総括調査票 調査対象予算額 省庁名国土交通省組織海上保安庁会計一般会計 平成 28 :27,265 百万円 平成 27 :13,656 百万円 平成 26 :13,273 百万円 平成 25 :9,620 百万円 ( 参考 : 平成 29 :11,613 百万円 ) 調査主体本省取りまとめ財務局 1 調査事案の概要 1/5 海上保安庁は 尖閣諸島周辺海域等における領海警備 海難救助 災害対応 海洋調査 海洋情報の収集等 多種多様な業務に迅速かつ的確に対応するため 航空機を整備している 海上保安庁の航空機は 民間の航空機の標準機体をベースに 海上保安庁において想定される業務に対応できる仕様に改修し 為替レート等を考慮して所要の予算を計上している < 固定翼 ( ファルコン 2000LXS)> < 回転翼 ( スーパーピューマ 225)> 要目 要目 座席数 18 席 座席数 21 席 全長 20.23m 全長 19.50m 最大離陸重量 19,414kg 最大離陸重量 11,000kg 速力 502Kt 速力 150Kt 表 1 航空機種別の調達実績 固定翼 ( 単位 : 億円 ) 品目 数量 予算額 予算額 (1 機あたり ) 円 / ドル 23 補正 ボンバル300 1 39.9 39.9 89 円 26 補正 ファルコン2000 2 235.3 117.6 97 円 27 補正 ファルコン2000 1 145.1 145.1 110 円 28 補正 (2 号 ) ファルコン2000 1 155.6 155.6 120 円 支出官レート 回転翼 ( 単位 : 億円 ) 品目 数量 予算額 予算額支出官レート (1 機あたり ) 円 / ドル円 / ユーロ 23 当初 スーパーピューマ225 2 81.8 40.9 120 円 23 補正 (1 号 ) シコルスキー 76D 4 97.7 24.4 89 円 23 補正 (1 号 ) スーパーピューマ225 1 43.7 43.7 89 円 120 円 24 当初 シコルスキー 76D 3 70.8 23.6 81 円 24 予備費 シコルスキー 76D 3 71.7 23.9 81 円 24 補正 シコルスキー 76D 1 24.4 24.4 81 円 27 補正 スーパーピューマ225 1 60.8 60.8 140 円 28 補正 (2 号 ) スーパーピューマ225 3 191.3 63.8 137 円 スーパーピューマ225の23 補正 (1 号 ) の一部の補用品等については ドル建てで調達
2/5 1. 標準機体に加え 特別装備品に係る改修等に要する経費について 合理性 妥当性が確認され 十分に説明責任が果たされているか 1. 標準機体 特別装備品の調達価格の合理性 妥当性 (1) 航空機の機種選定にあたっては 公表データ及び独自調査に基づき比較検討が行われ 海上保安庁の装備 技術開発委員会において審議 決定がなされている (2) 特別装備品についても 上記の委員会において 業務上必要な要件が審議され 同要件を踏まえ 仕様が決定されているところであるが 海上保安業務の秘匿性から 公開されていない また 調達価格の詳細な内訳は メーカー側の世界市場における販売戦略に関わること等から 海上保安庁に対しても提示がなされていない (3) こうした中で 標準機体 特別装備品は 調達価格が上昇している 表 2 契約額の内訳(1 機あたり ) ( 単位 : 億円 ) 固定翼 回転翼 ボンバル300 ファルコン2000 シコルスキー 76D スーパーピューマ225 23 補正 26 補正 27 補正 28 補正 (2 号 ) 23 補正 (1 号 ) 24 当初 24 予備費 24 補正 23 当初 23 補正 (1 号 ) 27 補正 28 補正 (2 号 ) 標準機体 特別装備品 27.9 86.1 103.7 101.9 17.0 16.2 16.7 16.7 28.6 29.6 41.6 38.2 補用品 8.0 19.7 27.2 14.4 3.6 4.1 3.8 4.1 6.5 8.0 9.9 5.1 諸経費等 3.5 11.2 14.0 12.2 3.4 3.1 3.2 3.4 4.3 5.3 8.0 7.1 合計 39.4 117.0 145.0 128.5 24.0 23.4 23.7 24.2 39.4 42.9 59.4 50.3 数量 1 機 2 機 1 機 1 機 4 機 3 機 3 機 1 機 2 機 1 機 1 機 3 機 円 / ドル 89 円 97 円 110 円 120 円 89 円 81 円 81 円 81 円 - 89 円 - - 支出官レート円 / ユーロ - - - - - - - - 120 円 120 円 140 円 137 円 スーパーピューマ225 の23 補正 (1 号 ) の一部の補用品等については ドル建てで調達 1. 標準機体 特別装備品の調達価格の上昇要因が必ずしも明らかではないため その理由について 機体メーカーや輸入代理店等から 性能向上等の詳細な内容を把握する必要がある また 同様の機能を有する装備について より安価で性能面が優れた装備の有無等についても 国内外の情報収集を行うことが必要である 特に 同型機の調達機数が増加する場合に 設計や開発に係る初期費用等の低減効果が生ずると考えられることから 機体メーカーや輸入代理店等に強く働きかけ 調達価格の低減がなされる必要がある
3/5 2. 航空機の使用目的等を踏まえた場合に 機体の仕様が過剰なスペックになっているなど 調達価格が高額となる要因となっていないか 固定翼 ( 単位 : 億円 ) 2. 航空機の使用目的等を踏まえた機体の仕様 表 3 標準仕様機と海上保安庁仕様機の比較 (1 機あたり ) 機種 海保仕様機契約額 (2) 機体の仕様に関しては 既に就役している機体の仕様を参考として 海上保安庁の業務に対応可能となる内容について 委員会において審議がなされている 海上保安庁の業務の特性上 一般的なユーザーに使用されている標準的な機体の仕様では対応できず 特別装備の必要性は認められる一方 全ての機体について 可能な限り あらゆる場面及び業務に対応できるスペックを求める傾向にあると考えられる 差引 (2-1) 26 補正 35.3 86.1 50.8 チャレンジャー 650( 最大 21 人乗り ) 41.9 億円 レガシー 650( 最大 16 人乗り ) 41.0 億円ファルコン 27 補正 41.0 103.7 62.7 ボーイングB737( 最大 148 人乗り ) 102.4 億円 2000 28 補正 エアバスA319( 最大 145 人乗り ) 112.8 億円 45.4 101.9 56.5 (2 号 ) F-35( 戦闘機 ) 177.0 億円 標準仕様機 参考機体の価格は 海上保安庁において公表情報に基づき作成回転翼 ( 単位 : 億円 ) 機種 シコルスキー 76D スーパーピューマ 225 標準仕様機 (1) 標準仕様機 (1) 海保仕様機契約額 (2) 差引 (2-1) 23 補正 (1 号 ) 10.9 17.0 6.1 アグスタ139( 最大 15 人乗り ) 10.5 億円 24 当初 9.9 16.2 6.3 24 予備費 9.9 16.7 6.8 アグスタ139( 最大 15 人乗り ) 9.8 億円 24 補正 9.9 16.7 6.8 23 当初 22.8 28.6 5.8 23 補正 シコルスキー S-92A( 最大 22 人乗り ) 23.3 億円 22.8 29.6 6.8 (1 号 ) 27 補正 30.4 41.6 11.2 シコルスキー S-92A( 最大 22 人乗り ) 36.4 億円 28 補正 (2 号 ) 31.2 38.2 7.0 シコルスキー S-92A( 最大 22 人乗り ) 39.7 億円 標準仕様機 参考機体の価格は 海上保安庁において聞き取り調査に基づき作成 参考となる標準仕様機 参考となる標準仕様機 特に 固定翼については 海上保安庁仕様とすることで 機体本体価格から 2 倍強となっている その改修の主な内容としては 通信 監視用電子機器の取付けや 救難業務に使用する物件投下装置の設置のための機内改修等があるが その仕様変更に伴う改修の内訳が具体的に開示されていない 2. 機体の仕様については 従来の仕様に過度にとらわれることなく 海上保安庁において想定される業務内容に応じ 必要な装備について絞込みを行い コスト低減に努めることが必要である また 特別装備品に係る改修等については 複数案の見積もりを提示させた上で 比較検討を行う必要がある 仮に 機体メーカーが特別装備の内訳を開示しない場合には 国内 海外の同型機等の機体価格などの情報提供を求めた上で 調達価格の合理性 妥当性を担保していく必要がある 更に 工程等に基づいた試算を行うなど 調達価格の合理性 妥当性を確認することが必要であり そのために必要な情報提供を求めるべきである
4/5 3. 予備品 装備品 補用品等について 不要不急の部品を調達していないか 他機と共用することで調達する部品を減らすことはできないか 3. 予備品 装備品 補用品等 海上保安庁においては 機体の稼動状態を保つため 独自に整備及び故障復旧に必要な部品を多種にわたり調達し 部品在庫を確保しているほか 機体購入時は 1~5 年の保証期間を求めることにより初期不具合に備えている また 予備品等の調達数については 機体メーカー推奨の保有部品リスト 他機種を含む過去の不具合発生状況及び同型機の保有数を勘案し決定されている 定期的に交換する部品は 調達に要する期間を考慮して 当該期間に使用する部品を確保しており 部品在庫数を勘案しながら不足数を購入している 定期的に交換する部品以外は 現状 機体メーカーや機体運用の経験からある程度の部品を保有することに止まり 未購入の部品は故障復旧の都度購入することになっており 部品入手までの間 機体の稼動に影響を及ぼすこともある 表 4 スーパーピューマ 225 導入時の補用品の購入例 < 機体購入時の定期交換部品以外の補用品 > ( 単位 : 品目数 ) 区分 メーカー推奨ありなし 平成 20 年就役機 ( 使用数 / 調達数 ) 66/116 23/41 平成 26 27 年就役機 ( 使用数 / 調達数 ) 3/4 27/32 < 不具合発生により急遽部品を調達等した例 > < 定期交換部品以外で故障発生時期が大きく異なる例 > 品名不具合発生日調達日特記事項潤滑油温度調達期間 H27.8.27 H27.12.18 測定部品 4ヶ月高圧ポンプ及び調達期間 H27.11.26 H28.2.29 調整弁一式 3ヶ月 平成 20 年就役機補用品は 初号機であることからメーカー推奨等で調達し 平成 26 27 年就役機補用品調達は 初号機の運用経験も加味して調達したもの 品名 不具合発生日 部品使用期間 潤滑油圧力測定部品 H28.2.25 1 年 6ヶ月 潤滑油圧力測定部品 H27.7.20 7 年 4ヶ月 3. 需要予測の緻密化など民間のノウハウを活用し 国内 海外の同型機種を含めた部品供給の最適化を図ることで 効率的な部品調達ができる可能性がある 例えば 不具合頻度の高い一部の部品の供給について包括的に民間委託するなどの方法を検討するなど 長期的な計画に基づく効率的な部品調達等により 部品数の削減に努めるべきである ただし 機体導入当初から部品供給を民間委託する場合は 機体購入契約上で保証される部品との重複部分については 当然に減額されるべきである また 機体等の不具合が発生し 部品を保有しておらず必要となった場合 機体メーカーに対し当該部品を発注し良品の供給を受ける方式を一部で試行的に実施しているが 短期間での不具合回復のためには この方式を更に拡大するなど 部品入手の迅速化を図り 機体を最大限活用する方策を検討すべきであると考える 更に 機種選定においては 航空機の使用目的の達成のため これまで試行的に導入された短期間での不具合回復の保証付与や保証期間の評価基準化を一般化するよう検討すべきである
5/5 4. 調達内容や調達価格の適正性について どのような体制 プロセスで検討がなされているか 4. 調達内容や調達価格の検討体制 プロセス (1) 機種選定については 委員会において審議された仕様により公募を実施して企画提案書の提出を受け その後委員会により決定された機種に係る相手と随意契約が行われている ただし 業務内容により 候補となる機体が限定される場合には 委員会において選定された後に 公募による業者選定の後 随意契約が行われている (2) 公募による企業提案 業者選定の後 選定された 1 者と随意契約を行う場合 調達価格の価格交渉が 要求原課のみにおいて行われている 図 1 海上保安庁における航空機の調達手続きの流れ ( ファルコン 2000 機種選定時 ) 装備 技術開発委員会 ( 第 1 回 ) 業務ニーズを踏まえ 必要な性能や装備を検討 仕様内容の決定 評価基準の決定 公募の実施 ( 業者による ) 企画提案書提出 装備 技術開発委員会 ( 第 2 回 ) 機種を決定 1 者による見積り合わせ 4. 調達内容や調達価格の適正性については 調達部局以外の契約審査部局による検証プロセスを検討するなど 調達の適正性を担保すべきである 今後 現在調達している機体について 調達価格の合理的な低減が見込めず 十分な説明責任が果たせないと判断される場合 委員会において決定された契約相手を見直し 機種選定からやり直すことも検討すべきである なお 新たな機種を調達する場合は 効率的に機体を調達することを目指し 例えば 可能な限り最終時期まで複数機種から選定できるようにするなど 調達プロセスの見直しも検討すべきである