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Transcription:

特集 : 政策が市場 運用を変える ETF が現物株式市場に与える影響 青山学院大学経済学部教授芹田敏夫中央大学総合政策学部教授花枝英樹 1. はじめに 近年 日本の株式市場においてETF (Exchange Traded Fund, 上場投資信託 ) の規模が拡大している 1995 年 5 月に初めて日経 300 株価指数連動型上場投資信託が上場して以来上場銘柄数も大幅に増え 2017 年 9 月末時点で222 銘柄に達している また ETF 目次 1. はじめに 2.ETFと現物株式市場の関係 3. 日銀によるETF 買入れ 4. 実証分析の紹介日経平均 ETFが現物市場に与える影響 5. おわりに の投資対象も 日本株式をはじめ 外国株式 外国債券 REIT 商品など多様化している 図 1の実線は日本株 ETFの時価総額の推移を示している 2017 年 9 月末時点で 日本株式を対象にしたETFは92 銘柄 時価総額合計は26.1 兆円 対東証一部時価総額比 4.2% を占めるに至っている また 2010 年 12 月からは 日本銀行による大規模なETFの買入れが始まった 図 1に示された2010 年 12 月以降の日本株 ETFの時価総額の急激な伸びの主な原因は日銀によるETF 買入れにある このようなETFの拡大が現物株式市場にどのような影響を与えるのであろうか 本稿ではこの点を考察する また 日銀による ETF 買入れの影響も検討する さらに ETFの活発化が個別銘柄のボラティリティに及ぼす影響を検証した著者たちの実証分析 28

( 図 1) 日本株 ETF と日経平均 ETF の時価総額の推移 NEEDS-FinancialQUEST の原データに基づいて筆者作成 も紹介したい 本稿で対象とする日本株 ETFは 日本取引所グループの分類では 日本株指数 に入るもので それらはさらに 市場別 規模別 業種別 テーマ別 に分類される 市場別 に分類されるETFの時価総額が圧倒的に大きく 2017 年 8 月末時点で日本株 ETFの98% を占める 最もポピュラーな ETFであるTOPIXに連動するETF 日経平均に連動するETF JPX 日経 400に連動する ETFは時価総額が大きく 市場別 に属する 2016 年 4 月に日銀買入れの対象となって話題となった 設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するための ETF は テーマ別 に分類される ETFの特徴は 運用資産が十分に分散化されていること 対象指標に連動するインデックスファンドであるために信託報酬が低い こと 上場株式と同様に低い取引コストで取引所が開いている時間帯にいつでも売買可能であることにある また 取引が活発な銘柄では高い流動性を持つ このようなETFの持つ特徴により 個人投資家にとって魅力的な投資対象となっており 低コストで多様な分散化したポートフォリオを保有することができる 2.ETF と現物株式市場の関係 ETFが現物株式市場に与える影響を考察するためには ETFのメカニズムと現物株式市場との関係を明らかにする必要がある ETFには現物株式と同様に発行市場と流通市場がある ETFの発行市場は 指定参 ( 注加者 1) とETF 運用会社の間での取引が行われる市場である 指定参加者が基準を満 29

たした株式バスケットを現物市場で調達して ETF 運用会社へ持ち込むことを 設定 と呼び 見返りに運用会社が受益証券を発行して指定参加者に交付することで受益証券の口数が増加する 指定参加者はこの受益証券を流通市場で投資家へ売却できる 一方 指定参加者がETFの受益証券を運用会社へ持ち込むことを 交換 と呼び 運用会社が ETF 受益証券と引き換えに 要件を満たした株式バスケットを指定参加者に渡す その結果 受益証券の口数が減少する このように ETFの発行市場では 現物株式の発行済み株式数にあたる受益権口数が 指定参加者とETF 運用会社の間の取引によって弾力的に変化する点に大きな特徴がある 取引所に上場されたETFが不特定多数の投資家によって売買される場が流通市場である 流通市場でETFはリアルタイムで市場価格がついている ETFの価格には市場価格と別に その日の引け値に基づいて1 日に1 回算出される保有株式バスケットの価値 ( 純資産額 (Net Asset Value, NAV)) を口数で割った 1 口当たりの価値を表す基準価額がある ( 注 2) 一般投資家はETFを市場価格では取引できるが 基準価額では取引できない 基準価額で取引できるのは 発行市場の参加者であるETF 運用会社と指定参加者のみで 発行市場における 設定 と 交換 において用いられる価格が基準価額である 市場価格と基準価額は本来同じ値になるはずであるが ずれが生じることがある 市場 価格と基準価額の差は乖離と呼ばれ 大きな乖離が生じた場合には裁定が行われ ETF の発行済み口数が増減する ETFにおいて裁定を行うのは 基準価額での現物バスケットとETF 受益証券を設定 交換できる指定参加者と 市場でマーケットメイクを行う海外のHFT( 高頻度取引 ) 業者などである ( 注 3) 市場価格 > 基準価額の時には 指定参加者は株式を買って 買った株式を用いてETFを設定し (=ETF 口数の増加 ) 得た ETF 受益証券を流通市場で売却する 逆に 市場価格 < 基準価額の時には 指定参加者はETFを買って ETFを交換し (ETF 口数の減少 ) 株式バスケットを受け取る そのような裁定が十分に働けば 市場価格 基準価額となり乖離は小さくなる しかし 指定参加者等によるETFと株式バスケットの間の実際の裁定取引にはリスクが存在し 裁定は十分に働かない可能性がある すなわち裁定の限界 (Limit of Arbitrage) がある なぜなら 市場価格と基準価格の間の乖離を利用して瞬時に裁定取引を行うことは不可能であるためである 指定参加者によるETFと現物バスケットとの交換であれば 乖離に基づいて裁定を行う場合には翌日となり 翌日の取引開始直後に乖離が縮小してしまって逆の乖離が生じるリスクがある 指定参加者以外のマーケットメーカーの場合にも ETFの市場価格と基準価額が均等化しないリスクに直面するためである したがって 裁定の限界により 乖離が生じてもすぐ 30

には解消しない可能性がある 以上のETF 市場の説明を踏まえると ETFが対象指標を構成する現物株式に影響を与える要因として 裁定の限界と顧客効果があげられる ETFと現物株式との裁定に限界がある場合には ETF 市場において 例えば投資家によるファンダメンタルズに基づかない ETFの買い ( 流動性ショック ) が生じると ETFの市場価格が基準価額から一時的に乖離し その結果生ずる裁定取引で現物株への買いが入ることでETF 市場から現物市場へショックが伝播するが 裁定にはリスクがあるため裁定が十分に行われるとは限らない そのため 現物株式の市場価格にノイズが残ることが考えられるのである また 第二の要因である顧客効果は ETFの持つ高流動性と低取引コストにより 投資期間の短い投資家が高い売買回転に伴う取引コストを節約するためにETF 市場に集まることよって生じる このような投資期間の短い投資家にとっては ETFを構成する個別銘柄のファンダメンタル情報を気にせず ETF 自体の値動きにのみ関心を持ち 高回転の売買を行おうとする このような高回転トレーダーの割合が高くなるほど現物株の株価により大きなノイズが生じ 現物株式のボラティリティが高まると考えられるのである このようにしてETFによってもたらされる現物株の株価のノイズは 現物株式の発行 済み株数に占めるETFの保有割合 売買高が高まるほど 大きくなることが予想される 3. 日銀による ETF 買入れ ETFが現物株式市場に与える影響を考えるうえで無視できないのは 日本銀行による ETFの買入れである 中央銀行による大規模な株式の購入は先進国では例がない 2010 年 12 月から始まった日銀によるETF 買入れの概要は以下のようにまとめられる 日本銀行 資産買入等の基金運営基本要領 によれば 日銀によるETF 買入れの目的は 各種資産のリスクプレミアムの低下を促すことである この表現にはいくつかの解釈がありうるが その1つは株価の変動リスク ( ボラティリティ ) を低下させることによってリスクプレミアムを低め その結果生じる資産価格を上昇させることにあると考えられる 2010 年 11 月 5 日の金融政策決定会合の決定を踏まえて 日銀は2010 年 12 月 5 日にETF を初めて142 億円購入した 当初の買入枠は 4,500 億円で その後 買入枠は段階的に増額され 2016 年 7 月 29 日には年間買入枠を6 兆円に増額した 2017 年 8 月末時点までの買入額は累計 15.6 兆円に達している また ETFの買入れ対象は2010 年 12 月の開始以降若干の変更がある 開始当初は TOPIXあるいは日経平均に連動するETFに限定されていたが 2014 年 12 月 2 日以降は新たにJPX 日経 400 指数に連動するETFが追加 31

( 表 1) 日経平均 ETF 保有割合トップ 10 の銘柄の推移 2005 年 12 月末 2010 年 12 月末 2017 年 8 月末 順位企業名 ETF 保有割合順位企業名 ETF 保有割合順位企業名 ETF 保有割合 1 ミツミ電機 5.04% 1 ミツミ電機 5.02% 1 アドバンテスト 21.07% 2 CSK 4.75% 2 アドバンテスト 4.40% 2 ファーストリテイリング 19.82% 3 アドバンテスト 3.67% 3 ファーストリテイリング 4.14% 3 太陽誘電 17.45% 4 ファーストリテイリング 3.45% 4 太陽誘電 3.65% 4 ユニー ファミリーマート 16.59% 5 平和不動産 3.11% 5 CSK 3.49% 5 TDK 16.22% 6 太陽誘電 3.04% 6 TDK 3.39% 6 東邦亜鉛 15.47% 7 東邦亜鉛 2.91% 7 東邦亜鉛 3.24% 7 トレンドマイクロ 14.98% 8 TDK 2.75% 8 トレンドマイクロ 3.13% 8 コムシスホールディングス 14.91% 9 トレンドマイクロ 2.68% 9 コナミホールディングス 3.06% 9 コナミホールディングス 14.65% 10 コナミホールディングス 2.62% 10 コムシスホールディングス 3.01% 10 日産化学工業 13.92% ETF 保有割合は NEEDS-FinancialQUESTの原データに基づいて筆者が推定したもの され 2016 年 4 月 4 日以降はさらに 設備 人材投資に積極的な企業の株式を組み入れる ETF が追加された 日次の買入日と買入総額は公表されているが 日銀買入れのうち どのETFをどのくらい買入れたかについての銘柄別の取引情報はない しかし 日本銀行が公表している 指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領 において 各 ETFの買入限度額について 3 指数 (TOPIX 日経平均 JPX 日経 400) に連動するETFでは 銘柄毎の時価総額に概ね比例するように買入れるとしている ( 注 4) このルールに基づいて われわれは日銀によるETFの保有総額および日経平均 ETFの保有額の日次系列を推定した 4. 実証分析の紹介日経平均 ETF が現物市場に与える影響 本節では 日銀によるETF 買入れを含め ETFが現物市場にどのような影響を与えた かについて 筆者たちが行った実証分析の一部を簡潔に紹介する ( 詳しくは芹田 花枝 [2017] 参照 ) 分析対象は 日経平均に連動するETF( 日経平均 ETFと略す ) と日経平均に採用された個別株式である 日経平均 ETFは ⑴ 時価総額が大きく ( 日本株 ETF 全体に占める日経平均 ETFの割合は45.3% 2017 年 8 月末時点 ) ⑵ 日経平均の算出方法の特徴により 構成銘柄の発行済み株式数に占める日経平均 ETFの保有割合は銘柄間で大きく異なる という特徴がある このような特徴から ETFが現物株式に及ぼす影響の違いを調べるのに適しているため 日経平均 ETFを分析対象に選んだ 日経平均 ETFが保有する現物株式のポートフォリオは日経平均株価と全く同じ投資比率をとると仮定すると 日経平均を完全に複製したポートフォリオの各採用銘柄への投資比率は 日本経済新聞 ( 日経平均株価算出要領 ) に基づき以下のように表される 32

( 図 2) 日経平均 ETF 時価総額および日銀保有額の推移 ( 推定値 ) NEEDS-FinancialQUEST の原データに基づき筆者推定 ⑴ また この投資比率を用いれば 日経平均 ETFが各時点において保有する銘柄 i の発行済み株式数に占めるETFの保有割合は 以下のように推定できる ⑵ ⑵ 式に基づいて算出された日経平均 ETF の保有割合のトップ10(3 時点 ) が表 1に示されている 特に日銀買入れが始まった2010 年 12 月以降に保有割合も急激に増加しており 2017 年 8 月末時点で第 1 位のアドバンテストでは 実に21.07% を占めるまでに至っている この保有割合は銘柄間で差が大きく 表 1に示してないが 最低位のランキングの 銘柄 ( 例えばNTTドコモや東京電力 ) における日経平均 ETFの保有割合は0.1% 程度に過ぎない 日銀は個別のETFの取引情報を公表していないため 先述の公表されたルール ( 時価総額に応じた配分 ) に基づいて日銀による日経平均 ETF 買入額および 日経平均 ETFの保有額の日次系列を推定した ( 注 5) 2010 年 12 月から始まった日本銀行による日次の日経平均 ETF 保有額の推定値の推移は 図 2の破線のとおりである 買入れ開始から急増し 2017 年 8 月末時点において 保有額で8.4 兆円 日経平均 ETFのNAV 合計に占める割合は76.4% に達している 分析期間は 日経平均 ETFが初めて上場された2001 年 7 月から2015 年 12 月までである 日経平均 ETFの銘柄は2015 年 12 月末時点において上場していた8 銘柄 個別銘柄は 33

( 表 2)ETF の市場価格と基準価額との乖離の基本統計量 日銀買入れあり N=284 平均 標準偏差 最小値 最大値 DEV1 7.00 27.17 129 184 DEV2 9.79 28.27 127 246 DEV3 7.84 29.76 226 173 DEVR1 0.0005 0.0021 0.0099 0.0158 DEVR2 0.0007 0.0024 0.0097 0.0275 DEVR3 0.0006 0.0022 0.0110 0.0169 日銀買入れなし N=3,229 平均 標準偏差 最小値 最大値 t 値 DEV1 0.02 25.47 288 233 4.43** DEV2 1.16 25.41 269 156 6.90** DEV3 0.09 27.94 307 173 4.56** DEVR1 0.0000 0.0023 0.0309 0.0149 3.90** DEVR2 0.0001 0.0023 0.0288 0.0128 5.83** DEVR3 0.0000 0.0025 0.0330 0.0171 4.10** 被説明変数 DEV1 3 DEVR1 3 は それぞれ 3 銘柄 ( ダイワ上場投信 日経 225(1320) 日経 225 連動型上場投資信託 (1321) 上場インデックスファンド 225(1330)) の日経 ETF の乖離 乖離率を表す * ** は それぞれ 5% 1% で有意であることを表し 以下表 3 表 4 についても同じ ( 表 3) 乖離率の要因分析 ( 回帰分析 ) 定数項 DBOJ DBOJ( 1) DEVR( 1) DEVR( 2) DEVR( 3) DEVR( 4) DEVR( 5) DEVR1 0.000 0.001 0.000 0.041 0.033 0.038 0.017 0.016 0.613 3.502 ** 0.783 2.463 * 1.965 * 2.285 * 1.006 0.926 DEVR2 0.000 0.001 0.000 0.039 0.041 0.047 0.024 0.001 3.013 ** 4.735 ** 1.832 2.335 * 2.469 * 2.799 ** 1.405 0.087 DEVR3 0.000 0.001 0.000 0.299 0.021 0.009 0.003 0.027 0.234 3.962 ** 0.879 17.718 ** 1.209 0.539 0.179 1.592 上段は推定値 下段は t 値を表し 表 4 についても同じ 分析期間中に日経平均構成銘柄に入ったこと DEVR= 乖離 / 基準価額 ⑷ のある個別銘柄で のべ300 銘柄である 用いたデータについては 個別銘柄および日経平均 ETFの市場価格 売買金額 属性等は NEEDS-FinancialQUEST から 日経平均 ETFのNAVおよび基準価額は金融データソリューションズ社の日本公募投信リターンデータ ( 日次 ) から入手した まず 日経平均 ETFと日経平均の現物株式バスケットとの裁定が十分に働いているかどうかを調べるために ETFの市場価格 ( 終値 ) と毎日公表される基準価額との乖離の性質を調べた分析結果を紹介する 乖離 DEV および基準価額に対する乖離の比率を表す乖離率 DEVRを以下のように定義する ( 注 6) 上記のように定義された乖離と乖離率の統計的特徴を調べるとともに 日銀による ETF 買入れが乖離に与える影響についても検証する 日銀によるETF 買入れは ETF 価格に上昇圧力を生じさせ 一時的に乖離がプラス方向に振れる可能性が考えられる 乖離および乖離率の基本統計量は表 2のとおりである 8 本の日経平均 ETFのうち 最も早く上場されかつ時価総額の上位 3 銘柄の結果を示している ( 注 7) 日銀によるETF の買入れが乖離率に与える影響についての結果も示すため 日銀買入れありの日となしの日に分けている 買入れありの日では 標準偏差は買入れなしの日とほとんど変わらない DEV= 終値 基準価額 ⑶ にもかかわらず 平均はすべてのケースで大 34

( 表 4) 個別銘柄のボラティリティに及ぼす影響のパネル分析 被説明変数 VOLA VOLA VOLA VOLA VOLA 説明変数 推定式 1 推定式 2 推定式 3 推定式 4 推定式 5 定数項 1.69 2.29 4.45 3.13 3.62 35.20 ** 50.01 ** 13.35 ** 10.04 ** 11.86 ** ETFS( 1) 1.52 1.52 1.99 1.54 1.54 2.90 ** 2.90 ** 3.86 ** 3.19 ** 3.19 ** DBOJ( 1) 0.60 0.49 9.43 ** 8.43 ** LSIZE( 1) 0.11 0.08 0.08 8.77 ** 6.97 ** 6.97 ** RSP( 1) 60.07 41.93 41.93 25.74 ** 19.16 ** 19.16 ** ILLIQ( 1) 0.00 0.01 0.01 0.43 1.63 1.63 VOLA( 1) 0.36 0.36 75.70 ** 75.70 ** 銘柄ダミー Yes Yes Yes Yes Yes 月ダミー Yes Yes Yes Yes Yes サンプル数 38,887 38,887 38,856 38,792 38,792 R2 0.51 0.51 0.56 0.66 0.66 きさは小さいがプラスとなり 行われなかった日の平均がほぼゼロであるのと比べて大きな差がみられる 表 2の右端のt 値は 買入れが行われた日と行われなかった日の平均値の差についての検定統計量である すべてのケースで 統計的に有意に買入れがあった日の乖離および乖離率の方が一時的に大きくなることを示している また 表 3には 日次の乖離率 DEVRを過去の乖離率 DEVR( 1) DEVR( 5) に加えて 日銀買入れダミー DBOJと その1 日前 DBOJ( 1) を入れて回帰を行った結果が示されている 前日から3 日前までの乖離率の係数の多くが正で有意 すなわち乖離が数日継続することを示している また DBOJの係数が正で有意となっている この結果から 日銀の買入れによりETF 価格に上昇圧力がかかって 乖離が一時的に正の方向へ拡大す ることが示唆される つぎに 前節までに示したように ETF が現物価格に与える影響に関して検証すべき仮説は 以下の2つである 仮説 1( ボラティリティに与える影響 ): 発行済み株式数に占めるETFの保有割合が増大するほど 個別銘柄のボラティリティは増大する 仮説 2( 日銀買入れの与える影響 ): 日銀によるETF 買入れが行われると 個別銘柄のボラティリティが低下する 仮説の検証として ETFおよび日銀買入れが日経平均採用の個別銘柄のボラティリティへの影響を調べるためにパネルデータ分析を行った 用いるデータは月次データで 推定期間は最初の日経平均 ETFが上場した直 35

後の2001 年 8 月から2015 年 12 月までである 被説明変数として ボラティリティVOLA ( 個別銘柄の1ヵ月間の日次リターンの標準偏差 ) を用いる 本稿で重要な説明変数であるETFの影響度の尺度として ⑵ 式で定義されたをETFSと名付けて用いた また 日銀によるETF 買入れの影響を示す変数として 日銀買入れダミー DBOJを用いた 流動性の尺度として 広く用いられている以下で定義されるILLIQを用いた ILLIQ= ( 日次リターン絶対値 / 日次売買金額 ) の月中平均 ⑸ 他のコントロール変数として 時価総額の対数 ( 月末値 )LSIZE 株価の逆数( 月末終値 )RSPを採用した また 1 期前の被説明変数 個別銘柄効果と時間効果を考慮するために銘柄ダミーと毎月のカレンダーダミーを入れている なお 説明変数はすべて1 期前の値を用いている 2つの仮説を検証するために行ったパネル推定の結果について説明する ( 表 4 参照 ) サンプルサイズは 2001 年 8 月 2015 年 12 月までの38,887 企業 月である 仮説 1に関連する個別銘柄の日次ボラティリティに与える日経平均 ETFの保有比率 ETFS( 1) の影響は 推定式 1 5すべてにおいて係数が正で有意である これは仮説 1と整合的な結果で ETFの保有比率の増加により現物株式のボラティリティが増加することを示している コントロール変数については 規模を示す時価総額の対数値 LSIZE( 1) は負で有意 株 価の逆数 RSP( 1) は正で有意 流動性尺度のILLIQ( 1) は係数が有意ではなかった つぎに 仮説 2の日銀によるETF 買入れの影響について検討する ボラティリティへの影響を見ると 日銀買入れダミー DBOJ( 1) の係数は 推定式 2および5にあるが ともに負で有意となっている このことは仮説 2 と整合的で 日銀によるETF 買入れが日経平均構成銘柄のボラティリティを低下させる効果を示している 日銀による買入れの目的であるリスクプレミアムの低下を促すということに対して ボラティリティ低下という形で貢献していることがわかる 表 2 表 3で示したように 日銀買入れ日にETFの市場価格 ( 終値 ) と基準価額との乖離がプラスになり その結果生ずる裁定取引により 現物株式のボラティリティは一時的に上昇する可能性もある しかし 表 4のように個別銘柄の1ヵ月間の日次リターンの標準偏差でボラティリティを計測するというように少し長期で見ると 日銀買入れは株価の変動を抑え ボラティリティを低下させていると解釈できる ( 注 8) 5. おわりに 本稿では近年成長著しいETFが現物株式市場に与える影響について検討を行った ETFと現物株式バスケットとの裁定取引が ETFおよび現物株式のプライシングに重要な役割を果たすこと 裁定取引にはETFの 36

指定参加者等の役割が大きいことを示した また 日銀による大規模なETF 買入れの影響についても検討した われわれが行った実証分析の結果も紹介し ETFの拡大により現物株式のボラティリティが高まることを示したが この結果は米国株を対象とした BenDavid et al.[2014] と同様の結果であった 本稿は 野村財団の 金融 証券のフロンティアを拓く研究 助成による研究成果の一部である 引用文献 太田亘 [2016] 証券市場における大口投資家と流動性 日本ファイナンス学会 2016 年予稿集 小沼泰之 [2017] ETFの現状と今後の展望について 月刊資本市場 2017 年 8 月 14 24 芹田敏夫 花枝英樹 [2017] 日経平均 ETFが現物市場に与える影響 日本ファイナンス学会 2017 年予稿集 日本経済新聞社 日経平均株価算出要領 2011 年 日本銀行ウェブサイト指数連動型上場投資信託受益権等買入等のページ https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ ope_t/index.htm/ 日本取引所グループウェブサイト ETF 解説ページ http://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/index. html Ben-David, I., F. Franzoni, and R. Moussawi[2014] Do ETFs Increase Volatility? NBER Working Paper, No. 20071 ( 注 1) 指定参加者とは 運用会社が公表し 設定と 間中に15 秒単位でETFの保有資産の1 口当たり推定価値が表示されるようになった それをインディカティブNAV と呼ぶ ( 注 3) 小沼 [2017] は 東証のアローヘッド導入後 海外のマーケットメーカーも東証のETF 市場に積極的に参入し 直近での売買の過半を占める海外投資家は マーケットメイク型の投資家が過半を占めると推定されると指摘している ( 注 4) ただし 日銀は2016 年 10 月 1 日以降 ETFの買入れウェイトをTOPIX 重視へと変更している 変更内容の詳細は省くが 日銀のETF 保有額 ( 推定値 ) はこの変更も反映させている ( 注 5) ある時点における日銀による日経平均 ETF 保有額の推定値は 以下の算式で推定を行った 当日の日経平均 ETF 保有額 = 当日の推定日経平均買入額 + 前日の日経平均 ETF 保有額 日経平均 ETF の終値変化率 ( 注 6) 乖離および乖離率の実際の算出においては ETFの市場価格 ( 終値 ) に配当落ちが ETFの基準価額も分配金分だけ低下することが生じる ETFの基準価額が権利確定日に低下するのに対して ETFの市場価格における配当落ちは権利確定日の3 営業日前であるため 2つの権利落ち日にずれが生じる このずれを修正するために ETF の基準価額の分配金権利落ち日がETFの市場価格の権利落ち日に一致するように修正を行った ( 注 7) この3 銘柄は ダイワ上場投信 日経 225 (1321) 日経 225 連動型上場投資信託 (1320) 上場インデックスファンド 225(1330) である ( 注 8) 太田 [2016] は 前日のTOPIX 夜間収益率がマイナスである あるいは前日のETF 実効スプレッドが低いと日銀が買入れを行う可能性が高いことを指摘しており 日銀買入れがボラティリティを低下させるという本稿の結果と整合的である 1 交換を行う 個々のETFごとに複数存在する証券会社のことである ( 注 2) 近年では東証の多くのETF において 取引時 37