平均株価は 東証が公表する当該企業普通株式の終値の算術平均値を基準とした値とする 調整取引の結果 経済的には自社株を平均株価で取得したのと同様の結果となる 企業は株価上昇時の支払いのために 証券会社に新株予約権を割り当てる ステップ 3 : 株価上昇時は 新株予約権が権利行使され 差額分に相当する株

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2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

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有価証券等の情報(会社計)162 満期保有目的の債券 がを超えるもの がを超えないもの 公社債 435, ,721 31, , ,565 29,336 外国証券 ( 公社債 ) 1,506,014 1,835, ,712 1,493,938 1,778

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2019 年 8 月 22 日 各位 インフラファンド発行者名 東京インフラ エネルギー投資法人 代表者名 執行役員 杉本啓二 ( コード番号 9285) 管理会社名 東京インフラアセットマネジメント株式会社 代表者名 代表取締役社長 永森利彦 問合せ先 取締役管理本部長 真山秀睦 (TEL: 03

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Report

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085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

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平均株価は 東証が公表する当該企業普通株式の終値の算術平均値を基準とした値とする 調整取引の結果 経済的には自社株を平均株価で取得したのと同様の結果となる 企業は株価上昇時の支払いのために 証券会社に新株予約権を割り当てる ステップ 3 : 株価上昇時は 新株予約権が権利行使され 差額分に相当する株式を証券会社に交付する ステップ 4 : 企業は株価下落時に 新株予約権の割当時に締結された契約に基づき 証券会社から差額分の現金を受け取る 3. 前項のステップ 3 において企業が発行する新株予約権の条件例は 次のとおりである 発行方法発行される新株予約権数各新株予約権の払込金額権利行使日行使の際に出資される財産 第三者割当の方法により証券会社へ全額割当 1 個 1 本新株予約権 1 個当たり XXX 円 2015 年 XX 月 XX 日から 2016 年 XX 月 XX 日まで ( 発行日の翌日から 12 か月後 ) 新株予約権発行決議時の株価 1 株又は単元株数 新株予約権の権利行使を行うか否か判断する時点までの平均株価が 新株予約権発行決議時の株価を上回り 本新株予約権が行使されると 下記の計算式で算定される株数の発行会社株式が交付される 行使に伴い交付される株数 交付株式数 =1 株 ( 又は単元株式数 )+( 自己株式取得株式数 平均株価 - 自己株式取得金額 ) 株価 自己株式取得株式数 証券会社から取得した株式数 自己株式取得金額 証券会社から自己株式を取得するために要した金額 1 新株予約権の払込金額は 第三者の評価機関による計算結果を基礎として 決定されることが想定される なお 新株予約権の評価において 第 4 項に記載される契約を考慮する場合と 考慮しない場合では 評価結果が大きく変わる可能性があると考えられる 2

4. 第 2 項のステップ 4 において新株予約権の割当時に締結される契約 ( 以下 本資料において便宜上 現金決済契約 という ) の条件例は 次のとおりである ( 審議事項 (5)-1 参照 ) 証券会社は 新株予約権の権利行使を行うか否か判断する時点までの平均株価が 新株予約権発行決議時の株価を下回る場合 下記の計算式で算定される金額の現金を発行会社に支払う 証券会社による現金の支払 支払現金額 = 自己株式取得金額 - 自己株式取得株式数 平均株価 自己株式取得株式数 証券会社から取得した株式数 自己株式取得金額 証券会社から自己株式を取得するために要した金額 2 会計処理に関する分析 5. ASR 取引については 第 2 項に記載のとおり 4 つのステップがあり ToSTNet-3 により企業が自己株式を取得する取引 企業が証券会社に新株予約権を割り当てる取引 株価上昇時における決済取引及び株価下落時における決済取引がある ASR 取引の会計処理を検討する際には 以下の 2 通りの整理が考えられる (1) 4 つのステップに分けて取引ごとに会計処理を行う方法 (2) 各ステップにおける取引すべてを 1 つの取引として会計処理を行う方法 6. 第 5 項 (1) の 4 つのステップに分けて取引ごとに会計処理を行う方法では ToSTNet-3 により企業が自己株式を取得する取引 企業が証券会社に新株予約権を割り当てる取引 株価上昇時における決済取引及び株価下落時における決済取引ごとに会計処理を検討していくことになる 7. 一方 第 5 項 (2) の 1 つの取引とする場合の考え方は 以下の 2 つの考え方があり得る (a) 取得価額が事後的に決定される自己株式の取得取引 (b) 自社の株式を対象とした先渡契約 2 会計処理の検討に際しては 本取引が 適法に成立しているものであることを前提とする 3

(a) は 自己株式の取得時点で自己株式を認識し 決済時点において価格差相当額について自己株式の金額を調整する考え方である 他方 (b) は 自己株式の取得時点で自己株式を認識せず 決済時点で自己株式を認識する考え方である 8. 以下では 第 5 項 (1) 及び (2) のそれぞれの考え方に基づいた場合の会計処理について検討する 4 つのステップに分けて取引ごとに会計処理を行う方法 9. ステップ 1 からステップ 4 の 4 つのステップに分けて取引ごとに会計処理を行う方法を採用する根拠としては 以下が考えられる (1) 法的形式にしたがって会計処理すべきである (2) 企業は ToSTNet-3 により自社株式の取得日において 取得した株式に関する法的権利を獲得する この取引実態を忠実に反映する観点から 企業は自社株式を取得日において会計処理し EPS の算定において 取得した株数を発行済株式数から控除すべきである 10. ステップ 1 からステップ 4 の 4 つのステップに分けて取引ごとに会計処理を行う方法においては 以下の取引に関して会計処理を検討することとなる (1) ステップ 1 における自己株式の有償取得取引 (2) ステップ 2 及びステップ 4 における現金決済契約 (3) ステップ 2 及びステップ 3 における新株予約権 自己株式の有償取得取引に関する会計処理 11. ステップ 1 において企業が ToSTNeT-3 により自己株式を取得した場合 ステップ 1 からステップ 4 の各ステップにおいて別個の取引が行われているという考え方では この時点で自己株式の取得取引が完結していると考えるため 純資産の部に自己株式を計上することになる ここで計上された自己株式は ステップ 2 以降における取引によって金額の変更はなされない 4

現金決済契約に関する会計処理 12. 日本証券業協会から提示された日本版 ASR 取引のスキームでは 企業は証券会社に新株予約権を割り当て 取引開始後の平均株価が ToSTNeT-3 の取得価格よりも高い場合には証券会社が新株予約権を行使し 取引開始後の平均株価と ToSTNeT-3 の取得価格との差から生じる差額相当分について株式を発行することとされている 一方 取引開始後の平均株価が ToSTNeT-3 の取得価格よりも低い場合には取引開始後の平均株価と ToSTNeT-3 の取得価格との差から生じる差額相当分について 証券会社が企業に現金を支払うこととされている ( ここでは 現金決済契約 と呼ぶ ) 13. ここで現金決済契約に関する会計処理について検討する JICPA 会計制度委員会報告第 14 号 金融商品会計に関する実務指針 第 6 項は デリバティブを以下の特徴を有する金融商品と定義している (1) その権利義務の価値が 特定の金利 有価証券価格 現物商品価格 外国為替相場 各種の価格 率の指数 信用格付け 信用指数 又は類似する変数 ( これらは基礎数値と呼ばれる ) の変化に反応して変化する1 基礎数値を有し かつ 2 想定元本か固定若しくは決定可能な決済金額のいずれか又は想定元本と決済金額の両方を有する契約である (2) 当初純投資が不要であるか 又は市況の変動に類似の反応を示すその他の契約と比べ当初純投資をほとんど必要としない (3) その契約条項により純額 ( 差金 ) 決済が要求若しくは容認し 契約外の手段で純額が容易にでき 又は資産の引き渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置く 14. 本スキームの現金決済契約については 現金により純額決済され財が明示的に流入することから 前項の要件を満たす可能性がより高いように見受けられる 他方 これまで自社株式を対象としたデリバティブに特定して議論されたことはなく 審議事項 (5)-2 参考資料 ( 第 302 回企業会計基準委員会における参考資料 ) の第 24 項のような意見も聞かれるところである 新株予約権に関する会計処理 15. 新株予約権については その形式を重視して既存の新株予約権に関する会計基準をベースに検討するのか その実質を考え自己株式を決済手段としたデリバティブとして取り扱うかにより会計処理が異なると考えられる 以下においては それぞれ 5

の考え方に基づいた場合の会計処理について検討を行う ( 既存の新株予約権に関する会計基準をベースに検討する場合の会計処理 ) 16. 証券会社に対して有償で発行される新株予約権について 既存の会計基準をベースに検討する場合 企業会計基準適用指針第 17 号 払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理 ( 以下 複合金融商品適用指針 という ) と 企業会計基準第 8 号 ストック オプション等に関する会計基準 ( 以下 ストック オプション会計基準 という ) が関連すると考えられる 17. ASR 取引における新株予約権は ストック オプション会計基準が適用範囲としている取引 3 には該当しないものと考えられる 複合金融商品適用指針に従って会計処理を行う場合には 新株予約権の発行時において 発行に伴う払込金額を純資産の部に新株予約権として計上し 事後の会計処理としては 純資産として計上した新株予約権について価値変動による評価替えは行わないことになる さらに新株予約権が行使されず失効した場合には 利益に計上することになる ( 自己株式を決済手段としたデリバティブとして取扱う場合の会計処理 ) 18. この考え方は 新株予約権について その法的形式からではなく実質面から考えてデリバティブとして取り扱うものであり この場合 ToSTNeT-3 により自己株式を取得した時点と同時に当該デリバティブの公正価値によりデリバティブ資産 負債を計上し その後 公正価値変動を損益に計上することになる 19. この考え方においては 新株予約権付与後 当該デリバティブに関して時間的価値が減少する一方 自己株式の株価の変動により本源的な価値が変動する 決済時点においてToSTNeT-3 の取得価格よりも取引開始後の平均株価が高いケースでは デリバティブの公正価値は取引開始後の平均株価とToSTNeT-3 の取得価格の差から生 4 じる差額相当になり 当初の公正価値との差額を損益に計上することが考えられる 一方 決済時点において ToSTNeT-3 の取得価格よりも取引開始後の平均株価が低いケースでは 当該デリバティブの公正価値はゼロになり 当初の公正価値との差額を損益に計上することが考えられる 3 ストック オプション会計基準第 3 項 4 新株予約権の当初の公正価値について 現金決済契約の内容を反映するか否かの論点がある 6

( 分析 ) 20. 仮に新株予約権について自己株式を決済手段としたデリバティブとして取扱う考え方を採用し また現金決済契約をデリバティブとして取り扱う場合には いずれの取引も事後的な公正価値の変動を損益計上することから 取引開始後の平均株価が ToSTNeT-3 の取得価格から上昇する場合と下落する場合で整合的な会計処理となることが考えられる 一方 仮に既存の新株予約権に関する会計基準をベースに検討するが 現金決済契約をデリバティブとして取り扱う場合には 新株予約権に関する事後的な公正価値の変動を損益に計上しない一方 現金決済契約に関する事後的な公正価値の変動を損益に計上するため 取引開始後の平均株価が ToSTNeT-3 の取得価格から上昇する場合と下落する場合で不整合が生じる可能性がある 21. なお 自己株式を決済手段としたデリバティブとして取扱う考え方は これまで新株予約権について採用されてきた会計処理とは 新株予約権を公正価値測定し 事後的な公正価値の変動について損益計上する点において大きく異なることとなり 慎重な検討が必要となると考えられる 各ステップにおける取引すべてを 1 つの取引として会計処理を行う方法 22. この方法では ASR 取引全体を 1 取引として会計処理を行う このような方法を採用する根拠としては 以下が挙げられる (1) ASR 取引について その実質にしたがって会計処理すべきであり ASR 取引は 経済的には 一定期間の平均株価で自社株式を取得する行為と同様の経済効果をもたらす (2) 当初の取引の設計が 一連の取引を一体として扱うべきことを意図しているのであれば 単一の会計単位として処理すべきである (3) 自社株式の取得と株価上昇時又は株価下落時のために締結される契約は 同時に同一の金融機関と契約されるため 関連性のある取引と考えられる 企業は 一定期間に自社株式を取得することを意図して これらの取引を開始するものであり 自社株式の取得日に支払われる金額は予約金的なものである 23. ASR 取引全体を 1 取引として会計処理する方法に関しては 第 7 項に記載したとおり 取得価額が事後的に決定される自己株式の取得取引 と 自社の株式を対象とした先渡契約 の 2 つが考えうる 7

24. 取得価額が事後的に決定される自己株式の取得取引 の考え方を採用した場合 ToSTNeT-3 で自己株式を取得した時点で自己株式を計上したうえで 決済時点で資本に計上されている自己株式の金額を調整する この場合 ToSTNeT-3 で取引を行った時点では自己株式の取得は完了せず 決済時点まで自己株式の取得価額が確定しないこととなる なお この方式を採用した場合 会社法上の取扱いと異なる結果となる可能性があり その点については十分留意する必要があると考えられる 25. 自社の株式を対象とした先渡契約 の考え方を採用した場合 ToSTNeT-3 で取引を行った時点では 会計上 自己株式を計上せず 決済時点で自己株式を計上する この点 現行の会計基準では 自己株式の取得については 対価が金銭の場合は対価を支払うべき日に認識し 対価が金銭以外の場合は対価が引き渡された日に認識するとされていることから 5 自己株式を取得した時点で自己株式を計上しないことは難しい可能性がある また 前項と同様に この方式を採用した場合 会社法上の取扱いと異なる結果となる可能性があり その点については十分留意する必要があると考えられる ディスカッション ポイント 本日は 論点の認識の共有をまず図りたい 今後 検討を進めていくうえで 本資料以外で考慮すべき点はあれば ご意見を伺いたい 以上 5 企業会計基準適用指針第 2 号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針 第 5 項 8