ドラギ総裁の主な発言 インフレ率が ECB 目標に向けて上昇してくることに 自信をもっている 経済指標を見る限り 今年に入ってからユーロ圏の景気は穏やかになってきた これは 昨年後半にみせた強い景気回復の反動と 一時的要因によるものである 保護主義の脅威を含む世界的な要因によるリスクは顕著となってい

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バランスシート戦略に沸く金融市場 1 月 30 日 米連邦公開市場委員会 (FOMC) の会合結果が発表されました ハト派的内容に違いない という事前予想を遥かに上回る緩和的意味合いが強い会合となりました 今回のコラム記事では FOMC からの発表内容と 今後のマーケットの動きについて考えてみたいと

保護主義に警鐘を鳴らしたドラギ総裁 9 月 13 日 ( 木 ) は FX に従事する人間にとって非常に忙しい 1 日でした この日は トルコ 英国 ユーロ圏それぞれの中央銀行金融政策理事会が開催され ほぼ同じ時間帯に結果発表となったからです これらの中銀の中で今回は 欧州中銀 (ECB) を選んで

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

3. 資産購入プログラムの円滑な実施に向けた選択肢が検討されることに上述の通りECBの景気 物価見通しがほぼ変わらない中 記者会見においてドラギ総裁は 実施期間の延長や購入規模の拡大などは議論していない ことを明かした 理事会の前には 9 月理事会で資産購入プログラムの実施期間が延長されると予想する

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

年 7 月 21 日 団体年金事業部 ECB 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ ~ 当社のシンクタンク 株式会社第一生命経済研究所の田中主席エコノミストによる EC B 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ~

第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

合意内容わかりやすく表にまとめてみましたが ほぼ全ての点で EU の主張が通っており メイ首相が 4 回の演説を通して訴えた内容とはかけ離れた合意となったことが判ります これだけ大幅な譲歩を迫られたということは 見方を変えれば英国政府は自分達の交渉能力を過信しすぎた結果とも言えます 今回の合意につい

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

Economic Indicators_  定例経済指標レポート

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

退職等年金給付積立金 平成30年度第2四半期運用状況

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平成29年度における運用状況等

MONEX 個人投資家サーベイ 2018年3月調査

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2013 年 8 月 19 日号

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

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2017年上半期の為替相場展望

平成 28 年度第 3 四半期退職等年金給付組合積立金運用状況 警察共済組合

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

MONEX 個人投資家サーベイ 2016年2月調査

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ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

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人民元週間レポート 2015 年 12 月 18 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

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2012 年 10 月 15 日号

平成30年度第1四半期における運用状況等

第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

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グローバル・マクロ・ウォッチ

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米中貿易戦争とマーケット 今週は イギリスでもアメリカと中国の間で起きつつある 貿易戦争の可能性 が 大きく報道されるようになりました 今までずっと英国の EU 離脱 (Brexit) についての報道が多かったのですが 完全に主役の入れ替わりという印象すら受けます 今回のコラムでは この貿易戦争の報

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2014 年 2 月 2 月 5 日ロックハート アトランタ連銀総裁 経済データの内容は強弱まちまちだが 一般には 2014 年に関して前向きな見方が強まっている それには妥当な理由があると考えられる 講演で 月 6 日ドラギ ECB 総裁 今日 行動しないことを決めた理由は実のとこ


マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

的にGDPを0.5% 押し下げる 波及効果を入れると1% 近くになり 景気後退の引き金になる そういう深刻な事態が進んでいるということではないか また トランプ貿易戦争は金融危機のリスクと表裏一体 中国経済の減速は 理財商品を起点とする中国金融危機の引き金になり得 米国の双子の赤字問題が深刻化すれば

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金融テーマ解説

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人民元週間レポート 2017 年 6 月 16 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

目  次

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

MONEX 個人投資家サーベイ 2015年11月調査

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経済学でわかる金融・証券市場の話③

平成23年11月1日

株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

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為替相場展望2018年10月号

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

南十字星(オセアニアレポート)(No

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

ここからの Brexit タイムラインと要注意日 英国で最も政治に注目が集まる党大会シーズンが終了しました ここからは時間があまり残っていない Brexit 交渉の最終合意に向け アクセルを踏む時期となります EU 側もイギリスの党大会シーズン終了をじっと待っていたため ここから一気に動きが加速しそ

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一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

経済:マーケット・フォーカス

目次 1. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) における運用環境について 2. 平成 29 年度第 1 四半期 ( 平成 29 年 4 月 ~6 月 ) におけるポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 用語の説明 頁 1

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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為替相場展望2018年9月号

円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

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株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

○ユーロ

目 次 1. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) における運用環境について 2. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) のポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 被保険者ポート

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

金融政策決定会合における主な意見

目  次

米失業率と非農業部門雇用者数変化 ( 月次 25 年 1 月 ~214 年 11 月 ) 非農業部門雇用者数変化 ( 千人 前月比 左軸 ) 失業率 (% 右軸) /1 6/9 8/5 1/1 11/

とリスク とは とは 運用を行った結果得られる損益です 収益がプラスでもマイナスでも 投資したからの差額がとなります パターン 1 が変動せずに 利息等の収益金を得た場合 利息等 パターン2 投資した商品の価格が上昇した場合 とリスクの関係 運用するときには低いリスクで高いを得ることが最も望ましいの

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

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スライド 1

2018 年 10 月号 中国の金融経済動向について 中国の AI 動向について 千葉銀行上海駐在員事務所

Transcription:

ECB の QE 策 年内に終了するのか? 4 月 26 日 欧州中銀 (ECB) 金融政策理事会が開催されました 今週のマーケットは 米 10 年物国債利回り ( 以下 長期金利 ) が 2014 年以来はじめて 3% 台に載せたことがメインテーマとなっており ECB 理事会への関心度はそこまで高くなかったと思います 今回のコラムでは ECB 理事会からの発表内容をご紹介し ここからのユーロについて考えてみたいと思います ECB 理事会事前予想前回 3 月の理事会では 声明文の 経済の先行き見通しが悪化すれば QE の規模や期間を拡大する準備あり という文言が削除されたました さすがに 2 ヶ月続けて文言の変更はないというのがコンセンサスとなっており 理事会への期待度は低かったと思います 期待度が低かったもうひとつの理由は 量的緩和策内容 ( フォワードガイダンス ) の変更 / 終了の可能性について 6 月か 7 月の理事会で大々的に発表されるという認識で一致していることも挙げられます 今回の会合で私が気にしていたことは 最近ユーロ圏の経済指標が じりじりと弱くなっており 既に景気のピークをつけたように見えますので その点について ECB 理事会ではどのような話しをし どういう認識であるのか? 果たしてドラギ総裁の記者会見で マクロ経済の見通しについて 自信 を見せてくださるのか? 先月発表された 3 ヶ月に一度のマクロ経済予想であるスタッフ予想での GDP とインフレ目標値について 現在も自信を持っているのか? そこが知りたいと思いました ECB からの発表 金融政策政策金利 国債購入を含む量的緩和策内容については据え置き 声明文内容も 3 月と全く同じ内容となり コンセンサス通りの結果へ ドラギ総裁記者会見今回の理事会は特に大きな発表が予定されていなかったこともあり ユーロは対ドルで 50 ~60 ポイントの動きに終始しました

ドラギ総裁の主な発言 インフレ率が ECB 目標に向けて上昇してくることに 自信をもっている 経済指標を見る限り 今年に入ってからユーロ圏の景気は穏やかになってきた これは 昨年後半にみせた強い景気回復の反動と 一時的要因によるものである 保護主義の脅威を含む世界的な要因によるリスクは顕著となっている インフレ率は 年内だいたい 1.5% あたりで推移すると予想 金融政策の見通しについては協議しなかった ユーロ加盟国全てが 経済成長の減速やモメンタムの失速を訴えている 景気はやや減速しているかもしれないが 歴史的水準よりも良い状態でいる 景気減速は一時的な要因による 例をあげれば 天候やイースター休暇のタイミングなど 賃金の引き上げにより 将来的なインフレ圧力が起こる可能性がある 為替市場のボラティリティーが落ち着いてきた 為替レベルについては協議せず 米国の長期金利上昇は ある程度予想がついた アメリカのビジネス サイクルや財政政策を考慮すれば 自然な動きである 6 月の ECB 理事会の内容について 今回は話し合っていない 将来の金融政策の道筋について 話し合っていない 金融政策の見通しと景気減速についてドラギ総裁が 金融政策の見通しについては協議しなかった と発言した時 私の Twitter のフォロワーさん達は 驚きを見せたり 揚げ足を取るようなコメントをしていました 金融政策理事会を開催したのに そこで金融政策について協議しないということがあり得るのか? みな同じ疑問を抱いたようです 私もこの発言を耳にした瞬間 どういうこと? と思いましたが 総裁からは以下の説明が続きました

景気減速の今後の足取りについて 今までの展開をもとにしながら考えているところだ 3 月の理事会後 ユーロ加盟 19 ヶ国全ての国から 景気拡大傾向終了の可能性や 景気のモメンタムが失速したという報告を受けている ここからユーロ圏経済の将来の展開をきちんと見据えることは 非常に大事である 果たしてこの景気減速は一時的なものか? それとも 今後も継続するものか? そして これは 需要サイドの問題か? 供給サイドなのか? これらを見極める必要がある そして 同時に今後景気拡大が起きる場合 どういう形で起きるのか? これらの疑問にきちんとした回答が見つけられない限り ここからの金融政策の道筋を設定する行動には移れない つまり ECB は今年に入ってからの景気減速の根本的な理由を 未だ解明中ということになります 市場参加者の間では 9 月末で終了する予定の QE 策の その後 について 6 月か 7 月の ECB 理事会で発表されるというのが一致した認識となっておりますが それに関してもやや疑問が残る形となりました 保護主義 / 貿易問題の脅威 3 月の理事会でも話題になったアメリカ発の保護主義政策 これについて ドラギ総裁は 保護主義や貿易戦争は ビジネス界の自信を損なうリスクがつきまとう 結果として 経済の拡大を止めてしまうことになりかねない もしこの動きが顕著となれば ユーロ圏のインフレ目標達成に向けた努力が無駄になることもあるだろう 関税の引き上げと保護主義の強化は それぞれが実施された場合に生じる悪影響には違いが出るかもしれないが いずれの場合も景気拡大に水を指す結果になりかねないため 注意が必要だ と語りました 3 月の理事会では トランプ大統領が発表した鉄鋼 アルミニウムに対する関税引き上げについて ドラギ総裁は苦言を呈しました そして 今回はそこから派生するであろうネガティブな影響が ECB のインフレ目標達成時期を遅らせる可能性にまで言及しています 米長期金利 3% 達成について質疑応答でアメリカの長期金利が 3% を達成したことについて記者が質問し それに対しドラギ総裁は ある程度予想は出来た と答えています 同総裁は 2 つの理由をあげており ひとつはアメリカのビジネス サイクル もうひとつは 最近のアメリカの財政政策内容でした 質問者はさらに続けて あたらしい質問をしています アメリカの長期金利は 3% というハードルがあった ドイツの長期金利にも これと同じようなハードルは存在するのか? この質問に対し 同総裁は直接的な返答は避け ECB は不必要な 或いは理不尽な引き締めが金融市場で起きていないか 常に監視している と語っています

ここからの ECB 金融政策変更のタイミング 3 月 12 日にセントラル短資 FX さんでやらせていただいたオンライン ウェブセミナーでお話しした ECB 金融政策変更のタイミング 資料 今回若干の変更をいたしましたので ここでご紹介します 最初の図が 3 月 12 日の資料 2 枚目が今回の修正図です 変更した箇所は 以下の 3 点 QE 策の内容変更のアナウンスメントを 6 月理事会から 7 月へ変更 QE 策終了時期を 9 月末から年末へ延長 最初の利上げ時期を 今年末 /2019 上半期から 2019 年第 2 四半期へ変更

ここからのユーロ 皆さんお気づきになられたかわかりませんが ドラギ総裁の記者会見冒頭声明 (Introductory Statement) の中には ユーロ動向について 以下の文言が入っておりました In this context, the Governing Council will continue to monitor developments in the exchange rate and other financial conditions with regard to their possible implications for the inflation outlook. ( インフレについては 上昇が継続すると確信できるサインは 見えてきていない この点について )ECB 理事会は 為替レートの動きやその他の金融 / 経済状態を監視し インフレ見通しへの影響をモニターするつもりだ https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2018/html/ecb.is180426.en.html インフレ見通しへの影響に対するユーロの監視 というからには ユーロ高に対し ECB は懸念を持っていると受け取れます 非常に気になったので調べてみたところ ある欧州系銀行がユーロ高が欧州企業に与える影響について説明した読み物を見つけました それによるとユーロが 10% 強くなると 欧州の優良企業の 1 株当たりの収益は平均 6% 少なくなるそうです 企業収益が落ち込めば 株価は低迷し 景気の冷え込みに直結します そうなると ますます ECB のインフレ目標達成の夢は遠のき QE 策を終了し金利の正常化を進めることが難しくなるということでしょう ユーロが 10% 強くなれば というのは ユーロ実効レートを対象にしているのか ユーロ / ドルの値動きを念頭に置いているのかわかりませんが 昨年から現在までにユーロ実効レートは 8% ユーロ / ドルは 21% それぞれ強くなっていました ECB がこれ以上のユーロ高を望んでいないとはっきり言ったわけではありませんが 気になりますね

チャート : ECB ホームページ http://www.ecb.europa.eu/stats/balance_of_payments_and_external/eer/html/index.en.html それでは実際のユーロの動きをチェックするために 最初はユーロ実効レートをチェックしてみましょう これは過去 3 年のチャートですが ボックス ( レンジ ) 内での動きがしばらく続き そこから一気に上昇し またボックスに入るという動きとなっており 現在は紫色のボックス内で動いています ピンクのボックスと紫のボックスの高値 / 安値に黄緑線を引きましたが そのレベルが 99.20/30 台 執筆時のレベルが 99.3683 ですので 紫の下限 : 99.20/30 台が下抜けすると ピンクのボックスの下限である 98 くらいまで下がってもおかしくない形です 次は ユーロ / ドルです ここでは日足チャートにベガス トンネル (144/169EMA) と 12EMA を入れてみました トンネルのレベルは 1.2035/2093( 赤い丸 ) となり ここが最初のターゲットとなります 戻しは 12EMA が通る 1.22 ミドル 今週は 1.2035/1.2250 のレンジでの動きとなるのでしょう もし 何かのきっかけで来週にもトンネルを下に抜けた場合 可能性として 1.1930 台くらいまでの下落があるかもしれません