06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

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11.【最終版】プレスリリース修正  循環器内科泉家

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

Microsoft Word - 【最終】05.PRECISE-IVUSプレスリリース原稿案

P002~013 第1部第1章.indd

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Microsoft Word - (Web) URA修正プレスリリース案

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

スライド 1

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

報道関係者各位

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

パスを活用した臨床指標による慢性心不全診療イノベーション よしだ ひろゆき 福井赤十字病院クリニカルパス部会長循環器科吉田博之 緒言本邦における心不全患者数の正確なデータは存在しないが 100 万人以上と推定されている 心不全はあらゆる心疾患の終末像であり 治療の進步に伴い患者は高齢化し 高齢化社会

2019/7/9 市民公開講座 2019 健やかな高齢社会を生きるために心臓を守ろう ~ 心不全を知るコトから始めよう ~ 藤枝市立総合病院循環器内科渡辺明規 2019 年 7 月 7 日藤枝市民会館 1

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

臨床研究実施計画書

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

最新 高血圧診療学(立読)

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

Microsoft Word 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版主な変更点_最終


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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

解禁時間 ( ラジオ テレビ WEB): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 午後 1 時 ( 日本時間 ) ( 新聞 ): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 付夕刊 [PRESS RELEASE] 平成 30 年 4 月 3 日 夏の夜は心筋梗塞の増加に注意 日本 イタリアなど世

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり


2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

平成 26 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 579 号付録 ) 2.NT-proBNP の臨床的意義 1 心不全 ( 収縮及び拡張機能障害 ) で早期より測定値が上昇するため 疾患の診断や病状の経過観察さらには予後予測等に活用できます 2NT-proBNP の測定値は疾患の重症度

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

り ( 狭窄といいます ) 血管が急にけいれんして狭くなったり( 攣縮 ) 血の塊( 血栓 ) が出来て詰まってしまうことがあります 冠動脈が狭く十分に心臓の筋肉に血液が供給されない状態で 胸が締め付けられるような感覚 痛みなどを伴った場合 狭心症とよび 循環器専門施設で冠動脈の状態をカテーテルで調

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

平成14年度研究報告

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

第6章 循環器系

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

< 内容 > 乳がんは女性の罹患率が第一位のがんで 日本人女性の約 11 人に 1 人がかかり 近年患者数は上昇傾向にあります 乳がんの約 60 70% は 女性ホルモンであるエストロゲンと結合して細胞増殖に働くエストロゲン受容体 (ER) を生産 ( 発現 ) しています そのため エストロゲンの

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を


あなたの血圧目標値 はじめに / 冊子の作り方 mmhg ① 印刷した面を外側にして半分に折ります ② はじめに を一番上にして右側に折った側がくるように重ね 表紙で包むようにし 端をホチキスなどで綴じてください 氏 名 住 所 電 話 年 生年月日 半分に折る 表紙で包むようにする 月 日 綴じる

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

< 背景 > HMGB1 は 真核生物に存在する分子量 30 kda の非ヒストン DNA 結合タンパク質であり クロマチン構造変換因子として機能し 転写制御および DNA の修復に関与します 一方 HMGB1 は 組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合 炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ


報道機関各位 2017 年 9 月 26 日 東北大学大学院医学系研究科 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療 - バルーン肺動脈形成術は効果的で安全な治療法である - 研究のポイント 注 国の指定難病である慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH) 1 は 肺の動脈に血栓が生じて血管が狭くなる

血圧を決める要素 血圧は 心臓から出る血液の量と血管の硬さによって決まります 血圧 心臓から出る = 血液の量 ( 心拍出量 ) 血管の硬さ ( 末梢血管抵抗 )

Microsoft Word - 【最終】リリース様式別紙2_河岡エボラ _2 - ak-1-1-2

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

今後のがん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会の進め方とスケジュールについて

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

Microsoft PowerPoint - 表紙 印刷用H24

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News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

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背景 急性大動脈解離は致死的な疾患である. 上行大動脈に解離を伴っている急性大動脈解離 Stanford A 型は発症後の致死率が高く, それ故診断後に緊急手術を施行することが一般的であり, 方針として確立されている. 一方上行大動脈に解離を伴わない急性大動脈解離 Stanford B 型の治療方法

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

Microsoft Word - 44-第4編頭紙.doc

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

Microsoft Word CREST中山(確定版)

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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日本医薬品安全性学会 COI 開示 筆頭発表者 : 加藤祐太 演題発表に関連し 開示すべき COI 関連の企業などはありません


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Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

Transcription:

報道機関各位 平成 29 年 9 月 1 日 熊本大学国立循環器病研究センター 新薬で急性心筋梗塞後の心破裂を防ぐ! - 抗心不全薬の新たなる可能性 - 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 ( 辻田賢一教授 ) の石井正将医師 海北幸一准教授 国立循環器病研究センターの小川久雄理事長らは 1 抗心不全薬として海外で使用されている新薬 LCZ696 に急性心筋梗塞後の心破裂 2 と心不全を防ぐ作用があることを基礎的研究によって明らかにしました 新薬 LCZ696は 従来の降圧薬である バルサルタン と 臓器保護的な作用をもたらすネプリライシン阻害薬 サクビトリル を組み合わせた新規の薬剤です 欧米では 心臓の収縮力が低下した慢性心不全の治療薬の第一選択としてガイドラインで推奨されており 大規模臨床試験によって心臓死および心不全による入院を少なくすることが証明されています 今後の日本において心不全患者が増加していくことが予想されておりますが この新薬 LCZ696は慢性心不全患者の予後を改善する新たな治療薬として期待されている薬剤です 慢性心不全の原因として虚血性心疾患 とりわけ心筋梗塞が多いことが報告されておりますが 今回の研究により その心筋梗塞に対してもLCZ696が予後を改善する可能性を持つことが明らかになりました 今後の臨床応用が期待されます 本研究成果は ヨーロッパ心臓病学会 2017 年年次集会のHotlineセッションで発表され 科学雑誌 JACC; Basic to Translational Science オンライン版に世界標準 (UTC) 時間の2017 年 8 月 28 日 ( 月曜日 ) に掲載されました 1 急性心筋梗塞心臓に栄養を送る血管である冠動脈が突然閉塞することで 心臓の筋肉 ( 心筋 ) への栄養が途絶え 心筋細胞が壊死する病気のこと 梗塞の範囲が広くなると心筋の収縮する力は低下して心筋のポンプとしての作用が低下し 心不全の状態となる 2 心破裂心筋梗塞の合併症の一つで 心筋の壊死を起こした部分と 壊死を起こしていない部分との境目で心筋の壁が裂けて出血すること 心筋梗塞で死亡する原因の10% が心破裂によるものとされている 論文名

Cardioprotective Effects of LCZ696 (sacubitril/valsartan) After Experimental Acute Myocardial Infarction 著者名 (* 責任著者 ) Masanobu Ishii, Koichi Kaikita*, Koji Sato, Daisuke Sueta, Koichiro Fujisue, Yuichiro Arima, Yu Oimatsu, Tatsuro Mitsuse, Yoshiro Onoue, Satoshi Araki, Megumi Yamamuro, Taishi Nakamura, Yasuhiro Izumiya, Eiichiro Yamamoto, Sunao Kojima, Shokei Kim-Mitsuyama, Hisao Ogawa, Kenichi Tsujita, 掲載雑誌 JACC: Basic to Translational Science ( 説明 ) 厚生労働省 平成 26 年人口動態統計 ( 確定数 ) の概況 によると 心疾患は国内の死因別死亡総数の第 2 位を占めており その内訳として心不全 急性心筋梗塞が多数を占めております 従来 心不全や急性心筋梗塞に対して 血圧を上げるレニン - アンジオテンシン - アルドステロン系 3 を抑制する薬剤である アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE 阻害薬 ) やアンジオテンシン Ⅱ 受容体拮抗薬 (ARB) が治療の第一選択として 他の薬剤と併用されておりました しかし 海外で心臓の収縮力が低下した慢性心不全患者を対象に行われた大規模臨床試験で 新薬である LCZ696 が従来の ACE 阻害薬よりも心臓死および心不全による再入院の数を減らしたことが 2014 年に報告されました 新薬 LCZ696 は 従来の降圧薬であるバルサルタンと ナトリウム利尿ペプチド 4 という主に心臓から分泌されるホルモンを分解するネプリライシン 5 を阻害することで臓器保護的な作用をもたらす ネプリライシン阻害薬サクビトリルを組み合わせた新規の薬剤です この結果を受けて 欧米では LCZ696 が慢性心不全の治療の第一選択として広く普及しております LCZ696 はレニン - アンジオテンシン - アルドステロン系の働きを抑え ナトリウム利尿ペプチド系の働きを高める作用を持っており 慢性心不全に対する治療薬として確立しております 一方で 慢性心不全の原因となる急性心筋梗塞の急性期の治療に有用かどうかは未だ明らかとなっておりません そこで私たちはマウス ( 野生型マウス ) に対して人工的に心筋梗塞を作成し LCZ696 の効果を検討しました 心筋梗塞を作成後 1 日後より何も投与しない群 ( コントロール群 ) ACE 阻害薬投与群 LCZ696 投与群に振り分けて経過をみたところ 驚くべきことに心筋梗塞後 1 週間以内に発生する心破裂による死亡率は コントロール群や ACE 阻害薬投与群と比べて 明らかに LCZ696 投与群で低いことがわかりました ( 図 1) 心破裂を抑制したメカニズムを調べるために 心筋梗塞部での遺伝子発現を解析すると LCZ696 投与群で炎症に関わるサイトカイン (IL-1β IL-6) 6 や組織の分解に関わる MMP-9 7 の遺伝子の働きが明らかに低下していることがわかりました また 心臓の病理組織を顕微鏡で観察したところ

炎症細胞の数はすべての群において変わりはありませんでしたが MMP-9 の働きは LCZ696 投与群で明らかに低下しておりました ( 図 2) さらに マウスのマクロファージ 8 を用いた培養細胞の実験では バルサルタン単独群 ( レニン - アンジオテンシン - アルドステロン系の働きのみを抑える : 血圧上昇を防ぐ ) サクビトリル単独群 ( ナトリウム利尿ペプチド系の働きのみを助ける : 心臓の負担を減らす ) よりも LCZ696 群 ( バルサルタン群とサクビトリル群が組み合わさった群 ) で 炎症に関わるサイトカインや MMP-9 の働きが抑えられることが確認されました 本研究により得られた結果から LCZ696 は急性心筋梗塞の急性期においても心臓の保護効果を持っており 心破裂を抑える働きが明らかになりました 将来的に 慢性心不全だけでなく 急性心筋梗塞後の治療にも応用されることが期待されます 3 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系血圧が低下したり 腎臓への血流が低下したりすると活性化されるホルモンのシステムの一つで このシステムが活性化されると さまざまな昇圧物質が分泌されて血圧が上昇する 高血圧や心肥大の原因の一つにもなり このシステムを抑えるアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE 阻害薬 ) やアンジオテンシンⅡ 受容体拮抗薬 (ARB) は降圧薬や心不全に対する治療薬として普及している 4 ナトリウム利尿ペプチド心臓 ( 心房や心室 ) で作られ 血液中に分泌されるホルモンで 血管を拡張させることで血管の抵抗を減らしたり 腎臓で水分を排泄させる方向に働き 体液量を減らしたりすることで心臓の負担を和らげたり 心臓が肥大するのを防ぐ作用を持つ 5 ネプリライシン血液中に存在するたんぱく質で ナトリウム利尿ペプチドを分解する働きを持つ ネプリライシン阻害薬であるサクビトリルはネプリライシンを阻害することによってナトリウム利尿ペプチドの分解を抑え その働きを強める作用を持つ 6 サイトカイン (IL-1β IL-6) 免疫に関わる細胞から分泌されるたんぱく質の総称で 炎症や細胞の増殖 分化 細胞死 創傷治癒などに関連して情報伝達の役割を持つ IL-1β IL-6は特に炎症に関わるとされている 7 MMP-9 組織の分解やサイトカインの活性化など様々な生理現象に関わっているタンパク質を分解する酵素の一つ 心破裂の原因に MMP-9の上昇が関連していることがわかっており MMP-9 が欠損したマウスを使った実験では心筋梗塞後の心破裂が少ないことが報告されている 8 マクロファージ血液中に存在する白血球の一つで 死んだ細胞やその破片など異物を取り込んで消化 分解する作用を持つ 特に炎症の際に活発に働き さまざまなサイトカインを放出し 炎症を活性化したり 制御したりする作用を持つ

( 図 1) 急性心筋梗塞後の心破裂による死亡率は LCZ696 群において明らかに少ない

( 図 2) 心筋梗塞 3 日後の心筋組織を顕微鏡で観察すると炎症細胞 ( マクロファージ ) の数は変わらないが MMP-9 の活性化は LCZ696 群において明らかに低下している お問い合わせ先 ( 研究に関すること ) 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学担当 : 教授辻田賢一 ( つじたけんいち ) 准教授海北幸一 ( かいきたこういち ) 電話 :096-373-5175 e-mail:kaikitak@kumamoto-u.ac.jp ( 報道に関すること ) 熊本大学マーケティング推進部広報戦略室 Tel :096-342-3122 Fax:096-342-3007 e-mail:sos-koho@jimu.kumamoto-u.ac.jp 国立循環器病研究センター Tel :06-6833-5012( 代表 ) e-mail:kouhou@ml.ncvc.go.jp