行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

PowerPoint プレゼンテーション

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要旨 [ 目的 ] 歩行中の足部の機能は 正常歩行において重要な役割を担っている プラスチック短下肢装具 (AFO) 装着により足関節の運動が制限されてしまう 本研究は AFO 装着により歩行立脚期における下肢関節運動への衝撃吸収作用や前方への推進作用に対しどのような影響を及ぼすかを検討した [ 対

のモチベーションを上げ またボールを使用することによって 指導者の理解も得られやすいのではないかと考えています 実施中は必ず 2 人 1 組になって パートナーがジャンプ着地のアライメントをチェックし 不良な場合は 膝が内側に入っているよ! と指摘し うまくいっている場合は よくできているよ! とフ

足部について

【股関節の機能解剖】

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

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足関節

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CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

80 武凪沙, 他 態で腰椎のわずかな右側屈により 骨盤を右挙上させ下肢を後方へと振り出す これに対し本症例は 立位姿勢から上位胸椎部屈曲位 胸腰椎移行部屈曲 左非麻痺側 ( 以下 左 ) 側屈位を呈し体幹直立位保持が困難となっていた また右股関節 膝関節が左側と比べてより屈曲していることで骨盤右下

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国際エクササイズサイエンス学会誌 1:20 25,2018 症例研究 足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動が足部形態に 与える影響 扁平足症例に対しての予備的研究 嶋田裕司 1)4), 昇寛 2)3), 佐野徳雄 2), 小俣彩香 1), 丸山仁司 4) 要旨 :[ 目的 ] 足趾踵荷重位での立位姿勢保

歩行およびランニングからのストップ動作に関する バイオメカニクス的研究

膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響

グスがうまく働かず 大腿四頭筋が優位でストップしているともいわれています ACL よく起きる足関節捻挫 = 前距腓靭帯 (ATF) 損傷は ACL 損傷と同じ靭帯損傷です しかし 足関節捻挫で手術になったという話はあまり聞かないと思います それは ACLは関節包内靭帯であるのに対して ATFは関節包

GM アフ タ クター & アタ クター どの年代でも目的に合わせたトレーニングができる機器です 油圧式で負荷を安全に調節できます 中殿筋と内転筋を正確に鍛えることで 骨盤が安定し 立位や歩行時のバランス筋力を向上させます 強化される動き 骨盤 膝の安定性 トリフ ル エクステンサー ニー エクステ

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前十字靭帯再建手術を終えられた皆様へ

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

S&C13-09Nov

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VI 参考資料

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安定性限界における指標と条件の影響 伊吹愛梨 < 要約 > 安定性限界は体重心 (COM) の可動範囲に基づいて定義づけられるが, 多くの研究では足圧中心 (COP) を測定している. 本研究は, 最大荷重移動時の COM 変位量を測定して COP 変位量と比較すること, 上肢 位置の違いが COP


要旨一般的に脚長差が3cm 以下であれば 著明な跛行は呈しにくいと考えられているが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない 本研究の目的は 脚長差が体幹加速度の変動性に与える影響を 加速度センサーを用いて定量化することである 対象者は 健常若年成人男性 12 名とした 腰部に加速度センサーを装着し

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オットーボック フィットネスアプリ Fitness for amputees 切断者のためのフィットネス < フィットネスアプリとは > スマートフォンや タブレット端末にダウンロードし 気軽にフィットネスが出来る切断者の皆様のためのアプリが登場しました 既に義足を装着されている方や これから義足を

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M波H波解説

運動療法と電気療法の併用 ~シングルケース~

2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能

復習問題

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

方向の3 成分を全て合成したもので 対象の体重で除して標準化 (% 体重 ) した 表 1を見ると 体格指数 BMI では変形無しと初期では差はなく 中高等度で高かった しかし 体脂肪率では変形の度合が増加するにつれて高くなっていた この結果から身長と体重だけで評価できる体格指数 BMI では膝 O

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高齢者の椅子からの立ち上がり動作における上体の動作と下肢関節動態との関係 The relationship between upper body posture and motion and dynamics of lower extremity during sit-to-stand in eld

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リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

腰痛多発業種における 作業姿勢特性調査 独立行政法人労働者健康福祉機構所長酒井國男 大阪産業保健推進センター 相談員久保田昌詞 特別相談員浅田史成 大阪労災病院勤労者予防医療センター所 長大橋誠 関東労災病院リハビリテーション科 技師長田上光男 日本産業衛生学会産業医部会 部会長岡田章

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Ⅰ はじめに 臨床実習において 座位での膝関節伸展筋力の測定および筋力増強訓練を行っ た際に 体幹を後方に傾ける現象を体験した Helen ら1 によると 膝関節伸展 の徒手筋力測定法は 座位で患者の両手は身体の両脇に検査台の上に置き安定を はかるか あるいは台の縁をつかませる また 膝関節屈筋群の

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姿勢

次に 車いす シーティングの適合評価をすすめるにあたって 評価の目的 対象をどのように考えるべきかといったとらえ方を基本概念として4つの要素に分けて認識しておくことが大切です その上で どのような内容について どのような方法で評価を行えばよいかといった適合技術を具体的に習得し 実施できるようにしてお

札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

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146 理学療法科学第 23 巻 1 号 I. はじめに 膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷は, スポーツ外傷の中で発生頻度が高く, スポーツ活動を続行するためには靭帯再建を余儀なくされることが多い 近年,ACL 損傷を予防することの重要性が認識され

138 理学療法科学第 24 巻 2 号 I. はじめに膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷では, 多くの場合再建術が必要となり, その後スポーツ復帰までに半年から1 年近くを要することがある そのため, 近年その予防の重要性が唱えられるようになってき

1 内側広筋自体を狙って研究を開始したの は 2007 年にこの大学に来てからです 5 6 最終的にはスクワット動作にもっていきたいのですが 方法論的にスクワット動作において股 膝 足関節の運動範囲や速度を厳密に規定しないと関節モーメントの大きさが違ってきます 当然それに起因して筋活動量や筋電図の周

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

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3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

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葛原 / 日本保健医療行動科学会雑誌 28(2), 焦点 3 筋の不均衡を改善するためのパートナーストレッチング 葛原憲治愛知東邦大学人間学部人間健康学科 Stretching with a Partner to Improve Muscle Imbalance Kenj

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理学療法科学 17(4): ,2002 研究論文 静的および動的荷重位における足内側縦アーチの動きと機能 Changes and Functions of the Medial Longitudinal Arch during Static and Dynamic Loading 中村浩

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今日の流れ 捻挫とは? 足の解剖から捻挫の定義まで 捻挫の受傷起点 救急処置 長期的観点から見た捻挫 再損傷予防 捻挫について 22

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を0%,2 枚目の初期接地 (IC2) を 100% として歩行周期を算出した. 初期接地 (IC1) は垂直 9) 分力 (Fz) が 20Nを超えた時点, 荷重応答期 (LR) は Fz の第 1ピーク時, および遊脚後期 (Tsw) は IC1 から 10% 前の時点とした 10). 本研究の

膝関節 Ⅱ 前回に引き続き 今回も膝関節に関するトピックについて説明していきたいと思います 前回は膝蓋大腿関節の座位における検査法について説明しました 今回は仰臥位で行う膝関節の検査について 特に Q アングルに焦点を当てて 解説していきたいと思います 仰臥位検査 :Q アングル膝関節の仰臥位検査で

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ランニング ( 床反力 ) m / 分足足部にかかる負担部にかかる負担膝にかかる負担 運動不足解消に 久しぶりにランニングしたら膝が痛くなった そんな人にも脚全体の負担が軽い自転車で 筋力が向上するのかを調査してみました ロコモティブシンドローム という言葉をご存知ですか? 筋肉の衰えや

吉備国際大学研究紀要 ( 保健科学部 ) 第 20 号,13~18,2010 閉運動連鎖最大下出力時における下肢筋収縮様式の解析 * 河村顕治加納良男 ** 酒井孝文 ** 山下智徳 ** 松尾高行 ** 梅居洋史 *** 井上茂樹 Analysis of muscle recruitment pa

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年度修士論文 男子ラクロスにおける前十字靭帯損傷発生率とその発生要因の検討 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科スポーツ科学専攻スポーツ医科学研究領域 5012CA040-9 西川亜夢子 研究指導教員 : 金岡恒治教授

運動器疾患予防靴の開発のための歩行時靴底踏力の計測

月刊トレーニング・ジャーナル 2013年2月号

第 1 章. 序章...1 第 1 節. 研究の背景...1 第 2 節. 膝 OA の理学療法の確立にともなう課題と本研究の位置づけ...4 第 3 節. 本研究の目的...9 第 4 節. 本論文の構成...9 第 2 章. 膝 OA と歩行時の外部膝関節内反モーメントの関係 第 1

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

第3回 筋系

文京学院大学保健医療技術学部紀要第 7 巻 2014:1-7 踵骨 - 下腿の運動連鎖と変形性膝関節症の関係 荷重位における踵骨回内外と下腿回旋の連動動態の解析 江戸優裕 1, 山本澄子 2, 保坂亮 3, 櫻井愛子 3 1 文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科 2 国際医療福祉大学大学院医療福

SSP「歩行」

医師としての診療とアスケルケア 足やひざが

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症例報告 関西理学 12: 87 93, 2012 右膝関節の疼痛により防御性収縮が強く歩行の実用性を低下させていた右人工膝関節全置換術後の一症例 吉田拓真 1) 山下貴之 1) 石濱崇史 2) Physical Therapy for a Patient who Had Difficulty Wa

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Effects of developed state of thigh muscles on the knee joint dynamics during side cutting The purpose of this study was to investigate the effects of

中枢神経系の可塑性 中枢神経系障害を持つ患者の不適切な介入は不適切な可塑性適応を起こす 運動コントロールの改善には治療中に行われる運動ができるだけ正常と同じ様に遂行される事や皮膚 関節 筋からの求心的情報を必要とする 中枢神経系が環境と相互作用する為には運動やバランス アライメント トーンの絶え間な

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella

Transcription:

行為システムとしての歩行を治療する認知神経リハビリテーションの観点 人間はなぜ歩くのか? NPO 法人子どもの発達 学習を支援するリハビリテーション研究所理事長高橋昭彦 アフリカで誕生した我々の祖先は長い月日をかけて世界中に渡っていった 最先端のリハビリテーション? 我々が回復を目指すべきものは 歩行動作か行為としての歩行システムか? 人間は外部刺激によって制御される 操り人形 ではない! この問題に答えられない患者に 反張膝の改善や二重膝作用の出現が期待できるのか?? 1

みなさんもそうであるように A B C 患者さんもわからないこと ( 想像できないこと ) は遂行できない 病理によって生じる損傷 Oliver Sacks 脳神経科医サックスはノルウェイの山中で転落事故にあい 大腿四頭筋を断裂した 手術は成功したが 術後彼は自分の左足に 奇妙で おかしい 不思議な 本物でない 異様な 分離した 切り離された 疎外感を感じた 知覚こそは根本的な 自己 自己統合の基盤であるのに 周囲の医師 セラピスト 看護師は誰もその言葉に耳をかそうとしなかった ( 左足をとりもどすまで. 晶文社 ) あなたは全く新しい分野を発見しつつあるのです どうかあなたの観察を発表してください 末梢の障害に対する 獣医のようなあつかいを変え より深いより人間的な医学への道を開くために役立つかもしれません (Oliver Sacks に宛てた A R ルリアの手紙より ) Voluntary movement (Allen and 塚原,1974) 運動プログラム 運動遂行 意志 大脳基底核 頭頂葉感覚 運動前野補足運動野小脳 運動野 脊髄筋 行動主義批判 Behaviorism では脳は Black box! 中枢神経系 組織化課程 学習に基づく運動療法 中枢神経系 中枢神経系 中枢神経系 組織化課程 主体の意図が無視されている! 運動シークエンス 運動シークエンス 運動シークエンス 運動シークエンス 代償 情報 情報 情報 情報 A. 学習課程 B. 自動化 C. 代償 D. 訓練方法 2

行為としての歩行 より人格的有意的な働きであり 目的と動機が明確で 手段その他についての思慮 選択を経て決意された自覚的な活動でなければならない 運動が行為であるための条件 Austin( オースチン ) の言語行為論 1) 発語行為運動 ( 筋収縮 ) を遂行し 2) 発語内行為環境世界の一部と一定の相互作用をつくり 3) 発語媒介行為その相互関係から明確な結果を得る 運動行為にも この3つの行為 (act) を含める必要がある 3つが分離した運動は行為ではない 筋力増強訓練は発話行為に相当 ファシリテーション テクニックは発語内行為に相当 認知神経リハビリテーションは3つの運動行為を含めて行為とする 運動とは知ることである (by Perfetti) 中枢神経系 行為は 人間の自由意志に基づいているしたがって 自己の身体を感じようとする行為身体で物体を知覚しようとする行為身体で世界に意味を与えようとする行為 が存在する 行為とは 自由意志に基づく 何かを知るためのプロセス 運動 ( 筋収縮 ) 環境 ( 物体 ) 身体と環境の相互作用 情報 By Carlo Perfetti 行為を回復させる訓練もまた行為でなければならない 運動 ( 筋収縮 ) 物体 脳の表象 認知的な差異 知覚予測どこの空間? ( 方向 距離 形 ) 何の空間? ( 表面 固さ 重さ ) 触覚圧覚運動覚重量覚物理的な差異 3

行為は意図に始まり 結果の確認に終わる 行為には主体の意図 (intension) が入る 人間はいともたやすく歩けるのか? 行為には意図的な心的表象と心的操作が必要 ( メンタル リプレゼンテーション ) ( メンタル オペレーション ) 動物の行動のように 外部刺激に対して無意識に反応する行動は行為ではない ある目的を意識的に意図し それを実現しようと運動し その結果を確認するプロセスが行為である 認知神経リハビリテーションではどのように患者を回復させていくのか? 行為としての歩行におけるシステム システムとは複数の機能の複合体である ( セラピストは患者に何を教えるのか?) システムを解体する (Deconstruction of action) 接床期 支持期 推進期 到達期 ( 緩衝機能 ) ( 支持機能 ) ( 推進機能 ) ( リーチング機能 ) 歩行システムに内在する機能は 1 緩衝機能 ➁ 支持機能 3 推進機能 4 リーチング機能である 1 緩衝機能 ➁ 支持機能 < 足を地面に接地する機能 > < 足底を地面に接地する機能 > < 片足で体重を支持し移動する機能 > 4

3 推進機能 < 踵を地面から離す機能 > < 踏み切る機能 > 4 リーチング機能 < 地面から足を持ち上げる機能 > < 下肢を方向づける機能 > < 足の接地点を決定づける機能 > 1 緩衝機能 症例 ( ビデオ ) < 足を地面に接地する機能 > < 足底を地面に接地する機能 > < 足を地面に接地する機能 > 予測と異なれば中枢は即座にストラテジーを変更する 機能を果たすために中枢神経が身体各部に問う認知問題 骨盤 : 距離股関節 : 距離 方向膝関節 : 距離足関節 : 距離 方向足趾 : 距離足底 : 表面素材 圧 摩擦 骨盤 : 距離 骨盤前方回旋約 5 股関節の中心線への接近と歩隔の減少 5

股関節 : 距離 方向 股関節屈曲 20 軽度内旋 ( 約 3 ) 重心を過度に降ろさない 膝を進行方向に向け 踵骨外側での接地 ( 荷重線と踵骨 - 床接触点とのズレ ) 膝関節 : 距離 膝関節軽度屈曲 5 軽度内旋 ( 約 3 ) 重心を過度に降ろさない 足関節 : 距離 方向 足関節底背屈 0 ごく軽度の内反 中 前足部の足底と床の距離を保つ 踵骨外側での接地 ( 荷重線と踵骨 - 床接触点とのズレ ) 6

足底 : 接触 圧 踵 ( 踵骨外側 ) での接地 床との接触 床の硬さ < 足底を地面に接地する機能 > 足関節 : 距離足底 : 圧 表面素材 ( 接触 ) 摩擦 足関節 : 距離 方向足関節底屈 5 外反 5 中 前足部の足底と床の距離を減じる 荷重線と踵骨 - 床接触点軸を一致させる 7

足底 : 表面素材 摩擦 圧 踵 ( 踵骨外側 ) での接地 床の硬さ 床の摩擦 Heelstrike transient ( 情報収集のための時間稼ぎ ) ➁ 支持機能 < 片足で体重を支持し移動する機能 > < 片足で体重を支持し移動する機能 > 膝関節 : 距離足関節 : 方向足底 : 表面素材 圧 摩擦 膝関節 : 距離 膝関節屈曲 5 床と重心の距離を保つ 重心を過度に上げない 股関節に対し 前 真下 後へ ( 屈曲モーメントから伸展モーメントへの切替 ) ( 足底圧中心は踵からつま先へ移動 ) ( 床反力ベクトルは後方から前方へ ) 足関節 : 方向足関節背屈 5 外反の減少 荷重線を支持側下肢に近づける 8

足底 : 圧 表面素材 摩擦 足底圧の前方移動 重心点と足底圧中心の空間的関係性 足底圧軌跡の照合 3 推進機能 < 踵を地面から離す機能 > < 踏み切る機能 > < 踵を地面から離す機能 > 骨盤 : 距離股関節 : 距離 方向膝関節 : 距離足関節 : 距離 方向足趾 : 距離足底 : 表面素材 圧 摩擦 骨盤 : 距離骨盤後方回旋約 5 股関節の中心線への接近と歩隔の減少 9

股関節 : 距離 方向 股関節伸展 20 ごく軽度内旋 ( 約 1 ) 重心を過度に降ろさない 踵を後方に向けウィップを出現させない 膝関節 : 距離 膝関節軽度屈曲 5 下腿三頭筋の遠心性のコントロールによって受動的に安定 荷重が対側に移るとともに下腿三頭筋は脱収縮し膝が屈曲する 10

足関節 : 距離 方向 足関節底背屈 10 軽度の外反 (2 ) 床と踵の距離を決定する 膝を前方に移動する 足趾 MP 関節 : 距離 足趾 MP 関節伸展 30 床と踵の距離を決定する 足底腱膜を緊張させ足部の剛性を高める ( 巻き上げ機現象 ウインチの原理 ) 足底 : 圧 表面素材 摩擦 前足部の三角形で荷重 ( 母趾球 小趾球 母趾 ) < 踏み切る機能 > 足趾 : 距離足底 : 表面素材 圧 摩擦 11

足趾 MP 関節 : 距離 足趾 MP 関節伸展 60 床と踵の距離を決定する 足底腱膜を緊張させ受動的に床を押し付ける 足底 : 圧 摩擦 足圧中心が母趾と示趾の間抜け床から離れる を 4 リーチング機能 < 地面から足を持ち上げる機能 > < 下肢を方向づける機能 > < 足の接地点を決定づける機能 > < 地面から足を持ち上げる機能 > 股関節 : 方向膝関節 : 距離足関節 : 距離 股関節 : 方向 股関節屈曲 15 8 外旋位から0 へ 外旋位から膝を進行方向に向ける 腸骨筋 薄筋 縫工筋の協調運動である 特に薄筋が股関節の屈曲と内転 内旋に関与する 膝関節 : 距離 膝関節屈曲 60 足底と床との距離の増大 股関節屈筋による慣性力によって屈曲 12

足関節 : 距離 足関節底屈 5 足尖と床との距離の増大 < 下肢を方向づける機能 > 股関節 : 方向膝関節 : 距離足関節 : 距離 股関節 : 方向 股関節屈曲 25 0 から軽度内旋 次の接床に備えて膝をわずかに内側に向ける ( 歩行中の最大屈曲 ) 膝関節 : 距離 膝関節屈曲 25 次の接床にそなえた Quad の活動が始まる ( 膝の完全伸展と荷重の準備 ) 13

足関節 : 距離 足関節底背屈 0 足尖と床との距離の維持 ( クリアランスは 1cm を超えない ) < 足の接地点を決定づける機能 > 股関節 : 距離 方向膝関節 : 距離足関節 : 距離足趾 : 距離 股関節 : 距離 方向 股関節屈曲 20 軽度内旋 (3 ) 次の接床に備えて膝をわずかに内側に向ける この相の終わりに足は約 1cm の高さから自由落下する ( ごくわずかな体幹前傾 股関節伸展 膝関節屈曲 ) 膝関節 : 距離 膝関節屈曲 0 接床に備え Quad と Ham は同時収縮 この相の終わりに足は約 1cm の高さから自由落下する 14

足関節 : 距離 方向 足関節底背屈 0 ( まれに軽度内反 ) 足尖と床との距離の維持 ( クリアランスは 1cm を超えない ) 踵外側での接地の準備 足趾 MP 関節 : 距離 足趾 MP 関節伸展 0~25 足底腱膜を緊張させ踵の感受性を高め接触を準備する 15