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婦人科癌 : 具体的には? 卵管癌 子宮体癌 卵管 卵巣癌 体部 頸部 卵巣 腟 外陰

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子宮頸部細胞診陰性症例における高度子宮頸部病変のリスクの層別化に関するHPV16/18型判定の有用性に関する研究 [全文の要約]

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僕が見た21世紀の 産婦人科医療

Microsoft PowerPoint - WEB用 記者懇談会_0914 [互換モード]

現在にいたっております その結果 現在 HPVワクチンは定期接種でありながら 接種対象となる12 歳から16 歳の女子に対する接種がほとんど行われていないのが現状です このような状況は先進国では日本だけで見られていることであり 将来 子宮頸がんの発症が他国に比べて著しく高くなるというような事態が起き

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

H22母性保健に関する研究

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資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

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子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

婦人科がん検診Q&A

る反ワクチン団体は 痛みに苦しむ女子や家族をメデイアに登場させ 因果関係があるかのように不安を募らせました WHO は 2013 年 6 月 13 日 HPV ワクチンに関する安全性声明を発表しました 国内では その翌日の 6 月 14 日に厚労省副反応検討部会が開催され 安全性を説明できる十分なデ

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PowerPoint プレゼンテーション

平成 26 年度事業計画書 自平成 26 年 4 月 1 日 至平成 27 年 3 月 31 日 公益財団法人性の健康医学財団

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スライド タイトルなし

0516(資料9-2)【概要】HPVワクチンの有効性

●子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案

科学的根拠に基づいた子宮頸がん予防 井上正樹 * 1. はじめに 子宮頸がん検診 は 我が国では 1982 年に老人健康法が定められ 全国で始められました 子宮頸がん死亡率の低下のみならず がん検診を我が国に定着させた主導的役割は大きいと思われます その後 厚労省も 有効な検診 と評価しています 1

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

なお, 世間では HPV ワクチンのことを 子宮頸がんワクチン と呼んでいるが, ワクチンの性格上, 本稿では HPV ワクチン ( 正確には HPV 感染症予防ワクチン ) と表現する HPV 感染と子宮頸がんとの関係子宮頸がんの原因のひとつとして,HPV 感染による細胞の癌化が証明されている H

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子宮頸がん予防ワクチンとヘルスリテラシー

日産婦誌61巻4号研修コーナー

避するためには 子宮頸がん検診を定期的に受診することが必要不可欠であること 3 HPV ワクチンの長期成績は未だ確認されていないこと このため 将来的に追加接種が必要となる可能性もあること 4 10 歳未満の小児 妊娠中の女性及び高齢者に対する有効性と安全性は確立されていないこと 5 HPV は性行

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

妊娠 出産 不妊に関する知識の普及啓発について 埼玉県参考資料 現状と課題 初婚の年齢は男女とも年々上昇している 第一子の出生時年齢も同時に上昇している 理想の子ども数を持たない理由として 欲しいけれどもできないから と回答する夫婦は年々上昇している 不妊を心配している夫婦の半数は病院へ行っていない

マンスリー・ヘルシートピックス(2015年4月号)

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和歌山県地域がん登録事業報告書

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事業評価のためのチェックリスト ( 単位 : %) (2) 平成 27 年度の原発がんに対する早期がん割合を把握しましたか 肺がんでは臨床病期 Ⅰ 期がん割合 乳がんでは臨床病期 Ⅰ 期までのがん割合を指す (2-1)

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調査研究ジャーナル 2018 Vol.7 No.2 図 1 モデル事業の検診方式 図 2 年齢階級別検診人数 ~年齢階級 24 表 1 年齢階級別細胞診結果 25 ~30 ~35 ~40 ~45 ~50 ~55 ~60 ~65 ~70 ~75 ~

がん年齢階級別罹患率 (2012 年女性 ) HPV 型別頻度は? 大腸 子宮頸部 (10 万人あたり16.7 人 ) 歳 2.1 人 歳 12.2 人 歳 21.1 人 歳 28.1 人 歳 32.9 人 歳 27.6 人 5

PowerPoint プレゼンテーション

日本における子宮頸がん検診の時代的背景 1982 年老人保健法にて 20 年かけて子宮頸がんを半減させる 30 歳以上の女性を対象受診間隔は 1 年に 1 回費用は行政が全額負担 1998 年地方交付税による財源措置に変更費用の一部個人負担が必要となる 2004 年子宮頸がん検診の見直し受診対象年齢

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

小児用肺炎球菌ワクチン 対象者 : 生後 2カ月 ~5 歳未満の方接種費用 : 無料ただし 接種開始が2 歳以上の場合は自己負担あり (1100 円 ) 接種回数 : 接種開始年齢によって異なります 接種開始月 年齢接種回数 接種間隔接種費用 生後 2 月から 7 月未満 生後 7 月から 12 月

78 八戸学院短期大学研究紀要 第 40 巻 中学生 1 年生の間 ( 初回性交前が理想であるため ) に 1 ヶ月の間隔をおいて 2 回接種を行った後 1 回目の接種から 6 ヶ月の間隔をおいて 1 回の接種を行う 2 価ワクチン ( サーバリックス ) と 中学生の間に 2 ヶ月の間隔で 2 回

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

ベセスダシステム2001の報告様式 ーASC-US、ASC-Hの細胞像と臨床的意義ー

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一般内科

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

年齢調整死亡率 (-19 歳 ) の年次推移 ( :1999-1) 1 男性 女性 年齢調整死亡率 -19 年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 -19 年齢調整死亡率

2016 年 12 月 7 日放送 HTLV-1 母子感染予防に関する最近の話題 富山大学産科婦人科教授齋藤滋はじめにヒト T リンパ向性ウイルスⅠ 型 (Human T-lymphotropic virus type 1) いわゆる HTLV-1 は T リンパ球に感染するレトロウイルスで 感染者

麻しん 2

がん登録実務について

B. 自治医科大学専門研修プログラムの具体例 産婦人科研修プログラムは 自治医科大学附属病院の 4 年間の後期研修プログラムにおける専門コースの一部ではじめの 3 年間が本プログラムに相当する 専攻医は3 年間で修了要件を満たし ほとんどは専門医たる技能を修得したと認定されると見込まれる 修了要件を

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系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

A 2010 年山梨県がん罹患数 ( 全体 )( 件 ) ( 上皮内がんを除く ) 罹患数 ( 全部位 ) 5,6 6 男性 :3,339 女性 :2,327 * 祖父江班モニタリング集計表から作成 * 集計による主ながんを表示

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4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

ギガンジウム 子宮頚癌予防ワクチン接種開始 1 年を経過して 我が国では毎年多くの人が癌で亡くなっています ( 死亡率の第 1 位 ) なかでも子宮頸癌は 我が国において毎年 15,000 人の方が罹患 (8,000 人は初期癌 ) し 昨年は 2,486 人の方が亡くなっています これは 20 ~

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Microsoft PowerPoint - 印刷用 DR児玉2015 K-NET Kodama.ppt [互換モード]

9 予防接種

研究実績報告書宮頸部擦過細胞検体から採取された DNA には 病変を形成していない一過性の HPV 感染も検出されてしまうため 結果として複数のハイリスク HPV 型の DNA が検出されることも多く 病変形成に関わった真の HPV 型の同定が困難である そこで 既に診断の得られている子宮頸部腫瘍の


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広汎性子宮頸部摘出術後妊娠症例の周産期管理の検討

子宮がん検診時に綿棒で粘膜をこすって 細胞を取るのですが こすった部分以外にがんがあった場合はやはりがんがあっても見つけられないことはありますか もっと精度の高い検診方法はありますか どこで受けられますか 確かに病変以外をこすった場合は 陰性の結果がでる可能性はあります 特に 自己検診 といった方法

< 富江地区 > 問い合わせ先 富江支所窓口班 電話 歳児健康相談 四種混合 12 月 3 日 ( 月曜日 ) 11 時 ~11 時 30 分富江老人福祉センター健康相談室 12 月 13 日 ( 木曜日 ) 9 時 ~9 時 15 分福江総合福祉保健センター 3 階対象者 :

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

Microsoft Word - 報告書最終版.doc

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60 香坂信明 DJMS 細胞診クラス分類 判定 細胞所見 推定病変 class I 異型細胞を認めない 正常上皮 II 異型細胞を認めるが良性である 良性異型上皮 ( 炎症性異型上皮など ) III 悪性を疑うが断定できない 異形成 IIIa 悪性を少し疑う 軽度 中等度異形成 IIIb 悪性をか

世界標準の子宮頸がん予防対策 なぜ日本だけが遅れるのか

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

( 図 1 アンケート用紙を送付しなかった理由 (n=248)) その他 4 % 住所又は両親の名前不明 1 7 % 他科にてフォロー中 3 % 音信あり 1 6% 他院にてフォロー中 28 % 3. 方法まず患者の保護者に対して郵送によるアンケート形式で病院より今後コンタクトをとることについての可

子宮頸がん 1. 子宮頸がんについて 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんです ( 図 1) 約 80% は扁平上皮がんであり 残りは腺がんですが 腺がんは扁平上皮がんよりも予後が悪いといわれています 図 1 子宮頸がんの発生部位 ヒトパピローマウイルス (HPV) 感染は子宮頸がんのリスク因子です

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

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日本産婦人科医会記者懇談会 検診だけで子宮頸がんは予防できない HPV ワクチンの復活を願って 日本産婦人科医会常務理事新百合ヶ丘病院がんセンター子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員 鈴木光明 218 年 3 月 14 日日本記者クラブ 検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 1

検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 世界における若年成人がん調査 ( 国際がん研究機関による初の統計 :212 年時点 ) 約 19 万 1 人 約 11 万 1 人 推計には 計 27 種類のがんについて 世界 184 カ国のデータを利用 Fidler MM et al. Lancet Oncol. 217; http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/s147245173677?via%3dihub 産経ニュース :http://www.sankei.com/life/news/17125/lif171259-n1.html より一部改変 2

199 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 日本における 2~3 歳代の子宮頸がんの罹患率 近年 若い世代で子宮頸がん ( 浸潤がん ) の罹患率が増加傾向 子宮頸がん罹患率 25 2-3 代 4 以上 罹患率 1 万人あたり ( ) 2 15 1 5 ( 年 ) GRD15SSxx-xxxx 国立がんセンターがん対策情報センター地域がん登録全国推計によるがん罹患データ (1975 年 ~211 年 ) より作図 子宮頸がんの罹患年齢と出産年齢 ( 日本 ) 出産年齢のピークは子宮頸がん ( 上皮内がん含む ) 罹患のピークでもある (212 年 ) 48, 12 出生数 4, 32, 24, 16, 8, 出生数 子宮頸がん罹患率 1 8 6 4 2 子宮頸がん罹患率 ( 対人口 1 万人 ) -14 15-19 2-24 25-29 3-34 35-39 4-44 45-49 ( 歳 ) GRD15SSxx-xxxx 厚生労働省平成 24 年度人口動態母の年齢別にみた年次別出生数 百分率および出生率 ( 女性人口千対 ) 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 212 3

228 症例 日本産婦人科学会研修施設 (1475 施設 ) 全国がん ( 成人病 ) センター協議会加盟施設 (32 施設 ) 228 症例の回答 ( 回答率 :5%) 妊娠に関する悪性腫瘍の調査 ; 西村隆一郎 池田智明 妊娠に合併した悪性腫瘍 (225 例 ) 72% 12 例が 期 12 例 6 例 7% 妊娠に関する悪性腫瘍の調査 ; 西村隆一郎 池田智明 (28 年調査 ) 4

検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 5

子宮頸がんは 予防できるがん ワクチン 一次予防 HPVワクチン感染を防御 二次予防 がん検診 ( 細胞診検査 ) がんになる前に発見 正常細胞 多くの場合 自然に排除される HPV に感染 感染の持続 前がん病変 ( 異形成 ) 数年 ~1 数年の長い年月でがんになる 正常細胞 ウイルスが排除されれば 正常に戻る がんに進まないものもある がん細胞 がん検診 ( 細胞診 ) の課題 26-29 年の 4 年間に 92 例の子宮頸がん ( 浸潤癌 : Ib1 期以上 ) 症例を治療した 過去 3 年以内に細胞診検査を受けていたにも拘わらず陰性と診断されていた症例が 18 例みられた 19.6% (18/92) 森澤, 鈴木 et.al ( 臨床細胞学会誌 212) サンプリングエラー 不適正標本細胞数少数固定不良高度炎症 出血 スクリーニングエラー 形態学の限界見落とし細胞同定の誤り 6

がん検診 ( 細胞診 ) の課題 細胞診 ( 従来法 ) の感度 特異度 * 報告者文献感度 (%) 特異度 (%) Wrigth TC Jr Mayrand M-H Cuzick J 今野 Obstet Gynecol 24;13:34 69.7 96. N Engl J Med 27;357:1579 55.4 96.8 Int J Cancer 26;119:195 53. 96.3 日産婦誌 27;59:567(s-445) 78.3 96.4 細胞診の感度は十分とはいえない! *HSIL(CIN2+) 以上の病変 がん検診 ( 細胞診 ) の課題 (%) 1 9 8 7 6 5 4 3 2 2 歳 ~69 歳女性の世界各国子宮頸がん検診受診率 (OECD Health Data) 84.5 8.5 78.1 77 74.7 74.5 74.1 73.6 73.4 73 71.5 7.6 69.7 69.1 68.7 64.6 64.1 57.9 57.3 55.2 54.8 52.8 52.5 5 47.7 42.3 42.1 4.5 35.9 2.7 1 資料 : OECD Health Statistics (Health Care Utilisation, Screening)214 年あるいは間近のデータに基づく 7

子宮頸部円錐切除術 初期の子宮頸がんあるいは高度異形成 ( 前がん状態 ) では 子宮を残して病変部のみを切除する治療 ( 円錐切除 ) が施行される 頸管縫縮術 ( 早産予防 ) CIN で外科的介入を受けた女性における早産のリスク ( 手技による比較 ) 治療を受けた女性 未治療の女性 ( コントロール ) 効果推定値相対リスク (95% CI) ナイフによる円錐切除 14.9% 6.1% 2.7 (2.14-3.4) レーザー円錐切除 14.3% 7.3% 2.11 (1.24-3.57) 移行帯を含むループ切除術 8.1% 4.7% 1.56 (1.36-1.79) レーザー蒸散術 9.% 8.5% 1.4 (.86-1.26) 不特定の蒸散治療 6.6% 4.6% 1.46 (1.27-1.66) デザイン : システマティックレビューおよびメタアナリシス対象研究 :1948 年 ~216 年 4 月に報告され 子宮頸部の局所治療歴のある女性とない女性を対象に産科的転帰を評価した研究のうち 71 試験対象症例 : 治療 65,82 例 未治療 6,292,563 例 Kyrgiou M. et al. BMJ 216; 354: i3633 (Kyrgiou M. et al. BMJ 214; 349: g6192, Kyrgiou M. et al. Lancet 26; 367: 489) 8

子宮頸がん ( がん情報サービス ) 21 年 上皮内癌を含む浸潤癌のみ死亡者数 27,85 人 1,737 人 2,664 人 円錐切除術施行件数約 1, 件 子宮全摘出術施行件数約 1,5 件 子宮頸がん検診の課題と限界 サンプリングエラー スクリーニングエラーにより 特に前がん病変 (CIN2/3) の感度は十分とはいえない 本邦におけるがん検診受診率は低率であり かつリピーターが多い 外科的介入 ( 円錐切除 ) により早産等のリスクが増し 周産期予後を悪化させる 9

検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 検診だけで子宮頸がんは予防できない ( 若年 ) 女性の敵 子宮頸がん がん検診の課題 限界 HPV ワクチンのインパクト 日本産婦人科医会の取り組み 1

HPVワクチン接種への大きな期待 1969年 アポロ11号月面着陸成功 人類が初めて月面に降り立つ 27年 オーストラリアでHPVワクチン 接種プログラム開始 これは一人の人間にとっては小さな一歩だが 人類にとっては偉大な飛躍である これはひとつの小さなジャブ 接種 だが 女性にとっては偉大な飛躍である HPVワクチンのインパクト[海外] 報告者 文 献 対象等 結 果 Brotherton JM Med J Aust. 216;24:184 Cancer Causes Control 215;26:953 954 オーストラリア, 4価ワクチン Flagg EW Am J Public Health. 216;16: 2211 米国 4価ワクチン Pollock KG Br J Cancer 214;111: 1824 スコットランド, 2価ワクチン Herweijer E Int J Cancer. 216;138:2867 スウェーデン, 4価ワクチン Tabrizi SN Lancet Infect Dis. 214;14:958 オーストラリア, 4価ワクチン 18-24歳女性の HPV感染率が 有意に低下 集団免疫効果(Fig,Table2) Markowitz LE Pediatrics. 216; 137:1 米国, 4価ワクチン 14-19歳 2-24歳女性の HPV6/11/16/18感染率が有意に低下 (Table 2) Mesher D Vaccine 213;32:26 イングランド, 2価ワクチン 3回接種率 71-81 1回以上接種率 6 (214年 3回接種率 74 3回接種率 82 接種率 34.6 接種率 65 2歳未満 2-24歳 25-29歳女性の 高度子宮頸部病変が有意に減少 Fig) 21-24歳女性のCIN2/3が有意に減少 15-19歳 2-24歳女性の 高度病変 HSIL 有意に減少 Table 2 Fig2) ワクチン接種率74%の世代の CIN1-3が有意に減少 Table2) 16歳以下 17-19歳 2-29歳女性の CIN2以上 CIN3以上が有意に減少 Table 3) 16-18歳女性の HPV16/18感染率が 有意に低下(Fig2,Table2) 11

1 人当たりの発生数 HPV ワクチン接種プログラム導入前後の高度子宮頸部病変 ( オーストラリア ) 2 歳未満 2-24 歳女性では 29 年より 214 年までに 25 2 15 1 5 高度子宮頸部病変 ( 前がん病変 ) は 著明に減少した 25-29 歳女性では 212 年より214 年までに高度子宮頸部病変 ( 前がん病変 ) が有意に減少した (P<.1) 27 年 12~13 歳女子を対象とした接種プログラム 14~26 歳女性を対象としたキャッチアップ接種プログラム 2 歳未満 2-24 歳 25-29 歳 3-34 歳 35-39 歳 4 歳以上 2 22 24 26 28 21 212 214 ( 年 ) Brotherton JM et al. Med J Aust. 216 ;24(5):184. Brotherton JM et al. Cancer Causes Control 215 ;26:953 954 HPV ワクチン接種プログラム導入前後の HPV 感染率 ( オーストラリア ) 相対感染率 (%) 18-24 歳女性のワクチンタイプ HPV 型が著明に減少し 集団免疫 ( ワクチン接種していない女性にも感染が減少 ) 獲得を示唆 (Tabrizi SN. et al: Lancet Infect Dis 214: 14, 958-66 より作図 ) 12

HPV ワクチンのインパクトに関する最新情報 HPV ワクチン臨床開発試験後の追跡調査にて ワクチン接種群では HPV16/18 型に関連した CIN2+ の発生はなく 12 年間の長期予防効果が認められた ( 北欧 ) Kjaer SK et al. Clin Infect Dis. 66(3):339 345, 218 HPV ワクチン接種後の長期的な観察調査にて HPV ワクチン接種群の HPV の関連したがんの発生率は ワクチン非接種群よりも有意に低かった ( フィンランド : 中間報告 ) Luostarinen T, Apter D,et al. Int J Cancer. 217 Dec 26. doi: 1.12/ijc.31231. HPV ワクチン接種が HPV の関連する浸潤がんに及ぼす影響 Luostarinen T, Apter D,et al. Int J Cancer. 217 Dec 26. doi: 1.12/ijc.31231. 表は YOKOHAMA HPV PROJECT ホームページより引用 :http://kanagawacc.jp/vaccine-wr/193/ 13

HPV ワクチン接種が子宮頸がん検診結果に及ぼす影響 ( 宮城県 秋田県 ) ASC-US * 以上と判定された人の割合は HPV ワクチン接種者において非接種者と比較して 52.1% 88.1% といずれも有意に減少した A S C U S 以上と判定された人の割合 - (%) 6 5 4 3 2 1 5.3% HPV ワクチン非接種者 (2,94 名中 148 名 ) 宮城県 (p=.3 χ 2 検定 ) 減少率 :52.1% 2.41% HPV ワクチン接種者 (332 名中 8 名 ) A S C U S 以上と判定された人の割合 - (%) 6 5 4 3 2 1 2.4% HPV ワクチン非接種者 (2,12 名中 41 名 ) 秋田県 (p=.167 χ 2 検定 ) 減少率 :88.1%.242% HPV ワクチン接種者 (413 名中 1 名 ) 1)Ozawa N et al. Tohoku J Exp Med. 216;24(2):147-151. 2)Tanaka H et al. J Obstet Gynaecol Res. 217 Jul 14 HPV ワクチンによる子宮頸部病変の発生率の減少 ( 宮城県 ) HPV ワクチン接種者では 非接種者と比較して CIN1+ および CIN2+ の発生率がそれぞれ 64.9% 85.5% 減少した * (%) 2.5 2. ワクチン非接種者 (n=4,922) p=.25 2.28 ワクチン接種者 (n=1,2) C I N の発生率 1.5 1..5. 減少率 :85.5%.8 p=.261 減少率 :64.9%.69 p=.3724.1.18. CIN1+ CIN2+ CIN3+ 対象 宮城県で 214 年 4 月 ~216 年 3 月に子宮頸がん検診を受けた 2~24 歳の女性 6,462 例 方法 宮城県対がん協会のデータを用いて 子宮頸部の細胞診および組織診結果と HPV ワクチン接種歴について検討した ( 全体の接種率は 16.9%) 検定法 :CIN1+ CIN2+ は χ 2 検定 CIN3+ は Fisher の正確確率検定 * 減少率 (%)=[(CIN/4,922)-(CIN/1,2)] (CIN/4,922) 1 CIN:cervical intraepithelial neoplasia( 子宮頸部上皮内腫瘍 ) Ozawa N et al. Tohoku J Exp Med 217;243:329-334 より作図 14

HPV ワクチン接種プログラム後の誕生年コホート別の CIN2-3/AIS HPV16/18 陽性率 ( 日本 : 多施設 ) 1986-93 年の出生コホートでは CIN2-3/AISのHPV16/18 陽性率はほぼ一定で54.6% であった HPVワクチン接種対象である1994-95 年の出生コホートでは CIN2-3/AISのHPV16/18 陽性率は 23.8% と有意に減少した (P<.1) Monitoring the impact of a national HPV vaccination program in Japan (MINT Study): 中間解析報告 Matsumoto K, et al.int J Cancer. 217 Jun 28 名古屋市子宮頸がん予防接種調査 HPV ワクチン接種と ワクチン接種後に報告されている 24 の症状の発生との間に 意味のある関連性は見出されなかった ( 年齢調整による解析 ) 対象 : 名古屋市に住民票がある当時中学 3 年生から大学 3 年生相当 (14 歳から 21 歳 ) の女子 7 万 1177 人 (215 年 9 月時点 ) 3 万 793 人の回答 ( 回答率 43.4%) 調査方法 : 9 月上旬に対象者に調査票 ( 無記名 ) を郵送し 記入後に返送 調査項目 : ひどく頭が痛い 関節やからだが痛む 集中できない 物覚えが悪くなった 身体がだるい 身体が自分の意思に反して動く 月経量の異常 などの 24 症状 15

HPV ワクチン公費助成実施国 (218 年 2 月時点 ) HPV ワクチン公費助成実施 : 87 か国 男女ともに公費助成している国 * 19 か国 9 価 HPV ワクチンが公費助成に含まれている国 * 18 か国 ( 男女ともに公費助成 :8 か国 本邦では男性への接種 /9 価 HPV ワクチンの適応はない 産婦人科医会による今後の活動案 産婦人科医 への啓発 ポスター 冊子などを コミュニケーション専門家と 協働で作成 症状を訴える児に関 する研修の実施 一般市民 への啓発 シンプルなメッセージ を動画や雑誌で発信 実際に接種した女児 の言葉などを発信 厚生労働省 への働きかけ 予防接種推進協議 会と連携して適確な メッセージの発信 16

子宮頸がんをなくそう! 子宮頸がんとワクチンの正しい知識 1 主催 ( 公社 ) 日本産婦人科医会 ( 一社 ) 埼玉県医師会 埼玉県産婦人科医会 2 後援厚生労働省 埼玉県 埼玉県教育委員会 ( 公社 ) 日本医師会 ( 公社 ) 日本産科婦人科学会 ( 公社 ) 日本小児科学会 ( 公社 ) 日本小児科医会 埼玉県小児科医会 埼玉県内科医会 予防接種推進専門協議会 ( 公財 ) 日本対がん協会 ( 公財 ) 埼玉県健康づくり事業団 ( 公社 ) 日本看護協会 ( 公社 ) 日本助産師会など後援依頼中を含む 3 対象小学生 中学生のお嬢さんを持つ母親など一般 養護教諭 スクールカウンセラー 保健師 医療関係者 自治体関係者 情報関係者など 4 日時平成 3 年 4 月 22 日 ( 日 )13 時から 15 時 5 場所埼玉県県民健康センター 2 階大ホール約 4 人 6 参加費無料 17