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山口医学第 65 巻第 3 号 129 頁 ~135 頁,2016 年 129 症例報告 虫垂粘液嚢腫の 3 例 河村大智, 大楽耕司 山陽小野田市民病院外科山陽小野田市東高泊 1863 番地 1( 756 0094) Key words: 虫垂粘液嚢腫, 虫垂粘液嚢胞腺腫, 虫垂粘液嚢胞腺癌 和文抄録 症 例 虫垂粘液嚢腫の3 切除例を経験したので報告する. 症例 1は62 歳女性. 血便を主訴に近医から当科に紹介となった. 精査の結果, 虫垂粘液嚢胞腺癌が疑われ, 右半結腸切除術 (D2 郭清 ) を施行した. 病理診断で虫垂粘液嚢胞腺癌 (stageⅡ) と診断された. 術後はUFTを2 年間内服し, 術後 8 年経った現在も無再発で健在である. 症例 2は64 歳女性. 右下腹部痛を主訴に近医を受診し, 急性虫垂炎を疑われ当科に紹介となった. 急性虫垂炎の診断で回盲部切除術を施行したが, 病理診断は虫垂粘液嚢胞腺腫であった. 術後 8 年経った現在も健在である. 症例 3は77 歳女性. 心窩部痛を主訴に当院内科を受診. 腹部 CT 検査で右卵巣嚢腫疑いと診断され, 当院産婦人科で腹腔鏡下手術を施行された. 術中所見で虫垂腫瘍が疑われたため当科紹介となった. 後日, 腹腔鏡下虫垂切除術を施行した. 病理診断は虫垂粘液嚢胞腺腫であった. 術後経過は良好である. 症例 1:62 歳女性. 主訴 : 血便. 既往歴 :44 歳時に子宮筋腫の手術. 現病歴 : 血便に気づき, 近医を受診した. 触診で右下腹部腫瘤を指摘され, 精査目的で当科を紹介された. 身体所見 : 腹部は平坦, 右下腹部に3 2cmの腫瘤を触知した. 腫瘤の表面は平滑であり, 可動性に乏しかった. 血液生化学検査所見 :WBC 3020/μl, Hb 11.5 g/dl, PLT 14.4 万 /μl, CRP 0.00mg/dl, CEA 19.05ng/ml ( 基準値 5.0ng/ml 以下 ),CA19 9 11.07U/ml( 基準値 37U/ml 以下 ), その他異常所見はなかった. 腹部造影 CT 検査 : 骨盤内に15 6cm 大の楕円形低吸収の腫瘤を認めた. 内部の造影効果はなく, 嚢胞性病変と考えられた ( 図 1). 緒 言 虫垂粘液嚢腫は虫垂切除例の0.2~0.3% の頻度で 1) 認められる稀な疾患であり, 術前診断は困難とされる. さらに, 良悪性の判断も困難であるため, その治療方針は確立されていない. 今回われわれは虫垂粘液嚢腫 3 例 ( 粘液嚢胞腺癌 1 例, 粘液嚢胞腺腫 2 例 ) を経験したので報告する. 平成 28 年 4 月 22 日受理 図 1 症例 1 術前 CT

山口医学 第65巻 第3号 2016 130 大腸内視鏡検査 cecum bottomに丈の高いsmt様 切除標本肉眼所見 虫垂は16.8 8.0cmに腫大して 隆起を認めた 頂上に虫垂開口部様の膜を認めるが いた 虫垂内腔には黄色のゼリー状の液体が貯留し 開口していなかった 全体に平滑で正常粘膜で覆わ ていた 粘膜面には悪性所見は認めなかった れていた 直腸では非常になだらかな隆起がみられ 病理学的所見 虫垂の粘膜表層は高円柱状の粘膜上 外からの圧迫による所見と考えられた 虫垂腫瘍疑 皮に覆われるか 上皮が消失し巨細胞の出現を伴う いと診断された 粘液結節が形成されていた Tumor cellは小型だ 腹部超音波検査 右下腹部に大きさ14 5cmの境 が 浸潤様に壁内にも粘液結節が形成されていたた 界明瞭な腫瘤を認めた 内部は充実性でマーブル状 め mucinous adenocarcinomaと診断された 図3 であった 図2 深達度については 筋層がほぼ消失し その部に粘 以上の所見から 虫垂粘液嚢胞腺腫または粘液嚢 液結節の形成をみとめることからSSと判断された 胞腺癌の可能性が考えられた 血中CEAの上昇が 内容物 細胞成分をほとんど欠く好酸性物であっ みられたため 粘液嚢胞腺癌の可能性を考え リン た 一部で微細な石灰化がみられ 粘液の変性した パ節郭清を伴う一期的手術を施行する予定とした ものと考えられた 手術所見 腹腔内に腹水や粘液の貯留はみられなか リンパ節転移はみられなかった った 虫垂は著明に腫大し 腹膜と一部癒着してい 以上よりSS, N0, H0, P0, M0, stageⅡの虫垂粘液 た 直腸への浸潤はみられなかった 腸間膜には多 嚢胞腺癌と診断した 数の腫大したリンパ節を認めた 右半結腸切除術 術後経過 経過は良好で術後30日目に退院した D2郭清 を施行した UFTを2年間内服し 術後8年経った現在も無再 発で健在である 症例2 64歳女性 主 訴 右下腹部痛 既往歴 特記事項なし 現病歴 発熱と右下腹部痛を主訴に近医を受診し た 急性虫垂炎を疑われ 当科へ紹介となった 身体所見 腹部は平坦 右下腹部に圧痛を認めた 反跳痛及び筋性防御を認めた 血液生化学検査所見 WBC 17980/μl, Hb14.2 g/dl, PLT 22.5万/μl, CRP 7.87mg/dl, その他異常所見は なかった 図2 症例1 超音波検査 腹部単純CT検査 右下腹部に直径約3cmの管状構 造がみられ 盲腸下端部と連続し 腫大した虫垂と 考えられた 周囲の脂肪織に線状影が認められたが 軽度であった 図4 以上の所見から 急性虫垂炎と診断され 緊急手 術となった 手術所見 虫垂は著明に腫大し 赤紫色を呈してい た 炎症は盲腸にまで及んでいたため 虫垂切除で は不十分と判断し 回盲部切除術を施行した 摘出標本 虫垂表面には膿の付着を認めた 虫垂根 部の内腔には16mm 16mmの有茎性腫瘍を認めた 虫垂根部周囲の盲腸壁には炎症性肥厚がみられた 図3 症例1 病理組織学的所見 HE染色 200倍 図5

虫垂粘液嚢腫の3例 131 病理組織学的検査所見 虫垂壁は粘膜固有層を中心 既往歴 67歳時に大腸ポリープに対し内視鏡的切除 とし 好中球などの強い炎症細胞浸潤と出血 壊死 を施行された を認めた 特に虫垂根部では強い壊死に至っていた 現病歴 心窩部痛を主訴に当院内科を受診した 腹 粘液層の中に核腫大を呈するatypical cellを認め 部CT検査で右卵巣腫瘍が疑われ 当院産婦人科に またerosiveな粘膜表層において 軽度の核腫大の 紹介となった 右卵巣嚢腫疑いの術前診断のもと みられるatypical cellが低乳頭状を呈して増殖する 腹腔鏡下に手術が施行された 術中所見で卵巣には 部が認められた 細胞異型が比較的弱く また明ら 異常がなく 虫垂腫瘍が疑われたため当科に紹介と か な 浸 潤 像 を 認 め な い こ と よ り mucinous なった cystadenomaと診断された 身体所見 腹部は平坦 右下腹部に鶏卵大の腫瘤を 術後経過 経過は良好で 術後25日目に退院となっ 触れた 圧痛なし た 病理診断医から高分化型のadenocarcinomaの 血液生化学検査所見 WBC 3500/μl, Hb 12.5g/dl, 可能性も否定できないため 厳重に経過観察が必要 PLT 22.9万/μl, CRP 0.55mg/dl, CEA 29.96ng/ml とされ 紹介医で経過をみられている 術後8年経 基準値5.0ng/ml以下 CA19 9 2.00U/ml 基準値 った現在も健在である 37U/ml以下 その他異常所見なし 腹 部 単 純 CT検 査 盲 腸 下 部 と 子 宮 の 間 に 5.7 症例3 77歳女性 3.3cmの低濃度腫瘤がみられ 嚢胞性腫瘤が疑われ 主 訴 心窩部痛 た 辺縁には石灰化がみられた 腹部造影MRI検査 子宮の右側に5.5 3.5cmの腫瘤 を認めた 内部はT1強調像で低信号 T2強調像で 高信号であった 拡散強調像で高信号域はみられな かった 造影で不均一に染まる部分は認めなかった 大腸内視鏡検査 S状結腸に径5mmのⅡa発赤調ポ リープあり 卵巣腫瘍の浸潤はみられなかった 以上の所見から 右卵巣嚢腫疑いと診断され 当 院産婦人科で腹腔鏡下手術が施行された しかしな がら 右卵巣には異常がなく 虫垂腫瘍が疑われた ため当科に紹介となった 図4 症例2 図5 症例2 術前CT検査 摘出標本 図6 症例3 摘出標本

132 山口医学第 65 巻第 3 号 (2016) 腹部造影 CT 検査 : 盲腸下部と子宮の間に5.8 3.4cmの低濃度腫瘤がみられ, 単純 CT 検査と同様, 嚢胞性腫瘤が疑われた. 辺縁には石灰化がみられた. 虫垂根部と思われる部分の造影効果は大腸壁と同程度であり, 連続する腫瘤の造影効果は乏しかった. 虫垂粘液嚢腫に矛盾しない所見であった. 注腸造影検査 : 盲腸下部に外部からの圧迫様の変形がみられた. 虫垂根部には約 1cmの造影剤の貯留がみられた. この尾側に薄い石灰化にかこまれる丸みのある変化がみられた. 虫垂の末梢側には造影剤は流れず, ほとんど描出されなかった. 以上の所見から, 虫垂粘液嚢腫と診断した. 術中所見で悪性を疑わせる所見がなかったため, まずは腹腔鏡下に虫垂切除術のみを施行し, 病理診断で悪性所見が認められた場合は二期的に回盲部切除術または右半結腸切除術を追加で施行する予定とした. 手術所見 : 臍下, 左下腹部, 恥骨直上の3ポートで腹腔鏡下に手術を施行した. 腹腔内に腹水や腹膜偽粘液腫は認めなかった. 虫垂は著明に腫大していた. 虫垂根部には異常を認めなかった.Endo GIA TM を用いて, 虫垂根部で縫合切離し, 腫瘍を摘出した. 摘出標本 : 腫瘍の大きさは59 36 38mmであった. 虫垂壁は菲薄化し, 白色で硬くなっていた. 粘膜面に異常は認めなかった ( 図 6). 虫垂内部には黄色のゼリー状粘液が充満していた. 虫垂根部には異常を認めなかった. 病理学的所見 : 虫垂腔は嚢胞状に拡張し, 内腔には多量の粘液を入れ, 一部で石灰化を伴っていた. lining cellは大部分で消失し, ややhyperchromatic な大小不同の核を有した円柱状の異型上皮が一層で認められる部分や, ごく一部で乳頭状に増生した部分も認められた. 標本内で明らかな浸潤や carcinomaとするほどの異型はないため,low grade appendiceal mucinous neoplasmと診断された. 術後経過 : 経過は良好で, 術後 9 日目に退院となった. 当科外来で経過観察している. 考察虫垂粘液嚢腫 (mucocele of the appendix) は, 虫垂の内腔が粘液貯留により拡張し, 腫瘤を形成した状態と定義されている 1). その発生頻度は低く, 虫垂切除例の0.2~0.3% と報告されている 1,2). 病理組織学的には過形成 (mucosal hyperplasia), 粘液嚢胞腺腫 (mucinous cystadenoma), 粘液嚢胞腺癌 (mucinous cystadenocarcinoma) の3つに分類され, 発生頻度はそれぞれ25%,63%,12% と報告されている 3). 粘液嚢胞腺腫または粘液嚢胞腺癌の場合, 腹膜に播種し腹膜偽粘液腫を発症することがある 4). 外科的切除後の予後は, 粘液嚢胞腺腫の5 年生存率は91~100% で良好であるが, 粘液嚢胞腺癌では25% 以下と不良である 5). 虫垂粘液嚢腫の臨床症状としては, 特異的な症状はないが, 右下腹部痛や右下腹部腫瘤が発見契機となることが多い 6). また, 無症状で婦人科や泌尿器科の手術時に偶然発見されることもある. 症例 2のように急性虫垂炎として手術され, 術中, 術後に判明することも多い. 虫垂粘液嚢腫の診断には, 注腸造影検査や腹部超音波検査,CT 検査, 大腸内視鏡検査が有用であるとされている 7). 注腸造影検査では, 虫垂切除歴がないのに虫垂が造影されず 8), 盲腸下極に粘膜下腫瘍にきわめて類似したextrinsic massと表現される盲腸内腔に突出する腫瘤陰影が認められ, 圧迫法によりはち巻ひだと呼ばれる, 腫瘤を取り囲むような輪状のひだが認められるとされる 9). 超音波検査では内部に粘調な内容物の存在を示唆する微細な反射像をもつ低エコー性嚢胞像が特徴とされる 10). 特に超音波検査は, 壁の一部にみられる, 腫瘍の乳頭状増殖により内腔に突出する小さなechogenic mass の描出に優れているとされる 11).CT 検査では盲腸に連続する嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁の石灰化も特徴的な所見と考えられている. 大腸内視鏡検査で粘膜下腫瘍様の像を呈し, 虫垂開口部が隆起上にみられるvolcano signが特徴とされる 12,13). 症例 1においては, これらの所見がいずれも認められ, 虫垂粘液嚢腫の診断は可能であった. 症例 2においては,CT 検査の所見から虫垂炎と考えたが, 虫垂の腫大に比較して周囲の炎症所見が少ないため, 粘液腫の可能性も考える必要があったと反省している. 術前に良悪性の鑑別は困難とされている. これは, 解剖学的に内視鏡下生検が非常に困難なためである 14). 診断の参考として, 造影 CT 検査や血中 CEA 値が用いられることが多い. 造影 CT 検査では虫垂壁の肥厚, 内部への乳頭状隆起, 限局性の結節部分を有する場合は虫垂粘液嚢胞腺癌が示唆されると報告

虫垂粘液嚢腫の 3 例 133 されている 15). また, 血中 CEA 値も用いられるが, 16) 別府らの報告によると,CEAは虫垂粘液嚢胞腺癌の80.0% で高値を示すが, 粘液嚢胞腺腫の44.8% でも高値を示すため鑑別診断での有用性は低く, 良悪性の鑑別には利用できないとされる 7). 嚢胞腺癌であった症例 1では血中 CEAは高値を示していたが, 画像検査所見は悪性を示唆する所見は認めていなかった. 一方, 症例 3でも血中 CEAは高値であったが嚢胞腺癌ではなかった. 嚢胞腺癌の臨床的特徴として, 病悩期間が長く慢性的な経過を示すことも挙げられている 17). 術前診断にFDG PETが有用とす 18) る報告があるが, 症例 2のように虫垂炎を伴っている場合は偽陽性となる可能性が高く,cystic typeの腫瘍ではfdgの集積が弱い場合が多いとされるので, 検査にかかる費用や時間, 放射線被曝の点からも検査の意義は低いと思われる. 虫垂粘液嚢腫の治療は外科的切除が選択されるが, その標準的術式は確立されていない 9,10,19). 第一に, 虫垂切除のみかリンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を選択すべきかという点がある. 嚢胞腺腫では周囲への浸潤がなければ虫垂切除のみで, 回腸や結腸への浸潤がある場合は回盲部切除術または右半結腸切除が選択される. 悪性であってもリンパ行性転移, 血行性転移が稀とされている 12). 実際, 症例 1でも深達度 SSに達していたが, リンパ節転移はみられなかった. 壁深達度とリンパ節転移について 20,21) の検討がなされているが, 深達度 M 症例には虫垂切除のみで追加切除は不要と考察されている. 一方で, 深達度 SMで脈管侵襲やリンパ管侵襲がないにも関わらず再発が認められた症例が報告されており, 虫垂切除例よりもリンパ節郭清を伴う回盲部切除術または右半結腸切除術の方が予後がよいとされ 22,23), 深達度 SM 以深の粘液嚢胞腺癌に対する治療はD2 郭清を伴う回盲部切除術または右半結腸切除術が妥当ではないかと考察されている 10,14,20,21,24). 症例 1では右半結腸切除術を施行し, 術後 8 年経過した現在も再発はみられていない. 第二に, 一期的手術か二期的手術かという点がある. 術前に良悪性の鑑別が困難なため, 初回から嚢 25) 胞腺癌に準じた術式を選択すべきという意見があるが, 不要な手術侵襲を避ける目的で二期的に手術 26) を行うべきという意見もみられる. 悪性であっても細胞異型や構造異型が軽度である場合があり, 術 中迅速診断による良悪性の鑑別も困難とされる. 2006 年から2010 年の虫垂粘液嚢胞腺癌 92 例について 20) の検討では, 術中迅速組織検査が行われた7 例で正診されたものはなかった. 術前および術中診断は困難であるため, 一期的または二期的手術を選択するか, 判断に苦慮される. 症例 1では, 悪性の可能性が否定出来ないため, 十分なインフォームド コンセントを得て, 一期的にリンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を施行した. 症例 3では, 血中 CEAは高値であるものの, 先の術中所見で悪性を疑わせる所見は認めなかったので, 虫垂切除術のみを施行し, 悪性の場合は二期的に追加手術を施行する方針とした. 虫垂粘液嚢胞腺癌に対して腹腔鏡下手術が施行された症例が報告されている 21) が, 嚢腫の破裂による腹膜播種から腹膜偽粘液腫をきたすと予後不良となる 27,28) ため, 開腹手術と同様に慎重な術中操作が必要である. 結語虫垂粘液嚢腫に対して手術を施行した3 例を経験したので報告した. 虫垂粘液嚢腫に対する治療は, 術前の検査所見, 手術所見, 患者の希望などを総合的に勘案して, 方針を決定するべきである. 引用文献 1) 長谷和生, 望月英隆. 虫垂粘液嚢胞腺腫. 別冊日本臨床領域別症候群シリーズ. 消化管症候群 ( 下巻 ). 日本臨床社.1994:738 741. 2)Chang P, Attiyeh FF. Adenocarcinoma of the appendix. Dis Colon Rectum 1981;24:176 180. 3)Higa E, Rosai J, Pizzimbono CA, et al. Mucosal hyperplasia, mucinous cystoadenoma and mucinous cystadenocarcinoma of the appendix. A re evaluation of the appendiceal mucocele.cancer 1973;32:1525 1541. 4) 大原佑介, 山本雅由, 柳沢和彦, 他. 虫垂粘液嚢胞腺癌と原発性腹膜癌の重複癌の1 例. 日消外会誌 2010;43(5):584 588. 5) 齋藤俊雄, 永光雄造, 鈴木康伸, 他. 未破裂虫垂粘液嚢胞腺腫と破裂虫垂粘液嚢胞腺癌の2 症

134 山口医学第 65 巻第 3 号 (2016) 例. 日産婦千葉 2009;3:12 15. 6) 東原宣之, 味村俊樹, 安達実樹, 他. 腹腔鏡補助下右半結腸切除を施行した虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例. 日臨外会誌 2005;66:1099 1104. 7) 遠藤出, 三角俊毅. 腸重積を契機に発見された虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例. 日臨外会誌 2008;69(12):3200 3203. 8) 北川晋二, 本岡慎, 平田展章, 他. 虫垂腫瘤様病変における注腸 X 線所見. 胃と腸 1990; 25:1155 1168. 9) 中山伸一, 旗手和彦, 根本祐太, 他. 画像検査所見が診断に有用であった虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. 北里医学 2008;38:35 38. 10) 水沼和之, 中塚博文, 藤高嗣生, 他. 術前診断に超音波検査が有用であった原発性虫垂癌の1 例. 日臨外会誌 2006;67(2):369 372. 11)Athey PA, Hacken JB, Estrada R. Sonographic appearance of mucocele of the appendix. J Ultrasound Med 1984;12:333 337. 12) 平木将紹, 薬師寺浩之, 原田貞美, 他. 高 CEA 血症を呈した虫垂粘液嚢胞腺腫の1 例. 消外 2006;29:119 123. 13)Hamilton DL, Stormont JM. The volcano sign of appediceal mucocele. Gastrointest Endosc 1989;35:453 456. 14) 早川善郎, 入野田崇, 目黒英二, 他. 上行結腸への穿通を認めた虫垂粘液嚢胞腺癌に対し腹腔鏡下大腸切除を施行した1 例. 臨外 2006;61 (10):1397 1400. 15) 桑鶴良平, 富田貴, 片山仁, 他. 機械的イレウスを来した虫垂粘液性嚢胞腺癌の1 例. 画像診断 1993;13:216 221. 16) 別府理子, 日浦昌道, 野河孝充, 他. 右付属器炎と鑑別困難であった虫垂粘液嚢胞腺腫の1 例. 日産婦中国四国会誌 1998;46:232 235. 17) 高島正樹, 増田亮, 田中勲, 他. 長期虫垂炎様症状を呈した虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例. 日臨外会誌 1999;60:767 771. 18) 森友彦, 水野礼, 伊東大輔, 他.FDG PETが術前診断に有用であった原発性虫垂癌の 1 例. 日臨外会誌 2009;70(3):778 782. 19) 毛利貴, 羽田丈紀, 安江英晴, 他. 内視鏡検 査所見が診断に有用であった虫垂粘液嚢胞腺癌の 1 例. Gastroenterol Endosc 2006; 48 (7):1447 1451. 20) 中辻直之, 八倉一晃, 越智祥隆, 他. 虫垂粘液嚢胞腺癌の1 切除例. 奈良医学 2012;63: 71 77. 21) 野口卓郎, 鈴木康弘, 高橋基夫, 他. 硝子化した虫垂壁を表在性に進展した早期虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例 早期虫垂癌の治療方針の検討. 日外科連会誌 2006;31(2):209 213. 22) 石川勉, 牛尾恭輔, 縄野繁, 他. 虫垂腫瘤診断における画像診断の役割. 胃と腸 1990; 25:1143 1154. 23)Nitecki SS, Wolff BG, Schlinkert R, et al. The natural history of surgically treated primary adenocarcinoma of the appendix. Ann Surg 1994;219:51 57. 24) 遠藤出, 三角俊毅. 腸重積を契機に発見された虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例. 日臨外会誌 2008;69(12):3200 3203. 25) 新川寛二, 上西崇弘, 金田和久, 他. 虫垂粘液嚢胞腺癌の1 切除例. 日外科連会誌 2007;32 (5):769 773. 26) 上野伸展, 折居史佳, 西川智哉, 他. 無症状で発見された巨大虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例. 旭市病誌 2007;39:32 35. 27) 徳山泰治, 平井孝, 加藤知行, 他. 術後 5 年間生存中の虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫の1 例. 日臨外会誌 2004;65:1868 1872. 28)Ronnet BM, Yan H, Kurman RJ, et al. Patients with pseudomyxoma peritonei associated with disseminated peritoneal adenomucinosis have a significantly more favorable prognosis than patients with peritoneal mucinous carcinomatosis. Cancer 2001;92:85 91.

虫垂粘液嚢腫の 3 例 135 Three Cases of Surgical Resection for Mucocele of the Appendix Daichi KAWAMURA and Koji DAIRAKU Department of Surgery, Sanyo onoda Municipal Hospial, 1863 1 Higashitakadomari, Sanyo onoda, Yamaguchi 756 0094, Japan SUMMARY We have experienced 3 cases of surgical resection for mucocele of the appendix. Case 1. A 62 year old woman was referred to our hospital for melena. As a result of inspection, mucinous cystadenocarcinoma of the vermiform appendix was suspected and right hemicolectomy with lymph node dissection was performed. The final pathological diagnosis was mucinous cystadenocarcinoma. After the operation, she had taken UFT for 2 years. She is still alive without recurrence for 8 years. Case 2. A 64 year old woman visited a local clinic for right lower abdominal pain. She was referred and admitted to our hospital on suspicion of acute appendicitis. Under a preoperative diagnosis of acute appendicitis, ileocecal resection was performed. The pathological diagnosis was mucinous cystadenoma of the vermiform appendix. She has been alive for 8 years from the operation. Case 3. A 77 year old woman visited our hospital for epigastralgia. On suspicion of right ovarian cyst, laparoscopic surgery was performed by gynecologists. During the operation, appendiceal tumor was suspected and she was referred to our department. Under the diagnosis of appendiceal mucocele, laparoscopic appendectomy was performed. The pathological diagnosis was low grade appendiceal mucinous neoplasm. She is still alive.