巴川流域

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万博探鳥会2009年の記録

万博公園探鳥会2010年度の記録

万博公園探鳥会 07年度の記録

万博公園05年春の渡り鳥調査結果

平成 28 年度東京都内湾水生生物調査 2 月鳥類調査速報 実施状況平成 29 年 2 月 27 日に鳥類調査を実施した この時期は越冬期にあたり 冬鳥のカモ類やカイツブリ類 カモメ類が多く確認された 天気は曇りで 気温 8.1~9.9 北寄りの風が 2.1~ 3.5m/sec であった 調査当日は

万博公園探鳥会2012年度の記録

平成 25 年度東京都内湾水生生物調査 6 月鳥類調査速報 実施状況 平成 25 年 6 月 10 日に鳥類調査を実施した 天気は曇 気温 24.0~25.3 東南東 ~ 南南西の 風 風速 1.9~2.9m/s であった 当日は大潮で 潮位は 11 時 58 分干潮 (18cm) 18 時 26

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技術発表 (2) FS センターに飛来する野鳥の種類 - 果樹園での自然共生型の鳥害対策を目指して - 農学部高橋是成

26 アカハラスズメ目ヒタキ科本土部伊豆諸島日中日露種アカハラの亜種 27 アカハラダカタカ目タカ科 1998 年版目録に記載なし 28 アカハラツバメスズメ目ツバメ科伊豆諸島日米日豪日中日露種ツバメの亜種 29 アカマシコスズメ目アトリ科伊豆諸島日中種アカマシコの亜種 30 アカモズスズメ目モズ科

はじめに 麻機多目的遊水地は 巴川流域の総合的な治水対策事業の柱のひとつとして整備し 県で治水 ( 河川 ) 事業を 静岡市で緑地 ( 公園 ) 事業を進めています 遊水地は 平成 16 年 10 月までに第 3 工区 第 4 工区が整備され 5 年に一度の大雨に対する安全性を確保しました 現在は

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1) 樹林地 ため池 ( 東部丘陵地 ) ため池 2 なごやの水 20 ページ参照 生き物がみられる樹林地 ため池 東部丘陵 : 東谷山 小幡緑地 東山公園 平和公園 猪高緑地 牧野ヶ池緑地 相生山緑地 みどりが丘公園 勅使ヶ池緑地 大高緑地など 東部丘陵に残存するまとまりのある樹林地とため池は 生

長野県環境保全研究所研究報告 4:87-91(2008) 資料 長野県環境保全研究所飯綱庁舎敷地の鳥類相 1 堀田昌伸 1996 年から 2007 年にかけて, 長野県環境保全研究所飯綱庁舎の敷地で 163 日, 鳥類相を調査し,26 科 74 種の鳥類を確認した. 繁殖のために夏鳥が渡来する 4

見られた種一覧 1 / 5 ページ 6 調査データ集計 1 平成 26 年度調査で見られた種 208 種 ( 野生化した外来種 4 種を含む ) 分類 掲載順は日本鳥類目録改訂第 7 版に準拠する ( リストIDも同目録で付与されたもの ) レッドリスト 目 科 種 学名 リスト ID 環境省第 4

目 黒 区 の 環 境 目 黒 区 全 域 に 広 がる 住 宅 地 には 大 小 さまざまな 緑 地 が 見 られます 庭 木 として 多 種 の 樹 木 が 植 えら れた 植 え 込 み 花 壇 や 菜 園 草 地 のほか 地 面 の 乾 湿 や 日 照 の 差 異 など 身 近 な 生 物

Microsoft Word - 0評_動物_0402(分布表記なし).docx

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表紙の写真メダイチドリとトウネン (2015 年 5 月藤前干潟 ) 写真提供東海 稲永ネットワーク

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第5章 調査方法

ヌギ, イヌシデなどの落葉広葉樹に, スギなどの針葉樹が混じっている. 林床は一部が公園化されているため, アズマネザサなどに覆われた地域はおよそ半分ほどである. 成顕寺の森は, 流山市駒木にある社寺林であり, 面積は約 1haである. シラカシを中心とする常緑広葉樹とサクラ, ケヤキなどの落葉広葉

2002年度

(7) 鳥類 調査は 6 月 9~10 月 1 月に実施した 調査は 対象地区の面積 地形を考慮して決定した定量 的観察 ( ルートセンサスまたは定点観察 ) と 調査範囲を任意に踏査して出現種を記録する任意観察の2 手法によって出現種の把握に努めた また 調査実施時には 主に植生の違いを考慮した環

シジュウカラ第89号

野 鳥 における 高 病 原 性 鳥 インフルエンザに 係 る 対 応 技 術 マニュアル 簡 易 版 - 1 -

表 1 竜西地区で観察された鳥類種 番号 RDB 観察種名 個体数観察回数 番号 RDB 観察種名個体数観察回数 1 アオゲラ シメ アオサギ ジュウイチ アカゲラ スズメ アカハラ

長崎県の鳥類 40 長崎県産鳥類の年間生息状況 種名 チゴモズ モズ アカモズ タカサゴモズ オオモズ オオカラモズ 亜種名 1 月 上旬 72 中旬 39 下旬 月 上旬 31 1 中旬 下旬 23 3 月 上旬 21 中旬 29 下旬 36 4 月 上旬 9 中旬 1



Microsoft Word - 2章.doc


Microsoft Word - NO1-2

50 名古屋の野鳥

H30 秋第 2 号平成 30 年 10 月 16 日現在 10/14( 日 ) 風もなく穏やかな一日 個体数は少なく 鳥がいないが ウグイス アオジ アトリ オオルリ キビタキなどは増えた カラフトムジセッカも複数いるようだ キマユムシクイ 1 ムギマキ 5(2 の畑 ) コホオアカ 2 オジロビ

第1部 わかやまの貴重な動植物 1 選定の考え方 (1) 対象種 県内域に生息 生育する陸産 淡水産及び汽水産の野生動植物とする ただし 海域を生息域とするウミガメ類については 産卵地が県内域で確認されている種を 選定の範疇に含めた 原則として外来種や飼育種 栽培種は除外するが これらに該当する種で

野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る 対応技術マニュアル 簡易版 - 1 -

2 クマタカ (Aつがい) の繁殖状況等 A. 繁殖状況クマタカAつがいの過年度からの繁殖状況を表 に示す Aつがいについては 一部推定を含むものの H21 年繁殖期に繁殖は行われず H22 年繁殖期は繁殖を行うものの中断 H23 年繁殖期に調査開始後初めて繁殖成功した ( 推定 )

表紙の写真メダイチドリとトウネン (2015 年 5 月藤前干潟 ) 写真提供東海 稲永ネットワーク


役員会報告 2014 年度第 9 回 ~ 第 11 回役員会 参加者 第 9 回 (14/12/21) 宮原明幸 田中丸雅雄 橋本泰博 馬場清 山崎章弘 江里口立子 蒲原留美 島田洋 青栁良子第 10 回 (15/1/11) 橋本泰博 田中丸雅雄 中村さやか 原野正道 坂田紀子 江里口立子 中原正義

近岡勝夫さんにぎ 12 月のそうか公園は相変わらず水鳥達で賑わいを見せているが 目当ての野鳥 ( キクイタダキ オ ジロビタキ ルリビタキ雄など ) 今年も未だ見られず そんな状況なので仲間との雑談の時間が多くなっめったてしまう それを察してか? ある日 この時季滅多に姿を見せないウグイス ( 写真

平成25年度

BWG NO.: 遠江の鳥バードウォッチングガイド静岡県西部の身近な探鳥地 の探鳥地番号です 御前崎海岸探鳥会 ( 御前崎市 ) 9/11( 日 ) 難易度 BWG No.40 御前崎海岸大海原を望みながらの探鳥会です 沢山のシギ チドリが見られるでしょう クロサギ オオミズナギドリに出会えるといい

121022資料1さっぽろビジョン(素案)

2.6 動物 調査手法別鳥類確認種一覧 表任意観察調査によって確認された種一覧 (1) 渡り 目名科名種名学名生活型区分 任意観察調査 第 3 期区域 開発済区域 周辺区域 冬季春季夏季秋季冬季春季夏季秋季冬季春季夏季秋季 1 キジ キジ ヤマドリ Syrmaticus soemmerr

Microsoft Word - 005 死亡野鳥回収マニュアル(H27改訂)

1 ほ乳類 浅間山の動物 南アルプスの ニホンジカ (1) ニホンカモシカ ウシ科 ( 離山 ) 人を見ても逃げなくなっている ( 南アルプス北沢峠 ) 日本固有のカモシカで 本州 四国 九州の山地にのみ分布しています 主に標高 1000m 以上の山林に暮らし

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P _2-8長井沼ゲンゴロウ

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中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価準備書

最初にオスが羽化して、続いてメスが羽化する

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バードウォッチングへの誘い17 冬の大型猛禽類 大型の猛禽類たちが観察できるシーズンがやってきました 観察できるといっても 個体数の少ないオオワシ オジロワシはいつも姿を見せてくれるものではありません 冬のごく短い期間にしか会えないこのワシたちが どうしてここにいるのか 現在どのような危険にさらされ

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スライド 1

目 次 第 1 章. 平成 25 年度動植物調査結果における保全の取り組み 工事着手前調査 植物移植種等のモニタリング調査 保全対策の検討 実施 注目種の保全 ( オオムラサキ ) 注目種の保全 ( ヤマアカガエル ) 7

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スライド 1

鹿児島県立博物館研究報告 ( 第 30 号 ):59 64,2011 奄美諸島喜界島の鳥類相 * 濱尾章二 ** 鳥飼久裕 *** The avifouna of Kikai-jima Island of the Amami Islands* Shoji HAMAO** and Hisahiro T

柳町 邦光 図 1. 調査地および拡大図 繁殖期を過ぎた夏季および積雪で餌の少なくなる冬季には, これらが減少する傾向にある ( 例えば柳町, 2011). これらの諸点を踏まえ, 本研究では秋季と春季に行った. 秋季は夏鳥が南の地域への渡去を始める 9 月から, 冬鳥が渡来して里山に定着する12

1. 特別保護地区の概要 (1) 特別保護地区の名称 やんばる ( 安田 ) 特別保護地区 (2) 特別保護地区の区域 沖縄県国頭郡国頭村所在国有林安田事業区 40 林班 41 林班に小班及び 4 5 林班い小班の区域 (3) 特別保護地区の存続期間 平成 21 年 11 月 1 日から平成 41

浅川に来る野鳥(やちょう)

レッドリストの基本的な考え方

1.ハンドブック表紙(改訂)

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2 2

Microsoft Word - 7.報告書 動物1.doc

図 ヒクイナ確認位置図 98

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野鳥異常死対応マニュアル

資料 1 五智公園自然環境保全地域 の概要 ( 案 ) 1 自然環境保全地域の名称 五智公園自然環境保全地域 2 自然環境保全地域に含まれる土地の区域 五智公園一帯約 22 ヘクタール 3 自然環境保全地域の指定の理由 五智公園は 上越市街地の北西部に位置する日本海に近い里山を利用した公園である 公

はじめに 佐久市では 環境の状態を把握するとともに環境保全に対する意識啓発を図るため 緑の環境調査を実施しています 今年度は 環境基本計画の改定に向け 市内の特徴的な生きものや めずらしい生きものなどについて調査し 市内の自然環境における生物多様性の状況を把握するため 佐久市生きものさがし を実施し

北海道における野鳥の高病原性鳥インフルエンザに係る対応マニュアル

平成29年第2回 トヨタ自動車新研究開発施設に係る環境監視委員会 <会議録>

40 周年誌支部報索引 タイトル執筆 ( 撮影 ) 掲載年月 [1] 巻頭言 提言に相当する記事 巻頭言 新年のごあいさつ 丸山健司 巻頭言 お久し振り 成田和彦 津山市の風力発電施設建設について 丸山健司 岡山市の鳥 タンチョウ推薦への動きを考える 丸山健

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資料1_淀川水系淀川右岸ブロックの環境面・景観面等について.ppt [互換モード]

我孫子市鳥の博物館調査研究報告 Vol.21 No.4(2015) 1 江戸川区葛西の鳥類相 (2005 年 ) 鈴木弘行 1.4 桑原和之 2 田久保晴孝 3.4 飯田陳也 4 今井優 5 キーワード : 湿地, カモ類, シギ チドリ類, カモメ類, アジサシ類 はじめに東京湾奥部の海岸には,

連続水質計(DO ) について 1 連続水質計の設置 干潟浚渫範囲の DO 水温の挙動について把握するために, 干潟浚渫終了時の 月 18 日にロガーを設置した 計測機器水温計 :U2 電気伝導率データロガー (U2-2-C) DO 計 : 溶存酸素データロガー (U26-1) 16mm ロガー設置

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12bird kaisetsu omote

情報不足評価するだけの情報が不足している種 環境条件の変化によって 容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性 ( 具体的には 次のいずれかの要素 ) を有しているが 生息 生育状況をはじめとして ランクを判定するに足る情報が得られていないもの a どの生息地又は生育地においても生息 生育密度が低く

コスジマグソコガネ捕獲個体 (6/16) 17 個体 ライトトラップ BOX15 糞トラップ 2 任意 - 獣糞内 -0 移動例 (6/16) オオコオイムシ捕獲個体 (6/21) 105 個体 ( 成虫 : 子持ち 16 子無し 38 幼虫 51) コスジマグソコガネ捕獲個体 (6/22-23)

はじめに城陽環境パートナーシップ会議は 市 市民 市民団体 事業者のパートナーシップにより 地域の環境保全 地球環境保全に向けて取り組んでおります 事業の推進に当たっては 生活自然 快適 循環 参加 地球環境をテーマに年度の事業計画を立て 循環 地球環境部会と生活 自然部会の 2つの部会で活動してお

12 参考資料 観察記録資料 ( 資料番号 - 資料名 ) ( 目黒区発行物 ) 街の自然 12 か月 = 目黒区の動植物ガイド (1983) 目黒区産動植物目録 (1984) 緑の実態調査書 (1993) 公園の育児書駒場野自然クラブ観察記録 (19


Microsoft Word _加江田川水系河川整備基本方針

主 にシギ チドリ 類 が 渡 りを 行 う 時 期 である 東 アジアの 中 緯 度 地 域 では 8 月 中 旬 や 9 月 中 旬 が 移 動 のピークとなっている 10 月 から 12 月 初 旬 高 緯 度 地 域 から 中 緯 度 地 域 への 渡 り 中 緯 度 地 域 から 低 緯

 

14. ツグミ - スズメ目ツグミ科冬鳥学名 :Turdus naumanni ムクドリほどの大きさの冬鳥である 体の上面は褐色で 腹部は白で多数の黒い斑紋がある 顔は黒褐色で眉斑と喉から首筋にかけての線が白い ( 写真 -24) ロシアなどから秋に冬鳥として日本全国に渡ってくる 比較的開けた草地や

H 猪名川 藻川河川保全利用委員会 ( 第 3 回 ) 報告資料 3 個別占用案件のカルテ ( 許可更新 ) 1 猪名川河川敷緑地 ( 伊丹市 )


Transcription:

1.11 麻機遊水地の自然環境 麻機遊水地の自然環境の特徴を以下に示す 1.11.1 植物これまでに麻機遊水地で確認された植物は約 600 種であるが そのほとんどは草本類 ( 木本類はヤナギ類をはじめ 20 種程度 ) である これらの植物の中には 治水工事により田畑が掘り起こされ 土中に埋もれていた埋土種 図 1-41. ミズアオイ 図 1-42. タコノアシ 子から蘇った湿生植物も見ら 出典 : 麻機遊水地に蘇る生きものたち出典 : 麻機遊水地に蘇る生きものたち れる この狭い地域で約 600 種の植物が確認されるということは 種の多様性が高くこの約 600 種 の中には 県下の他の地域ではあまり見られなくなったミズワラビ サクラタデなどの珍しい 植物や 国や県が絶滅危惧種に指定したミズアオイ ( 図 1-41 県版 RDB:VU) タコノアシ( 図 1-42 県版 RDB:NT) ミズニラ オオアブノメ( ともに県版 RDB:VU) などやノニガナ ( 県版 RDB: N-Ⅲ) などの部会注目種が確認されている 表 1-4. 総出現種工区別 科 種 調査時期 第 1 工区 63 228 平成 16 年 9 月 第 3 4 工区 112 599 ~ 平成 15 年 10 月現在 第 1 工区と第 3 4 工区の確認種については 同じ種のものも含む 表 1-5. 特性別の出現状況 特性別 第 1 工区第 3 4 工区種数種数 水 生 湿 生 植 物 90 種 (39%) 188 種 (31%) 陸 生 植 物 138 種 (61%) 411 種 (69%) 在 来 種 173 種 (76%) 432 種 (72%) 外 来 種 55 種 (24%) 167 種 (28%) ( ) は出現種全体に占める割合 参考資料 : 平成 16 年度自然環境調査報告書 ( 静岡土木事務所 ) 部会注目種 : 各専門部会において 学術上 自然保護上注目すべきと判断された種 19

表 1-6. 特定種一覧表 ( 植物 ) カテゴリー工区名生育基盤科名種名減少の主要因静岡県環境省 1 工区 3 工区 4 工区池沼田床畦シソ科ミズネコノオ EN VU 湿地の埋め立てや水田の除草剤散布などが 減少の主要因である 土地造成 草地開発 草地の管理放棄による遷移の進行などで生育地がタデ科コギシギシ EN VU 失われている 過去の資料がないが生育地の消失と水質の悪化による減少が指摘されヒルムシロ科ツツイトモ VU CR る 生息地の湿地や池沼の開発 水田での除草剤使用や乾田化 耕地整理ゴマノハグサ科スズメハコベ VU EN によって減少した ゴマノハグサ科オオアブノメ VU VU 生育地の土地の造成と農薬汚染や植生遷移の影響を受けている キク科ホソバニガナ VU EN 生育地の湿地の減少と植生遷移が脅威である 池沼 湿地の開発 ため池の改修 水田の耕地整備 農薬による影響なミズニラ科ミズニラ VU VU どが減少の要因である 生育地の湿地や沼沢地の埋立て 水田での除草剤散布が減少の原因でタデ科ヌカボタデ VU VU ある 池沼の開発などで多くの生産地が失われた 釣りの邪魔になることで除スイレン科オニバス VU VU 去され絶滅した池もある アカウキクサ科アカウキクサ VU VU 農薬による影響や水田の圃場整備などが原因で著しく減少している ミツガシワ科アサザ VU VU 池沼開発 園芸採取が減少の原因で著しく減少している 静岡市の麻機遊水地では 土地を撹乱したときに大量に発生した 植生ミズアオイ科ミズアオイ VU VU の遷移とともにほとんど姿を消した 池沼の開発 湿地の整備 管理放棄による遷移の進行が減少につながカヤツリグサ科コツブヌマハリイ VU VU る タデ科ヤナギヌカボ NT VU 池沼などの開発や植生の遷移で 個体数は減少している ユキノシタ科タコノアシ NT VU 河川や池沼の開発の影響を受けている ミソハギ科ミズマツバ NT VU 各地に生育するが産地の消失で減少してきている シソ科ミゾコウジュ NT NT 農薬や植生遷移の影響を受けている アカバナ科ウスゲチョウジタデ NT NT 産地の消失で減少してきている ミクリ科ミクリ NT NT 河川改修で減少している キク科ノニガナ N-Ⅲ - ベンケイソウ科アズマツメクサ N-Ⅲ - 湿地の減少が生育に影響を与えている ゴマノハグサ科カワヂシャ - NT シャジクモ科シャジクモ - CR+EN CR+EN: 絶滅危惧 Ⅰ 類 NT: 準絶滅危惧 CR: 絶滅危惧 ⅠA 類 N-Ⅲ: 部会注目種 EN: 絶滅危惧 ⅠB 類 VU: 絶滅危惧 Ⅱ 類 オニバス アサザについては 他地域から持ち込んだ植物 参考 : 平成 15 年自然環境モニタリング調査報告書 平成 17 年第 1 工区植生調査報告書 ( 静岡土木事務所 ) 珍しい植物 とは植物の観察活動を通して 静岡県下の他の地域ではあまり見られなくなった植物 遊水地に生育する植物のうち保全していきたい植物 20 減少の主要因は静岡県版レッドデータブックより引用 表 1-7. 珍しい植物一覧表 科名 種名 工区名生育基盤 1 工区 3 工区 4 工区池沼田床畦 ミズワラビ科 ミズワラビ タデ科 サクラタデ ミゾハコベ科 ミゾハコベ ウリ科 ゴキヅル アカネ科 ホソバノヨツバムグラ シソ科 ヒメサルダヒコ ゴマノハグサ科 シソクサ ゴマノハグサ科 キクモ キツネノマゴ科 オギノツメ ヒルムシロ科 ヒルムシロ イバラモ科 オオトリゲモ ホシクサ科 ヒロハイヌノヒゲ カヤツリグサ科 ミズガヤツリ カヤツリグサ科 カンガレイ カヤツリグサ科 サンカクイ ゴマノハグサ科 アブノメ ヤナギ科 アカメヤナギ ヤナギ科 コゴメヤナギ オモダカ科 ウリカワ イグサ科 ヒメコウガイゼキショウ アワゴケ科 ミズハコベ キキョウ科 アゼムシロ サトイモ科 ショウブ ガマ科 コガマ ガマ科 ガマ キツネノマゴ科 オギノツメ

1.11.2 哺乳類麻機遊水地では タヌキ キツネ イタチ ノウサギ コウベモグラ ジネズミ アカネズミなどが確認されている 注目すべき哺乳類としては 静岡県版レッドデータブックの準絶滅危惧種に指定されているカヤネズミ ( 図 1-43 県版 RDB:NT) が挙げられる 図 1-43. カヤネズミ写真 : 伴野正志氏 図 1-44. カヤネズミの巣 21

1.11.3 鳥類 麻機遊水地では 治水整備により開放水面が確保され多くの野鳥が集まるようになった 昭和 58 年から平成 16 年までに 16 目 43 科 201 種の野鳥が記録され これは日本全域で記録されている野鳥 ( 約 600 種 ) の約 1/3 にあたる 静岡県内では約 380 種が記録されおり そのうちの半分以上が麻機遊水地で確認されている 一地域で 200 種を超える野鳥が記録された場所は 静岡県内では麻機図 1-45. カモの群れ遊水地と富士川の河口域の 2 箇所のみである 出典 : 遊水地の自然シリーズ 1 野鳥これまで多くの野鳥が麻機遊水地で記録されてきたが 常に 200 種以上確認できる訳ではなく 年間を通して確認できるのは約 100 種程度である 麻機遊水地で記録された野鳥は カモ ( 図 1-45) サギ類の水辺の鳥が 90 種 (45%) スズメ カラスなどの山野の野鳥が 111 種 ( 55%) であり 年中見ることのできる野鳥から季節によって移動する渡り鳥まで 多くの野鳥をこの遊水地で確認できる 麻機遊水地で年中見られる代表的な野鳥は サギ類 図 1-46. ケリ出典 : 遊水地の自然シリーズ 1 野鳥ケリ ( 図 1-46) カイツブリ バン カワセミなどである 春から夏に確認される野鳥は 夏鳥のオオヨシキリやヨシゴイ ( 県版 RDB:EN) 秋は渡りの途中のノビタキ( 県版 RDB:N-Ⅱ) やシギ類 冬は北から渡って来たカモ類である また 珍しい野鳥も確認されており 平成 8 年冬にはコウノトリ ( 環境省 RDB:CR) が越冬し 日本中から多くのバードウォッチャーが麻機遊水地を訪れた 表 1-8. 住み分け分類表 区分 春から夏 ( 夏鳥 ) 秋から冬 ( 冬鳥 ) 春と秋 ( 旅鳥 ) 1 年間 ( 留鳥 ) 水辺 干潟 湿地 水辺の鳥 干潟 湿地の鳥 ( 休耕田 ) オオヨシキリ ヒクイナ コヨシキリ コチドリ ヨシゴイ ササゴイ コアジサシ チュウサギ アマサギ アマサギ ツバメ マガン コミミズク コハクチョウ タゲリ マガモ タシギ ヒドリガモなどのカモ類 クサシギ カワウ クイナ コウノトリ ハマシギ オオジュリン ベニマシコ カンムリカイツブリ ツリスガラ レンカク シマアジ アオサギ ダイサギ カワセミ カルガモ タマシギ カイツブリ コサギ イソシギ キセキレイ セグロセキレイ アオアシシギ キアシシギ ウズラシギ セイタカシギ イカルチドリなどのシギやチドリ類 タマシギ バン ケリ コサギ アオサギ イソシギ アマサギ チュウサギ コミミズク チョウゲンボウ ハイイロチュウヒ アオジ カシラダカ ホオジロ トラフズク マガン タゲリ タヒバリ ジョウビタキ ツグミ ムナグロ フクロウ ノビタキ ケリ セッカ スズメ ホオジロ キジ アオサギ ヒバリ ハクセキレイ モズ ムクドリ 草原の鳥 ( 田畑を含む ) コゲラ アオバズク アマサギ トラフズク オオタカ アリスイ アカゲラ ジョウビタキ アカハラ ヤマガラ イカル シメ ハイタカ ノスリ カッコウ ツツドリ ホトトギス フクロウ キジ アオゲラ ヒヨドリ モズ ウグイス シジュウカラ メジロ カワラヒワ 疎林の鳥 ツバメ コシアカツバメ イワツバメ オオワシ ミサゴ ハヤブサ ユリカモメ イヌワシ ハイタカ アマツバメ ショウドウツバメ サシバ ヒメアマツバメ トビ ノスリ 上空通過 22

表 1-9. 特定種一覧表 ( 野鳥 ) 科名 種名 カテゴリー静岡県環境省 タカ科 イヌワシ CR EN ウグイス科 オオセッカ EN EN カモメ科 コアジサシ EN VU カワセミ科 アカショウビン EN - クイナ科 ヒクイナ EN VU サギ科 サンカノゴイ EN EN サギ科 ヨシゴイ EN NT シギ科 ツルシギ EN - タカ科 チュウヒ EN EN フクロウ科 コミミズク EN - モズ科 アカモズ EN EN カモ科 トモエガモ VU VU カワセミ科 ヤマセミ VU - キジ科 ウズラ VU NT シギ科 ウズラシギ VU - シギ科 オグロシギ VU - シギ科 オジロトウネン VU - シギ科 コアオアシシギ VU - シギ科 ダイシャクシギ VU - シギ科 タカブシギ VU - シギ科 ヒバリシギ VU - タカ科 オオタカ VU NT タカ科 クマタカ VU EN タカ科 サシバ VU VU タカ科 ハチクマ VU NT タカ科 ハイタカ VU NT タマシギ科 タマシギ VU - チドリ科 シロチドリ VU - ハヤブサ科 ハヤブサ VU VU ヒタキ科 コサメビタキ VU - フクロウ科 アオバズク VU - ホオジロ科 コジュリン VU VU ヨタカ科 ヨタカ VU VU カササギヒタキ科 サンコウチョウ NT - カモ科 ミコアイサ NT - キツツキ科 アリスイ NT - クイナ科 クイナ NT - セイタカシギ科 セイタカシギ NT VU チドリ科 イカルチドリ NT - チドリ科 タゲリ NT - ツバメ科 コシアカツバメ NT - フクロウ科 フクロウ NT - ホオジロ科 ミヤマホオジロ NT - シギ科 オオジシギ N-Ⅱ NT タカ科 オオワシ N-Ⅱ VU タカ科 ハイイロチュウヒ N-Ⅱ - ツグミ科 ノビタキ N-Ⅱ - タカ科 ミサゴ N-Ⅲ NT ハヤブサ科 コチョウゲンボウ N-Ⅲ - シギ科 ヤマシギ DD - フクロウ科 トラフズク DD - フクロウ科 オオコノハズク DD - コウノトリ科 コウノトリ - CR シギ科 コシャクシギ - EN サギ科 オオヨシゴイ - EN カモ科 コクガン - VU クイナ科 シマクイナ - EN ツバメチドリ科 ツバメチドリ - VU カモ科 マガン - NT サギ科 チュウサギ - NT ホオジロ科 ノジコ - NT CR: 絶滅危惧 ⅠA 類 NT: 準絶滅危惧 EN: 絶滅危惧 ⅠB 類 DD: 情報不足 VU: 絶滅危惧 Ⅱ 類 23

1.11.4 両生類 爬虫類 両生類 爬虫類は これまでに麻機遊水地でレッド データブックに記載されている貴重種は確認されていない 麻機遊水地内に生息するカエル類は ヌマガエルとウシガエルの 2 種であり 最も多く生息しているのはウシガエルである この種は外来種であり池沼に生息する魚や水鳥のヒナまでを捕食し 地域の在来種が減少し生態系を乱す原因の一つとなっている 図 1-47. クサガメカメ類はイシガメ クサガメ ( 図 1-47) スッポン 写真 : 清邦彦氏ミシシッピーアカミミガメの 4 種が生息しており 最も多く見られるのはミシシッピーアカミミガメである この種はペットとして輸入されたものが放置され 日本中に広がったものである また こどうもうのカメは獰猛であるため 在来のイシガメ クサガメの生息および繁殖を脅かしている 陸地部分にはトカゲの仲間であるカナヘビとアオダイショウ シマヘビ マムシの 3 種類のヘビ類が確認されている 1.11.5 魚類魚類は かつて浅畑沼があった時代から 水田へと土地改良が進められ 沼が消失したことにより一度その姿を消している しかし 麻機遊水地の整備により新たに池沼部が確保されたことにより レッドデータブックに記載されているトウヨシノボリ池沼型 ( 県版 RDB:N-Ⅱ) 在来種のモツゴ ( 図 1-48) ゲンゴロウブナ ミゾレヌマエビなどが生息するようになった その他には 図 1-48. モツゴ外来種のオオクチバス ブルーギル カムルチー 写真 : 板井隆彦氏タイリクバラタナゴも生息している また 現在治水整備が進められている第 1 工区には農業水路が流れており その水路にはモツゴ オイカワ ドジョウなどの魚類や マシジミ ヒメタニシなどが生息している 24

1.11.6 昆虫類 麻機遊水地には 池沼 草地 ヤナギ林など多様な環境があり植物の種類も多いことから 昆虫にとって良好な環境となっている 麻機遊水地の池沼部は ヨシ マコモなどの高茎植物 ヒシなどの浮葉植物 岸辺の低茎植物が生育する湿地であるため トンボ類やタイコウチなどの水生昆虫の生息地となっている その中でも ヒシなどの浮揚植物が生育する良好な水辺環境に生息す図 1-49. チョウトンボるチョウトンボ ( 図 1-49) は 以前は鯨ヶ池に多く写真 : 伴野正志氏生息していたが 近年ではこの麻機遊水地で急増している また 明るい草地部分では 様々な花が咲くため チョウ ハチ アブなどが集まり アカメヤナギなどのヤナギ林には ヤナギの葉や樹液を採餌するコムラサキ ( 図 1-50) やその幼虫をはじめ ゴマダラチョウ カナブン類 クワガタムシ類などが集まっている 麻機遊水地では特にトンボ類が多く イトトンボ 図 1-50. コムラサキ写真 : 伴野正志氏ヤンマ アカトンボ類などこれまでに 45 種類が記録されている トンボ類以外では チョウ類が多く 40 種記録されている その他にもバッタ テントウムシ セミ また 水中ではヒメミズカマキリやガムシ類などの水生昆虫も数多く記録されている 25