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グローバルスタンダード最前線 ITU世界無線通信会議 WRC-15 報告 お が さ わ ら まもる 1 小笠原 守 おおつき し ん や 2 /大槻 信也 やました ふみひろ 2 /山下 史洋 み や ぎ としふみ 1 /宮城 利文 1 2 NTT技術企画部門 /NTTアクセスサービスシステム研究所 ITU International Tele- 的に新たな周波数分配を行うためには 参加し 日本からは総務省渡辺克也 communication Union が 約 ₄ 年 ご WRCにおいてRRの改正決議が必要で 電波部長を団長に計82名が参加しまし と に 開 催 す る 世 界 無 線 通 信 会 議 す 今回の2015年ITU世界無線通信会 た 1 WRC: World Radiocommunication 議 WRC-15 は11月 2 27日に開催 RRでは世界を 3 つの地域 Regions Conference が 201₅年11月 に ス され 図 1 162カ国から約3800名が 1-3 に区分し 図 2 各々の地域単 イス ジュネーブ で開催されまし た このWRCでは無線通信規則 RR Radio Regulations の改正が議論さ れます RRはITU憲章 条約の中の 無線通信に関する国際規則として条 約 批 准 国 に 対 し て 強 制 力 を 有 し WRCで決議された改正内容がRRに 反映され その改正RRにのっとり各 主管庁の関係規定 日本では電波法 が整備されます ここではWRC-1₅ 審議結果の概要について報告します 2015年ITU世界無線 通信会議 WRC-15 図1 WRC-15会議模様 世界無線通信会議 WRC: World Radiocommunication Conference は 国際電気通信条約付属無線通信規則 RR: Radio Regulations の改正を審 議 す るITU-R International Telecommunication Union-Radiocommunications Sector 1 の最大規 模の国際会議で 通常 3 4 年ごと に開催されます この会議では 無線 周波数帯の利用方法 衛星軌道の利用 方法 無線局の運用に関する各種規定 技術基準などの国際的な電波秩序等に Region2 Region1 旧ソ連圏 RCC 欧州 CEPT 合同通信地域連邦 欧州郵便 欧州郵便 電気通信主官庁会議 電気通信主官庁会議 アラブ ASMG アラブ周波数管理グループ アフリカ ATU アジア 太平洋 APT 南北アメリカ CITEL 米大陸諸国間電気通信委員会 アジア 太平洋電気通信共同体 アフリカ電気通信連合 関する規律改正が議論されます 国際 Region3 1 ITU-R RRの改正 無線通信の技術 運用 等の問題の研究 勧告の作成および周波 数の割当て 登録等を行うITUの無線通信 部門 図2 RRにおける世界地域区分と地域的電気通信機関 NTT技術ジャーナル 2016.4 53

グローバルスタンダード最前線 位で各種無線業務への周波数分配を行っています. また, 地域的電気通信機関は第一地域で 4 つ, 第二地域で 1 つ, 第三地域で 1 つが存在し, 合計 6 地域の連合体で国際電気通信に関する活動を行っています. 日本は第三地域のアジア 太平洋電気通信共同体 (APT: Asia-Pacific Tele com mu nity) *2 に属しており, 我が国のRRの改正方針については,APT 内の関係会合 (APG: APT Conference Pre par atory Group for WRC) でコンセンサスを得られるかどうかが重要となります. WRC-15では図 3に示すように, 全体会合を司るPlenary( 議長はナイジェリア. アフリカから初選出 ) の下でCOM1からCOM7までの委員会が設置され, 特に, 技術や規則に関する具体的な議題検討については,COM4 ( 地上 航空 海上関連等 ),COM5 ( 衛星関連等 ),COM6( 一般, WRC-19 議題等 ) の各委員会にて審議されました. 表 1に示す計 36 項目の議題の審議が行われ, 出力文書として Provisional Final Acts WRC-15 が作成されました (2). このうち, 航空機事故に端を発して急遽設定された Global Flight Tracking( 人工衛星を利用した民間航空機追跡システム ) については, 地上からの追跡システムと同一周波数帯 (1090 MHz 帯 ) の割り当てが決議されました. IMTへの追加周波数特定現行の携帯電話周波数のひっ迫に伴い, 6 GHz 帯以下のIMTへの追加周波数特定が議論されました ( 議題 1.1). その結果, 日本がすでに使用している 1.5 GHz 帯 (1427 1518 MHz) が, 新たにグローバルでIMTへ特定することが決議されました. 衛星業務への追加周波数分配各種衛星業務 ( 固定衛星業務, 移動衛星業務 ) への周波数分配が議論されました. 第 2 & 3 地域において固定衛星業務 FSS(Earth-to-space) へ13 17 GHz 帯のうち300 MHzを追加一次分配する検討 ( 議題 1.62) では, 国境から500 km 以内にはFSS 地球局を設置できない条件が付されて 14.5 14.8 GHzの分配 (Earth-tospace) が決議されました. 22 26 GHz 内の周波数を移動衛星業務 (MSS) へ分配するための検討 ( 議題 1.10) では,RCC( ロシア ) から追加分配の強い要求がありましたが, 長い議論の末に規則改正を行わないことで決着しました. 海上移動衛星業務 (MMSS) へ 7 GHz 帯 / 8 GHz 帯を分配することの検討 ( 議題 1.92) では, 既存の地上局 ( 固定 移動 ) への影響を考慮し当該地上局からの保護を求めないことを附帯条件に,7375 7750 MHzをMMSS (space-to-earth) へ分 配することが決議されました. これらの議題については国内の地上局への影響がほぼない結果となりました. 船上地球局 (ESV: Earth Sta tion on board Vessels) の関連規定の見直し WRC-03(2003 年 ) において, それまで陸上無線で利用されていた周波数を海上船舶の衛星通信に開放し, 陸上から一定距離内では相互干渉回避のために船舶通信利用を禁止する規則が制定されました 決議第 902 (WRC-03). この決議では必要な沿岸離隔距離がKu 帯 (14 14.5 GHz) で125 km,c 帯 (5925 6425 MHz) で300 kmと規定されました. 今回設定された議題 1.8では, その必要な沿岸離隔距離の改正が議論され, 現行規則の決議第 902(WRC-03) は改定せず, 脚注 5.457Aの改訂により,C 帯でのみ離隔距離 330 kmでの運用が可能 ( 最小アンテナ径 1.2 m) と決議され, 日本への影響がないかたち *2 APT: 国際電気通信連合憲章に基づく地域的電気通信機関.2016 年 1 月時点で, アジア 太平洋地域の 38 カ国が加盟. 図 3 WRC-15 の審議体制 54 NTT 技術ジャーナル 2016.4

表 1 WRC-15 の議題一覧 議題 1.1 IMT 用追加周波数の特定に関する議題 議題 1.2 694-790 MHz 帯における移動業務への周波数分配に関する議題 ( 第一地域 ) 議題 1.3 ブロードバンド公共保安及び災害救援 (PPDR) の導入に関する議題 議題 1.4 5300 khz 帯におけるアマチュア業務の二次分配に関する議題 議題 1.5 無人航空機システムのための固定衛星業務への周波数分配に関する議題 110-17 GHz 帯における固定衛星業務の一次分配 (250 MHz 幅 ) に関する議題 ( 第一地域 ) 議題 1.6 213-17 GHz 帯における固定衛星業務の一次分配 (300 MHz 幅 ) に関する議題 ( 第二, 三地域 ) 議題 1.7 固定衛星業務による5091-5150 MHz 帯の利用見直しに関する議題 議題 1.8 5925-6425 MHz 及び14-14.5 GHzにおける船上地球局 (ESV) の関連規定の見直しに関する議題 17150-7250 MHz 帯及び8400-8500 MHz 帯における固定衛星業務への周波数分配に関する議題 議題 1.9 27375-7750 MHz 帯及び8025-8400 MHz 帯における海上移動衛星業務への周波数分配に関する議題 議題 1.10 22-26 GHz 帯における移動衛星業務への周波数分配に関する議題 議題 1.11 7-8 GHz 帯における地球探査衛星業務への一次分配に関する議題 議題 1.12 8700-9300 MHz 帯及び / または9900-10500 MHz 帯における地球探査衛星業務 ( 能動 ) への周波数分配 (600 MHz 幅 ) に関する議題 議題 1.13 有人宇宙船間通信の利用拡大に関する議題 議題 1.14 世界協定時 ( うるう秒挿入 ) の見直しに関する議題 議題 1.15 UHF 帯における船上通信の利用見直しに関する議題 議題 1.16 新たな自動船舶識別装置 (AIS) の導入に関する議題 議題 1.17 航空機内データ通信 (WAIC) の導入に関する議題 議題 1.18 自動車アプリケーションのための77.5-78.0 GHzにおける無線標定業務の一次分配に関する議題 議題 2 無線通信規則の参照で引用されたITU-R 勧告の参照の現行化 議題 4 決議 勧告の見直し 議題 7 衛星調整手続の見直し 議題 8 脚注からの自国の国名削除 1 移動衛星業務 (406-406.1 MHz) の保護に関する検討 (Issue 9.1.1) 議題 9 : 無線通信 2 衛星の調整軌道弧縮小に関する検討 (Issue 9.1.2) 3 途上国における国際公共通信業務のための衛星軌道位置及び周波数に関する検討 (Issue 9.1.3) 局長の報 4 無線通信規則の更新及び再構成に関する検討 (Issue 9.1.4) 告 5 第一地域における固定衛星業務地球局 (3.4-4.2 GHz) 支援に関する検討 (Issue 9.1.5) 議題 9.1 6 固定業務, 固定局及び移動局の定義に関する検討 (Issue 9.1.6) 7 緊急事態及び自然災害軽減のための周波数管理ガイドラインに関する検討 (Issue 9.1.7) 8ナノサテライト及びピコサテライトの規則面に関する検討 (Issue 9.1.8) 議題 9.2 無線通信規則適用上の矛盾及び困難に応じた措置に関する検討 議題 9.3 決議 80(WRC-07 改定 ) の規定に応じた措置に関する検討 新議題 民間航空機へのGlobal Flight Trackingの導入に関わる議題 議題 10 将来の世界無線通信会議の議題 で決着しました. 2019 年 ITU 世界無線通信会議 (WRC-19) の議題次回のWRC-19(2019 年開催予定 ) に向けてRR 改正に係る新たな議題として表 2に示す33 項目が決議され, WRC-15 閉会後の11 月 30 日 12 月 1 日に開催されたCPM19-1 (First session of the Conference Pre par a to ry Meeting for WRC 19) にてITU-R 内の担当グループが割り当てられました. 今研究会期 (2016 2019 年 ) の ITU-R 各研究委員会で検討が進められます. その中で, 日本から提案した次の 4 つの新議題についてはすべて承認されました. ITSの推進のための世界的あるいは地域的な周波数利用の協調に関する議題 ( 新議題 1.12) IMTの将来開発に向けたIMT 周波数の特定に関する議題 ( 第 5 世代移動通信システム向け )( 新議題 1.13): 研究周波数帯 24.25 86 GHz *3 NTT 技術ジャーナル 2016.4 55

グローバルスタンダード最前線 表 2 WRC-19 の議題一覧 議題 1.1 50-54 MHz 帯におけるアマチュア業務への周波数分配に関する議題 ( 第一地城 ) WP5A 議題 1.2 401-403 MHz 帯及び399.9-400.05 MHz 帯におけるMSS/METSS/EESS 用地球局の電力制限に関する議題 WP7B 議題 1.3 460-470 MHz 帯における気象衛星業務への一次分配への格上げ及び地球探査衛星業務への一次分配に関する議題 WP7B 議題 1.4 Appendix30 Annex7の見直しに関する議題 議題 1.5 17.7-19.7 GHz 帯及び27.5-29.5 GHz 帯における固定衛星業務での通信における地球局の使用に関する議題 議題 1.6 37.5-39.5 GHz 帯,39.5-42.5 GHz 帯,42.5-43.5 GHz 帯,47.2-50.2 GHz 帯及び50.4-51.4 GHz 帯における非静止軌道衛星のための固定衛星業務における規制の枠組みに関する議題 議題 1.7 短期ミッションの非静止軌道衛星のための宇宙運用業務の適応要件に関する議題 議題 1.8 GMDSS の近代化および新たな衛星プロバイダに関する議題 議題 1.9 1 全世界的な海上遭難 安全システム (GMDSS) および船舶自動識別装置 (AIS) の保護のための 156-162.05 MHz 帯の海上無線装置の規制措置に関する議題 2 海上移動衛星業務への 156.0125-157.4375 MHz 帯及び 160.6125-162.0375 MHz 帯における新規周波数分配に関する議題 議題 1.10 GADSS の導入及び利用に関する議題 議題 1.11 列車 - 沿線間の鉄道無線通信システムに関する議題 WP5A 議題 1.12 ITS の推進のための世界的あるいは地域的な周波数利用の協調に関する議題 WP5A 議題 1.13 IMT の将来開発に向けた IMT 周波数の特定に関する議題 TG5/ 1 議題 1.14 固定業務へ分配済みの周波数帯域における高高度プラットホームステーション (HAPS) への規制措置に関する議題 WP5C 議題 1.15 275 GHz 以上の周波数帯における能動業務の特定に関する議題 WP1A 議題 1.16 5150-5925 MHz 帯における WAS/RLAN の使用に関する議題 WP5A 議題 2 無線通信規則の参照で引用された ITU-R 勧告の参照の現行化 CPM19-2 議題 4 決議 勧告の見直し CPM19-2 議題 7 衛星ネットワークに係る周波数割当のための事前公表手続, 調整手続, 通告手続及び登緑手続の見直し 議題 8 脚注からの自国の国名削除 11885-2025 MHz 帯及び2110-2200 MHz 帯におけるIMTの導入 (Issue 9.1.1) WP4C/WP5D 21452-1492 MHz 帯におけるIMTと放送衛星業務との共存性 (Issue 9.1.2) /WP5D 議題 9 : 無線通信局長の報告 議題 9.1 3 固定衛星業務に割り当てられた 3700-4200 MHz 帯,4500-4800 MHz 帯,5925-6425 MHz 帯及び 6725-7025 MHz 帯における, 非静止軌道衛星システムの技術的及び運用上の課題の研究並びに規制条項 (Issue 9.1.3) 4 サブオービタル宇宙船上の局 (Issue 9.1.4) 5RR Nos.5.447F 及び 5.450A における ITU-R 勧告 M.1638-1 及び RM.1849-1 の参照に伴う技術的及び規制的影響の考察 (Issue 9.1.5) 6EV 用 WPT の研究 (Issue 9.1.6) 7 無免許の地球局端末の運用管理のための手法等の研究 (Issue 9.1.7) 8 マシンタイプコミュニケーションの導入に向けた技術的 運用的側面の研究及びスペクトル使用の調和 (Issue 9.1.8) 9 固定業務への 51.4-52.4 GHz 帯の分配及びスペクトル要件 (Issue 9.1.9) 議題 9.2 RR 適用上の矛盾及び困難に応じた措置に関する検討 議題 9.3 決護 80(WRC-07 改定 ) の規定に応じた措置に関する検討 議題 10 将来の世界無線通信会議の議題 WP5A WP1B WP1B WP5D 275 GHz 以上の周波数帯におけ る能動業務の特定に関する議題 ( 新議題 1.15): 研究周波数帯 275 450 GHz *3 24.25-27.5 GHz, 31.8-33.4 GHz, 37-40.5 GHz, 40.5-42.5 GHz, 42.5-43.5 GHz, 45.5-47 GHz, 47-47.2 GHz, 47.2-50.2 GHz, 50.4-52.6 GHz, 66-76 GHz, 81-86 GHz. 電気自動車 (EV) 用無線電力伝送 (WPT) の研究 ( 新議題 9.16) その他, 鉄道無線通信システム ( 列車 沿線間 ) に関する議題 ( 新議題 1.11), 高高度プラットホームステーション (HAPS: High Altitude Platform Station) に関する議題 ( 新議題 1.14), 5 GHz 帯無線 LANの拡張利用 に関する議題 ( 新議題 1.16) などの新たな議題が採択されました. 新議題 1.16については米大陸諸国間電気通信委員会 (CITEL: The Inter-American Tele communication Commission) と欧州複数国の寄書入力に基づき議論が行われ,5150 5470 MHz 帯と5725 5925 MHz 帯が研究対象周波数として 56 NTT 技術ジャーナル 2016.4

コラム 国際会議のことば 国際連合 (UN: United Nations) の専門機関であるITUにおいては,UNと同様に, 公式の会議では6カ国語 ( 英語, アラビア語, 中国語, スペイン語, フランス語, ロシア語 ) の発言が可能です ( 国際電気通信連合憲章第 29 条 ). またITUの会議規則には原本をフランス語とすること, 並び順位はフランス語の国名表記によるアルファベット順とすることが決められています. 全体会合 (Plenary) では,6カ国語の同時通訳が配置されるとともに, 基本的には6カ国語に翻訳されたドキュメントにて議論されます. 出席者は好みの言語のドキュメントを会議サイトからダウンロードするなどして, また好みの音声チャネルを選択して会議に参加しています. 設定されました. さらに, 次々回 WRC-23(2023 年開催予定 ) の新議題についても議論があり, うるう秒調整の見直し (WRC-15 議題 1.14) については, 幅広い関係団体を含めた議論をさらに進めてWRC-23までに廃止に向けた結論を得ることが決議されました. 2015 年 ITU 無線通信総会 (RA-15) WRC-15に先立ち,10 月 26 30 日の期間で2015 年 ITU 無線通信総会 (RA- 15: Radio communication Assembly 2015) がジュネーブの同会場で開催されました.RA-15はITU-Rの次会期研究委員会 Study Groups(SG1-SG7) の全体方針 ( 次会期テーマ等 ) の決定を主たる目的に約 4 年ごとに開催されますが, ここ最近ではWRCと同時期に開催することが通例となっています. 今会合には107カ国から459 名が参加し, 日本代表団としては総務省富永昌彦大臣官房総括審議官を団長に計 30 名が参加しました (3). またPlenary 議長の要職を橋本明氏 (NTTドコモ) が務めました. RA-15ではSGから提出された勧告案 ( 計 7 件 ), 決議案 ( 計 33 件 ), 次会期の研究課題の承認 ( 計 200 件 ) ならびに次会期の議長や副議長の承認が行われました. 第 5 世代移動通信システム (5G) 向けの呼称が IMT- 2020 として承認され, またITU-T 図 4 SG20と同様に,ITU-RでもIoTの研究を進めることが決議されました. 2016 2019 年研究会期の ITU-R Study Groupの体制を示します ( 図 4). 日本からは,SG6 議長に西田幸博氏 (NHK),SG4 副議長に河合宣行氏 (KDDI),SG5 副議長に新博行氏 (NTT ドコモ ) の 3 名が選任されました. 今後の展開 NTT グループでは,WRC-19 に向 2016-2019 年研究会期の ITU-R SG 体制 けて,ITU-Rやアジア 太平洋地域の関連会合, 国内関連会合等において引き続き積極的な貢献をしていく予定です. 参考文献 (1) http://www.soumu.go.jp/menu_news/ s-news/01kiban10_02000018.html (2) https://www.itu.int/pub/r-act- WRC.11-2015/en (3) http://www.soumu.go.jp/menu_news/ s-news/01tsushin04_02000060.html NTT 技術ジャーナル 2016.4 57