ワークスタイル変革に資する第三の場 ( サードワークプレース ) 活用の可能性 ~ 2016 年度テレワーク最新事例研究部会報告書 ~ 平成 29 年 7 月 20 日 一般社団法人日本テレワーク協会 テレワーク最新事例研究部会 i
内容 はじめに... 1 1. ワークスタイルとワークプレース... 4 1.1. オフィスでの働き方の変化... 4 1.2. 在宅勤務への挑戦... 4 1.3. サードワークプレースの台頭... 5 2. ABW(ACTIVITY BASED WORKPLACE/WORKING) という考え方... 6 2.1. ABW(ACTIVITY BASED WORKPLACE) とは... 6 2.2. ABW に必要となる環境... 7 2.3. ABW の観点から見たオフィス... 8 2.4. ABW の観点から見たテレワーク... 9 3. サードワークプレースと ABW... 10 3.1. ABW の ACTIVITY 業務タスクの特性... 10 3.2. 業務タスクと執務場所 ~ どこで業務を行えるのか ~... 10 3.3. 業務タスクと執務場所 ~ どこで行う事が効率的か ~... 11 4. サードワークプレースをよりよく選択する 整理用ワークシート の提案... 12 4.1. 整理用ワークシート の利用方法... 12 4.1.1. 業務タスクの洗い出し... 13 4.1.2. 執務場所の洗い出し... 14 4.1.3. 業務タスクごとの執務場所の特定... 15 4.1.4. 適性性の検討... 15 4.2. サードワークプレース利用における論点... 15 5. テレワークに関する考え方... 18 6. おわりに... 19 ii
はじめに 本書の目的 第三の場所 ( サードワークプレース ) 1 に注目し オフィス 自宅とどのように異なるのか 特に設備要件に注目してその利用価値を考察する 企業の部署あるいは従業員が第三の場所を活用するにあたってその分析 計画を立案するために有用なワークシートを提案する 本書の対象者 企業内においてテレワークを推進する担当者 サードワークプレースを利用する従業員とその上司 同僚 出典 : 日本テレワーク協会 (http://www.japan-telework.or.jp/intro/tw_about.html) 在宅勤務の実施事例が徐々に増えているが 首都圏の住宅環境では家庭内に仕事場を持 つことが出来ない場合も多い また 家庭は生活の場であり 常に仕事が出来る環境が整 っているとは限らない コワーキングスペースは個人事業主やスタートアップの企業の利用が多かった だが 1 本報告書内では 第三の場所 ( サードワークプレース ) を 第一の場所 ( オフィス ) 第二の場所 ( 自宅 ) 以外のすべての働く場所 と定義する ( 図 1 の 3rd WP の円の中を示す ) 1
ザイマックス ちょくちょく... や東急電鉄 NewWork のように 企業向けのサービスが増えてきている これらのサービスは首都圏を中心に 企業内のテレワーカーの利用を想定している これらのサービスは企業が契約するものであり 営業などが移動の合間に一時利用するという事例が徐々に出始めている 上記のような環境変化により 企業においても働く場所の多様性が増してくると考えられる 本報告書では 企業の生産性の向上の視点で これらの第三の場所 ( サードワークプレース ) に注目し オフィス 自宅とどのように異なるのか 特に設備要件に注目してその利用価値を考察する さらに 企業の部署あるいは従業員が第三の場所を活用するにあたってその分析 計画を立案するために有用なワークシートを提案する 本報告書の主な利用者は 企業内においてテレワークを推進する担当者を想定している さらに サードワークプレースを利用する従業員が自分で適切に働く場を選択するために利用することも想定して記載した 図 1 ( 出典 ) 岸本 熊野 小豆川 日本テレワーク学会第 18 回研究発表大会 企画セッション 多様化するワークプレイスモデルの再定義 ~ テレワークの視点から ~ 2016.07.02 2
研究部会報告書作成者一覧 研究部会長齋藤学 ( 株 ) シーエーシ経営統括本部経営企画部 IT コーディネータ 研究副部会長萩原高行合同会社ユビキタスライフスタイル研究所代表 アドバイザー小豆川裕子 ( 株 )NTT データ経営研究所社会システムデザインユニット上席研究員 サブアドバイザー熊野健志 ( 株 ) 富士通研究所知識情報処理研究所次世代認証 認可プロジェクト技術経営修士 研究部会メンバー石川文雄富士ゼロックス首都圏 ( 株 ) 執行役員コーポレート担当統括長 石坂俊成石崎真弓大貫英雄滝沢靖子武田かおり富吉直美中島康之引地直人平山順一丸尾和弘山崎紅 ( 株 ) アール アイ取締役プロダクト営業部部長 ( 株 ) ザイマックス不動産総合研究所マネージャー ( 株 ) アンリツプロアリシエ代表取締役社長 ( 株 )NTTデータ法人 ソリューション事業推進部戦略マーケティング室社会保険労務士法人 NSR ワークスタイル推進室 CWO 社会保険労務士一般社団法人日本テレワーク協会主席研究員社会保険労務士法人 NSR 代表社員 ( 株 ) リコー BS 事業本部 TFCMVPT 室長富士ゼロックス首都圏 ( 株 ) 総務部担当部長日本ユニシス ( 株 ) ビジネスサービス推進部ビジネスサービス戦略室スペシャリスト富士ゼロックス ( 株 ) 変革マネジメント部マネージャー 事務局内山明人一般社団法人日本テレワーク協会主席研究員 3
1. ワークスタイルとワークプレース る この章では オフィス 自宅 サードワークプレースのそれぞれの変遷について記載す 1.1. オフィスでの働き方の変化従来のホワイトカラーの働き方は自席を中心に固定席で業務を行うというスタイルが一般的であった 企業は生産性を高めるために 長時間座席で仕事をすることを想定してオフィスを整備してきた 自席で資料を作り 隣の席の同僚と相談をし 窓際に座る上司に決裁をもらう 多人数での打合せでは個室の会議室に集まるというのが典型的な働き方であった 1980 年代からの PC の普及 1990 年代からのインターネットの普及により 紙資料の電子化と共有が可能になった さらに 遠隔地からでも資料の参照や更新 ワークフローシステム等による決裁の電子化が可能になってきているが いまだ物理的に資料を用意し集まって働くという考え方からは容易に脱することができない段階にある 固定席は 企業側が一定の領域の管理を個々の従業員に任せているため 利用率が低くても他の従業員が利用する事はできないという欠点がある 一方で どのような部署でも在席率は 100% ではなく 営業をはじめとして外出率が高い部署では在席率が 50% を切るケースも少なくない そこで 余っている座席を削減するため フリーアドレスを導入する企業も増えた フリーアドレスでは書類を放置できないという不便さはあるが 在席時の一人当たりの利用可能面積が増大し ゆったりとしたスペースで作業を行う事が可能になる さらに 当該部署の床面積を減らしても 1 人当たりの面積を高めることができ 不動産コストの削減と快適感を両立させる道も開ける 一方で 固定席に慣れた人にとってはフリーアドレスの場合は毎日どこに座ればいいのかがわからず不安があり 個人の私物を席に置くことが出来ないなど 抵抗感がある場合も少なくない 業務内容や人によってはフリーアドレスを強制すると生産性が低くなる場合もある このように フリーアドレスは オフィスの働き方の課題を一部解決するが 全面的な解決手段とはならないことが徐々にわかってきた 1.2. 在宅勤務への挑戦テレワークの代表例は在宅勤務であり ワークスタイル変革のために徐々に在宅勤務を許可する企業が増えてきている お試しとして週に 1 度以下の実施であれば 家族が居ない日などを見計らって在宅勤務を行う事が出来るが 定期的に実施し始めるといくつかの問題に直面する 自宅は育児や介護など自分以外の環境の変化を受けやすい たとえば 小学生の子供がいる場合には 学校に通っている間は集中して仕事が出来ても 子供が帰ってきた時には集中して仕事が出来なくなる また 子供に関しては夏休みや PTA や学校 4
行事などの影響も大きい 在宅勤務を行う場合には 電話や Web 会議の活用が必須となるが 家族が居る場合には音声を使ったコミュニケーションがとりづらい 帰宅した家族に呼ばれる 近所で突然工事が始まるなど 様々な理由で音声を使ったコミュニケーションに邪魔が入る これらの問題は 在宅勤務を継続している人であれば 一度は経験したことがあるだろう 日本の居住環境では 家族の邪魔が全く入ることなく集中できる執務環境を自宅に持っている方は まれだと思われる 音声に関する問題は 家族が帰ってきてから業務が終了するまでの ある一定の時間のみサードワークプレースで働くことで解決する場合もある だが 在宅勤務では自宅以外で業務を行う事は許可されていない場合が多く サードワークプレースで働くことを明示的に許可している企業は少ない さらに 在宅勤務では 働く場所や IT 環境の有無 家族の理解や騒音などの不安定な環境といった様々な課題が存在する 1.3. サードワークプレースの台頭本文書では サードワークプレースをオフィスおよび自宅以外と定義している サードワークプレースには普段勤務している以外の シェアオフィス コワーキングスペースに加えて喫茶店 カラオケボックス ロビー等公共スペースなども含まれる サードワークプレースは既存では大きく 2 つの利用方法があった 営業などの移動の合間の短時間の利用と 執務者のニーズに起因する同じ場所の長時間利用である 営業などは今までも移動の合間に喫茶店などで資料の確認やメールの作成などを行ってきた この延長線上に 個室としての利用でカラオケボックス 電源の利用できる喫茶店 ファーストフードなどが選択肢として加わってきている 移動の合間の場合には 多くの場合は数十分から数時間以内の一時的な利用であるがセキュリティの問題があるため企業は公式に利用を許可することは少なかった ここに企業が利用を許可するコワーキングスペースも選択肢として考えられるようになっている 長時間の作業場所の事例としては通勤時間の削減を意図したサテライトオフィスがあるが 最近はシェアオフィスやコワーキングスペースの台頭が目覚ましい シェアオフィスとは複数の企業が同じスペースを利用するオフィスである 企業単位で個室を提供する場合が多く 2000 年代から散見されるようになってきた コワーキングスペースは主に個人が利用するオープンな大部屋を提供するサービスである 最近は シェアオフィスがオープンスペースを提供するようになったり コワーキングスペースが個室を提供するようになったりと コワーキングスペースやシェアオフィスの境目は曖昧になってきている 一部の企業でその利便性からコワーキングスペースを利用する事例が徐々にみられるようになっている だが 大多数の企業ではまだ有効性が認識されていない 5
2. ABW(Activity Based Workplace/Working) という考え方 この章では ABW という考え方を紹介し ABW を自社のオフィス外に適用することで生 産性と利便性を同時に高める考え方を紹介する 2.1. ABW(Activity Based Workplace) とは ABW(Activity Based Workplace) とは 従来のオフィス 特に自席で執務するという考え方から脱し 業務タスク (Activity) に応じて適切な場所を働き手が選んで執務するという考え方に立つワークスタイルと その思想に基づいたオフィス設計である (Activity Based Working という概念として紹介されている場合もある ) 業務タスクと場所は生産性 ( 効率性 創発等知的生産性 ) に影響を与える 一人で集中して資料を作成したい場合には誰もいない環境を選びたくなる 誰もいない部屋は自宅の部屋の場合もあれば 会社の会議室の場合もあるだろう 大きなディスプレイが必要な場合には自宅にある場合もあれば 会社の自席に大きなディスプレイがある場合もある 同僚と会話をしながら企画を詰めたい場合に 会議室でホワイトボードに向かって企画を検討する場合もあれば Web 会議で同僚と資料を共有して企画を詰めていくことが効率的な事もある イノベーションを生み出すために向いた会議室もある 文章を書き始める前には PC すら持たずに散歩することが最も頭の中を整理できる場合もある このように働く環境の多様化によって業務タスクが増える傾向にあるが それぞれの業務タスクによって適した作業場所は違ってきている 業務タスクによって働く場所を選ぶことができれば生産性が高まると考えられる 業務タスクの分類例 一人作業: アウトプットを作る作業例 : 企画 / 構想 調査 デザイン / 設計 開発コーディング等 資料作成 / 執筆活動 バックオフィス業務例 : 印刷 法務 経理 会計 精算 システム / データ入力 集計など 一方向のコミュニケーション( 非インタラクティブ ) 例 : 指示 依頼 確認 報告 問合せ 回答 連絡 承認 インタラクティブなコミュニケーション例 : レビュー / 確認 相談 / ディスカッション 動機付け / 方向付け 6
シェアオフィスやコワーキングスペースの利点 欠点 サービスプロバイダー間の競争があるためサードワークプレースには サービス品質 コストパフォーマンスの両面で継続的な改善が期待できる 東京 23 区のオフィスワーカーの一人当たりの月額費用はオフィス賃料だけで月額 65,192 円という調査結果 ( ザイマックス総研 ) もあり 独立系のコワーキングスペースを利用 ( 時間単位 月額単位 期間単位など ニーズにあわせてオンディマンドで利用可 ) できるサービスが増えている事を考えると コスト効率化が期待できる オフィス賃料には 清掃のコストや電源 空調 ネットワークのコストは含まれないので 空間をシェア利用する事の経済的な合理性は高い また 遍在性も高く 総移動時間を削減できる可能性も大きい 一方で サードワークプレースはシェアサービスのため セキュリティ上の懸念を拭い去る事は難しい また 在宅勤務同様 オフィス勤務に比較して同僚との対面コミュニケーションの密度は低下する 一旦 テレワークを推進した企業でも コミュニケーション密度の低下が生産性の低下につながってテレワークを取りやめるケースが複数報じられている コミュニケーション計画を相当重視しないと重大な副作用を招きかねない 他方 従業員にとっては同僚とは異なる目線や専門性を持つコワーカーとの新たな出会いの機会が得られ 事業遂行上有用な新たな気付きが得られる可能性もある 2.2. ABW に必要となる環境 ABW の取り組みに必要となる環境は 場所だけではない 例えばペーパーレスの推進 ICT 環境 さらにルールの整備も必要となる ペーパーレスの推進は 執務できる場所の制約を取り払うために重要な要素である ペーパーレスの環境がない場合には紙が基準となって行動する必要があるため 紙の受け渡しが発生する 紙の受け渡しをスムーズに行うためには固定席であることが望ましいため ABW は行いづらいであろう ICT 環境整備は段階に応じて必要となる ホワイトカラーの業務であれば PC は最低限必要となるが デスクトップ PC の場合には執務場所は PC の前に固定される ABW のように移動を行って執務をする場合には最低でもノート PC 等が必要となる それ以外にもコミュニケーションツールも段階に応じて必要となる テレワークに必要な ICT 環境としては 7
Web 会議などのテレワークでコミュニケーションが低下しないための施策や 執務中 / オフィスに居る / 連絡可能なのか といった執務状況を共有するためのプレゼンス管理などがある また 上記の前提を整えながら 働く環境の整備とルール化も必要である オフィス内で ABW を実施する場合にはオフィスレイアウトの変更やフリーアドレスの導入が必要であるが オフィス外を対象とする場合は在宅勤務制度やサードワークプレース利用のためのルールの整備が必要となる 2.3. ABW の観点から見たオフィスオフィスに ABW を適用すると オフィス内でその業務タスクに適した場所を選んで作業をすることになる 一般的には生産性を高めるために仕事内容に応じたスペースをオフィス内で探索するという行動がおきる 軽い打ち合わせを伴うような作業 集中して仕事をする作業 など 同一フロアであっても作業によって都合の良い場所は変わってくる チームで大きなテーブルを共有したいというニーズも出るし 集中したいときはあえて 馴染みのメンバーから離れて執務したいケースも出る フリーアドレスを導入していない場合は難しく感じるかもしれないが オフィスレイアウトを変更しなくともルール変更のみで ABW を行う事も可能である フリーアドレスエリアが複数階あるいは複数の部屋になったケースでは フロアあるいは部屋ごとに位置付けを決め このエリアでは電話はしないルールとする とか このエリアは静粛スペースで会話はしないルールとする とか フリーアドレスの一般執務エリアに隣接する軽い打ち合わせに適したテーブルの配置を行うなど オフィスの生産性向上 執務体験の高品質化が進む 最近では オフィス移転時やレイアウト変更時に ABW に関わるコンサルティングサービスを行う不動産会社も出てきている 図 2 フリーアドレスのレイアウト事例 : ミーティングスペース 8
2.4. ABW の観点から見たテレワーク ABW は自宅やサードワークプレースに適用することができる ABW の 業務タスク (Activity) に応じて適切な場所を働き手が選んで執務する に注目すると 適切な場所 が必ずしもオフィス内に留まるものでない事に気づく どの従業員であっても その人の行う業務タスクの中には オフィス外でもできる内容のものがあり むしろオフィス外の方が生産性向上を期待できるようなものもある 従来 テレワークは 育児や介護で執務場所や時間に制約がある従業員への救済措置 あるいは 営業等外出時に隙間時間が生じてしまう従業員の生産性向上施策 として考えられることが多かった しかし ABW の観点で見直すと テレワークは特別な働き方ではなく その業務タスクを行うことのできる適切な場所がオフィス外であるだけの違いとなる つまり テレワークは 特別な人が実施する のではなく 業務の生産性向上のために全ての人が実施する ことが自然になる 誰にでもテレワーク可能な業務タスクがあり その一人一人の置かれている状況により最適な執務場所を選択することとなる このような考え方の下では オフィス内だけでなく自宅や喫茶店 コワーキングスペースなどが候補となる 働く場所を業務内容と IT 環境などの実施する要件で積極的に選択し さらに最も生産性の高い場所を選んで働くようになるであろう 9
3. サードワークプレースと ABW この章では 企業によるサードワークプレースの利用を想定し 業務タスクと場所に関 する考え方について記載する 3.1. ABW の Activity 業務タスクの特性サードワークプレースで業務を行う場合には どのような業務をオフィス外で行うことが出来るのかのルールが必要である ここでは 業務タスクの 3 つの制約を取り上げて それぞれについて分析する 業務タスクには 3 つの重要な制約がある 一つ目は その場所でしかできない ( 場所の制約 ) という制約 二つ目は その時間でしかできない( 時間の制約 ) という制約 三つ目は 一人で進めるものか複数人で進めるか ( 協働者の制約 ) である 1 つ目の特性である 場所の制約 のある業務は ホワイトカラーでは比較的少ない 例としては店舗での接客業務や 工場等で機械設備を動かすような業務である これらの業務でテレワークはあり得ない 2 つ目の特性である 時間の制約 のある業務の代表例は会議である Web 会議であれば場所は超えられるが 時間の制約を超える事は出来ない 3 つ目の特性である 協働者の制約 の例としては ブレーンストーミングなどがある ブレーンストーミングは 現在は対面である方が望ましいことが多いが 同時に行う必要がない場合には社内 SNS を利用して行う事も可能であろう また Web 会議の進化など技術の発展によって徐々にテレワークでブレーンストーミングを行う事も可能となるであろう ここから 3 つ目の 一人で進めるものか複数人で進めるか という特性は その場でしかできない という制約と比較すると対処できる可能性が大きいと言える 3.2. 業務タスクと執務場所 ~ どこで業務を行えるのか ~ 3 つの制約条件以外にも業務タスクを行うために必要な条件がある 例えば 単純なケースでは Internet が繋がっていないところではできない仕事がある 別の例としては 企業の Web 会議等のインフラが整っていたとしても 実際に Web 会議が可能な場所は意外と少ない また プリンターが無いと資料の印刷はできないし 資料によっては簡易製本が必要で自宅ではできない あるいは社として許容できないケースもあるだろう 現在はコンビニエンスストアのプリンティング機能やスキャン機能は通常のオフィス並みに高く Kinko s のようなサービスを利用すれば 場合によっては社内で準備するより高品位なアウトプットを出せる可能性もある 一方で 外部リソースを使う場合には 相応のリスクも伴う それぞれのテレワーク可能な業務タスクには 多かれ少なかれ それぞれ執務可能な場所が備えていなければいけない条件がある 10
3.3. 業務タスクと執務場所 ~ どこで行う事が効率的か ~ ペーパーレス環境など ICT 環境が整って来れば 情報端末を使ってリモートでも実施できる業務タスクは増える 複数人で進める業務であっても 文書共有や Web 会議を使えば テレワーク可能な業務は増える しかしながら テレワークができることと テレワークで執務するのが望ましいということは異なる 過去を振り返れば 電話が無い時代には 1 分で伝えられる簡単な報告でさえ オフィスに戻らない限り実施する事はできなかった また 電話が普及した後でも 電話を使わずに訪問あるいは対面でコミュニケーションをとらなければ失礼にあたるという時期もあった つまり 当時電話は対顧客のコミュニケーションの条件を満たしているが 十分ではなかったのである 現在でも対面コミュニケーションは重要であるが 1 分の電話で済む内容を 1 時間以上の移動時間を費やして対面報告するのは非効率で 無条件に対面コミュニケーションに頼るような人は高い生産性を出すことなどできない 繰り返しになるが テレワーク可能な業務を本当にオフィス外でやるのが適切かどうかは別の問題として考えなければいけない 例えば 通勤時間が長い人であれば テレワーク可能な業務をある日にまとめてその日だけ在宅勤務で 3 時間分の移動時間が不要になるケースもある 一方で オフィスに出て一緒に働いていた方が 3 時間分の移動時間を費やしても有利かもしれない 1 分の電話で済ますか 1 時間かけても対面で話すことを選択するかの選択に 100% の正解など存在しない 11
4. サードワークプレースをよりよく選択する 整理用ワークシート の提案 業務タスク を どこで出来るのか を分析するための 整理用ワークシート を研究会で作成した 業務タスク と業務に 必要な要件 を入力し 場所の情報を入力することで どの業務をどの場所で行ってもいいかということを簡易的に分析することができる 本章では 整理用ワークシート の利用方法と実際に研究会メンバーでワークシートを利用して得た気づきについて記載する 4.1. 整理用ワークシート の利用方法 整理用ワークシート の概要を記載する 整理用ワークシート はプロトタイプを公開し 利用方法の詳細も記載した 業務タスクを行っていいかどうかを判断する手順を示す 自分で行っているテレワークが可能そうな 業務タスク を上げる 業務タスクに 必要な要件 ( 属性 ) を整理する 場所が 必要な要件 を満たしているかを確認する これにより その 場所 でどの 業務タスク を行えるかが分かる 12
13 4.1.1. 業務タスクの洗い出し 業務タスク を洗い出す 業務タスクは 資料作成 などの作業である その後 業務タスクごとに 必要な要件 を記載する その業務タスクを行うために必要となる ICT 環境などの条件であり 資料作成であれば PC の利用やプリンターなどがあげられる 整理用ワークシート では 業務に必要な要件として以下をあげた PC 利用環境 ( 机 電源 ネットワーク ) 利用可能設備 ( 貸出 PC Web 会議関連機器 ホワイトボード等 ) 事務機器 ( 複合機等 ) 執務環境 ( プライバシー確保 会話可否 通話可否 ) 特殊な設備利用時間 P C 作業化 ( シートとデスクなど ) 電源有線 L A N 無線 L A N 携帯電話携帯 P C W e b カメラヘッドセットスピーカーフォンモバイル W i F i / テザリング貸出 P C 貸出ディスプレイテレビ会議用カメラテレビ会議用広角カメラ貸出スピーカーフォンプロジェクター スクリーン 大型ディスプレーホワイトボードプライベート ( 隔離されている場所 ) プライバシー ( 隣から P C が見られない程度 ) 会議可会話可通話可スキャナープリンターコピー F A X 名刺スキャナー機密文書専用機器メール作成 資料作成 重要資料作成 資料プリントアウト 経費精算証憑スキャンが必要 受領書類保管 Web 会議 重要 Web 会議 数名での打ち合わせ 数名での重要打ち合わせ 〇 数名で参加する Web 会議 会計処理弥生会計での記帳等 振込処理銀行振込等海外送金含む 公的機関申請報告処理 e-tax 等 納税処理 paysy 銀行 ATM 請求処理請求書発行 角印 契約処理丸印 テザリング不能エリアでの諸作業 事務機器リソース業務内容 ( 人 シチュエーション等 ) 業務内容 ( 詳細 補足 ) PC 利用環境携帯 ( 自己所有 ) 利用機器執務環境
14 4.1.2. 執務場所の洗い出し想定される執務場所の 属性 を記入する 執務場所の属性は 電源の有無 プライベート空間の有無 などである 業務に必要な要件と同じ項目が含まれる さらに 所在地や利用にあたっての条件なども含まれる PC 利用環境 ( 机 電源 ネットワーク ) 利用可能設備 ( 貸出 PC Web 会議関連機器 ホワイトボード等 ) 事務機器 ( 複合機等 ) 執務環境 ( プライバシー確保 会話可否 通話可否 ) 特殊な設備 所在地 ( 最寄駅 駅からの距離 ) 利用の条件 ( 価格 事前の契約の有無 ) P C 作業化 ( シートとデスクなど ) 電源有線 L A N 無線 L A N 携帯電話携帯 P C W e b カメラヘッドセットスピーカーフォンモバイル W i F i / テザリング貸出 P C 貸出ディスプレイテレビ会議用カメラテレビ会議用広角カメラ貸出スピーカーフォンプロジェクター スクリーン 大型ディスプレーホワイトボードプライベート ( 隔離されている場所 ) プライバシー ( 隣から P C が見られない程度 ) 会議可会話可通話可スキャナープリンターコピー F A X 名刺スキャナー最寄り駅からの所要時間 ( 分 ) 所要時間 ( 分 ) 開店 ( 月曜日 ) 閉店 ( 月曜日 ) 機密文書専用機器自宅自室 6 7:00 23:00 コワーキングスペース A ラウンジ 1 8:00 23:00 コワーキングスペース A ワークスペース 1 8:00 23:00 コワーキングスペース A メンバーズルーム 1 8:00 23:00 コワーキングスペース A 会議室 1 8:00 23:00 コワーキングスペース A テレホンブース 1 8:00 23:00 喫茶店等ドトール 8:00 18:00 喫茶店等スターバックス 8:00 18:00 喫茶店等カラオケボックス 8:00 18:00 喫茶店等ファミレス 8:00 18:00 喫茶店等公共スペース 8:00 18:00 喫茶店等銀行 ATM 8:00 18:00 ホテル等ホテル客室 7:00 22:00 ホテル等ホテルロビー 7:00 22:00 ホテル等空港ラウンジ 7:00 22:00 コンビニ等セブンイレブン 7:00 22:00 コンビニ等 Kinko's 7:00 22:00 事務機器施設属性リソース施設名称エリア名称 PC 利用環境携帯 ( 自己所有 ) 利用機器執務環境
4.1.3. 業務タスクごとの執務場所の特定 場所の属性が決まった後は プログラムを動かすことで 業務タスク毎の執務可能場所 の対応表を得ることができる これにより 執務できる 場所を知ることが出来る 業務 場所 生成 オフィス 自宅 コワーキングスペース A 喫茶店等 ホテル等 コンビニ等 業務内容 ( 人 シチュエーション等 ) 業務内容 ( 詳細 補足 ) 利用時間 執務エリア フリーアドレスエリア 静粛エリア 会議室 大会議室 自室 ラウンジ ワークスペース メンバーズルーム 会議室 テレホンブース ドトール スターバックス カラオケボックス ファミレス 公共スペース ホテル客室 ホテルロビー セブンイレブン K i n k o ' s 営業の合間 顧客訪問の間のメール作成 日報作成 1 時間以下 出張先の合間 資料作成 メール作成 2 時間程度 出張先の合間 自社オフィスの同僚とのWeb 会議 在宅勤務 経費精算 在宅勤務 資料作成 メール作成 外出時 パートナーとの電話 外出先での打合せ 営業向けの事前会議 ( 対面 ) メール作成 日報 受取資料のスキャン含む 経費精算 証憑スキャンが必要 資料作成 資料プリントアウト Web 会議 数名での打ち合わせ 数名で参加するWeb 会議 テザリング不能エリアでの諸作業 4.1.4. 適性性の検討本来は ABW に基づき 最も生産性が高い場所が選択できることが理想だが 今回の 整理用ワークシート では どこで どんな業務タスクを行うことが出来るか までが分析対象範囲である どこで行うと生産性が高いか は分析できないため 個別に判断が必要となる 現在いる場所 移動先の駅からの近さや利用時間で必要となる費用なども検討の材料となる また 雰囲気や音楽の有無なども場所選択の決定要因となる可能性がある 4.2. サードワークプレース利用における論点この 整理用ワークシート を研究会のメンバーで記入し 実際に分析を行った これによりサードワークプレースを利用するにあたっては承認の考え方やサードワークプレースの機能の違いなど いくつかの論点があることが分かった そこで サードワークプレース利用における論点や注意点について記載する 執務場所選定にあたっての承認プロセス どの場所 時間で業務タスクを遂行して良いかを承認するプロセスの要否も検討が必要 となる 承認に関しては 各企業のポリシーによって差が出ると思われる 以下では い 15
くつかの承認方法の案を記載する ホワイトリスト方式 使っていい場所を事前に決めておく コワーキングスペース事業者と契約する 自社で利用を明示的に許可した場所を示しておく方法である ブラックリスト方式 使ってはいけない場所 業務を決めておく 自社オフィスから持ち出してはいけない業務を決める方法や 業務内容によって行ってはいけない場所を決めておく方法である たとえば 個人情報はオープンスペースで業務を行ってはいけないが 個室であればコワーキングスペースを利用しても良い 等の基準を定めることが考えられる 一般的な考え方として やって良いことを決めてそれ以外を許容しない方式をホワイトリスト方式 やってはいけないことを決めてそれ以外は許容する方式をブラックリスト方式と呼ぶ 企業として 場所についてはホワイトリスト方式をとるか否か 業務についてホワイトリスト方式をとるか否かを決めておく事で働く場所の選択が容易となる 概してブラックリスト方式の方が柔軟性は高まるが 安全面にこだわればホワイトリスト方式の方が確実である 方式の選択は企業文化や法的制約などに従って 個々の企業あるいは部署単位で決めていく内容である 働く場所の承認の考え方は議論の余地があり 画一的な方法はない そのため 当研究会でも引き続き検討を行う予定である サードワークプレース利用に関して研究会で話題になったこと プリンティングとスキャンサードワークプレースの利用ではプリンティングとスキャンについても考慮が必要となる サードワークプレースをプリンティングで一時利用する例も増えるため 自社のセキュリティに合っているか 顧客に提出する資料を印刷する場合には品質が要求するレベルを満たしているかを確認する必要がある また スキャンが出来ない場合も多いため 事前に確認が必要である Web 会議時のテレフォンブースサードワークプレースでは Web 会議用の部屋やテレフォンブースの整備も必要となる 長時間のテレワークでは Web 会議が必須となるが コワーキングスペースの多くはオープンスペースであるため Web 会議が出来ない施設もある また 聞かれたくない電話を行いたい場合もある 資料作成やメール処理を行っている際にはオープンスペースで働き 必要に応じて Web 会議用の部屋を利用するという事が多い 音声の問題と同時に解決しようとすると テレフォンブースの Web 会議利用とルール化が必要になる コワーキングスペース事業者も工夫している最中であり ルールやシステム化は進むであろう 16
セキュリティ要件についてセキュリティ要件は各社によって考え方が違うので課題が多い 作業場所の基準の一例を下記に示す オープンスペースで良い のか 完全に個室ではないとダメ か 個室にも 半個室や音声も含めた密封空間等 レベルがある 入退室も確認が必要 なのか 入退室の確認は不要 か または 入退館が必要な場合も 有人受付が必要 なのか 無人の受付で良い のかという選択肢もある サードワークプレースの費用対効果費用対効果から考えた場合にも オフィス賃貸料とコワーキングスペース利用料を終日比較した場合にはコワーキングスペースの方が安くなる場合もある だが 自社オフィスに固定席を持ったうえでコワーキングスペースを利用した場合には ダブルコストになる そのため オフィス賃貸料の削減のためにはフリーアドレスなどのオフィスコストの削減手段を検討する必要がある また サードワークプレースの費用負担の考え方には 将来的にはいくつかの選択肢もある 例えば 企業が補助をだし 個人も半額程度負担するという考え方もある 現時点ではサードワークプレースの利用を企業が許している場合 費用は全額企業が負担しているが ある程度の個人負担を求める事で時間に対するコスト意識が生まれると予想される サードワークプレースの一覧化の必要性サードワークプレースは HP 上などで各社ごとの基準で機能が公開されているが 統一的な基準があるわけではない そのため HP を見ても訪問前に自分が利用したいと思う機能を確認できるとは限らない この課題解決には サードワークプレースの機能一覧表または Web サイトの整備が望ましい テレワーク実施日の調整方法テレワークを行う場合でも 業務がチームで行うものであることは変わらない そこで テレワーク実施日の調整は関係者の合意が必要である 例えば 仮に A 氏の業務時間の 8 割がテレワーク可能であったとしても 毎日対面型定例会議があれば 在宅勤務は困難である もし 来週は週 2 日オフィスに出ないで執務したいと願うのであれば その 2 日間はテレワーク可能な業務タスクだけになるように作業時間を調整する必要がある テレワークを行う同僚が多ければ 同僚間や上司とのコミュニケーションに問題が出ないようにテレワーク実施日を検討する必要がある ABW を意識して働く場合にも個人の生産性だけではなく チームとしての生産性の維持向上を継続する必要がある 17
5. テレワークに関する考え方 2016 年度の研究会を通して 本章までに収まらなかった議論を記載する コリビングという考え方テレワークの延長線上には 短期間 一緒に働きながら暮らすという考え方もある これをコリビングと呼んでいる 参考 URL:http://459magazine.jp/journey/15552/ 社員のグローバル化とリゾート勤務ダイバーシティが進み 外国籍の社員が増えると 1 か月単位で自国に戻りたいという要望も出ると予想される この時に 1 か月丸々を休みにするのではなく 自国でも時差を考慮しながら働くことが出来れば 企業 個人の双方にとってメリットが出るであろう この考え方を進めると 日本人であってもリゾート地に長期滞在しながら仕事をするような事例も増えてくると考えられる 18
6. おわりに本書では サードワークプレースの活用の可能性について検討した結果を記載した さらに 業務タスクを行えるサードワークプレースを選択する一つの方法として 整理用ワークシート を作成した 研究会メンバーで実際に 整理用ワークシート を使用してみる事で 現時点での課題を抽出した この 整理用ワークシート は業務タスクを行う上での必要最低限の条件を分析するワークシートであり どこがその人にとって最も作業に適している場所なのかを判別するワークシートまでは作成できなかった また 課題については検討の方向性や案を掲載するのみにとどまっている 今後の研究会ではテレワークを行うための場所の課題と解決策をさらに検討して情報を公開していきたいと考えている 注釈があるものを除いて この報告書の内容は クリエイティブ コモンズ表示 4.0 国際 (CC BY 4.0) ライセンスの下に提供されています 詳しくは 以下のリンクをご参照ください https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/legalcode.ja 19