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TPP11 協定 (CPTPP) の概要目次 協定の発効要件 税率差 : 国別譲許における税率適用国決定ルール 国別セーフガード その他 国別関税割当 牛肉の適用税率 ( 日豪 EPA 税率との比較 ) 輸入後のTPP 特恵税率の要求 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 Comp

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The Sanwa Bank Limited

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原産地規則説明会資料平成 30 年 3 月 経済連携協定 (EPA) に係る 原産地規則の概要 - 輸入食品を中心に - 東京税関業務部総括原産地調査官

目次 日ベトナム経済連携協定に係る留意点 協定の構造 ベトナム特恵原産地規則 とは? ベトナム特恵税率適用のための条件 原産地証明書関係 原産地基準 完全生産品 品目別規則 累積 僅少の非原産材料 同一の又は交換可能な材料 インボイスが第三国で発行される場合 原産資格を与えることとならない作業 直接

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EPA に基づく原産地証明書とは 日本はこれまでに複数の国や地域と経済連携協定 (EPA:Economic Partnership Agreement 以下 EPA と 記載します ) を締結しています EPA を活用すると 日本から EPA 締約相手国に輸出をする際 通常の関税率よりも低い関税率

1 関税法上の用語の定義 輸入 外国貨物を本邦に引き取ること輸出 内国貨物を外国に向けて送り出すこと 外国貨物 1 輸出の許可を受けた貨物 2 外国から本邦に到着した貨物 ( 外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む ) で輸入が許可される前のもの内国貨物 1 本邦にある貨物で外国貨物でないもの

メキシコの投資環境 輸出規制メキシコにおいては 石油化学製品派生品を輸出する際に輸出事前許可が必要である 経済省貿易細則 判断基準の細則 同添付 において 経済省管轄の輸出規制品目について定められている 図表 16-2 輸出時にメキシコ経済省からの事前許可が必要な品目 分類

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2. 両協定の主な内容両協定締結後は 貨物やサービス貿易における更なる開放 優遇措置のほか 投資 政府調達 知的財産権 人の移動 ビジネス環境整備など 幅広い範囲での提携により 締約国間の貿易 投資の往来が従来より円滑に進むことが見込まれる (1) AHKFTA 貨物貿易香港 ASEAN 間の貨物貿

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( 別紙 1) 1. 取引形態図 繊維製品 インボイス輸入者 買手 B 社 ( 本邦 ) 貨物代金支払 輸出者 売手 S 社 (X 国 ) 運賃 HDS チャージ支払 船社 C 社 ( 本邦 ) 2. 取引概要 (1) 買手 ( 輸入者 )B 社 ( 以下 買手 という ) は 本邦所在の船社 C

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本マニュアルについて EPA( 経済連携協定 ) は 2018 年 6 月現在 15 個の協定が発効しており 今後も増える見込みです これらのEPA 原産地規則はそれぞれ 協定本文 附属書 運用上の手続規則等に加え 関連する国内法 政令及び基本通達等から成り立っており 業務に当たっては それぞれの該

FTA・EPAアドバイザリー

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イ果実果実 ( 濃縮果汁を除く 以下この項において同じ ) の名称を表示する なお 三種類以上の果実を使用した場合は 使用量が上位三位以下の果実の名称を その他果実 と表示することができる ロ濃縮果汁濃縮果汁を希釈したものは 濃縮還元 果汁 と 濃縮果汁を希釈していないものは 濃縮 果汁 と表示する

チャイナアラート(中国速報)- 第6回, 2012年4月-増値税ゼロ税率課税役務の税金免除、控除及び還付の管理弁法の公布について

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TBT( 貿易の技術的障害 ) 貿易救済 ( セーフガード措置等 ) 政府調達 も高いレベルの措置を導入 維持できるとされている ) 個別品目の輸入解禁や輸入条件の変更について, 従来よりTPP 交渉参加国より要請されてきた案件が, 交渉参加のための条件とされ, あるいはTPP 協定に付随する約束を

ドーハ ラウンド交渉の一分野である貿易円滑化については 平成 26 年 11 月のWTO 一般理事会において 貿易円滑化協定に関する改正議定書 が採択され 今後 3 分の2 以上の加盟国が受諾した時点で本協定は発効することになりました 各 WTO 加盟国がこの協定を実施することにより 貿易規則の透明

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1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

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一九二〇 経過的セーフガード措置 とは 第六 三条(経過的セーフガード措置の実施)2に定める措置をいう 第六 二条世界向けのセーフガード1この協定のいかなる規定も 千九百九十四年のガット第十九条の規定及びセーフガード協定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない 23に規定する場合を除く

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原産資格を立証するために整えるべき保存書類の例示と考え方

「NACCS 貿易管理サブシステム」 平成29年度機能追加 変更内容説明(申請業務編)


はじめに 輸入申告に必要な主な事項 1 誰が 輸入者 2 誰から 輸出者 3 何を 税番 4 どこから 原産国 5 いくつ 数量 6 いくらで 価格 品目分類 原産地規則 関税評価 輸入貨物には関税が課される 関税法第 3 条 = 関税額課税価格関税率 関税評価 品目分類 原産地規則 根拠規定 関税

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1. 関税法違反等の状況覚醒剤の国内押収量全体に占める密輸押収量の割合 ( 平成 20~24 年累計 ) 関税法違反事件輸入事後調査実績 1,900kg 密輸押収量分 96% ( 注 )1. 密輸押収量には 税関が摘発した密輸事件に係る押収量の他 警察等他機関が摘発した事件で税関が当該事件に関与した

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利用状況から見えてくるEPAにおける今後の課題

文書管理番号

Q 6 本会場施設や大会期間中の練習会場施設で応募することはできますか? できません 本会場及び大会期間中練習会場 ( 公式練習会場 ) は本大会の 1 週間 ~ 数ヶ月 前は会場準備に向けて設営が行われ 他目的での利用が困難となる状況が想定されます Q 7 練習施設の IF 基準確認を行ってもらう

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インド SVB の概要と関連者からの輸入における留意点 (2019 年 2 月 ) 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) チェンナイ事務所ビジネス展開支援部 ビジネス展開支援課

目次 Ⅰ 消費税軽減税率制度の概要 4 Ⅱ 軽減税率の対象品目 5 1 飲食料品の範囲等 5 ⑴ 飲食料品 5 ⑵ 飲食料品から除かれるもの ( 軽減税率の対象とならないもの ) 6 ⑶ 飲食料品を販売する際に使用される包装材料等 7 ⑷ 飲食料品の輸入取引 7 2 一体資産 8 ⑴ 一体資産 8

九五〇象となる産品に関係する場合に限る 二千九年七月十日の欧州委員会規則(EC)第六〇六 二〇〇九号(ぶどう産品の分類 醸造法及び適用される制限に関する閣僚理事会規則(EC)第四七九 二〇〇八号の実施のための細則を定めるもの)(二千九年七月二十四日の欧州連合の官報(OJL一九三)一ページ) ただし

中華人民共和国税関輸出入貨物集中申告管理規定 税関総署第 169 号令 第一条 輸出入貨物の受取人あるいは荷送人の申告手続の便宜性を図り 輸出 入貨物の通関効率の向上 輸出入貨物の申告管理規範化のため 中華人民共和国 税関法 ( 略称税関法 ) の関連規定により 本規定を制定する 第二条 本規定の集

1. 累積規定の覊束性一般的に FTA 原産地規則における累積規定は 締約国において累積規定の適用を可能にする措置を採ることについて締約国を拘束し 要すれば 当該規定の受け皿となる国内法令を整備することとなるが FTA 利用者が累積規定を実際に使用するか否かについては任意規定であって 輸出国 生産国

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インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

日 EU EPA の主なメリット :EU 市場の開拓 平成 29 年 8 月外務省経済局 EU の関税の撤廃や規制の撤廃 緩和により, 様々な国産品の輸出拡大,EU の市場開拓が期待されます 工業製品 品目数 輸出額 (EU 向け約 5.8 兆円 ) で,100% の関税撤廃を達成し,EUへの輸出の

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政策目標 5-2: 多角的自由貿易体制の維持 強化及び経済連携の推進並びに税関分野における貿易円滑化の推進 1. 政策目標の内容自由貿易の推進は我が国の対外経済政策の柱であり 力強い経済成長を実現するためには 自由貿易体制を強化し 諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があるというのが 政府全体と

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購入する商品が日本国内への輸入が禁止又は制限されている物品でないか確認すること 購入する商品がこれらに該当する場合 消費者自身が違反に問われたり 必要な手続きを取っていなかったために税関で輸入が許可されない場合もあります 商品違い ( 色違い サイズ違い等 ) など購入後にトラブルに遭遇することもあ

上ある場合は 現行ルールと同様 3カ国目以降を その他 と表示することができる 一方 冠表示には いちごジャム の いちご のように 商品を特徴付ける原料が商品名に含まれるものの他に ブルーベリーガム の ブルーベリー のように 風味を表しているもの さらには たいやき の 鯛 のように 商品名自体

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輸出許可一般的な輸出申告による輸出通関 搬出許可概 要 輸出通関における保税搬入原則の見直しが施行されました - お知らせ - 輸出通関における保税搬入原則の見直しについては 当該見直しを盛り込んだ関税改正法が平成 23 年 3 月 31 日に成立し 同年 10 月 1 日より施行されました これに

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EPA 原産地規則の初歩 経済連携協定 (EPA) を活用するために 財務省 税関

目次 1. はじめに 2. 原産地基準 3. 原産地証明制度 4. 税関での手続き 本パンフレットは 税関での適正な手続きを行っていただくために 原産地規則についての基礎的な理解を深めていただくことを目的として作成したものです 理解しやすさの観点から 法令の用語と異なる用語を使用した部分 全てのEPAにあてはまらない部分 詳細な説明を省き あえて簡略化した部分等がありますので 実際の手続きを進める際には ご注意ください ご不明な点については 最後に記載の問い合わせ先まで 照会するようお願いします なお 意見にわたる部分は 一般的な考え方と思われるものを記載しており 財務省 税関としての公式の意見と異なる場合もあります

1. はじめに ( なぜ 原産地規則が必要か ) 我が国は 現在 14 の経済連携協定 (Economic Partnership Agreement;EPA) を結んでおり EPA の相手国からの輸入について それぞれの EPA で決められた通常より低い関税率 (EPA 税率 ) を適用することになっています しかしながら EPA を結んだ相手国から輸入されるすべての産品に EPA 税率が使えるわけではありません 相手国の原産品のみに EPA 税率を適用することになっています 相手国の原産品とは何か EPA の相手国であるスイスから輸入されるビン詰めされたワインの例で考えましょう 例えば 下記のように スイスで収穫されたぶどうを スイスで醸造して スイスでビン詰めしたワインは ほとんどの人はスイスを原産地とする原産品と感じると思います スイス 一方 次のように ビン詰めだけをスイスで行ったものについては 多くの人はスイスを原産地とする原産品とは感じないと思います フランス スイス では 下記の場合はどうでしょう フランススイス ある人は 醸造を経ることでアルコール飲料のワインとなるのだから スイスを原産地とする原産品と思うかもしれないし またある人は ワインは原料のぶどうの品 - 1 -

質で味が決まるので スイスを原産地とするのは適当でないと思うかもしれません これらの例のようにスイスから輸入されるビン詰めワインといってもいろいろなものがある可能性があり EPA 税率を適用する原産品であるビン詰めワインとは 上記のどれを言うのか 相手国との間ではっきりさせておく必要があることになります どのような材料を用いどのような製造工程を経た産品であれば 相手国の原産品というのかという基準のことを 原産地基準 と呼びます また 相手国から輸入される産品 ( 上記の例では スイスから輸入されるビン詰めワイン ) のうち原産地基準を満たす相手国の原産品のみに EPA 税率が適用されるので 輸入国税関において その産品が相手国の原産品であることを確認することが必要になります そうしないと 全く関係のない第三国の産品が 相手国をただ経由して輸入された場合についても EPA 税率が適用されるおそれもあります 原産品であることを税関で確認できるよう証明又は申告する制度や輸入国税関が事後的に確認する手続等を 原産地手続 と呼びます さらに EPA においては 相手国からまでの輸送についても 直送等の一定の場合に限ることとしており この基準を 積送基準 と呼んでいます 原産地基準 と 積送基準 に 原産地手続 を合わせて このパンフレットでは 原産地規則と呼んでいます 1どういう産品が原産品であるのかの基準 ( ぶどうの収穫から醸造 ビン詰めを行った場合に原産品とする等 ) 原産地基準 ぶどうを収穫醸造ビン詰め 2 までの運送について満たさなければならない基準 積送基準 3 税関に対して 原産地基準及び積送基準の両方を満たしていることを証明 申告すること 原産地手続 - 2 -

2. 原産地基準 原産地基準は原産地規則の核心部分です このため 原産地基準のことを原産地規則と呼んでいる場合もあります どのような原料を用いて どのような製造工程を経ればその国の原産品となるかについては 各国でそれぞれの考え方があり 置かれている状況も異なることから 交渉の中で決められます このため 同じ品目であっても EPA 毎に異なる原産地基準となっている場合もあります ここでは 我が国の EPA における原産地基準の基礎的な考え方を説明します さて 生産された産品といっても色々な種類があります 野菜 果物 家畜のように EPA 相手国で育ち 得られるような物もあれば 第三国で生産された材料を使用し EPA 相手国で製造工程を経て完成品となる物もあります この中で どのようなものが相手国の原産品となるのでしょうか (1) 完全生産品野菜 果物 家畜のように EPA 相手国で生産がすべて完結するような産品の場合には その国の原産品であることには疑問がないと考えられます これを 完全生産品 と呼びます タイとの EPA での完全生産品の例 ( 一部抜粋 ) 1 生きている動物であって タイにおいて生まれ かつ 成育されたもの ( 例 : タイで生まれ 育った牛 ) 2 タイで生きている動物から得られる産品 ( 例 : タイで得られた牛乳 ) 3 タイで収穫等された植物 ( 例 : タイで収穫された米 ) 4 タイで採掘された地下資源 ( 例 : タイで採掘された亜鉛鉱 ) 5 完全生産品のみから生産された産品 具体的な例をみてみましょう タイで生産される鶏肉のから揚げを考えます 簡単にするために材料は 鶏肉と小麦粉だけとします タイ 収穫された小麦 卵から飼育された鶏 小麦粉 冷凍鶏肉 から揚げ ( 鶏肉調製品 ) この例の場合には 小麦はタイで収穫されたものですから 上記 3 に該当し 完全生産品となり その小麦から生産された小麦粉も上記 5 により完全生産品となります また 鶏はタイで卵から飼育されたものですから 上記 1 に該当し 完全生産品となり その鶏から生産された冷凍鶏肉も上記 5 により完全生産品となります したがって 最終的な製品であるから揚げは その材料 ( 小麦粉 冷凍鶏肉 ) が全て完全生産品ですので 上記 5 により完全生産品となり EPA の規定によるタイの原産品となります - 3 -

(2) 実質的変更基準を満たす産品一方 第三国で生産された産品など EPA 相手国の原産品でない産品 ( 非原産品 と呼びます ) を材料として生産を行う場合もあります EPA においては 製品が元の材料から大きく変化しているなら EPA 相手国を原産地とする新しい製品が生まれたと考えています この大きな変化を 実質的変更 と 実質的変更があったと判断する具体的な基準を 実質的変更基準 と呼んでいます 実質的変更基準は 品目毎に異なるため 品目別規則 としてまとめられ EPA の附属書等になっています 我が国の多くの EPA において 実質的変更基準は 品目毎に以下のいずれかの考え方 あるいは その組み合わせを採用しています 1 非原産品である材料の関税分類番号と その材料から EPA 相手国で生産された製品の関税分類番号が一定以上異なる場合に 実質的変更が行われたとする考え方を 関税分類変更基準 と呼んでいます これは 関税分類番号が国際的な体系に基づいて決められており 品物として異なるほど 関税分類番号も大きく異なってくることを利用したものです 我が国の EPA において一番多く採用されています 2 EPA 相手国での生産により 金銭的な価値が付加されます この付加価値が基準値以上の場合に実質的変更が行われたとする考え方を 付加価値基準 と呼びます 我が国の EPA においては 主に機械などで関税分類変更基準と併用して採用されています 3 非原産品である材料に対して EPA 相手国で 特定の加工工程が施されれば実質的変更が行われたとする考え方を加工工程基準と呼びます 我が国の EP A においては 主に化学品などに関税分類変更基準 付加価値基準と併用して採用されています では 例として 再び タイで生産される鶏肉のから揚げを考えます 国際的な体系による関税分類番号は から揚げのような鶏肉調製品が 1602.32 鶏肉 ( 分割されていない冷凍のもの ) は 0207.12 小麦粉は 1101.00 になります オーストラリア タイ 収穫された小麦卵から飼育された鶏 小麦粉 (11 類 ) 冷凍鶏肉 (02 類 ) から揚げ ( 鶏肉調製品 ) (16 類 ) この例のように タイを原産地としない産品 ( 非原産品 ) を材料として使用する場合には 実質的変更がタイで行われる必要があります タイとの EPA の規定を見ると 関税分類番号が 1602.32 の品物についての実質的変更基準は 他の類の材料からの変更 ( 第 1 類又は第 2 類の材料からの変更を除く ) となっています 関税分類番号の最初の 2 桁のことを 類 と呼びます この場合 製品であるから揚げは第 16 類となります 材料である小麦粉は第 11 類 冷凍鶏肉は第 2 類となります 小麦粉からから揚げの生産は第 11 類から第 16 類への変更となり 基準を満たしているのですが 冷凍鶏肉からから揚げの生産は第 2 類から第 16 類へ - 4 -

の変更となり 基準を満たしていないことが分かります したがって 製品であるから揚げは EPA の規定によるタイの原産品ではないことになります また 以下の例のように タイを原産地としない産品 ( 非原産品 ) を材料の一部として使用する場合を考えます オーストラリア タイ 収穫された小麦卵から飼育された鶏 小麦粉 (11 類 ) 冷凍鶏肉 (02 類 ) から揚げ ( 鶏肉調製品 ) (16 類 ) このような場合には 非原産品の材料についてのみ 実質変更基準を満たせばよく 原産品の材料は実質的変更基準を満たす必要はありません この例では 非原産品の材料は 小麦粉のみですので 小麦粉 ( 第 11 類 ) からから揚げ ( 第 16 類 ) への変更が EPA のから揚げについての実質的変更基準である 他の類の材料からの変更 ( 第 1 類又は第 2 類の材料からの変更を除く ) を満たしていればよいのです したがって この例では 製品であるから揚げは EPA の規定によるタイを原産地とする原産品となります (3) 原産材料のみから生産された産品原産品である材料のみから生産された産品についても 原産品とされています - 5 -

(4) 原産品の範囲を広げる規定 ( 累積 僅少の非原産材料 ) 基本的に (1)~(3) のいずれかに該当する産品を原産品としているのですが 原産品の範囲を広げるための 二つの規定があります 累積では 例として 再度 タイで生産される鶏肉のから揚げを考えます オーストラリア タイ 収穫された小麦卵から飼育された鶏 小麦粉 (11 類 ) 冷凍鶏肉 (02 類 ) から揚げ ( 鶏肉調製品 ) (16 類 ) で生産された冷凍鶏肉は EPA の規定によるタイの原産品ではないので 非原産品の材料となり から揚げ (1602.32) についての EPA の実質的変更基準である 他の類の材料からの変更 ( 第 1 類又は第 2 類の材料からの変更を除く ) を満たさないことが分かります このままでは 製品であるから揚げは非原産品として EPA 税率の対象にならないことになるのですが EPA には の原産品の材料は 相手国の原産品の材料として扱うという規定があります この規定のことを 累積 と呼びます この例では 累積の規定の適用によって の原産品である材料の冷凍鶏肉は タイの原産品として扱うことになり 製品であるから揚げは原産品となります 累積の規定を利用することで 結果として原産品の範囲が広がることになります ( 参考 ) 世界の FTA( 自由貿易協定 :EPA の関税撤廃 引下げ部分のみの協定 ) の中には さらに累積の範囲を拡大させたものもあります (A B C 三カ国が A-B B-C C-A の FTA を締結している場合に 三カ国での生産をカバーするような規定を導入する等 ) 僅少の非原産材料 ( デミニミス デミニマス ) 第三国で生産された産品といった非原産品が関税分類変更基準や加工工程基準を満たさない場合でも その使用量が僅かである場合には 生産された産品を原産品として認める規定のことを 僅少の非原産材料 と呼んでいます この規定の有無やどの程度まで認めるかは EPA 毎 品目毎に異なっています - 6 -

3. 原産地証明制度 輸入される貨物が原産地基準を満たす原産品であることを税関に証明していただく方法として 我が国の EPA では 第三者証明制度 認定輸出者による自己証明制度 や 自己申告制度 が採用されています また 輸入国税関として 相手国発給当局に検証 ( 原産品であるか否かの確認 ) を依頼できる あるいは 相手国を訪問し その検証に同行することができるという規定がいずれの EPA にも存在しています (1) 第三者証明制度輸出者が輸出国発給当局 ( あるいはその指定機関 ) に申請して 原産地証明書を取得して それを輸入者に送付 そして 輸入者が輸入国税関にその原産地証明書を提出することで 原産品であることを証明する制度です 我が国の全ての EPA で採用されています なお 輸出者と生産者が異なる場合などは 生産者から原産地基準を満たすかの情報を得るなどして申請することになります EPA 相手国 ( 輸出国 ) ( 輸入国 ) ( 生産者 ) 輸出者輸入者 申請 原産地証明書 相手国発給当局 の税関 (2) 認定輸出者による自己証明制度輸出国発給当局が認定した輸出者が インボイス等の商業書類に特定の原産地申告文を記載することで作成した原産地申告を輸入者が輸入国税関に提出することで 原産品であることを証明する制度です 我が国の EPA のうち スイス ペルー メキシコとの EPA で 上記の第三者証明制度と併用して採用されています EPA 相手国 ( 輸出国 ) ( 輸入国 ) ( 生産者 ) 認定輸出者 輸入者 原産地申告を作成できる認定輸出者を認定 相手国発給当局 インボイス等の商業書類 原産地申告文 の税関 - 7 -

(3) 自己申告制度貨物の輸入者 輸出者又は生産者自らが 当該貨物が協定上の原産品である旨を明記した書面 ( 以下 原産品申告書 という ) を作成し 輸入者が輸入国税関に原産品申告書を提出することにより 原産品であることを申告する制度です 我が国の EPA のうち オーストラリアとの EPA で 上記の第三者証明制度と併用して採用されています 自己申告制度の下におけるでの輸入申告時には原産品申告書のほか 原産品であることを明らかにする書類の提出が原則として必要となります また相手国においても 必要に応じて原産品申告書以外の書類の提出を求められることもあります EPA 相手国 ( 輸出国 ) ( 輸入国 ) 生産者 輸出者 輸入者 原産品申告書 作成可 原産品申告書 作成可 原産品申告書 作成可 の税関 なお 原産地証明書 原産地申告 原産品申告書のいずれを提出しても 原産品であることの証明 申告としては 税関では同様に扱うことになります - 8 -

4. 税関での手続き EPA 税率を適用した輸入申告については 課税価格の総額が 20 万円を超える場合には 原産地証明書 ( 原産地申告を含む ) 又は原産品申告書の税関への提出が必要になります ( 詳しくは 最後に記載した問い合わせ先にご相談ください ) また 税関では 文書による事前教示を行っています 文書による事前教示 とは 輸入を予定している貨物の原産地等を文書で照会し 回答を文書で受けることができる制度で 事前に経済連携協定に基づく税率や一般特恵税率の適用が可能か 予め知ることができる 原産地の認定がスムーズに行われる 回答内容は 照会された商品の輸入通関審査に際し 3 年間尊重される などのメリットがあります 分類 ( 税番 ) 関税率 課税価格の算出方法についても行っています 原産地に関する事前教示制度の詳細 http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#h 原産地証明書等の記載事項 http://www.customs.go.jp/kyotsu/kokusai/gaiyou.htm 原産地関係各種資料 http://www.customs.go.jp/kyotsu/kokusai/seido_tetsuduki/gensanchi.htm 原産地規則に関するご疑問や原産地に係る事前教示照会については 各税関原産地調査官にご相談下さい 函館税関業務部原産地調査官 :0138-40-4255 東京税関業務部原産地調査官 :03-3599-6527 横浜税関業務部原産地調査官 :045-212-6174 名古屋税関業務部原産地調査官 :052-654-4205 大阪税関業務部原産地調査官 :06-6576-3196 神戸税関業務部原産地調査官 :078-333-3097 門司税関業務部原産地調査官 :050-3530-8369 長崎税関業務部原産地調査官 :095-828-8801 沖縄地区税関原産地調査官 :098-943-7830-9 -