第 132 回北海道整形外科外傷研究会 抄 録 平成 27 年 8 月 29 日 ( 土 ) 15:00~ 於 : 札幌医科大学記念ホール 会長 : 北海道中央労災病院せき損センター須田浩太先生共催 : 北海道整形外科外傷研究会帝人ファーマ株式会社
第 132 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 15:00~15:40 座長 : 帯広厚生病院本宮真先生 (1) 小児橈骨頭単独脱臼に対して輪状靱帯縫合術を施行した一例札幌医科大学青木りら先生 (2) 上腕骨遠位骨端離開と鑑別を要した小児肘関節脱臼 + 上腕骨外顆骨折の1 例札幌徳洲会病院佐藤陽介先生 (3) 軽微な外傷で前腕の著明な腫脹を生じた2 症例市立函館病院中島菊雄先生 (4) 観血的整復を要した大結節骨折を伴う肩関節脱臼の1 症例協立病院津村敬先生 主題: 脊椎外傷 16:00~16:40 座長 : 北海道整形外科記念病院織田格先生 (1) 明らかな頚椎脱臼骨折を初診時に見逃された1 例北海道中央労災病院せき損センター小松幹先生 (2) 頚椎後方インストゥルメント固定手術の治療戦略 ~Lamina screw を用いた治療経験 ~ 北海道中央労災病院せき損センター神谷行宣先生 (3) 頚椎除圧手術既往者に生じた外傷性頚髄損傷の4 例札幌医科大学入船秀仁先生 (4) 遅発性外傷性椎骨動脈閉塞の一例北海道中央労災病院せき損センター小松幹先生 主題: 脊椎外傷 17:00~17:30 座長 : 北海道中央労災病院せき損センター小松幹先生 (5) 全身状態不良である胸椎脱臼骨折に対し受傷後早期に手術を施行した1 例市立室蘭総合病院廣田亮介先生 (6) 骨片が硬膜を貫通した腰椎破裂骨折の 1 例北海道中央労災病院せき損センター牛久智加良先生 (7) 骨粗鬆症性椎体骨折による神経障害の病態北海道整形外科記念病院織田格先生 教育研修講演 17:30~18:30 座長 : 北海道中央労災病院せき損センター須田浩太先生 高齢者の胸腰椎骨折に対する治療戦略 講師 : 高岡市民病院主任部長中野正人先生
一般演題 (1) 小児橈骨頭単独脱臼に対して輪状靱帯縫合術を施行した一例 札幌医科大学 青木りら 函館五稜郭病院 佐藤攻 北村公一 小堺豊 奴賀賢 大西雅之 杉憲 札幌医科大学山下敏彦 はじめに 小児橈骨頭単独脱臼は比較的まれな疾患である 今回我々は前腕回外位で脱臼を示す橈骨 頭単独脱臼の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する 症例 10 歳女児 跳び箱で左手をついて転倒してから肘の動作時違和感を主訴に近医を受診した 単純レントゲンにて左橈骨頭脱臼を指摘され受傷後約 1 ヶ月で当院に紹介となった 橈骨頭は前腕回外位で前方脱臼 回内位で整復された 単純レントゲンと CT で骨折線や尺骨の塑性変形は認めなかった 左橈骨頭単独脱臼の診断で前腕回内位, 肘関節 90 屈曲位でギプス固定を 4 週間行ったが回外位での整復保持不能であったため手術治療を行った 輪状靱帯は菲薄化して近位尺側に引き込まれていた 輪状靱帯縫合を施行し, 回外位で橈骨頭が脱臼しないことを確認してから尺骨 - 橈骨間を回内位で K-wire にて固定した 術後ギプス固定を 6 週間,K-wire は 4 週で抜去した 現在術後 3 ヶ月で, 軽度可動域制限は残存しているが前腕回外位でも再脱臼は認めない 考察 橈骨頭単独脱臼の報告は少ない 3-4 週間の保存加療で整復位が保たれる症例が多いが, 本症例のように保存加療が無効な例も存在するため注意が必要である 通常橈骨頭脱臼の保存加療は前腕回外位で整復され, 回外位 肘関節 90 屈曲位でギプス固定を行う この肢位は上腕二頭筋の緊張をとり, 骨間膜 方形靱帯を緊張させることで安定性に貢献するためと報告されているが, 本症例は回外位で前方脱臼を認めた点で例外的であった 脱臼の原因として,Wiley らは輪状靱帯の断裂により, 断裂部より橈骨頭が逸脱して脱臼が生じると報告している 本症例も輪状靱帯の断裂を認め, 輪状靱帯縫合を施行した 術後再脱臼は認めず, 橈骨頭単独脱臼に対する輪状靱帯縫合は有用であると考える
一般演題 (2) 上腕骨遠位骨端離開と鑑別を要した小児肘関節脱臼 + 上腕骨外顆骨折の 1 例 札幌徳洲会病院 佐藤陽介辻英樹斉藤丈太倉田佳明上田泰久松井裕帝 井畑朝紀佐藤和生坂なつみ はじめに 上腕骨遠位骨端離開は 肘関節脱臼を伴う上腕骨外側顆骨折と診断を誤りやすく その初期診断の誤りが変形を招くと報告されてきた またその鑑別は一般に外側顆骨化核と橈骨長軸との位置関係で判定するが 実際には鑑別に迷うことも多い 今回肘関節脱臼を伴う上腕骨外側顆骨折の1 例を経験したので 考察を加え報告する 症例 8 歳男児 自宅の階段にて上から転落してきた姉の下敷きになり受傷 来院時 左肘の著明な腫脹と前腕遠位の圧痛を認めたが 神経循環障害は認めず 単純 X 線では肘では橈尺骨軸が上腕骨軸の後内側に転位 外側顆骨化核が橈骨長軸上からはずれ 内反転位していた しかしCTでは外側顆骨化核が橈骨長軸上にあるようにも見え 上腕骨遠位骨端離開か肘関節脱臼を伴う上腕骨外側顆骨折なのか診断できなかった そのため即日手術室にて全身麻酔後 徒手整復 容易に整復され 関節造影を施行も確定診断までには至らなかった そのため外側アプローチにて展開すると 骨折線が滑車中央にまで及んでおり Mi lch typeⅡの上腕骨外側顆骨折と診断 tension band wirin gを施行した 考察 過去の報告では 上腕骨遠位骨端線離開は 肘関節脱臼を伴う上腕骨外側顆骨折に比べより低年齢発症であり 整復位の保持がより不良であることも参考になるとされる 転位方向は共にposteromedial( 上腕骨軸に対し橈尺骨軸が後内側方向 ) であることが圧倒的に多く鑑別には役立たないことが示唆された またレントゲンにて診断困難な例には関節造影 MRI, エコーの有用性が多数報告されているが 実際には痛みのため施行困難であったり 造影検査の解釈に苦慮する例も存在すると思われる 従って 確定診断と正確な整復位固定のためには上腕骨外側顆骨折に準じ 外側よりの観血的整復固定術が有用であると考える
一般演題 (3) 軽微な外傷で前腕の著明な腫脹を生じた 2 症例 市立函館病院 中島菊雄 菊池明 症例 1 34 歳 男性 左前腕から手指の疼痛 腫脹 指の運動障害を訴え来院 前日の夜に左前腕をぶつけたかもしれないという程度の軽微な外傷であった needle-manomator 法で前腕屈側の内圧は60~70mmHgであり c ompartment syndromeを生じていた 既往をしつこく尋ねると 以前 血友病と言われて治療を受けていたが 10 年ほど前から治療を中断しているとの情報を得た 血液内科を頼診 血友病 Aの診断で第 Ⅷ 因子補充療法が開始となり 緊急手術として減張切開を行った 症例 2 3 歳 女児 おもちゃを取ろうとして男の子に腕をつかまれてから前腕が腫れてきた 近くの整形外科を受診したところ シップを処方され 形成外科を紹介された 安静が保てないためMR Iは撮れず CTで血腫といわれた 指が伸びなくなり 腋窩にも腫瘤が触れるため受傷から43 日目に当院を受診した 前腕の著明な腫脹 圧痛 前腕 手関節 手指の可動域制限がみられ 血腫によるVolkm ann 拘縮を疑ったが 腋窩リンパ節腫脹の原因の検索 造影 CTのための鎮静の目的で小児科を頼診 鎖骨下にも腫瘤が存在し CT MRI 生検にてAlveolar r habdomyosarcomaと診断され大学病院へ転院となった まとめ 血友病は忘れたころにやってくる 病識がないこともよくある 本人の訴え 前医の情報にとらわれすぎてはいけない 特に unclearな画像と に矛盾は無いという読影には注意が必要である 日頃から小児科とは仲良くするべきである CT MRI 時に快く鎮静をかけてもらえるように
一般演題 (4) 観血的整復を要した大結節骨折を伴う肩関節脱臼の 1 症例 協立病院 津村敬 緒言 肩関節脱臼の大多数は無麻酔もしくは平易なブロック下での徒手整復が可能であるが 観血的整復を要した大結節骨折を伴う肩関節脱臼を経験した 整復阻害因子を解析して脱臼の病態を適切に認識することが 徒手整復操作の際に生じ得る二次的頚部骨折の予防の一助になると思われたので 本例の詳細を以下に報告する 症例 71 歳女性 転倒して受傷し翌日に当院を受診した 大結節骨折を伴う右肩関節前方脱臼を認めた 循環障害や神経学的脱落所見はなかった 初診時に腕神経叢ブロック鎖骨上法を行いゼロ ポジション法による徒手整復を試みたが不可能であった 受傷後 3 日目に全身麻酔下に再度の徒手整復を試みたが やはり整復出来なかった 観血的手技に切り替え 三角筋縦割進入法にて大結節骨折部を介して関節内を直視すると 大結節骨折により生じた骨頭の陥凹部へ関節窩前下縁が陥入していた 更に周囲軟部組織の緊張も強く 骨頭が固定されて軸方向に牽引しても上腕骨と肩甲骨が一体となって牽引される状態であった 観血的にも整復は容易ではなく ジョイスティックとして上腕骨に挿入したShantz screwを用いて骨頭を腹側に持ち上げ 指で関節窩を内側に押し込みつつ骨頭を外側に引き出す操作により整復出来た なお 軟部組織の緊張を和らげる目的で肩甲下筋腱や関節包を切離することはなかった 三角筋大胸筋間進入法を追加してスクリューとネスプロンテープで大結節骨片を固定した 受傷後 1 年にて疼痛なく可動域は正常で再脱臼もない 考察 肩関節脱臼の整復操作で生じた二次的頚部骨折の報告が散見されるが 骨や軟部組織に由来する整復阻害因子があると暴力的整復操作により二次的骨折を発生する危険性が高いことは明白である 骨脆弱性のある高齢女性の大結節骨折を伴う肩関節脱臼においては 本例のような病態を想定し とりわけ愛護的な脱臼整復操作に努めるべきである
主題 : 脊椎外傷 (1) 明らかな頚椎脱臼骨折を初診時に見逃された 1 例 北海道中央労災病院せき損センター 小松幹須田浩太松本聡子東條泰明牛久智加良 山田勝久藤田勝久神谷行宣三浪明男 症例は 14 歳男子 スイミングスクールで飛び込みスタートの練習中誤って頭部を強く打ち受傷 明らかな運動麻痺は無かったものの強い頚部痛と上肢の軽いしびれを主訴に近郊の救急当番病院を受診 臨床研修医が診察し明らかな骨傷はないと判断され 整形外科の再診も告げられず 鎮痛剤と貼付薬を処方され帰宅した 翌日になっても強い疼痛が改善せず 同病院整形外科を受診 初診時の単純レントゲン上も明らかな椎体の圧迫骨折性の変化と脱臼があり 当院へ緊急搬送された CT では Allen-Ferguson 分類 Compressive-Flexion type stageⅣの脱臼骨折があり 軽い上肢の運動麻痺を伴っていたが 手術後徐々に軽快し退院された 脊髄損傷は当院がセンター病院として治療の主体を担っており 一般病院で治療まで経験する頻度は決して多くはないが 初診で遭遇する機会はどの病院も等しくあり 研修医であれど見逃しは患者にとって多大な不利益を及ぼす とはいえ ありふれた疾患ではない事も事実であり 見逃しを減らす為にも 頚椎脱臼骨折のパターンを知る事は極めて重要である さらには脱臼後自然整復例など診断が専門医でも容易でない症例もあり 偽陽性であることを恐れず最低でも脊椎外科医 可能なら専門病院を受診させる事が重要であることは言うまでもない
主題 : 脊椎外傷 (2) 頚椎後方インストゥルメント固定手術の治療戦略 ~Lamina screw を用いた治療経験 ~ 北海道中央労災病院せき損センター 神谷行宣須田浩太松本聡子小松幹牛久智加良 山田勝久東條泰明藤田勝久三浪明男 はじめに 不安定性を伴う頚椎疾患に対し 椎弓スクリューを用いて頚椎後方固定術を行った症例を 経験したので報告する 症例 84 歳女性 第 4 頚椎の不安定性と第 5 頚椎以下の強直性脊椎骨増殖症を伴う頚椎症性脊髄症に対し multiple anchor を用いた頚椎後方除圧固定術を施行した 問題点として椎骨動脈の走行異常 細い椎弓根 小さい外側塊 骨粗鬆症があり 椎弓根スクリューの刺入は困難であり外側塊スクリューの固定性不良が考えられた 一方椎弓は比較的厚みがあり C3 C6 C7 椎弓スクリューをアンカーとして使用し 外側塊スクリューを併用し C3-7 後方固定術を施行した 術後経過はスクリューのゆるみもなく良好である 考察 頚椎後方固定術において椎弓根 外側塊スクリュー等の使用が困難な場合 椎弓スクリューは十分なアンカーとして使用可能であり 頚椎外傷においても頚椎後方インストゥルメント治療戦略における良好な選択肢のひとつと考えられた
主題 : 脊椎外傷 (3) 頚椎除圧手術既往者に生じた外傷性頚髄損傷の 4 例 札幌医科大学 入船秀仁平山傑高橋信行 はじめに 外傷性頚髄損傷診療を行う中で 時として 頚椎変性疾患術後に新たに生じた症例に遭遇するこ とがある 今回 このような症例に関して調査を行ったので報告する 対象と方法 2006 年から2015 年までの間に 当院高度救命救急センターに搬送された外傷性頚髄損傷症例 142 例を後ろ向きに調査し 頚椎手術既往のある頚髄損傷症例 4 例を対象とした 調査項目は 年齢 性別 受傷機転 搬入時 Frankel 分類 画像評価とし 以下 4 例の症例提示を行う 症例 症例 1 47 歳 男性 過去に頚椎 OPLLの診断でK 大学病院で脊柱管拡大術を受けている スキー滑走中の転倒事故にて受傷し 当院ヘリ搬送された 搬入時の麻痺はFrankel C であった 症例 2 66 歳 男性 受傷 4 年前にS 医大病院で頚椎症性脊髄症の診断で選択的椎弓切除を受けている 自転車走行中に乗用車に衝突して受傷した 当院救急搬送された 搬入時の麻痺はF rankel Dであった 症例 3 52 歳 男性 過去にOPLLの診断で S 市立病院で前方後方手術を受けている 除雪作業で重機運転中に何らかの急激な衝撃を受け受傷し 当院救急搬送された 搬入時の麻痺は Frankel C 症例 4 83 歳 男性 受傷 4 年前に頚椎 ~ 胸椎 OPLLの診断でH 大学病院で後方除圧が行われている 歩行中に転倒し 当院搬送となった 搬入時の麻痺はFrankel Aであった 考察 高齢化社会に伴い 頚椎変性疾患を元とした非骨傷性頚髄損傷が多くなってきている 当院では 頚損例のうち頚椎除圧術後例は2.8% で いずれも残存狭窄部での麻痺を認めていたが 比較的軽症で麻痺の回復も早やかな印象であった 高齢者の頚損数を減らすためには 頚椎狭窄性病変の早期発見と早期治療が必要と考えている
主題 : 脊椎外傷 (4) 遅発性外傷性椎骨動脈閉塞の一例 北海道中央労災病院せき損センター 小松幹須田浩太松本聡子東條泰明牛久智加良 山田勝久藤田勝久神谷行宣三浪明男 症例は86 歳男性 交通事故にて受傷 筋挫滅による高 CK 血症および右の中足骨骨折があったがそれ以外は骨傷なしと救急科担当医が判断したため 週明けに整形外科医にコンサルトしたのが受傷から3 日後であった 整形外科医が診察したところ改良 Frankel 分類 D0 で上肢の ASIA Motor Score32 点 (/50 点満点 ) の Central Cord Syndrome を呈していた 頚椎 CT を見ると C5/6 の脱臼骨折があり 当院緊急搬送となった 当院来院時の MRI では更に両側椎骨動脈が途絶しており 大脳および小脳に比較的小さな梗塞巣が散在していた 前医の初診時の MRI では少なくとも片側の椎骨動脈は開存しており 前医受診時から当院搬送までの間に両側椎骨動脈が閉塞してしまったものと考えられる 幸い脳梗塞による症状は殆ど見られず 頚椎後方固定術を施行し現在リハビリ中である 外傷性椎骨動脈閉塞は頚椎損傷の 17.2% に合併する さらに脱臼位の持続による非生理的な椎骨動脈の走行による血管攣縮や intimal flap による塞栓子の断続的生成など遅発性にも椎骨動脈を閉塞させてしまう病態があり 仮に麻痺が軽くとも重篤な合併症を引き起こす可能性があり 早急な脊柱の安定化は必須である
主題 : 脊椎外傷 (5) 全身状態不良である胸椎脱臼骨折に対し受傷後早期に手術を施行した 1 例 市立室蘭総合病院 廣田亮介石川一郎阿部恭久柏隆史髙橋克典 井畑朝紀 はじめに 高エネルギー外傷による胸腰椎骨折は重篤な合併損傷を伴うことが多く 以前は急性期治療に消極的な傾向があったが 近年積極的に施行する施設が増加している 今回我々は多発外傷に伴う胸椎脱臼骨折に対し 即日整復固定を施行した症例を経験したので報告する 症例 74 歳男性 作業中に6mの高さから転落受傷し 当院に救急搬入された 来院時バイタルは血圧 81/60mmHg 心拍数 80 回 /min 呼吸数 36 回 /minと血圧低下 頻呼吸を認めていた 理学所見は背部痛 剣状突起以下の知覚脱失 完全運動麻痺 肛門 球海綿体筋反射の消失を認めた 単純 X 線 CT 上 Th4 椎体骨折 Th5 脱臼骨折 Th6 8 棘突起骨折を認め Th5レベル以下の脊髄損傷と診断した 他 急性硬膜下血腫 外傷性大動脈解離 両側肋骨骨折 血胸 胸骨骨折 両鎖骨骨折と多数の合併損傷を伴っており ISSは38であった 輸血 胸腔ドレナージ挿入後 バイタルは安定し即日手術を施行した 後方アプローチで 遊離した骨片 ( 椎弓 棘突起 ) を切除 脱臼整復 Th2-8 後方固定 骨移植を施行した 術後無気肺の併発により呼吸状態が悪化し 気管切開 人工呼吸器管理が必要となったが 早期手術による体位ドレナージも可能であり徐々に改善した 術後 3ヵ月で麻痺はFrankel 分類 AからBへ改善 また自排尿も可能となった 背部痛は消失 また単純 X 線上も問題なく車椅子レベルで転院となった 考察 胸椎脱臼骨折の整復阻害因子として 脱臼の程度や受傷からの待機時間が報告されているが 早期の手術により整復困難となるリスクが減少した また患部からの出血がコントロールできること 体位交換が安全で術後合併症に対し速やかに対応できる等 Damag e control surgeryの観点からも早期に外科的治療を行うことが望ましいと思われた
主題 : 脊椎外傷 (6) 骨片が硬膜を貫通した腰椎破裂骨折の 1 例 北海道中央労災病院せき損センター 牛久智加良須田浩太松本聡子小松幹山田勝久 東條泰明藤田勝久神谷行宣三浪明男 骨片が転位し硬膜を貫通した L5 破裂骨折を経験したので報告する 23 歳男性 交通事故により受傷 L5 破裂骨折と馬尾障害を認めた Burst-split 型の破裂骨折で 骨片占拠率は右側ではほぼ 100% に及んでいた 椎弓切除をおこなったところ 硬膜を貫通する骨片を認めた 腹側硬膜は大きく裂け 背側硬膜は尖った骨片先端がピンフォールで貫通していた 硬膜のレトラクトは不可能と判断し 顕微鏡下で背側硬膜を切開し 転位した骨片を硬膜内から切除した 腹側硬膜は広範囲に欠損しており 筋膜により修復した 麻痺は改善し歩行可能となった 膀胱直腸障害も軽快した 硬膜損傷に伴う合併症は現在のところ認めない
主題 : 脊椎外傷 (7) 骨粗鬆症性椎体骨折による神経障害の病態 北海道整形外科記念病院 織田格室田栄宏竹内宏仁大嶋茂樹鈴木勝藤谷正紀 目的 本研究の目的は 神経障害に対し手術を行った骨粗鬆症性椎体骨折例の神経症状 画像お よび術中所見を後ろ向きに調査し 神経障害の原因および責任部位を調査することである 対象と方法 対象は手術を行った神経障害のある骨粗鬆症性椎体骨折 95 例である 女性 71 例 男性 24 例 平均 76.2 歳であった 神経学的に脊髄障害と馬尾 神経根障害の2 群に分類した また 神経障害の主因が神経圧迫である圧迫型 および不安定性が主因である不安定型の2 群に分類した 画像と術中所見から神経障害部位を脊柱管内と椎間孔部に分け おのおの骨折椎体上縁 下縁のどちらが責任部位か調べた さらに 変性疾患合併の有無を調査した 結果 脊髄障害は95 例中 63 例であった このうち38 例 (60%) は圧迫型であった 圧迫型のうち7 例 (18%) は受傷高位に黄色靭帯骨化等による脊髄圧迫が存在し 受傷後に進行性脊髄障害を呈していた 25 例 (40%) は不安定型であり 全例で椎体内 cle ftがあった 神経根 馬尾障害は95 例中 32 例であった そのうち圧迫型が29 例 (9 1%) 不安定型は3 例 (9%) であった 椎間孔部で神経根症状を呈したものは4 例 (1 3%) で 全例が椎体下縁骨折であった 考察 脊髄障害例の約 40% は不安定型であり 除圧なしの脊柱再建術で対処できると考えられた 一方 脊髄障害例の約 60% が圧迫型と判定されたが この中には圧迫と不安定性の混在例も含まれる 我々は圧迫型には除圧と再建を行ってきたが 除圧が不要な例も含まれている可能性がある しかし 黄色靭帯骨化等を合併した7 例は前後からの脊髄圧迫が著明であり 除圧併用は妥当と思われた 馬尾 神経根障害例は圧迫型が主であり 除圧と再建を必要とする例が多いと思われる 椎体下縁骨折は椎間孔部で神経根障害を呈することがあり注意を要する
教育研修講演 高齢者の胸腰椎骨折に対する治療戦略 高岡市民病院整形外科主任部長 中野正人先生