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図 1 では プライマリーバランスが 11 兆円の赤字であることがわかる この赤字が消えてプライマリーバランスが均衡する姿を想像すると 下の2つの式が成り立つ 経常的歳入 = 経常的歳出 国債発行 = 国債費 国債発行 = 国債費 の式に注目すると 償還費用を賄うために新規に国債を発行しても国債残高

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

スライド 1

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経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

別紙2

タイトル

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資料 7-2 我が国の財政に関する長期推計 平成 26 年 4 月 28 日起草検討委員提出資料

金融政策決定会合における主な意見

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

短期均衡(2) IS-LMモデル

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

平成 28 年度予算編成方針 我が国の経済は 景気は引き続き緩やかな回復基調を維持しているが その影響が地方経済にまで十分に行き渡っているとは言えず 我々地方の行財政運営の基本となる税等一般財源を確保するためには 臨時財政対策債に頼らざるを得ない状況が続くものと考える また 税制改正も予測されること

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平成28年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

平成 30 年 5 月 21 日 ( 月 ) 平成 30 年第 6 回経済財政諮問会議資料 4-1( 加藤臨時議員提出資料 ) 資料 年を見据えた社会保障の将来見通し ( 議論の素材 ) 平成 30 年 5 月 28 日 厚生労働省

資料 1-2 中長期の経済財政に関する試算 ( 平成 29 年 7 月 18 日経済財政諮問会議提出 ) 本試算は 経済財政諮問会議の審議のための参考として 内閣府が作成し 提出するものである 内閣府

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研究報告(田近、小林)

経済学でわかる金融・証券市場の話③

エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

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ただし シムズ教授の提言の是非を考える上では その主張内容と 背景にあるFTPLの内容を正確に把握する必要がある 例えば シムズ教授は 財政健全化をインフレ目標達成と整合的なものにすべきと述べているが 財政健全化そのものを否定しているわけではない また 必ずしも 財政支出の規模拡大を提案しているわけ

平成 29 年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について ( 平成 28 年 8 月 2 日閣議了解 ) の骨子 平成 29 年度予算は 基本方針 2016 を踏まえ 引き続き 基本方針 2015 で示された 経済 財政再生計画 の枠組みの下 手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組む 歳出

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

要旨 :1. 先般政府が公表した 財政運営戦略 の内容は 次のとおり 1 財政健全化の目標として 国 地方のプライマリー収支 ( 対 GDP 比 ) を 2015 年度までに半減 2020 年度までに黒字化することが明記された 目標実現のための方策として ペイアズユーゴールールや 基礎的財政収支対象

鳩山政権の経済政策の効果


財政再建は待ったなし

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

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長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

現代資本主義論

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我が国中小企業の課題と対応策

( 注 ) 年金 医療等に係る経費については 補充費途として指定されている経費等に限る 以下同じ (2) 地方交付税交付金等地方交付税交付金及び地方特例交付金の合計額については 経済 財政再生計画 との整合性に留意しつつ 要求する (3) 義務的経費以下の ( イ ) ないし ( ホ ) 及び (

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

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2014(平成26)年度 予算編成方針について

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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連載FTPLの概要と関連する実証研究について解説す考えるシリーズ日本経済を考える 72 る 第 3 節では最近のシムズ教授の政策提言に対する経済学者の議論を紹介し 第 4 節を本稿のまとめとする 2.FTPL の概要とその検証 2.1 統合政府の予算制約式 FTPLとは 先に述べたとおり 物価水準の

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

日本国債

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

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歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

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IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

第45回中期経済予測 要旨

豊洲移転時の収支試算の条件とパターン 収支試算の条件 平成 29 年度予算をベースとして推計 一般会計繰入金の対象範囲や水準は 据え置き 改修経費を 5 億円 / 年とした上で 5 年毎に 5 億円 / 年ずつ増加するものと仮定して試算 変更点 売上高割使用料は 5 年毎に 3% ずつ減少するものと

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2 決算収支 実質収支は 59 億 63 百万円の黒字で 11 年連続で全団体黒字となった 単収支は 9 億 92 百万円の黒字となった また 赤字団体は35 団体中 15 団体となり 前と比べて8 団体減少した 実質単収支は 189 億 82 百万円の赤字となり 前と比べて41 億 47 百万円赤

地方創生応援税制 ( 企業版ふるさと納税 ) の運用改善 ( 別紙 1) 平成 31 年度税制改正 企業版ふるさと納税の一層の活用促進を図るため 企業や地方公共団体からの意見等を踏まえ 徹底した運用改善を実施する 地方創生関係交付金と併用する地方公共団体へのインセンティブ付与 地方創生関係交付金の対

資料 1-1 資料 1-1 平成 29 年度財政融資資金運用報告について 平成 30 年度財政融資資金運用報告について 平成令和元年 30 年 7 月 26 日財務省理財局財務省理財局

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財政 金融政策運営をセットで分析する意義 シムズ提案 から学ぶべきこと デフレ脱却のためのマクロ政策運営の選択肢として 財政政策を活用する提案 なかでもプリンストン大学クリストファー シムズ教授による提案が注目を集めている 具体的には 2% のインフレ目標が達成されるまでの間は 財政収支均衡にとらわ

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14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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議論の前提

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経済変動論 0

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1. 財政状況の年度推移 ( 一般会計 ) (1) 決算概況 ( 単位 : 億円 ) グラフの解説 一般会計の歳入 歳出の規模は増加傾向にあり 平成 27 年度の決算規模は 歳入 歳出ともに過去最大規模となっています 実質収支は 黒字を継続しており 27 年度は約 49 億円 前年度と比べると約 1

Transcription:

資料 4 財政を巡る最近の議論について 平成 29 年 4 月 7 日 ( 金 ) 財務省主計局

骨太 2015 ( 平成 27 年 6 月 30 日閣議決定 ) の 経済 財政再生計画 のポイント デフレ脱却 経済再生 歳出改革 歳入改革 の 3 本柱の改革を一体として推進し 安倍内閣のこれまでの取組を強化 財政健全化目標等 財政健全化目標を堅持 国 地方を合わせた基礎的財政収支について 2020 年度までに黒字化 その後 債務残高対 GD P 比の安定的な引下げを目指す 歳出改革の基本的考え方 国の一般歳出については 安倍内閣のこれまでの取組を基調として 社会保障の高齢化による増加分を除き 人口減少や賃金 物価動向等を踏まえつつ 増加を前提とせず歳出改革に取り組む 地方においても 国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める 計画の中間時点 (2018 年度 ) において 下記の目安に照らし 歳出改革 歳入改革それぞれの進捗状況 KPIの達成度等を評価し 必要な場合は デフレ脱却 経済再生を堅持する中で 歳出 歳入の追加措置等を検討 歳出改革の目安 < 目安 1>PB 赤字対 GDP 比 :2018 年度 1% 程度 < 目安 2> 国の一般歳出の水準 : 安倍内閣のこれまでの 3 年間では一般歳出の総額の実質的な増加が 1.6 兆円程度となっていること 経済 物価動向等を踏まえ その基調を 2018 年度まで継続 < 目安 3> 社会保障関係費の水準 : 安倍内閣のこれまで 3 年間の経済再生や改革の効果と合わせ 社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び (1.5 兆円程度 ) となっていること 経済 物価動向等を踏まえ その基調を 2018 年度まで継続していくことを目安とし 効率化 予防等や制度改革に取り組む この点も含め 2020 年度に向けて 社会保障関係費の伸びを 高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す < 目安 4> 地方の歳出水準 : 国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ 交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について 2018 年度までにおいて 2015 年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保 2

今国会での財政健全化に関する主な議論 国会における主な論点 2020 年度のプライマリーバランス (PB) 黒字化は本当に達成できるのか 政府の答弁ぶり 目安 に沿った歳出改革を継続 強化すれば 収支改善が見込める 消費税を平成 31 年 10 月に確実に引き上げる 2018 年度 ( 平成 30 年度 ) に追加の歳出 歳入措置等を検討 財政健全化目標として PB 黒字化 ではなく 債務残高対 GDP 比等の弾力的な目標を導入するべき クリストファー シムズ教授が提唱する 物価水準の財政理論 について どのように考えるか 債務残高対 GDP 比を安定的に引き下げるためには PB 黒字の確保が必要 PBは 財政健全化の通過点 参考 1~5 財政規律を放棄することでどの程度物価の上昇を起こすことができるのか コントロールできるのか実証されていない 先進国中最悪の財政状況の中で 仮に財政規律を放棄したとして 国債が安定的に消化できるのか問題 混乱のリスクを増大させることなく 財政健全化を維持しながら経済成長を続けていくという確実な方法でやっていく 参考 6~7 3

ユーロ圏の目標財政健全化目標(フロー)の水準厳しい 均衡 0.4% 2.0% 3.0% イタリア 2015 年度の財政収支 : 2.6% 構造的財政収支 : 0.7% PB 収支 : +1.5% フランス (2019 年度までに ) 2015 年度の財政収支 : 3.5% 構造的財政収支 : 1.9% PB 収支 : 1.5% 英国 (2020 年度までに ) 主要先進国における財政健全化目標 1 ドイツ (2017 年度から 2020 年度まで ) 2015 年度の財政収支 :+0.4% PB 収支 :+1.1% 2015 年度の財政収支 : 3.8% 構造的財政収支 : 3.6% PB 収支 : 2.1% 米国 (2025 年度まで ) < 財政収支 > 2015 年度の財政収支 : 2.5% PB 収支 : 1.2% カナダ EU EU 2015 年度の財政収支 : 0.0% PB 収支 : +1.3% ユーロ圏への参加要件 < 基礎的財政収支 (PB)> 財政収支 から利払費分だけ緩めたもの 均衡 日本 (2020 年度までに ) ( 金利水準によって変動 ) 参考 1 主要先進国が掲げている財政健全化目標と比較すると 日本の目標は緩やかな水準となっている ドイツ フランス イタリアについては EU の条約に基づき 各国議会の議決で定められた目標 英国の目標も 国会の議決を経た目標 緩やか ( 出典 ) 日本 : 内閣府 ( 中長期試算 ) 米国 : 行政管理予算局 英国 : 財務省 ドイツ : 連邦財務省 フランス : 経済財政省 カナダ : 財務省 イタリア : 経済財務省 ( 注 1) 日本は国 地方の計数 米国 ドイツ及びカナダは連邦政府の計数 英国は公的部門の計数 フランス及びイタリアは一般政府の計数 ( 注 2) ユーロ圏の目標は 原則 財政収支均衡だが 構造的財政赤字対 GDP 比 0.5% 以内でも可 ( 注 3) 英国 フランス及びイタリアの財政収支の目標は 構造的財政収支に関する目標 2015 年度の財政収支 : 4.5% PB 収支 : 3.0% 4

主要先進国における財政健全化目標 2 参考 2 : 議会の議決を経た目標 : 政府が定めた目標 : なし 日本英国ドイツフランスイタリア米国カナダ 収支目標 ( フロー ) ( 対象 ) プライマリーバランスのみ 予算責任憲章 憲法 法律 憲法 残高目標 ( ストック ) ( 対象 ) 債務残高対 GDP 比 予算責任憲章 補助的な目標 5

主要先進国のプライマリーバランス ( 対 GDP 比 ) の見通し 参考 3 リーマンショック後 主要先進国は財政健全化努力を通じて PB を改善 各国が作成している財政見通しによると 今後も歳出 歳入改革を進め 日本を上回って PB が改善していく見込み 英国は 2016 年 11 月に EU 離脱に伴う経済の不確実性を受けて財政見通しを下方修正したが それでも日本の経済再生ケースを上回って推移 (%) 4.0 イタリア 2.0 ドイツ 0.0 カナダ 英国 日本 2.0 フランス 日本の PB 黒字化目標 4.0 米国 6.0 見通し ( 日本は 2017 年 1 月発表の内閣府 中長期試算 経済再生ケース ) 8.0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 ( 年度 ) ( 注 1) 日本は国 地方の計数 米国及びカナダは連邦政府の計数 ( 財政収支から利払費を控除 ) 英国は公的部門の計数 ドイツ フランス及びイタリアは一般政府の計数 ( 注 2) 英国は 2017 年 3 月発表の財政責任庁の見通し ドイツは連邦財務省の見通し フランスは経済財政省の見通し カナダは財務省の見通し イタリアは経済財務省の見通しによる ( 注 3) 米国は トランプ大統領が 2017 年 5 月に見通し ( 大統領予算教書 ) を発表する見込み 6

主要先進国の債務残高 ( 対 GDP 比 ) の見通し 参考 4 日本の債務残高対 GDP 比は 依然として他の主要先進国に比べて高い水準となる見通し (%) 210 200 190 日本 ( ベースライン ) 180 170 160 150 140 130 120 110 100 見通し イタリア フランス 日本 ( 経済再生ケース ) 90 80 英国 米国 70 60 50 ドイツ 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 ( 年度 ) ( 注 1) 日本は国 地方の計数 米国及びカナダは連邦政府の計数 英国は公的部門の計数 ドイツ フランス及びイタリアは一般政府の計数 ( 注 2) 米国は2016 年 2 月発表の行政管理予算局の見通し 英国は2017 年 3 月発表の財政責任庁の見通し ドイツは連邦財務省の見通し フランスは経済財政省の見通し カナダは財務省の見通し イタリアは経済財務省の見通しによる 7 ( 注 3) カナダの債務残高対 GDP 比は約 30% 程度

主要先進国の社会保障費の見通し 参考 5 日本の社会保障関係支出は今後も医療費 介護費を中心に 増加が見込まれる 医療費 介護費対 GDP 比の伸び (% ポイント ) (2020 年 ~2030 年 ) 給付費ベース 2.5 2.0 介護 医療 1.5 1.0 1.0 0.5 0.0 0.1 1.0 0.1 0.3 0.1 0.2 0.3 0.4 0.2 イタリアフランスドイツ英国日本 ( 出典 ) 日本は財政制度等審議会 我が国の財政に関する長期推計 (2015 年 10 月 ) 各国は European Commission Ageing Report 2015 より作成 8

物価水準の財政理論 (FTPL) について 参考 6 物価水準の財政理論 (Fiscal Theory of the Price Level:FTPL) とは 財政政策によって 物価水準が決定されるとする議論 FTPL の理論概要 政府債務のデフォルトは じないと仮定 物価 準は 政府の将来にわたる予算制約式 ( 下記 ) が成 するように調整される 名目政府債務残高 (= 民間部門保有の公債残高 +マネタリーベース ) 物価水準 = 将来の政府余剰の総和 ( 割引現在価値 ) 政府が歳出拡 減税を う それによって増えた国債は必ず償還すると約束するが 同時にそのための増税や歳出削減を わないことにコミット 家計は上記の政府のコミットメントを信 し 予算制約式を成 させるための物価上昇を合理的に予想 家計は 将来の増税が 込まれないため 消費を増やす 物価 準が上昇 9

シムズ教授の主張 参考 7 シムズ 米プリンストン大学教授は 2016 年 8 月のジャクソンホール会議において 物価水準の財政理論 を紹介したうえで 米 欧 日でインフレ目標が達成できないのは 金融政策がゼロ金利制約に直面するもとで ( 将来のインフレによってファイナンスされる ) 財政拡張を伴なっていないためと主張 ジャクソンホール会議 : 毎年 8 月 米カンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで開催するシンポジウム 各国の中央銀行幹部や経済学者が参加する 2016 年は 8 月 25 日 ~27 日に開催された ( シムズ教授は 27 日に登壇 ) シムズ教授のジャクソンホール会議での報告の概要 物価水準の財政理論 に基づくと 物価は 通貨供給量のみならず 公債発行残高が増えた場合に上昇する 逆に 増税などにより 財政収支の改善 ( 公債残高の減少 ) が予想される場合 デフレ圧力が生まれる したがって 金融政策のみならず 財政政策も物価水準に影響すると言える この理論により 以下のような結論が導かれる 金利がほぼゼロで経済活動が不活発な国では 金融政策に加えて財政政策もインフレ目標達成を目的にすべき 米 欧 日で 金融政策が効果的でなく インフレ目標が達成できないのは 金利引下げが有効な財政拡張を伴っていないことが要因 日本では インフレ目標が達成 維持されるまで 消費税率を引き上げるべきではないのではないか クリストファー シムズ (Christopher Sims) 米プリンストン大学教授 1942 年 10 月 21 日生まれ (74 歳 ) アメリカ人 ハーバード大学経済学博士 計量経済学 マクロ経済理論 政策が専門 90 年代初めより 物価水準の財政理論 を主張 2011 年に 時系列分析手法のひとつ 多変数自己回帰モデル (VAR) の開発の功績でノーベル経済学賞を受賞 10