平成 28 年度糖尿病実態調査の概要 糖尿病実態調査 とは 県 の 20 歳 50 歳代においては 糖尿病受療率が高くなっており 働き盛りの若い世代からの発症は 罹患期間の 期化や治療中断等による糖尿病の重症化が危惧されています このような中 糖尿病対策の検討のため 平成 20 年度以来 8 年ぶりとなる糖尿病の実態調査を実施したものです 本調査では 医療機関における糖尿病療養指導体制の整備状況と各機関との連携状況 60 歳以下の 2 型糖尿病患者の療養状況について調査を実施しました 調査対象 (1) 県内の内科を標榜する医療機関県内の内科を標榜する医療機関のうち 介護施設等を除く 491 医療機関を対象として 305 医療機関 ( 回収率 62.1%) の回答がありました (2)60 歳以下の 2 型糖尿病患者上記の医療機関で受療している 60 歳以下の 2 型糖尿病患者を対象として 226 医療機関から 1,367 名 ( 平均年齢 51 歳 ) の回答がありました 実施期間 平成 28 年 12 1 12 20 今回の調査からわかった主なことがら 前回調査より糖尿病療養指導士のいる医療機関の割合は増加 医療機関と 科医や市町 事業所等との連携が課題 糖尿病で受診したきっかけの半数は健診 受診を勧められ すぐに受診していなかったのは約 2 割 治療中断の経験者は約 2 割 治療中断したことのある患者は 重症化しやすい 若い人ほど 肥満や血糖コントロールの悪い患者が多い 香川県健康福祉部健康福祉総務課 1
< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査 ( 以下 前回調査 ) の 29 施設 (8.9%) から 増加しています ( 図 1) 本糖尿病療養指導士は前回調査の合計 100 人から 162 人に増加し 看護師 管理栄養士 薬剤師 理学療法士 臨床検査技師等が各専門分野において きめ細かく対応できるようになってきています 糖尿病療養指導士がいる 33 医療機関における療養指導の実施状況は 病態の説明 栄養 食事指導 服薬指導が 100.0% インスリン指導が 97.0% 運動指導が 93.9% 禁煙指導が 87.9% フットケアが 78.8% と糖尿病療養指導士がいない医療機関に比べて高くなっています ( 図 2) 図 2 療養指導士の有無別の指導実施状況 100% 80% 100.0 100.0 93.9 100.0 97.0 87.9 78.8 60% 40% 97.7 87.4 82.4 95.0 83.2 55.9 28.6 20% 0% 療養指導士あり 療養指導士なし 2
< 関係機関の連携状況 > かかりつけ医と専門医の連携は促進されたが 科医や 政との連携が課題 図 3 医療機関と他機関との連携状況 かかりつけ医と専門医 7.0 17.9 55.2 19.9 腎疾患専門医 14.3 27.2 39.2 19.3 眼科医 10.6 27.9 44.5 16.9 科医 36.8 38.7 17.6 7.0 市町 事業所等 45.3 37.3 14.7 2.7 ほとんどできていないあまりできていないある程度できている十分できている かかりつけ医と専門医間での連携は 75.2% の医療機関でできており 前回調査時の 66.5% を上回っていました また 腎疾患専門医との連携は 58.5% 眼科医との連携は 61.5% の機関でできています 科医との連携ができているのは 24.5% 市町 事業所等の保健師 栄養士等とは 17.3% にとどまり 今後の課題となっています 糖尿病患者の療養支援をより良くするために 関係機関の 層の連携が望まれます ( 図 3) 3
<2 型糖尿病患者の療養状況 > 糖尿病で受診したきっかけの半数は健診 図 4 糖尿病の受診のきっかけ ( 性別 ) 男性 51.1 29.0 17.1 2.7 女性 36.9 47.7 11.9 3.5 合計 46.1 35.7 15.2 3.0 健診他の病気糖尿病の症状その他 図 5 糖尿病の受診のきっかけ ( 年齢区分別 ) 40 歳以下 36.4 41.3 17.4 5.0 41 50 歳 45.9 35.3 15.9 2.9 51 歳以上 47.8 34.9 14.6 2.7 健診他の病気糖尿病の症状その他 全体では 健診で受診することを勧められた 患者が 46.1% と多いですが 女性では 健診 が 36.9% 他の病気で受診した時の検査結果で受診を勧められた が 47.7% と逆転していました ( 図 4) また 40 歳以下では 健診 が 36.4% 他の病気 が 41.3% と逆転していました ( 図 5) 健診がきっかけで受療した患者より 糖尿病の症状があって受診した患者の が三大合併症の併発率が高い傾向にあります ( 図 6) 図 6 きっかけ別による三大合併症の併発率 健診 5.0 1.0 1.7 他の病気 6.6 1.1 3.2 糖尿病の症状 9.5 3.0 4.0 0% 4% 8% 12% 16% 20% 糖尿病性網膜症糖尿病性腎症糖尿病性神経障害 4
すぐに受診しなかったのは約 2 割 図 7 受診を勧められすぐに受診したか すぐには受診しなかった, 21.5% すぐに受診した 78.5% 図 8 すぐに受診できなかった理由 特に症状もなく受診の必要はないと思った 59.8 仕事や用事で時間が取れなかった 42.4 生活習慣を変え自分で改善できると思った 30.8 糖尿病のことをよく知らなかった 21.0 医療費が負担になると思った どこを受診すればよいかわからなかった ( 複数回答 ) 6.7 9.4 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 健診や他の病気で受診を勧められてもすぐに受診しなかった患者は 21.5% でした ( 図 7) また すぐに受診できなかった理由は 症状もなく受診の必要はないと思った が 59.8% 仕事や用事で時間が取れなかった が 42.4% 生活習慣を変え自分で改善できると思った が 30.8% 糖尿病のことをよく知らなかった が 21.0% でした ( 図 8) 糖尿病についての正しい知識の普及啓発を効果的に行う必要があります 5
治療中断の経験者は約 2 割 図 9 治療を中断したことのある患者の割合 男性 女性 18.5% 14.7% 糖尿病の治療を中断したことがある患者は 17.1% で 糖尿病と初めて診断された平均年齢は 38 歳 最初に定期的な受診を始めた平均年齢は 39 歳 治療を初めて中断した平均年齢は 42 歳でした ( 図 9) 医療機関においては 半数以上で糖尿病の治療中断を防ぐために 何らかの工夫に取り組んでいました ( 図 10) 図 10 各医療機関での糖尿病の治療中断を防ぐ工夫 初診時の丁寧な指導 予約制 25.5 27.9 電話や手紙等で未受診患者への受診勧奨 17.3 患者担当スタッフを設定 診療時間の延 5.1 6.5 ( 複数回答 ) 特になし 46.9 0% 10% 20% 30% 40% 50% 6
図 11 治療を中断した理由 男性 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 仕事で忙しいため通院できなかった治療がおっくうになった症状がなかった医療費が負担になった引っ越しをした私事や家の事情で通院できなかった治ったと思った食事療法がつらかった ( 複数回答 ) 治療に不満があった 12.4 8.5 7.8 7.8 3.9 3.3 22.9 31.4 47.7 女性 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 症状がなかった私事や家の事情で通院できなかった治療がおっくうになった仕事で忙しいため通院できなかった医療費が負担になった治ったと思った治療に不満があった食事療法がつらかった引っ越しをした ( 複数回答 ) 13.4 10.4 9.0 6.0 19.4 22.4 29.9 28.4 28.4 中断した理由は 仕事で忙しいため通院できなかった が 40.0% で最も多く 特に男性では 47.7% となっていました 女性では 症状がなかった 私事や家の事情で通院できなかった 治療がおっくうになった が 3 割程度となっていました ( 図 11) また 治療継続のため整うと良いと思うことで 男女別で特徴があったのは 男性では 職場の理解がある で 31.4% 女性では 家族の理解がある で 36.9% でした 7
治療中断経験者は 重症化しやすい 図 12 中断経験の有無による血糖コントロール (HbA1c) の状況 中断あり 34.1 37.7 28.2 中断なし 16.6 43.1 40.3 8.0 以上 6.5 以上 8.0 未満 6.5 未満 図 13 中断経験の有無による腎機能 (egfr) の状況 中断あり 4.5 6.0 中断なし 0.7 7.0 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 30 未満 30 以上 60 未満 図 14 中断経験の有無による三大合併症の併発率 15% 13.6 10% 5% 0% 6.4 5.1 3.6 2.1 1.1 糖尿病性網膜症糖尿病性腎症糖尿病性神経障害 中断あり 中断なし 中断経験者の血糖コントロール及び腎機能の状況は 中断していない患者より悪い結果となっています ( 図 12,13) 三大合併症の併発率も高くなっています ( 図 14) 治療を中断し再開した患者の状況なので 重症化しているとも考えられ 治療を中断させない取組みや環境整備が必要です 8
若い人ほど肥満 治療中断 コントロール不良 図 15 肥満 (BMI25 以上 ) の割合 40 歳以下 19.0 31.4 36.4 11.6 1.7 41 歳 50 歳 10.9 25.8 37.7 23.8 1.7 51 歳以上 6.6 17.2 40.6 34.1 1.6 35 以上 30 以上 35 未満 25 以上 30 未満 18.5 以上 25 未満 18.5 未満 図 16 血糖コントロール不良 (HbA1c 8.0 以上 ) の割合 40 歳以下 33.3 31.0 35.7 41 歳 50 歳 23.9 41.5 34.6 51 歳以上 15.3 43.4 41.3 8.0 以上 6.5 以上 8.0 未満 6.5 未満 図 17 治療の中断経験患者の年齢別の割合 40 歳以下 24.8 75.2 41 50 歳 20.0 80.0 51 歳以上 14.3 85.7 中断あり 中断なし 年齢区分が若いほど肥満や HbA1c 値の高い患者の割合が高く 中断率も高くなっていました ( 図 15,16,17) 特に若い世代に対する糖尿病予防の啓発に努めることが重要です 9
まとめ 医療機関に対して実施した 糖尿病の指導等に関する調査 では 平成 20 年度に実施した同調査と比較すると 看護師等のコメディカルスタッフによる療養指導の実施や 本糖尿病療養指導士を配置している医療機関は増加していました 科医や市町 事業所等の保健師等との連携についてはあまりできていない状況であり 今後 糖尿病医療等の連携体制をさらに構築していく必要があります 2 型糖尿病患者が受診したきっかけは 健診で受診することを勧められた が約半数ですが 女性や 40 歳以下の患者では 健診より他の病気がきっかけである割合が高くなっていました 受診のきっかけ別三大合併症の併発率は健診から受診した場合が最も低く 糖尿病の症状があり受診した場合が最も高くなっていました 治療中断の経験者は全体の約 2 割で 中断した平均年齢は 42 歳と働き盛りの世代であり 仕事で忙しいことや治療がおっくうであること 症状がなかった等が中断理由として挙げられていました また HbA1c や腎機能が悪い結果となっており 糖尿病性網膜症等三大合併症の併発率についても高い傾向にあります 若い人では肥満傾向 HbA1c 値が高い人が多く 中断率も高くなっていました 以上の結果を踏まえて 香川県の糖尿病対策として 今後 (1)20 代 30 代の若い世代に対し 糖尿病の正しい知識の普及啓発 (2) 地域 職域 医療が連携しやすく 治療継続のしやすい体制整備 が 必要と考えます 最後に本調査の企画 実施 報告書の作成に多大なる御協力をいただきました糖尿病受療状況実態調査検討会の委員の皆様 調査に御協力いただきました医療機関及び関係者の皆様に 深く感謝いたします 調査協力 香川県糖尿病対策推進会議糖尿病対策の推進のため 香川県医師会 日本糖尿病学会中国四国支部 日本糖尿病協会香川県支部 香川県健康福祉部 並びに香川県医療推進協議会における糖尿病に関わる各種団体により設 されたものです ( 久 川委員 : 香川県医師会 ) 糖尿病受療状況実態調査検討会糖尿病実態調査について 調査方法や調査内容等の検討 結果分析を行うために 医師会 糖尿病専門医 学識経験者で構成し 設置したものです ( 本委員 : 香川県医師会常任理事 ) 10