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三菱日立パワーシステムズ特集技術論文 10 700 級蒸気タービン技術開発 700 Class A-USC Steam Turbine Development *1 齊藤英治 *2 西本慎 Eiji Saito Shin Nishimoto *3 遠藤裕之 *4 山本隆一 Hiroyuki Endo Ryuichi Yamamoto *5 川崎憲治 *6 佐藤順 Kenji Kawasaki Jun Sato 三菱日立パワーシステムズ ( 株 )(MHPS) は, 国家プロジェクト ( 国プロ ) の支援を受けて 2008 年から 700 級 A-USC 蒸気タービン開発を行ってきた 主要な開発項目は,700 10 万時間で 100MPa 以上の高温クリープ強度を持ち,10 トン以上の大型鍛造ロータを製造可能とする Ni 基材料の開発や,Ni 基と高 Cr 鋼の異材溶接ロータ製造技術である これらを検証するため, 最終的に, 実機大のタービン回転試験を行った この試験条件は 700 以上の温度場で異材溶接ロータを持つ蒸気タービンを 3600rpm で長時間回転するものである 本報では, これら開発内容について詳述する 1. はじめに MHPS の蒸気タービンは,1908 年国産初の陸用蒸気タービン (500kW) を製造してから, 現在累計出力 360GW を超える迄に至る 蒸気タービンが現代においても継続してニーズが高い理由は, 長期間にわたって安定した電力を供給してきた実績に基づくことが大きい また, 蒸気条件の向上や, 設計手法にいち早く最新の解析技術を採用し, 高効率化及び高信頼性に伴う最新技術を実製品に適用することで, 蒸気タービンは進化し続け, 電力エネルギー需要の期待に応え続けてきている点も大きい 近年では, 環境問題を踏まえて, 単機出力容量の増大化, 高効率化のニーズがより一層高くなってきた 図 1に石炭火力プラントの蒸気条件の変遷について示す 石炭火力の蒸気条件は, 亜臨界圧, 超臨界圧, そして 600 級超々臨界圧発電 (USC) と経てきた これら各年代で採用されてきた最高の蒸気条件は, 時代ごとに発展してきている蒸気タービンの高効率化技術適用との相乗効果を伴いプラント全体の高効率化達成に寄与してきている この蒸気条件向上の延長として, 600 級 USC から更に温度を 100 上げた 700 級 A-USC(Advanced Ultra Super Critical) の実用化ニーズが世界的に高まってきている (1) A-USC が実現できれば, タービン効率は 50% を超え, プラント効率も 46%HHV( 高位発熱量基準 ) 以上が見込まれる この効率向上量を燃料費換算すると,USC に比べて年間 16~20 億円程度低減できる (2017 年 1 月時点の石炭価格 60~ 80$/ton (2) より試算 ) CO 2 も世界平均値より 25%~27% の削減に寄与する また,A-USC は既設石炭火力とシステム構成が同じなので, 経年火力のリプレースとしての利用も容易である 日本では,2008 年より経済産業省の補助事業として国プロが進められてきた 以下,A-USC タービン開発の内容を述べる *1 三菱日立パワーシステムズ ( 株 ) ターボマシナリー本部蒸気タービン技術総括部蒸気タービン計画部主席技師工博 *2 三菱日立パワーシステムズ ( 株 ) ターボマシナリー本部蒸気タービン技術総括部蒸気タービン計画部主席技師 *3 三菱日立パワーシステムズ ( 株 ) ターボマシナリー本部蒸気タービン技術総括部蒸気タービン計画部 *4 総合研究所材料研究部室長工博 *5 総合研究所製造研究部 *6 三菱日立パワーシステムズ ( 株 ) 研究所火力システム研究部主席研究員工博

11 図 1 蒸気条件の変遷 2. 開発課題と工程 現在商用化が検討されている先進 12Cr 鋼の適用限界は 630 レベルであって, それ以上の蒸気温度を達成するには,Ni 基合金の採用が見込まれる しかし,Ni 基合金の特性には, 温度変化に対する組織変化の感受性が強いという製造上の課題がある そのため, 大型素材の製造ほど, 表面と内部の温度勾配がつきやすくなるので, 成分元素の濃度分布が不均一になる偏析を生じる問題がある 試験片レベルや小さな素材で如何に高い強度特性が得られても, 大型素材にわたり設計者の目標を満足する強度を確保することは難しい そのため, 蒸気タービンロータなどに適用できる数トン規模の Ni 基合金開発とその長期信頼性の検証が,A-USC 開発にとって最も大きな課題となる また, 高価な Ni 基合金を使用する量を抑えた設計が必要であって, 特に大型鍛造の製造が難しいロータにおいては,Ni 基合金による溶接ロータ製造も大きな課題である 図 2に開発マスタースケジュールを示す (3) 2008 年から 2012 年の間に, ボイラ, タービン, 弁に係る材料 要素技術開発が行われた それら要素技術開発の信頼性を検証するために,2013 年から 2016 年の間に, ボイラ実缶試験, タービン回転試験を行い評価した 図 2 A-USC 国プロ開発マスタースケジュール

12 3. 新 Ni 基合金開発 表 1に当社が開発してきたNi 基合金について示す これらの材料は, 国プロ開発時の目標であった,10 万時間 100MPa 以上の高温クリープ強度が達成される見込みであり,FENIX700 (4) 及び LTES700R (5) では 10 トン級の大型鍛造ロータの試作に成功した また, これら材料はΦ1000 程度の大型鍛造ロータ試作で, 非破壊検査による検出寸法が2mm 程度以下の結果を得た 一方,USC141 (6) や USC800 (7) は, 高温強度に優れるのみならず, 製造加工性に優れており, 翼, ボルト材のみならず, ボイラ配管等の適用も見込まれている これら各材料の長時間クリープ強度は, 実際に 10 万時間以上継続して試験が続けられる予定であり, 長時間の信頼性を検証中にある またタービン設計に必要な材料機械特性を習得し, 回転試験用のタービンロータ設計に反映 した 表 1 MHPS 開発評価中新 Ni 基合金 材料名 C Ni Cr Mo Co W Nb Al Ti Fe FENIX700 LTES700R USC141 USC800 0.01 42 16 2 1.3 1.7 Bal. 鉄 -Ni 基合金であり, 素材価格が一般的 Ni 基合金の 2/3 程度 大型鍛造の製造性に優れている ロータ候補材 0.03 Bal. 12 6.2 7 1.65 0.65 Ni 基合金であるが, 線膨張係数は高 Cr 鋼と同程度に抑えている 溶接施工性に優れる ロータ候補材 0.03 Bal. 20 10 1.2 1.6 700,10 万時間で 180MPa 程度の高温クリープ強度を持つ タービン翼材, ボルト材, ボイラ伝熱管候補材 0.04 Bal. 17 6 23 2 4 Ni 基合金の高強度化と熱間鍛造性を両立した材料 700,10 万時間で 270MPa 程度の高温クリープ強度を持つ タービン翼材, ボルト材, ボイラ伝熱管, 大径管候補材 4. 製造技術開発 4.1 溶接ロータ試作 Ni 基合金について, 鍛造ロータ製造限界とコスト低減化のため,Ni 基合金と Cr 鋼による異材溶接ロータ製造技術は A-USC を実現するためのキーテクノロジーのひとつである 図 3に溶接ロータの施工例を示す 当社は既に高 Cr 鋼などの溶接ロータ製造実績を持ち, その技術を Ni 基合金にも展開している 溶接手法は実績のある TIG 溶接を採用し, 実物大のモックアップ溶接を行い, 継手性能 ( 組織, 機械特性など ) を検証した後に回転試験用溶接ロータの施工を行った 溶接ロータの製造の信頼性検証を行うために非破壊検査も重要技術である Ni 基合金は超音波透過性が劣る しかしながら,LTES700R の結晶粒度は細かく, 素材の MDDS( 最小検出欠陥径 :Minimum Detectable defect Size) は2 以下を得た また, 溶接部の超音波透過特性を評価し, 溶接境界の散乱波ノイズを低減したセンサを開発した 図 3に溶接部の非破壊検査結果を示す 素材及び溶接部においても非破壊検査で問題は無く, 健全性が確認されている 図 3 溶接ロータ施工例及び非破壊検査例

4.2 製造試作タービン翼構造やロータ翼溝構造は複雑であり, かつ組立製造上の加工公差が厳しい Ni 基合金のような難削材の切削で, 従来並みの加工公差を保つには, 製造面の技術向上が必要になる タービンの製作施工事例として鍛造翼の切削加工例を表 2に示す Ni 基合金は硬く粘い性質を持つ難削材であり, かつ熱伝導率が低く切削熱が切削の1か所に集中するため, 工具損傷が部分的に著しく早く発生する問題があった 施工当初は, 工具チップの選定や切削油の管理などに苦労した 現在は, これらの課題をクリアし, 従来の製造と同様の加工精度が得られている 13 表 2 タービン鍛造動翼切削加工例 No. #1 #2 #3 #4 試作 3D 計測結果 問題点 1 プロフィル部に凹み有 2 溝部, カバー部に食い込み部有 1 プロフィル部波打ち形状 1 プロフィル後縁端部厚さ外れ 2 翼溝部公差外れ 形状問題無 また, 回転試験ロータには部分負荷運転に対応する調速段翼を計画した 近年, 再生可能エネルギーが多く採用されるので, 例え A-USC での性能向上を達成しても, 部分負荷運転も考慮しておくべきと考えたからである 図 4に調速段翼の製造例を示す MHPS の調速段翼構造は,3 本の翼が一体構造で翼根部はフォーク構造を有しており, 製造上最も難しく複雑な構造をしている そのため, この調速段翼構造の製造試作は, 難削材製造 加工 組立技術向上に大いに役立った 図 4 調速段翼製造例 5. 高温場タービン回転試験 タービンコンポーネントの信頼性を検証するため高温場回転試験を行った 高温場回転試験ロータの製造及び検証内容を図 5に示す 主な試験目的は,Ni 基合金の実機大タービンの製造性の確認や高温回転試験を経た後の各種部材の余寿命評価を行い, 特に溶接継手部の信頼性を検証することである 当社では, 試設計した二段再熱蒸気タービン構造 (3) に基づき, LTES700R の共材溶接,LTES700R と MTR10A の異材溶接部を含み, 翼形状の製造性が比較的困難である調速段と IP6 段,7 段を模擬したロータを回転試験用ロータ構造に採用した ( 図 6) 調速段翼については, 先に述べたとおり, 複雑な翼構造の製造性や組立性が Ni 基合金で成立することを確認した また,IP 翼については, 鍛造翼の製造性を確認した 異材継手は, 実機での採用を想定し,IP 段落間に備えている

14 図 5 回転試験検証項目 IP: 中圧 HP: 高圧 VHP: 超高圧 図 6 回転試験ロータ設計コンセプト タービン回転試験設備及びロータ構造及び設備計画構造を図 7に示す この設備の特徴は, ヒータの放射により 700 以上の温度場が模擬され, 駆動モータによって真空中 3600rpm の定格回転で長時間試験するものである 試験中, 最も応力が高い部位はタービン翼溝部であり, 実際の運用上はこの箇所が 700 の雰囲気に曝されることは無い それゆえ, 実際の運用に比べて, 本試験は寿命評価の加速試験となる 当初は 調速段翼周りを約 730 に保ち 1500 時間試験を行うことで 10 万時間のクリープ加速試験を計画した しかし 実際は風損により IP 段落間の継手温度が上昇したため 設備及びロータ改造を行い 最終的に 3600rpm の定格回転数で 1051 時間試験した 試験中, 軸振動, 軸伸び, ヒータパネル雰囲気温度, ロータ温度などを 24hr/ 日監視した 図 8に試験ロータと, 試験中の調速段翼の写真を示す 回転試験中, 調速段部は 700 以上, 異材継手部は 600 程度の温度場を保った 1051 時間の連続回転試験で, 異材継手部で 16 万時間, 調速段翼で1 万時間相

当のクリープ損傷を達成した 回転試験後, 目視点検, 非破壊検査, ロータ振れ計測などを行い試験前後と比較した結果, 特に問題は無く健全性が確認できた 現在, ロータを解体して試験片を抽出し, 余寿命評価を行っている 15 図 7 回転試験ロータ及び設計計画構造 図 8 回転試験ロータ及び試験状況 6. まとめ 2008 年より9 年間実施してきた A-USC タービン開発は, 経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 (NEDO) の助成事業によるもので計画通り完了した これまでの技術開発により,700 級蒸気タービンの実機製造の見通しはついた また, タービンのみならず並行してボイラも実缶試験を終えた ボイラ実缶試験は 700 で1 万 3 千時間を経過し, 抜管後, 試験サンプルを抽出して, 信頼性検証を行っている ボイラもタービンも素材及び溶接継手のクリープ試験は,10 万時間を超えたものもあり, 長時間信頼性検証が確立しつつある USC の実用化を日本で確立したことと同様,A-USC の実用化により広く世界に貢献していきたい 参考文献 (1) K. Nicol, "Status of Advanced Ultra-Supercritical Pulverised Coal Technology", CCC/229, ISBN 978-92-9029-549-5 (2013) (2) 資源エネルギー庁, エネルギー白書 2017 (3) Y. Tanaka, et al., "Development of Advanced USC Technologies for 700 Class High Temperature Steam Turbines", ASME Turbo EXPO 2012, GT2012-69009 (2012) (4) S. Imano, et al., Proc. Conf. Superalloys 718, 625, 706 and Various Derivatives (2005), pp77-86 (5) R. Yamamoto, et al., "Development of a Ni-based Superalloy for Advanced 700 Class Steam Turbines", 5th Int. Conf. on Advances in Materials Tech. for Fossil Power Plants (2007) (6) T. Ohno, et al., ''Development of Low Thermal Expansion Nickel base Superalloy for Steam Turbine Applications, Energy Materials, Vol2, No.4 (2007) (7) S. Imano, et al., "Development and Trial Manufacturing of Ni base Alloys for Coal Fired Power Plant with Temperature Capability 800 C", 7th Int. Conf. on Advances in Materials Tech. for Fossil power Plants (2013)