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プランの策定の支援などが議論されました こうした状況を踏まえ 我が国においても薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランを取りまとめるべく G7 ドイツ ベルリン保健大臣会合後の昨年 2015 年 11 月 厚生労働省に薬剤耐性 (AMR) タスクフォースを設置し 有識者ヒアリング等による検討を重ね

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薬剤耐性 (AMR) に関する背景 国際社会の動向及び我が国における現状について 平成 28 年 3 月 20 日 厚生労働省健康局 1

薬剤耐性 (AMR) について 背景 抗菌薬等が効かなくなる薬剤耐性 (AMR) 感染症が世界的に拡大 公衆衛生および社会経済的に重大な影響を与えている 米国における新規抗菌薬剤数と薬剤耐性菌の出現傾向の推移 一方で 新規の抗菌薬等の開発は近年停滞 このままでは AMR に対する対抗手段が枯渇 国際社会の動向 昨年の WHO 総会で AMR に対するグローバル行動計画を採択 加盟国には 2 年以内に国家行動計画の策定 実行を要求 昨年の G7 エルマウサミットでは AMR 対策を推進することで一致 今年の G7 伊勢志摩サミットにおいても主要議題となる見込み 我が国の対応 赤線は % 棒グラフは数 米国病院の ICU におけるバンコマイシン耐性菌の出現率 年 医療 農畜水産 食品安全の各分野において サーベイランス ( 耐性菌の監視 ) 抗菌薬の適正使用等の取組を実施 今年度内に国家行動計画を策定し 分野横断的に取組 ( ワンヘルス アプローチ ) を推進 G7 伊勢志摩サミット議長国として AMR について国際協力を推進 棒グラフ : 米国における新規抗菌薬剤数 出典 : Schäberle TF, Hack IM, Trends Microbiol. 2014; 22: 165-7. 2

2000 年から 10 年間の医療分野における平均抗菌薬使用量の変化 日本 我が国の抗菌薬使用量は 2.5-4.0% 減少している 出典 : Van Boeckel TP et al., Lancet Infect Dis 2014; 14: 742-50. 3

抗菌薬使用量の国際比較 現 状 抗微生物薬の販売量 ( 使用量 ) 日本は 抗菌薬の販売量の総量自体は多くはないが 幅広い細菌に有効な 3 系統の抗菌薬の使用割合が 他国と比較して 極めて高い 幅広い細菌に有効な 3 系統の抗菌薬 Greece Romania Belgium Cyprus France Luxembourg Italy Ireland Portugal Malta Iceland Croatia Spain United Kingdom Slovakia Poland Finland Bulgaria Czech Rep. Norway Denmark Lithuania Germany Slovenia Sweden Austria Hungary Latvia Estonia Netherlands Japan 日本 人口 1000 人あたりの平均一日抗菌薬販売量 0 5 10 15 20 25 30 35 セファロスポリン その他の β ラクタムキノロンマクロライド等ペニシリンその他 医療分野における抗菌薬の販売量日本と欧州各国との比較 ( 欧州は 2010 年 日本は 2013 年データ ) 4

ヒトの検体における薬剤耐性菌の検出率の国際比較 現 状 薬剤耐性菌の検出率 日本の 薬剤耐性菌の検出割合は ヒトにおいてはカルバペネム系抗菌薬以外は他国と比較して高いものが多い オランダエストニアベルギー中国オーストラリアチェコオーストリアノルウェーアメリカ合衆国カナダイギリスハンガリーデンマークスウェーデンドイツポルトガルスロベニアスロバキアラトビアフィンランドイタリアルクセンブルグアイスランドアイルランドブルガリアフランスリトアニアルーマニアクロアチアスペインポーランドキプロスマルタタイ日本 48% 肺炎球菌ペニシリン非感受性率 ( %) アイスランドノルウェースウェーデンオランダデンマークフィンランドエストニアラトビアスロベニアルクセンブルグオーストリアリトアニアドイツチェコイギリスポーランドベルギーフランスブルガリアアイルランドカナダスペインクロアチアハンガリータイスロバキアオーストラリアキプロスイタリア中国ギリシャポルトガル日本アメリカ合衆国マルタ韓国ルーマニア 51% 黄色ブドウ球菌メチシリン耐性率 ( %) デンマークオランダイギリスノルウェースウェーデンアイスランドアイルランドエストニアフィンランドベルギーオーストリアブルガリアドイツチェコマルタフランス日本ルクセンブルグスペインリトアニアキプロスポルトガルクロアチアスロベニアイタリアタイラトビアハンガリーポーランドギリシャスロバキアルーマニア 日本 17% 緑膿菌カルバペネム耐性率 ( %) ヒトにおける代表的な微生物の薬剤耐性率の国際比較 (2014 年 ) 2016/4/13 出典 : Antimicrobial Resistance: Global report on Surveillance 2014, 世界保健機関 (WHO) 2014 年

家畜とヒトの大腸菌の薬剤耐性率 * の推移 フルオロキノロン 1 * 検出された細菌のうち耐性菌の割合 セファロスポリン耐性は ヒトと肉用鶏で 2010 年頃までは急増 その後 生産者による自主的注意喚起後 肉用鶏の耐性率は急減した 一方 ヒトでは 増加傾向が続き ヒトと肉用鶏では異なる傾向が認められた 耐性菌の遺伝子解析でも ヒトと肉用鶏との関連性は否定的であった 30% 25% セファゾリン ( 第 1 世代セファロスポリン ) 30% 25% セフチオフル / セフォタキシム ( 第 3 世代セファロスポリン ) 20% 15% 10% 5% 1 20% 15% 10% 5% CTF 1 2 CTX 生産者による自主的注意喚起 CTX 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 採卵鶏豚肉用牛肉用鶏 JANIS 採卵鶏豚肉用牛肉用鶏 JANIS(CTX) 出典 : 国立感染症研究所提供データ 1 2007 年に JANIS の検査施設数を増加 (371 722) 2 2010 年より第 3 世代セファロスポリンの薬剤耐性の測定薬を変更 6

鶏とヒトでのサルモネラ菌におけるセフチオフル耐性率の推移 (2010 年 カナダ ) 鶏卵へのセフチオフル使用の自主的中止 食肉用鶏の大腸菌食肉用鶏のサルモネラ菌 ( ハイデルベルグ血清型 ) ヒトのサルモネラ菌 ( ハイデルベルグ血清型 ) セフチオフル耐性の割合 ( %) セフチオフル使用の部分的再開 なお 耐性菌の遺伝子解析が行われていないため 鶏とヒトの耐性菌の直接の関連性を示すものではない 出典 : Dutil L et al., Emerg Infect Dis 2010; 16: 48-54. 年 四半期 7

薬剤耐性 (AMR) に起因する死亡者数の推定 2013 年現在の AMR に起因する死亡者数は低く見積もって 70 万人 何も対策を取らない場合 ( 耐性率が現在のペースで増加した場合 ) 2050 年には 1000 万人の死亡が想定される ( 現在のがんによる死亡者数を超える ) 欧米での死亡者数は 70 万人にとどまり 大半の死亡者はアフリカとアジアで発生すると推測 交通事故 麻疹 2013 年 2050 年 ( 何も対策を取らない場合 ) 破傷風 がん コレラ (Antimicrobial Resistance in G7 Countries and Beyond, G7 OECD report, Sept. 2015) 下痢性疾患 糖尿病 出典 : Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations, the O Neill Commission, UK, December 2014

薬剤耐性の社会経済的インパクトの算出 約 2000 億円約 1500 億円約 4 兆 2000 億円 WHO 資料より 厚生労働科学研究班 ( 薬剤耐性菌のまん延に関する健康及び経済学的リスク評価に関する研究 ) において 我が国における薬剤耐性の社会経済的インパクトを算出予定 9

薬剤耐性 (AMR) に関する国際社会の動向 WHO 世界行動計画の採択 (2015 年 5 月 ) 2015 年 WHO 総会において 全ての国に対し 世界行動計画の採択から 2 年以内に 国家行動計画を策定し 行動する ことが決議された 世界行動計画は 1 教育 普及啓発 2 研究 サーベイランス 3 感染予防 4 抗生物質の最適化 5 新薬への投資の 5 つの目標で構成 G7 エルマウ サミット首脳宣言 (2015 年 6 月 8 日 ) G7 エルマウ サミット (2015 年 6 月 8 日 ) の保健分野に関する声明では G7 諸国が協調して薬剤耐性菌対策に取り組む方針が盛り込まれた 声明仮訳 ( 抜粋 ) 薬剤耐性抗微生物薬は人及び動物の治療薬の現在及び将来の成功のため極めて重要な役割を果たす 我々は 最近採択された WHO の薬剤耐性に関する世界行動計画を完全に支持する 我々は 自国の国別行動計画を策定し又は見直し 効果的に実施するとともに 他国の国別行動計画の策定を支援する 我々は 人及び動物の健康 農業並びに環境など全分野を含むワン ヘルス アプローチに強くコミットする 我々は 抗生物質の適正使用を促進し 基礎研究 疫学研究 感染の予防及び抑制の促進 並びに新たな抗生物質 代替的治療 ワクチン及び迅速な患者の身辺での検査の開発に取り組む 我々は 国別行動計画の策定又は見直し及び共有に当たり付属書 ( 薬剤耐性と戦う共同の努力 ) を考慮することにコミットする G7 保健大臣会合 (2015 年 10 月 8 日 ) G7 ベルリン保健大臣会合宣言文には AMR 対策の 3 本柱として 以下の 3 点が掲げられた 1 感染予防 感染制御 2 抗生物質の有効性の維持 ( 医療従事者 獣医従事者に対する適切な抗生剤使用教育やサーベイランスの拡大等 ) 3 研究開発の促進 10

WHO AMR グローバルアクションプラン (2015) 加盟国に対し 以下の項目を対象にした 2 年以内の行動計画の立案と その履行を求める 行動計画の実行と達成度の評価を行う : 2 年ごとに各国は達成状況を WHO に報告 G7 は WHO のグローバルアクションプランを支持 啓発 教育 市民全体への啓発 ヒト 動物 農業 環境等のすべての分野の関係者への啓発 教育 訓練 サーベイランス モニタリング ヒト 動物 農業等に対する薬剤耐性微生物 抗微生物薬使用量に関するサーベイランス モニタリング 検査室の機能強化と連携 感染予防管理 効果的な衛生状況の改善や感染症防止策の強化による感染症の罹患の減少 抗微生物薬の適正使用 ヒトや動物等への抗微生物薬適正使用 薬剤の質の担保 国内での管理 ( 処方外使用の禁止 等 ) 動物へのリスクアナリシスがなされない場合の成長促進目的での使用の段階的削減 研究開発 対策のための持続的資金の確保と維持 新規抗菌薬 治療薬や予防薬の開発のための国際協力 11

薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン (2016-2020) ( 骨子案 ) 1. 普及啓発 教育 1.1 国民に対する薬剤耐性に関する普及啓発 教育活動の推進 1.2 関連分野の専門職等に対する薬剤耐性に関する教育 研修の推進 2. サーベイランス モニタリング 2.1 医療 介護分野における薬剤耐性サーベイランスの強化 2.2 医療機関等における抗微生物薬使用量サーベイランスの実施 2.3 農林水産分野のサーベイランス モニタリングの強化 2.4 医療機関 検査機関 行政機関等における薬剤耐性に対する検査手法の標準化と検査機能の強化 2.5 ヒト 動物 食品等に関する薬剤耐性に関する統合的なワンヘルスサーベイランスの実施 3. 感染予防管理 3.1 医療 介護分野における感染予防 管理と地域連携の推進 3.2 畜水産 獣医療機関 食品加工 流通過程における感染予防 管理の推進 3.3 薬剤耐性微生物によるアウトブレイクへの対応能力の強化 4. 抗微生物製剤適正使用 4.1 医療機関における抗微生物薬適正使用の推進 4.2 畜水産 獣医療等の分野における抗菌剤の慎重な使用の推進 5. 研究開発 創薬 5.1 薬剤耐性感染症の発生 伝播メカニズム 及び社会に対するその影響を明らかにするための研究の推進 5.2 薬剤耐性に関する普及啓発 教育 感染予防 管理 抗微生物剤の適正使用に関する研究の推進 5.3 感染症に対する既存の予防法 診断法及び治療法の最適化に資する研究開発の推進 5.4 新たな予防法 診断法及び治療法等の開発に資する研究および産官学連携の推進 5.5 薬剤耐性の研究及び薬剤耐性感染症に対する新たな予防法 診断法 治療法等の研究開発に関する国際共同研究の推進 6. 国際協力 6.1 薬剤耐性に関する国際的な政策に関する日本のリーダーシップの発揮 6.2 薬剤耐性グローバル アクション プラン達成のための国際協力の展開 12

厚生労働省における薬剤耐性 (AMR) 関連施策 WHOグローバルアクションプランの柱立てに沿って 厚生労働省におけるAMR 関連施策を整理 啓発 教育 院内感染防止対策講習会の推進 世界抗菌薬啓発週間に合わせた取り組み 薬剤耐性の社会経済的インパクトの算出 サーベイランス モニタリング 院内感染サーベイランス事業 (JANIS) の実施 JANIS と家畜衛生分野における薬剤耐性モニタリング体制 (JVARM) の連携 薬剤耐性関連遺伝子ゲノムデータベース (GenEpid-J) の構築 感染予防管理 医療法 ( 平成 17 年改正 ) による 医療の安全を確保するための措置を講じることに関する規定 院内感染対策中央会議の設置 ( 平成 17 年 ) 医療機関における感染制御チーム (Infection Control Team: ICT) の組織化 抗微生物薬の適正使用 院内感染対策マニュアル作成のための手引き ( 平成 18 年 ) 感染防止対策加算 の施設基準における要件化 ( 平成 24 年 ) 院内感染対策中央会議 薬剤耐性菌対策に関する提言 ( 平成 27 年 ) 研究開発 日本医療研究開発機構 (AMED) 研究費 新興 再興感染症制御プロジェクト 国際共同研究イニシアティブへの参画 13