 次回受診までの 2 週間は以下のことに注意してください 入浴 入浴は可能ですが 長湯は控えましょう 活動 適度な運動は可能です ( 散歩など ) 重いものを持ったり 無理な運動 ( ゴルフ ジョギング 水泳など ) 出張や旅行などの遠出は控えてください また トイレ ( 排便 ) の際は あまり いきまないようお願いします 仕事 デスクワークの仕事はかまいません 嗜好品 酒 タバコ 香辛料はやめておきましょう memo 退院にあたって 13
飲み薬を中止されていた患者様 飲み薬の再開日は 月 日です 次回受診日 月日医師です 次のような症状があるときは 時間外でもかまいませんので 兵庫医大病院 消化管科を受診ください * 急激な腹痛 * 血便 * めまい ふらつき ( 貧血様の症状 ) * 腹部膨満感 ( 急激なおなかの張り感 ) 退院おめでとうございます 退院後もこのパンフレットを参考にしてくださいね また 心身の安静を心がけ 十分な睡眠をとり 規則正しい生活を送りましょう 兵庫医科大学病院消化管科 内視鏡センター 兵庫県西宮市武庫川町 1-1 平日 ( 月 ~ 金 : 8:30 16:45):0798-45-6200 土 (1 3 5 週 : 8:30 11:30):0798-45-6200 夜間 休診日 ( 第 2 4 土曜日 日曜 祝日 ):0798-45-6111( 代表 ) 退院にあたって 14
入院治療表 ( クリニカルパス ) 15
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