こんな症状ありませんか? 脈拍が上がりやすい 短い距離を歩くのが困難 息苦しさ 足首の腫れ 疲労感 動悸 息切れ 失神 めまい
その症状 もしかしたら 大動脈弁狭窄症 が 原因かもしれません
大動脈弁狭窄症とは? 心臓弁膜症の一つで 大動脈弁の開きが悪くなり 血液の流れが妨げられてしまう病気です 先天性二尖弁やリウマチ性 加齢による弁の変性や石灰化が原因になります 軽度のうちは ほとんど自覚症状がありません 動悸 息切れ 疲れやすさなどの症状が徐々に進行し 重症になると失神や突然死に至る可能性もあります
続 大動脈弁狭窄症とは? 自然に治ることはありません はじめは 弁 という一部分の病気ですが 進行すると心筋 ( 心臓を動かす筋肉 ) 全体の病気になります 心筋全体まで進行してしまうと 弁を取り替えても心筋を回復させることができないため 心臓は元通り働くことができなくなります 心筋に障害が及ぶ前に 早期の診断と治療が大切です!!
検査 診断 心電図 心エコー検査 心臓カテーテル検査 聴診 胸部レントゲン検査
大動脈弁狭窄症の治療法 患者さんや病気の状態に応じて いくつかの選択枝があります 経過観察 薬剤による内科的治療 弁を人工の物に交換する外科手術 ( 弁置換術 ) バルーン大動脈弁拡張術 (BAV) カテーテルを用いて人工の弁を植え込む (TAVI)
治療法その 1 薬物療法 弁そのものを治すわけではなく 弁置換の必要性がない軽 中等度の方の症状を薬で緩和したり 進行を抑制することによって心臓にかかる負担を取り除きます 体への負担が少ない 根本的な治療法ではないので 効果および効果の 持続時間が限定的 軽 中等度までの方が対象
治療法その 2 外科的大動脈弁置換術 人工心肺装置を使用し 一時的に心臓を止めて病気の大動脈弁を切除し新しい人工弁に取り替えます 根本的な治療法になる 確実で成功率が高い 身体への負担が大きい 合併症のリスクがある
治療法その 3 BAV: バルーン大動脈弁形成術 脚の付け根からバルーンを収納したカテーテルを心臓まで運び 狭くなった大動脈弁をバルーンで広げる 大きな手術ができない患者さんにも治療できる 効果の持続時間が短い ( 再狭窄率が高い )
BAV って??? TAVI のように生体弁を留置することなく 風船で弁を広げます ( バルーン大動脈弁形成術 ) 状態があまりよくない患者さんの橋渡しとして BAV を行い その後 より安定した全身状態で TAVI を行うこともあります TAVI で生体弁を留置する前に前拡張として風船で広げることもあります
治療法その 4 TAVI: 経カテーテル大動脈弁留置術 2013 年 10 月から日本でも保険診療の承認が得られた新しい治療法です 大きな手術ができない患者さんにも治療できる 根本的な治療である 短期間の入院で社会復帰が早くできる うまく留置ができなかった場合は開胸術が必要になることがある
TAVI を行う施設 学会および厚労省により認可を受けた施設のみで施行可能な治療法です
ハイブリッド手術室 TAVI は ハイブリッド手術室で行います ハイブリッド手術室とは 手術室と同等の空気清浄度の環境下で カテーテルによる血管内治療が可能な検査室のことです これにより 外科的に最小限の切開を加えた後 そこから低侵襲治療を行うことができるようになりました
ハートチームでサポート TAVI を行う際には 循環器内科 心臓血管外科 麻酔科 放射線科の診療科の垣根を超えた医師とコメディカルスタッフによるハートチームで話し合い 患者さんに合った最適な治療法を提案 サポートします
TAVI は こんな方が適応です 元気だけど 何らかの理由で手術できない人 非常に高齢のために体力が低下している人 開胸手術では術後に活動性が低下する可能性があり 術前の生活状態に戻れない可能性がある人 他の病気などリスクがあり外科的治療 ( 弁置換術 ) を受けられない人
適応とならない患者さん 以下に該当する患者さんの場合 現時点では TAVI 治療が受けられません 外科的治療 ( 弁置換術 ) が可能と判断された方 透析中の方 大動脈弁が先天的に二尖弁の方 末期の悪性疾患がある方 高度な逆流弁膜症をともなう方 重度の心不全 呼吸不全の方 など
TAVI の前には TAVI の術前では 万全を期すため CT による計測や評価が必須です 大動脈弁の石灰化の状態や径を正確に評価するため 心臓の CT を撮ります 検査中は 何度か呼吸を止めていただきます 呼吸がしっかり止まっていないと正確なデータが得られないことがありますので ご協力をお願いします また 詳細な形状 蛇行 狭窄の有無など カテーテルの通り道として大動脈が適切であるかどうかを見極めるため胸 脚の動脈の CT も続けて撮ります
TAVI の手順 1 シースと呼ばれる細い管を脚の血管から挿入します 鉛筆くらいの太さに折りたたまれた生体弁付きの カテーテル と呼ばれる管をシースから挿入します
TAVI の手順 2 カテーテルで生体弁を心臓まで運びます 大動脈弁の位置まで到達したら カテーテルについている風船を膨らませ 生体弁を留置させます 生体弁の圧着具合など 必要に応じてバルーンを広げます
TAVI の手順 3 生体弁を留置した後 カテーテルとシースを抜き取ります 生体弁は留置された直後から 患者さんの新たな弁として機能します 穿刺部を止血して終了です
経心尖部アプローチって? 脚の血管が細すぎてカテーテルを入れられない 脚の血管に狭窄がある 強い蛇行がある など 脚の血管が弁を運ぶのに適さない場合は 胸を小さく開けて 心臓の先端から生体弁を挿入する方法もあります
TAVI で起こりうる合併症 1 入念な術前検査 準備を経て手技を行いますが TAVI は比較的重症な患者さんに行うことが多く 次に挙げるような合併症が起こってしまう場合があります 死亡 脳梗塞 血管合併症 緊急開胸手術 開胸手術ができない高リスク患者さんに対して治療を行うため 手技自体のリスクが高いです 大動脈弁のまわりには 動脈硬化巣がたくさんあります カテーテルの通過に伴って 動脈硬化の固まりが剥がれて血管の一部を詰まらせてしまうことがあります 脚から太い管を挿入するため 血管が傷ついてしまったり 仮性瘤ができてしまい 外科的処置を必要とする場合があります 予期せぬ合併症が生じた場合には やむを得ず人工心肺下に緊急で開胸し救命措置を行うことがあります
TAVI で起こりうる合併症 2 弁輪破裂 心穿孔 心筋梗塞 大動脈弁逆流症 感染 生体弁留置の際 動脈硬化により弾力の失われた弁輪部でバルーンを膨らませるため 裂けてしまうことがあります 心臓内にガイドワイヤーを挿入し手技を行うため 心室穿孔を来すことがあります 大動脈弁輪部のすぐ上から 心臓を栄養する 冠動脈 が出ています 生体弁を留置した際に 冠動脈の入口を塞いでしまい 心筋梗塞を起こしてしまうことがあります 弁輪径や形状は個人差があり 詳細な術前計測 評価を行っています しかし 楕円形の弁輪に生体弁を圧着させることが難しく 周囲から逆流を生じることがあります 生体弁や創部に感染を引き起こすことがあります
TAVI の治療後に気をつけて いただきたいこと その 1 野菜 魚や肉類 乳製品など 栄養を考えたバランスのよい食事を摂りましょう わからないことは 外来や医師にご相談ください
TAVI の治療後に気をつけて いただきたいこと その 2 適度な運動は 心臓の負担を軽減し ライフスタイルを維持するためにも重要です 運動レベルについては 医師とご相談ください
TAVI の治療後に気をつけて いただきたいこと その 3 歯の治療や外科的治療を受ける際は 生体弁が留置されていることを必ず医師につたえてください 旅行等 日常と異なった生活サイクルになる場合は いつも通りの食事 運動 睡眠を心がけてください
TAVI は最近始められたばかりの治療法であり 個々の患者さんの適応についてはハートチームのカンファレンスで決定しています 何かわからないことがありましたら いつでも医師 スタッフにお気軽にご相談ください