ECB の QE 策 年内に終了するのか? 4 月 26 日 欧州中銀 (ECB) 金融政策理事会が開催されました 今週のマーケットは 米 10 年物国債利回り ( 以下 長期金利 ) が 2014 年以来はじめて 3% 台に載せたことがメインテーマとなっており ECB 理事会への関心度はそこまで高くなかったと思います 今回のコラムでは ECB 理事会からの発表内容をご紹介し ここからのユーロについて考えてみたいと思います ECB 理事会事前予想前回 3 月の理事会では 声明文の 経済の先行き見通しが悪化すれば QE の規模や期間を拡大する準備あり という文言が削除されたました さすがに 2 ヶ月続けて文言の変更はないというのがコンセンサスとなっており 理事会への期待度は低かったと思います 期待度が低かったもうひとつの理由は 量的緩和策内容 ( フォワードガイダンス ) の変更 / 終了の可能性について 6 月か 7 月の理事会で大々的に発表されるという認識で一致していることも挙げられます 今回の会合で私が気にしていたことは 最近ユーロ圏の経済指標が じりじりと弱くなっており 既に景気のピークをつけたように見えますので その点について ECB 理事会ではどのような話しをし どういう認識であるのか? 果たしてドラギ総裁の記者会見で マクロ経済の見通しについて 自信 を見せてくださるのか? 先月発表された 3 ヶ月に一度のマクロ経済予想であるスタッフ予想での GDP とインフレ目標値について 現在も自信を持っているのか? そこが知りたいと思いました ECB からの発表 金融政策政策金利 国債購入を含む量的緩和策内容については据え置き 声明文内容も 3 月と全く同じ内容となり コンセンサス通りの結果へ ドラギ総裁記者会見今回の理事会は特に大きな発表が予定されていなかったこともあり ユーロは対ドルで 50 ~60 ポイントの動きに終始しました
ドラギ総裁の主な発言 インフレ率が ECB 目標に向けて上昇してくることに 自信をもっている 経済指標を見る限り 今年に入ってからユーロ圏の景気は穏やかになってきた これは 昨年後半にみせた強い景気回復の反動と 一時的要因によるものである 保護主義の脅威を含む世界的な要因によるリスクは顕著となっている インフレ率は 年内だいたい 1.5% あたりで推移すると予想 金融政策の見通しについては協議しなかった ユーロ加盟国全てが 経済成長の減速やモメンタムの失速を訴えている 景気はやや減速しているかもしれないが 歴史的水準よりも良い状態でいる 景気減速は一時的な要因による 例をあげれば 天候やイースター休暇のタイミングなど 賃金の引き上げにより 将来的なインフレ圧力が起こる可能性がある 為替市場のボラティリティーが落ち着いてきた 為替レベルについては協議せず 米国の長期金利上昇は ある程度予想がついた アメリカのビジネス サイクルや財政政策を考慮すれば 自然な動きである 6 月の ECB 理事会の内容について 今回は話し合っていない 将来の金融政策の道筋について 話し合っていない 金融政策の見通しと景気減速についてドラギ総裁が 金融政策の見通しについては協議しなかった と発言した時 私の Twitter のフォロワーさん達は 驚きを見せたり 揚げ足を取るようなコメントをしていました 金融政策理事会を開催したのに そこで金融政策について協議しないということがあり得るのか? みな同じ疑問を抱いたようです 私もこの発言を耳にした瞬間 どういうこと? と思いましたが 総裁からは以下の説明が続きました
景気減速の今後の足取りについて 今までの展開をもとにしながら考えているところだ 3 月の理事会後 ユーロ加盟 19 ヶ国全ての国から 景気拡大傾向終了の可能性や 景気のモメンタムが失速したという報告を受けている ここからユーロ圏経済の将来の展開をきちんと見据えることは 非常に大事である 果たしてこの景気減速は一時的なものか? それとも 今後も継続するものか? そして これは 需要サイドの問題か? 供給サイドなのか? これらを見極める必要がある そして 同時に今後景気拡大が起きる場合 どういう形で起きるのか? これらの疑問にきちんとした回答が見つけられない限り ここからの金融政策の道筋を設定する行動には移れない つまり ECB は今年に入ってからの景気減速の根本的な理由を 未だ解明中ということになります 市場参加者の間では 9 月末で終了する予定の QE 策の その後 について 6 月か 7 月の ECB 理事会で発表されるというのが一致した認識となっておりますが それに関してもやや疑問が残る形となりました 保護主義 / 貿易問題の脅威 3 月の理事会でも話題になったアメリカ発の保護主義政策 これについて ドラギ総裁は 保護主義や貿易戦争は ビジネス界の自信を損なうリスクがつきまとう 結果として 経済の拡大を止めてしまうことになりかねない もしこの動きが顕著となれば ユーロ圏のインフレ目標達成に向けた努力が無駄になることもあるだろう 関税の引き上げと保護主義の強化は それぞれが実施された場合に生じる悪影響には違いが出るかもしれないが いずれの場合も景気拡大に水を指す結果になりかねないため 注意が必要だ と語りました 3 月の理事会では トランプ大統領が発表した鉄鋼 アルミニウムに対する関税引き上げについて ドラギ総裁は苦言を呈しました そして 今回はそこから派生するであろうネガティブな影響が ECB のインフレ目標達成時期を遅らせる可能性にまで言及しています 米長期金利 3% 達成について質疑応答でアメリカの長期金利が 3% を達成したことについて記者が質問し それに対しドラギ総裁は ある程度予想は出来た と答えています 同総裁は 2 つの理由をあげており ひとつはアメリカのビジネス サイクル もうひとつは 最近のアメリカの財政政策内容でした 質問者はさらに続けて あたらしい質問をしています アメリカの長期金利は 3% というハードルがあった ドイツの長期金利にも これと同じようなハードルは存在するのか? この質問に対し 同総裁は直接的な返答は避け ECB は不必要な 或いは理不尽な引き締めが金融市場で起きていないか 常に監視している と語っています
ここからの ECB 金融政策変更のタイミング 3 月 12 日にセントラル短資 FX さんでやらせていただいたオンライン ウェブセミナーでお話しした ECB 金融政策変更のタイミング 資料 今回若干の変更をいたしましたので ここでご紹介します 最初の図が 3 月 12 日の資料 2 枚目が今回の修正図です 変更した箇所は 以下の 3 点 QE 策の内容変更のアナウンスメントを 6 月理事会から 7 月へ変更 QE 策終了時期を 9 月末から年末へ延長 最初の利上げ時期を 今年末 /2019 上半期から 2019 年第 2 四半期へ変更
ここからのユーロ 皆さんお気づきになられたかわかりませんが ドラギ総裁の記者会見冒頭声明 (Introductory Statement) の中には ユーロ動向について 以下の文言が入っておりました In this context, the Governing Council will continue to monitor developments in the exchange rate and other financial conditions with regard to their possible implications for the inflation outlook. ( インフレについては 上昇が継続すると確信できるサインは 見えてきていない この点について )ECB 理事会は 為替レートの動きやその他の金融 / 経済状態を監視し インフレ見通しへの影響をモニターするつもりだ https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2018/html/ecb.is180426.en.html インフレ見通しへの影響に対するユーロの監視 というからには ユーロ高に対し ECB は懸念を持っていると受け取れます 非常に気になったので調べてみたところ ある欧州系銀行がユーロ高が欧州企業に与える影響について説明した読み物を見つけました それによるとユーロが 10% 強くなると 欧州の優良企業の 1 株当たりの収益は平均 6% 少なくなるそうです 企業収益が落ち込めば 株価は低迷し 景気の冷え込みに直結します そうなると ますます ECB のインフレ目標達成の夢は遠のき QE 策を終了し金利の正常化を進めることが難しくなるということでしょう ユーロが 10% 強くなれば というのは ユーロ実効レートを対象にしているのか ユーロ / ドルの値動きを念頭に置いているのかわかりませんが 昨年から現在までにユーロ実効レートは 8% ユーロ / ドルは 21% それぞれ強くなっていました ECB がこれ以上のユーロ高を望んでいないとはっきり言ったわけではありませんが 気になりますね
チャート : ECB ホームページ http://www.ecb.europa.eu/stats/balance_of_payments_and_external/eer/html/index.en.html それでは実際のユーロの動きをチェックするために 最初はユーロ実効レートをチェックしてみましょう これは過去 3 年のチャートですが ボックス ( レンジ ) 内での動きがしばらく続き そこから一気に上昇し またボックスに入るという動きとなっており 現在は紫色のボックス内で動いています ピンクのボックスと紫のボックスの高値 / 安値に黄緑線を引きましたが そのレベルが 99.20/30 台 執筆時のレベルが 99.3683 ですので 紫の下限 : 99.20/30 台が下抜けすると ピンクのボックスの下限である 98 くらいまで下がってもおかしくない形です 次は ユーロ / ドルです ここでは日足チャートにベガス トンネル (144/169EMA) と 12EMA を入れてみました トンネルのレベルは 1.2035/2093( 赤い丸 ) となり ここが最初のターゲットとなります 戻しは 12EMA が通る 1.22 ミドル 今週は 1.2035/1.2250 のレンジでの動きとなるのでしょう もし 何かのきっかけで来週にもトンネルを下に抜けた場合 可能性として 1.1930 台くらいまでの下落があるかもしれません