図 1 マーカー, 電極貼付位置 マーカーは骨盤および下肢の骨指標, 右下肢の大腿, 下腿などに合計 39 個貼付した. 電極は大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋, 半腱様筋, 大腿二頭筋に対して SENIAM に準じた位置に貼付した. およびハムストリングス前活動の内外側比率と膝外反角度および膝外反

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Transcription:

着地動作における膝関節周囲筋前活動と膝関節外反角度およびモーメントの関係 生田亮平 < 要約 > 膝前十字靱帯 (ACL) 損傷において, 女性の着地動作中の膝外反角度およびモーメントの増加は損傷リスクとされ, 接地後早期の膝関節運動の制御には接地前筋活動 ( 前活動 ) が重要とされているが, 膝周囲筋前活動と膝外反角度およびモーメントの関係は明らかではない. 本研究の目的は女性の着地動作における膝周囲筋前活動と膝外反角度およびモーメントの関係を検証することとした. 対象は健常女性 17 名とし, 動作課題には drop vertical jump を用い, 三次元動作解析装置を用いて膝外反角度およびモーメントを算出した. また, 筋電計を用いて膝周囲筋の前活動を算出した. 結果は, 大腿二頭筋に対する半腱様筋の前活動比率と, 接地後 50ms 時および着地動作における最大の膝外反角度およびモーメントとの間に有意な負の相関を示した. 大腿二頭筋に対する半腱様筋の前活動比率は ACL 損傷リスクとされる着地動作中の膝外反角度およびモーメントを減ずるために考慮する必要性が示唆された. Ⅰ. はじめに 膝前十字靱帯 (ACL) 損傷は, 主なスポーツ外傷 の 1 つであり, 長期的なスポーツ競技からの離脱, 変形性膝関節症への移行, 経済的負担などの面から 重篤な外傷であるとされている.ACL 損傷は約 70% が非接触型損傷とされ, 他者との明らかな接触 がない着地動作やカッティング動作で生じる 1). 非接触型 ACL 損傷発生率は男性に比べ女性で 2~8 倍高く 2), 女性における非接触型 ACL 損傷リスク の検討が広く行われてきた.Hewett ら 3) は前向き調査によって女性アスリートの drop vertical jump (DVJ) における最大膝関節外反角度 ( 以下, 膝外 反角度 ) および膝関節外反モーメント ( 以下, 膝外 反モーメント ) が ACL 損傷を予測することを報告 した. また,Ford ら 4) は DVJ において, 女性は男 性に比べて最大膝外反角度および膝外反モーメント が有意に高いことを報告している. 女性の着地動作 における膝外反角度および膝外反モーメントの増加 は ACL 損傷リスクとして認識されており,ACL 損 傷発生率の性差の一因であることが示唆されている. ACL 損傷場面の調査より,ACL 損傷は初期接地 (IC) 後 50ms 以内に生じると報告されており, 着 地動作における接地後早期の膝関節運動は ACL 損 傷において重要であることが示唆されている 5) 6). しかし, 膝関節運動の制御を行う筋収縮は, その筋 活動電位が観察されてから 30~50ms 遅れて発生す ることが示されているため 7) 8), 着地動作における 接地後早期の膝関節運動の制御には接地前からの筋 活動 ( 前活動 ) が必要である. 膝関節周囲筋 ( 以下, 膝周囲筋 ) の前活動と膝外 反角度および膝外反モーメントとの関係を検討した 先行研究として,Palmieri-Smith ら 9) は女性の前方 ホップ着地における最大膝外反角度と外側広筋, 大 腿二頭筋前活動との間に有意な正の相関があり, 内 側広筋前活動との間に有意な負の相関があると報告 した. 一方で,Brown 10) らは女性の片脚着地におけ る膝周囲筋前活動と最大膝外反角度および膝外反モ ーメントとの間に有意な相関はないと報告しており, 女性の着地動作における膝周囲筋前活動と膝外反角 度および膝外反モーメントとの関係に一致した見解 は得られていない. 膝周囲筋筋活動に関する先行研究では, 女性は荷 重位での膝屈曲動作や前方ホップ着地において内側 に比べて外側の筋活動が高いことが示唆されている 11) 12). しかし, 着地動作における膝周囲筋前活動の 内外側比率と着地後の膝外反角度および膝外反モー メントとの関係を検討した報告は見当たらなく, 膝 周囲筋前活動の内外側比率に着目することは重要で あると考えられる. 本研究の目的は女性の着地動作における膝周囲筋 前活動と接地後の膝外反角度および膝外反モーメン トとの関係を検証することとした. 仮説は, 外側の 膝周囲筋前活動と膝外反角度および膝外反モーメン トとの間に有意な正の相関を認める, 内側の膝周囲 筋前活動と膝外反角度および膝外反モーメントとの 間に有意な負の相関を認める, さらに, 大腿四頭筋

図 1 マーカー, 電極貼付位置 マーカーは骨盤および下肢の骨指標, 右下肢の大腿, 下腿などに合計 39 個貼付した. 電極は大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋, 半腱様筋, 大腿二頭筋に対して SENIAM に準じた位置に貼付した. およびハムストリングス前活動の内外側比率と膝外反角度および膝外反モーメントとの間により強い負の相関を認めることとした. Ⅱ. 対象と方法 1. 対象健常女性 17 名 ( 年齢 21.6±1.2 歳, 身長 162.0 ±5.3cm, 体重 53.1±5.5kg) を対象とした. 除外基準は下肢の骨折および ACL 損傷の既往を有する者, 過去 6 ヶ月間に下肢の整形外科的な既往を有する者とした. なお, 対象には事前に研究の背景や目的, 考えられる危険性などを説明し, 十分に理解を得てから, 参加に同意が得られた者を対象とした. また, 本研究は本学保健科学研究院の倫理委員会の承認を得て行った. 2. 方法 計測は三次元動作解析装置 EvaRT4.4(Motion Analysis 社製 ) を用いて, 赤外線カメラ 6 台 ( Hawk, Motion Analysis 社製,200Hz) と床反力計 2 枚 (Type9286,kistler 社製,1000Hz), 表面筋電計 ( マルチテレメーター, 日本光電社製,1000Hz) を同期させ記録した. 赤外線反射マーカーは骨盤お よび下肢の骨指標, 右下肢の大腿, 下腿などに合計 39 個貼付した ( 図 1). 筋電計の導出筋は大腿直筋 (RF), 内側広筋 (VM), 外側広筋 (VL), 半腱様 筋 (ST), 大腿二頭筋 (BF) とし, SENIAM に 準じた位置に電極を貼付した 13) ( 図 1). はじめに各被験者の最大随意等尺性収縮 (MVIC) 時の筋活動を SENIAM に準じて記録し 13), その後 に動作課題を行った. 動作課題は 30cm 台から着地 後直ちに最大垂直跳びを行う DVJ とした ( 図 2). DVJ での最初の台からの着地の IC から膝最大屈曲までを解析相とし,SIMM6.0.2(MusculoGraphics 社製 ) を用いて各試行における膝外反角度および膝 外反モーメントを算出した. なお,IC は床反力計の 垂直成分が 10N を超えた時点とした. 静的立位姿 勢時の膝関節角度を中間位とし, 膝外反モーメント は各被験者の身長および体重で標準化した. 膝外反 角度および膝外反モーメントは IC 後 50ms 時, 解 析相における最大値をそれぞれ統計学的解析に用い た. 筋電位データは band-pass filter(20-500hz) で処理した後, 全波整流処理を行い,low-pass filter (10Hz) を用いて平滑化した. 処理された筋電位デ ータから,IC 前 50ms 間の積分値を算出し, 各筋の MVIC 時における筋電位により標準化した.MVIC 時の筋電位は 50ms の moving window を用いて 図 2 Drop vertical jump(dvj) 30cm 台から着地後直ちに最大垂直跳びを行う.

MVIC 試技中の 50ms 間積分値の最大値を算出した. さらに, 標準化された各筋の積分値から, 大腿四頭 筋およびハムストリングスの外側に対する内側の前 活動比率 (VM/VL,ST/BF) を算出した. 3. 統計学的解析 統計学的解析は,Pearson の相関係数を用いて, 各筋の前活動積分値および前活動比率 (VM/VL, ST/BF) と,IC 後 50ms 時および解析相における 最大の膝外反角度, 膝外反モーメントとの関係を検 討した.PASW18.0(IBM 社製 ) を用い, 有意水 準は 5% 未満とした. なお, 各被験者データは成功 3 試行の平均値を用いた. Ⅲ. 結果表 1,2 に全被験者の各データの平均値を, 図 3 に全被験者の膝外反角度および膝外反モーメント, 膝周囲筋前活動の平均時系列波形を示す. BF 前活動と IC 後 50ms 時の膝外反角度との間 に有意な正の相関を認めた (R = 0.59,P <0.05). 前活動比率 ST/BF と IC 後 50ms 時の膝外反角度 (R = -0.50),IC 後 50ms 時の膝外反モーメント (R = -0.55) および最大膝外反角度 (R = -0.49), 最大膝外反モーメント (R = -0.54) との間に有意 な負の相関を認めた ( すべて P <0.05)( 図 4). そ の他に統計学的に有意な相関は認めなかった. Ⅳ. 考察 本研究結果は,BF 前活動と IC 後 50ms 時の膝外 反角度との間に有意な正の相関を示した. また, 前 活動比率 ST/BF と IC 後 50ms 時の膝外反角度およ び膝外反モーメント, また, 最大膝外反角度および 膝外反モーメントとの間に有意な負の相関を示し, 仮説は一部支持された. 女性の着地動作における最大膝外反角度および最 大膝外反モーメントは ACL 損傷を予測することが 報告されており 4), 本研究結果から前活動比率 ST/BF は ACL 損傷に関連する可能性が示唆された. また,ACL 損傷は IC 後 50ms 以内に生じると報告 されている 5) 6). 本研究結果から BF 前活動および前 活動比率 ST/BF は IC 後 50ms 時の膝外反角度と有 意な相関を認め,BF 前活動を減じることは ACL 損 傷リスクとされる接地後早期の膝外反角度を減ずる ために重要である可能性が示唆された. 本研究では, 膝周囲筋の各筋の前活動と膝外反角 表 1 膝外反角度およびモーメントの平均値 度および膝外反モーメントとの関係において, どの 筋においても最大外反角度および膝外反モーメント との間に有意な相関を認めなかった. これは女性の 片脚着地における膝周囲筋前活動と最大膝外反角度 および膝外反モーメントとの間に有意な相関がない と報告した先行研究 10) を支持するものである. 一方, 前活動比率 ST/BF と IC 後 50ms 時および解析相に おける最大の膝外反角度, 膝外反モーメントとの間 に有意な負の相関を示した. このことから, 膝外反 角度および膝外反モーメントとの関係において, 膝 周囲筋前活動の内外側比率に着目することは重要で あると考えられる. 平均値 ±SD 膝外反角度 ( ) IC 後 50ms 時 2.8 ± 4.9 最大値 0.2 ± 0.1 膝外反モーメント (Nm/(m*kg)) IC 後 50ms 時 11.4 ± 5.5 最大値 0. 4 ± 0.1 表 2 膝周囲筋前活動の各筋および内外側比率の平均値 平均値 ±SD 膝周囲筋前活動 (%MVIC) RF 31.9 ± 14.9 VM 45.1 ± 22.3 VL 40.1 ± 16.6 ST 24.9 ± 11.0 BF 14.9 ± 6.4 膝周囲筋前活動内外側比率 VM / VL 1.1 ± 0.3 ST / BF 1.8 ± 0.7 また, 前活動比率 VM/VL と膝外反角度および膝 外反モーメントとの間に有意な相関を認めなかった. 過去に, 大腿四頭筋およびハムストリングスは膝内 反 外反モーメントアームを有しているが, ハムス トリングスは大腿四頭筋と比較して, 膝内反 外反 モーメントアームが大きいと報告されている 14) 15). これらの報告から, ハムストリングスの方が膝内 反 外反運動により影響を与えた可能性が考えられ る. そのため, 前活動比率 ST/BF と接地後の膝外 反角度および膝外反モーメントとの間に有意な負の

相関を示し, 前活動比率 VM/VL と膝外反角度およ び膝外反モーメントとの間には有意な相関を認めな かったことが考えられる. Zebis ら 16) は前向き調査によって, 女性の半腱様 筋前活動の低下は ACL 損傷を予測すると報告した. 本研究は大腿二頭筋に対する半腱様筋の前活動比率 の低下は接地後の膝外反角度および膝外反モーメン トを増加させる関係を示し, 半腱様筋前活動の低下 が ACL 損傷リスクであるとする Zebis 16) らの報告 を支持する結果であった. また, 本研究では大腿二 頭筋前活動と接地後早期の膝外反角度との間に正の 相関を認め, 大腿二頭筋前活動の増加も ACL 損傷 リスクに関連する要素の 1 つである可能性が考えら れる. 神経筋トレーニングにより半腱様筋の接地前およ び接地後の筋活動は増加することが報告されており 17), ハムストリングス前活動の内外側比率には介入 図 3 膝外反角度, 膝外反モーメント, 膝周囲筋前活動の平均時系列波形 上図 : 膝外反角度, 膝外反モーメントの平均時系列波形を示す. 下図 : 膝周囲筋前活動の平均時系列波形を示す. 上下の図はともに IC 前 50ms から IC 後 200ms までの変化を示す. 図 4 前活動比率 ST/BF と最大膝外反角度および膝外反モーメントの関係 左図 : 横軸は前活動比率 ST/BF, 縦軸は最大膝外反角度を示し, の余地があることが示唆されている. 以上のことから,ACL 損傷予防においてハムス トリングス前活動の内外側比率は考慮する必要性が 示唆された. 本研究の限界として,1 つ目に筋活動に関する検 討であるため, 実際の動作中にどの程度の筋張力が 発揮されていたかは不明であることが挙げられる. 2 つ目に, 本研究では膝外反角度および膝外反モー メントを結果としているが, 実際に ACL の歪みや 張力にどの程度影響しているかは不明であることが 挙げられる.3 つ目に, 他に膝外反角度および膝外 反モーメントに影響を与えると考えられている因子 ( 股関節周囲筋筋活動, 足部アライメント, 解剖学 的因子など ) を検討していないため, それらの因子 と比較してどちらの影響が大きいかは不明であるこ とが挙げられる. 本研究は, 女性を対象に着地動作における前活動 比率 ST/BF と IC 後 50ms 時および解析相におけ る最大の膝外反角度および膝外反モーメントとの間 に有意な負の相関を示した. 本研究で用いたハムス トリングス前活動の内外側比率に着目することは, 膝外反角度および膝外反モーメントを減じる可能性 が示唆され, 非接触型 ACL 損傷予防の貢献に重要 であると考えられた. 有意な負の相関を認める. 右図 : 横軸は前活動比率 ST/BF, 縦軸は最大膝外反モーメント を示し, 有意な負の相関を認める.

謝辞 本稿を終えるにあたり, ご指導いただきました諸先 生方, 本学保健科学院大学院生の石田知也氏, 谷口 翔平氏, 上野亮氏, ならびに被験者を快諾していた だきました本学学生の皆様に深く感謝いたします, 引用文献 1) Boden BP, et al. : Mechanisms of anterior cruciate ligament injury. Orthopedics. 23 : 573-578, 2000. 2) Arendt EA, et al. : Anterior cruciate ligament injury patterns among collegiate men and women. J. Athl. Train. 34(2) : 86-92, 1999. 3) Hewett TE, et al. : Biomechanical measures of neuromuscular control and valgus loading of the knee predict anterior cruciate ligament injury risk in female athletes: a prospective study. Am. J. Sports. Med. 33 : 492 501, 2005. 4) Ford KR, et al. : Valgus knee motion during landing in high school female and male basketball players. Med. Sci. Sports. Exer. 35 : 1745-1750, 2003. 5) Krosshaug T, et al. : Mechanisms of anterior cruciate ligament injury in basketball: video analysis of 39 cases. Am. J. Sports. Med. 35:359-367, 2007. 6) Koga H, et al. : Mechanisms for noncontact anterior cruciate ligament injuries: knee joint kinematics in 10 injury situations from female team handball and basketball. Am. J. Sports. Med. 38(11) : 2218-2225, 2010. 7) Zhou S, et al. : Effects of fatigue and sprint training on electromechanical delay of knee extensor muscles. Eur. J. Appl. Physiol. Occup. Physiol. 72(5-6) : 410-416, 1996. 8) Minshull C, et al. : Effects of acute fatigue on the volitional and magnetically-evoked electromechanical delay of the knee flexors in males and females. Eur. J. Appl. Physiol. 100(4) : 469-478, 2007. 9) Palmieri-Smith RM, et al. : Association between preparatory muscle activation and peak valgus knee angle. J. Electromyogr. Kinesiol. 18(6) : 973-979, 2008. 10) Brown TN, et al. : Associations between lower limb muscle activation strategies and resultant multi-planar knee kinetics during single leg landings. J. Sci. Med. Sport. (13) : 00136-00139, 2013. 11) Myer GD, et al. : The effects of gender on quadriceps muscle activation strategies during a maneuver that mimics a high ACL injury risk position. J. Electromyogr. Kinesiol. 15(2) : 181-189, 2005. 12) Palmieri-Smith RM, et al. : Association of quadriceps and hamstrings cocontraction patterns with knee joint loading. J. Athl. Train. 44(3) : 256-263, 2009. 13) SENIAM : http://www.seniam.org/ 14) Lloyd DG, et al. : Muscle and ligament contributions to the support of varus-valgus knee moments determined by biomechanical modeling and experimental data. Proc. Am. Soc. Biomech. (18) : 119-120, 1994. 15) Buchanan TS, et al. : Muscle activation at the human knee during isometric flexion-extension and varus-valgus loads. J Orthop. Res. 15(1) : 11-17, 1997. 16) Zebis MK, et al. : Identification of athletes at future risk of anterior cruciate ligament ruptures by neuromuscular screening. Am. J. Sports. Med. 37(10) : 1967-1973,2009. 17) Zebis MK, et al. : The effects of neuromuscular training on knee joint motor control during sidecutting in female elite soccer and handball players. Clin. J. Sport. 18(4) : 329-337, 2008. ( 指導教員 : 山中正紀 )