2014年 小児疾患

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

H30_業務の概要18.予防接種

スライド 1

生ワクチン 不活化ワクチン ジフテリア 百日咳 破傷風 不活化ポリオ混合ワクチン の接種から20~24 週あけて3 回目を接種 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 27 日 ( いわゆる4 週間 ) 以上あけて受けます 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 6 日 ( いわゆる1 週間 ) 以

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

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スライド 1

第1 入間市の概要

とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

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次の人は 医師が健康状態や体質に基づいて 接種の適否を判断します 心臓や血管 腎臓 肝臓 血液の障害や発育の障害などの基礎疾患がある人 他のワクチンの接種を受けて 2 日以内に発熱があった人や全身性の発疹などアレルギーが疑われる症状が出たことがある人 過去にけいれんをおこしたことがある人 過去に免疫

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

第 12 回こども急性疾患学公開講座 よくわかる突発性発疹症 その症状と対応 ~ 発熱受診患者解析結果を交えて ~ 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野 長坂美和子

48小児感染_一般演題リスト160909

9 予防接種

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2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

2 (2) 異なった種類のワクチンを接種する場合の間隔 生ワクチン BCG 麻しん風しん混合 (MR) ロタウィルス 水痘 おたふくかぜ 不活化ワクチン ヒブ 小児用肺炎球菌 四種混合 三種混合 不活化ポリオ 日本脳炎 二種混合 B 型肝炎 インフルエンザ 27 日以上あける 不活化ワクチン生ワクチ

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ヒブ ( インフルエンザ菌 b 型 ) 対象者 : 生後 2ヶ月から5 歳未満までのお子さん標準的な接種開始期間は 生後 2ヶ月から7ヶ月未満です 生後 2ヶ月を過ぎたら 早目に接種しましょう 接種方法 : 接種開始時の年齢により接種方法が異なります 接種開始が生後 2ヶ月から7ヶ月未満の場合 (

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

健康た?よりNo107_健康た?より

平成24年、秋、日本の予防接種はこのように変わります

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参考資料 5 MR の接種勧奨の取り組みについて MR1 期 (1 歳 ~2 歳未満 ) 1 歳となる月の前月末に予診票及びお知らせを発送 1.6 歳児健診時 個別チェックによりお知らせ配布 ( 通年 ) 2 歳となる前々月に未接種者に案内を発送 ( 別紙 1) MR2 期 ( 小学校に入学する前年

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

このワクチンの接種前に 確認すべきことは? ワクチン接種を受ける人または家族の方などは このワクチンの効果や副反応などの注意すべき点について十分理解できるまで説明を受けてください 説明に同意した上で接種を受けてください 医師が問診 検温および診察の結果から 接種できるかどうか判断します 次の人は こ

1-11. 三種混合ワクチンに含まれないのはどれか 1 破傷風 2 百日咳 3 腸チフス 4 ジフテリア 疾患と症状との組合せで誤っているのはどれか 1 猩紅熱 コプリック斑 2 破傷風 牙関緊急 3 細菌性赤痢 膿粘血便 4 ジフテリア 咽頭 喉頭偽膜 予防接種が有効なはど

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

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り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

Microsoft Word - 感染症の説明と調査2012.doc

疾患名 平均発生規模 ( 単位 ; 人 / 定点 ) 全国 県内 前期 今期 増減 前期 今期 増減 県内の今後の発生予測 (5 月 ~6 月 ) 発生予測記号 感染性胃腸炎 水痘

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま


Microsoft Word - 感染症と予防接種について(A-2麻疹).doc


肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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Microsoft Word - WIDR201839

今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

会計 10 一般会計所管課健康推進課款 4 衛生費事業名インフルエンザ予防接種費項 1 保健衛生費目 2 予防費補助単独の別単独 前年度 要求段階 財政課長内示 総務部長 市長査定 最終調整 予算計上 増減 1 当初要求 2 追加要求等 3 4( 増減額 ) 5( 増減額 ) 6=

定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

Microsoft Word - 最終_緊急風疹情報2019年第10週.docx

Microsoft Word - ワクチンガイド_DT_DSJVC版_ KDSV.doc

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

Microsoft Word - WIDR201826

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

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1 臨床医学 4 第 4 回 4-2 次は病原体についての説明である あてはまる病原体の名称をそれぞれ記載しなさい (1) 最も単純で原始的な動物 単一の細胞からなる (2) カビや酵母などのような生活形態をもった原生動物 (3) 一番小さな病原体で 動物細胞に侵入しその生命機構を利用して細胞内で増

Microsoft PowerPoint _三重県研修会 - 配布用.pptx

クチ ワ ン で安心 予防接種は集団生活前に子育て応援券を有効活用 感染症発生動向速報 ( 平成 31 年第 10 週分 3 月 4 日 ~3 月 10 日 ) インフォメーション 予防接種をご確認くださいこの春から保育所 幼稚園に通い始めるお子さんも多いと思います 一般に乳幼児は感染症に対する抵抗

院内感染対策マニュアル

1-11. 三種混合ワクチンに含まれないのはどれか 1. 破傷風 2. 百日咳 3. 腸チフス 4. ジフテリア 第 17 回按マ指 疾患と症状との組合せで誤っているのはどれか 1. 猩紅熱 - コプリック斑 2. 破傷風 - 牙関緊急 3. 細菌性赤痢 - 膿粘血便 4. ジフテリア

ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

Microsoft PowerPoint - 予防接種のてびき.ppt

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

00【議連提出資料】B型肝炎ワクチンの定期接種化について

子宮頸がん予防ワクチン及びヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの接種助成事業スタート

健康文化 25 号 1999 年 10 月発行 健康文化 予防接種の現況 森島恒雄 イギリスのジェンナー (E.Jenner, ) が種痘法を発見して以来 予防接種の歴史は約 200 年におよぶ この間 多くの優れたワクチンがつくられ 多くの人々の生命を救ってきた しかし ワクチン

Microsoft PowerPoint - 【配布資料】28予防接種従事者研修

Microsoft Word - 緊急風疹情報2019年第20週.docx

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報告風しん

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]

各ワクチン対症疾患に対する簡単な説明を書きました 各疾患については infection.pdfをご覧ください 4 種混合ワクチンの 百日咳は 長期持続する強い咳と新生児乳児が感染すると呼吸停止 死亡あるいは脳症を起こす可能性があります ジフテリアは喉頭炎で窒息死亡する病気です MRの内麻疹は 1 週

感染経路 1. 直接伝播 1 直接接触 ( 接触による径皮感染 ) 例 : 水いぼ 性感染症 HIV 2 飛沫感染 ( 通常 1~2m 以内 ) 例 : おたふく 風疹など多くの感染症 3 母子感染 ( 胎盤 産道 母乳感染 ) 例 : 風疹 B 肝 *HIV 2. 間接伝播 * ヒト免疫不全ウイル

症化することからハイリスクとされています VZV は細胞親和性が強く cell-to-cell にウイルスが感染するため ウイルス増殖の抑制には液性免疫よりも細胞性免疫が重要であります このため 特に細胞性免疫機能の低下した宿主においては極めて重篤となり 致死的な経過をたどることが少なくありません

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はじめに 海外に出国する日本人の数は年々増加しており 2006 年には 1700 万人に達しています この中には現地で感染症にかかり 医療施設を受診するケースも少なくありません こうした海外でかかりやすい感染症の予防対策として 旅行者への予防接種の普及が提唱されているところです このパンフレットは

平成 24 年 7 月改定版 すべての予防接種につきましては 次のページに記載してあります 平成 24 年度予防接種日程表 ( 国の通知により 内容が変わる場合があります 毎月の 広報みなみちた でご確認ください 新 麻しん風しん混合 3 期 4 期 ( 個別 ) 対象 :3 期 ( 中学 1 年生

ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン<医療従事者用>

0 歳 0カ月 乳幼児の予防接種スケジュール ( 例 : その 1) 同時接種を希望するが 1 回に受ける数は 2 種類以下を希望する場合 ( 受診回数 : インフルエンザを除いて 18 回 ) 1 歳 カ月 日本小児科学会推奨案 ジフテリア 百日咳 破傷風混合ワクチン生ワクチン別の種類のワクチンを

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

Microsoft Word - tebiki_51-60.doc

次の人は このワクチンの接種を受けることはできません 明らかに発熱 ( 通常 37.5 以上 ) している人 重篤な急性疾患にかかっている人 過去にこのワクチンに含まれている成分 ( ジフテリアトキソイドを含む ) でアナフィラキシーをおこしたことがある人 上記以外に医師が予防接種を行うことが不適当

インフルエンザ(成人)

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2017 年 25 週 (06 月 19 日 ~06 月 25 日 ) 2 類感染症 3 類感染症 都道府県 結核 ジフテリア 重症急性呼吸器症候群 中東呼吸器症候群 鳥インフルエンザ (H5N1) 鳥インフルエンザ (H7N9) コレラ 細菌性赤痢 総数北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨

ように いわゆる渡航者 に推奨されているワクチン (Recommend vaccines) 次に黄熱ワクチンのように一部の国に入国する際 接種証明書の提示を要求されるワクチン (Required vaccines) そして麻しんや風しんワクチンのようにわが国で通常に接種されているワクチン (Rout

RS ウイルスは 乳幼児に呼吸器感染症を引き起こす重要な原因 ウイルスです 大人が感染した場合は軽いかぜ様症状のみでおさ まりますが 予定日よりも早く生まれた赤ちゃん ( 早産児 ) 生まれつき呼吸器や心臓に病気をもっている赤ちゃん あるいは免疫不全を伴う赤ちゃんやダウン症候群の赤ちゃんが感染すると

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性


1

小児用肺炎球菌ワクチン 対象者 : 生後 2カ月 ~5 歳未満の方接種費用 : 無料ただし 接種開始が2 歳以上の場合は自己負担あり (1100 円 ) 接種回数 : 接種開始年齢によって異なります 接種開始月 年齢接種回数 接種間隔接種費用 生後 2 月から 7 月未満 生後 7 月から 12 月

ワクチンの基本

Transcription:

健康バンザイ! いなぎ講座 小児期の感染症について 予防接種を中心に 小児科長谷川廉

小児期の感染症 予防接種との関連から 重要な感染症 それは現行の 予防接種 を理解することで 実践的に学ぶことが可能です 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュ - ル (2014 年ならびに 2016 年 ) を参照

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュ - ル (2014 年ならびに 2016 年 ) を参照何が変更になったのでしょう?

水痘ワクチンと B 型肝炎ワクチンが定期接種になりました

ではそれぞれのワクチンについて順を追って解説します インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ Hib :Haemophilus influenzae type b) 肺炎球菌 ( PCV13 ) : pneumococcus vaccine で 13 種の多糖体を含んでいます この 2 種類の vaccine は細菌性髄膜炎 vaccine と簡単に理解してください ( 他にも中耳炎 肺炎などの細菌感染の原因にもなりますが )

小児の細菌性髄膜炎の特徴 年齢により原因となる菌の種類が大体特定されています 新生児期 ( 生後 1 か月くらいまで ):GBS(B 群溶血性連鎖球菌 ) が多く 重篤化しやすくかつ後遺症も残しやすいのです

乳幼児期 :Hib 肺炎球菌が多い 以上の理由でヒブワクチン 肺炎球菌ワクチン接種により乳幼児期の化膿性髄膜炎の頻度が激減する しております 1~2 歳までの年齢層での髄膜炎の診断は困難ことがおおいのです 抗生剤の治療も耐性菌の問題もあり 入院に長期間を要することや 治療困難例も少なくないのです

B 型肝炎 : 血液を介しての感染は ( 汚染血の輸血 針刺し事故など ) 劇症肝炎に発展することが少なくありません 劇症肝炎の致死率は高く この時期を乗り越えてもキャリア - 化します B 型肝炎ウイルス (HBV) のキャリア - 原因は母子感染が多いのです 慢性化し 肝硬変や肝癌へと発展します 治療困難

B 型肝炎ワクチン : もともとは母児間垂直感染予防に開発 導入後は 95% 以上 予防達成 母子感染予防のためにはまず 生後 12 時間以内に抗 HBVγ グロブリン投与ならびに HB ワクチン投与を行います それに引き続き生後 1 カ月と約 6 カ月後に HB ワクチン投与が行われます (2015 年より変更 )

水平感染の可能性 2016 年から (1 歳未満 ) 定期接種になりました 乳児期のワクチン接種は免疫が付きやすいようです 定期接種は生後 2 カ月から接種が受けられ 計 3 回接種します

唾液や体液からの感染の可能性があることが知られてきました B 型肝炎ウイルス感染に引き続き 慢性肝炎やさらに肝癌への進行がおきることが少なくないのです

四種混合ワクチン (DPT-IPV) D ジフテリア (diphtheria 菌 ) P 百日咳 (pertussis 菌 ) T 破傷風 (tetanus 菌 ) IPV 不活化ポリオワクチン (inactivated polio vaccine)

百日咳 :Bordetella pertussisu( グラム陰性桿菌 ): 飛沫感染します 感染力は強く 成人での感染 (DPT による抗体産生低下 あるいは予防注射してない ) が問題になっています 成人ないしは小中学生での発症は多くは長引く 強い咳といった症状で 診断までに時間がかかります ( 抗体検査で診断可能 ) その間に乳児に感染 - 重篤化 乳児期とくに新生児に近い月齢ではレプリ - ゼなどの特有な症状に加え 無呼吸が合併します

2 種混合 ( ジフテリア + 破傷風 )DT ワクチンは 11 歳 ~13 歳に接種となります 百日咳の流行を配慮し これに百日咳ワクチンを加えた DPT に変更になる予定があります

破傷風 : 破傷風菌は土壌に日常的に存在します 感染 - 発症した場合の致命率は 30~50% と高くテタノスパミンなる神経毒にて牙関緊急 全身筋の痙攣などおこします

ポリオ : 急性灰白髄炎 ( acute anterior poliomyelitis) 最近の国内での発症は経口ポリオ生ワクチン由来のケ - スのみでした 不活化ワクチンへの移行 海外ではまだ根絶されていません

BCG 結核けして過去の病気ではありません 日本では年間 3 万人の発症 Mycobacterium tuberculosisによる感染 ヘンリ-パ-セル フランツ カフカもそれでなくなっています 初感染 : 飛沫感染 初期変化群 ( 肺の所属リンパ節に結核性病変をおこします ) 新生児 乳児期には結核性髄膜炎の合併もあり- 水頭症の発症 予後めちゃめちゃ不良

BCG による予防 弱毒生菌ワクチン 特に小児期での結核を予防できます ( 発症の少ないアメリカなどでは実施されておりません ) 学校 職場などでの集団感染もあります 発展途上国では不良な栄養状態などが根底にあって 必ずしも BCG が有効でありません エイズ (AIDS) 患者での多剤耐性結核菌の発症 ツベルクリンによる診断 : 逆に BCG 接種で陽性になってしまう 感染の診断が不明瞭になるとの指摘もあります

麻疹 風疹ワクチン : MR ワクチン (measles rubella) 麻疹 : 重篤な経過を取ることが 少なくないのです 3 日間くらいの高熱 ( カタル期 ) に引き続き 一過性に解熱後再び高熱の状態となり特徴的な発疹が出現 咳などの呼吸器症状も強く 口腔内粘膜にコップリック斑も現れます

合併症 : 麻疹肺炎 脳炎 中耳炎など 死亡例も少なくありません 発展途上国ではビタミン A 不足に関連し 結 角膜炎 失明 亜急性硬化性全脳炎 (SSPE): 主に乳児期に麻疹に感染した小児が学童期前後に発症 ( 予後不良ではあるけどまれではある 麻疹発症者の 10 万人に 1 人 )

なぜ日本はワクチン後進国と言われるか? 麻疹ワクチン接種率の低さが問題となったこともあります (2009 年での全国の麻疹発症は 700 人くらい ) MR ワクチンは 1 歳過ぎに 1 回 就学期前の 5 歳すぎに 2 回目を接種します 最近では海外からもちこまれた ( 型の異なる ) 麻疹ウイルスでの発症が知られてきました

風疹 : 発疹 ( 特徴はあんまりない ) 発熱 頸部リンパ節腫脹など合併症 - 血小板減少症 ( 紫斑病 ) 先天性風疹症候群 ( CRS ccongenital rubella syudrome) このところ話題になっています どのような症候群でしょう 妊娠のどの ( 在胎 ) 時期に罹患すると CRS が発症するのでしょう?

妊娠 4~5 か月までに風疹に罹ると胎児が発症することがあります 先天性心疾患 白内障 難聴などが特徴です 風疹ワクチンは生ワクチンなのですが 抗体価を維持できないことがあります

水痘 : 感染は飛沫感染 感染力は強い 免疫不全状態にある者は重症化 ヘルペスウイルス 免疫抑制剤 ステロイド投与中など ( 悪性腫瘍 ネフローゼ症候群など ) 潜伏期間は 2~3 週間 稀ではあるけど 小脳失調症 ワクチンは生ワクチン 2 回接種の定期接種となりました 抗ウイルス剤はありますが ( ゾビラックスなど ) 健康な基礎疾患のない児に必要なのでしょうか?

ヘルペスウイルス ( 群 ) ヒトにとってはなじみの深いウイルス 水痘ウイルス (VZ ウイルス ) 帯状疱疹の原因ともなります 水痘に罹患後 ウイルスは体内から除去されず 休眠状態で神経根などに潜んでいます 何らかの原因で ( 体が弱ってきたとき 免疫能が低下したときなど ) ウイルスの活性化がおきて帯状疱疹を発症します ウイルス血症は起こしません 神経の走行に沿って 特有の皮疹が帯状に出現します 痛みも伴います

突発性発疹症 : ヘルペスウイルス 6 型 ( と 7 型 ) で発症します 多くは 2 歳以下に発症 3~4 日の高熱が続き 解熱後に全身に発疹が出現します 熱性けいれんをおこしやすい疾患です ワクチンはありません

単純ヘルペス : 口内炎や歯肉口内炎の原因 性器ヘルペスは新生児に重篤な脳炎をおこすこともあります

おたふく ( 風邪 ): ムンプス合併症 : 髄膜炎 ( ウイルス性髄膜炎としては最も頻度が高い ) 聴神経障害 ( 難聴 ) 膵炎 睾丸炎故にワクチンによる予防 (2 回が推奨 ) が必要 生ワクチンです

日本脳炎 : 日本での発症はほぼ 0 例 ( 東南アジアでは日本脳炎ウイルスが存在 ) 九州地方での発症の可能性 なぜワクチン接種が必要なのでしょう ブタを介して小型アカイエカに刺されてアルボウイルスに感染

インフルエンザ :A 型 B 型 変異ウイルスの問題 なぜワクチンの有効性について常に議論があるのか? 不活化ワクチンです インフルエンザ脳炎 脳症 ( 日本人に多い ) 予後不良です 抗ウイルス剤の登場 ノイラミニダーゼ阻害剤 ( タミフルなど )

ロタウイルス感染 : 乳児白色便下痢症 感染力が強く 脱水をおこしやすい 痙攣の発症もあります 発展途上国では死亡例も多い ワクチンは経口生ワクチン 6 か月未満までに終了 他のワクチン狂犬病ワクチン A 型肝炎ワクチン ヒトパピロ - マ (HPV) ワクチン : 子宮頸部癌予防 黄熱病ワクチンなど

おしまいにワクチンのおかげでいくつかの重篤な病気をおこす疾患はみられなくなりました 天然痘 種痘 懐かしいですね わたしの上腕には残っています 若い Dr は はしか ( 麻疹 ) を診たことがほとんどありません わたしの世代 ( 昭和 30 年 ) は今回述べたほとんどの疾患を自然感染してしまいました ( 日本脳炎を除く ) ワクチンの集団接種で ( 針の使いまわし ) B 型あるいは C 型肝炎にかかってしまったひともいます

いくつかの頻度の高いかつ重篤になる疾患を述べることはできませんでした ( ワクチンがないため ) たとえば RS ウイルス感染症 : 重い 細気管支炎 肺炎 になってしまうことも多いですよ 突発性発疹症 ( ヘルペスウイルス 6 型 7 型で発症 ): 痙攣をおこすことが多いのです 日本ではあまりおめにかからないのですが マラリア

発疹 と発熱が主症状である病気で忘れてはならないものに 川崎病 もあります けして頻度の少ない病気ではありません ( 感染症ではありませんが ) 本邦で実施されているワクチンにはある欠点があります 混合ワクチンが少ない分 同時接種が実施されているので とても接種方法が煩雑になっている点です

でも 現在混合ワクチンは開発中だとのことですので みなさまの 3 番目! のお子様くらいからは 楽になるかもしれませんね おそくとも お孫さんくらいからは

ニーチェは言う { 認識 } するのではなく 図式化するのである われわれの実践的要求を満たすに足るだけの規則性や諸形式を混沌 ( カオス ) に課すのである

解釈 混沌 ( カオス ) たえず生成し変化しつつあるもの - 例えばわたしたちの日常生活がそうだ - の中にあっては生は安定することができない そこで 混沌 を図式化してあたかもそれが静止し不変なものであるかのように思い込もうとするのが < 認識 > のはたらきなのであって それはいわゆる { 認識 } つまり { 真に存在するものを把握するはたらき } などではない

さらに < 真理 > についてもこのように言う なにものかが真であると思いこまれねばならないということは必要であるが これはなにものかが真に存在するということではない ( なにものかが真であると思いこむこと つまりなにものかがあたかも永遠に変わることなく止まっているかのように思いこむことは 生が現状を確保し そこに己を安定させることのために必要なことであるが それを本当に 真に存在する などとは思ってはならない )

伝統的な哲学は 生が現状確保のための目安として設定したに過ぎない真理という価値を 超越的存在として実体化し 逆に生をそうした超越的存在に仕えさせようとしてきた

プラトン以降の西洋哲学は自然を超えた超自然 (< イデア > < 純粋形相 > < 神 > < 理性 > < 精神 > とその名を様々に変えたが ) を設定し 自然をその原理によって形成されるべき死せる質量 ( マテリアル ) と見 そうした物質的自然観の上に立って文化を形成してきた