第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 第 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 1. 我が国のエネルギーの現状 (1) エネルギー消費 我が国のエネルギー消費は 経済の発展とともに増加してきましたが 世紀に入り経済成長がストップしたことや省エネが進んだことから 年度から 年度にかけて

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これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

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下水道は私たちの安全で快適なくらしを支えています

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

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新電力のシェアの推移 全販売電力量に占める新電力のシェアは 216 年 4 月の全面自由化直後は約 5% だったが 217 年 5 月に 1% を超え 218 年 1 月時点では約 12% となっている 電圧別では 特別高圧 高圧分野 ( 大口需要家向け ) は時期により変動しつつも 全体的には上昇

スイッチングの状況 (2017 年 3 月時点 ) 本年 3 月末時点での新電力への契約先の切替え ( スイッチング ) 件数は約 4.7%( 約 295 万件 ) 大手電力 ( 旧一般電気事業者 ) の自社内の契約の切替件数 ( 規制 自由 ) は約 4.1% ( 約 258 万件 ) であり 合

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

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UIプロジェクトX

Ⅱ 主な改革内容 上記の 3 つの目的からなる電力システム改革につき 以下の 3 つの柱を中心として 大胆な改革を現実的なスケジュールの下で着実に実行する 1. 広域系統運用の拡大 電力需給のひっ迫や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため 国の監督の下に 報告徴収等により系統利用者

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小売電気事業者総覧第 2 章事業者戦略 東京電力エナジーパートナー 業種販売戦略顧客獲得目標ブランド戦略 大手電力より割安な料金メニュー ガスや通信などの各種商材とのセット販売で競合を迎え撃ち Web サービスの充実などで顧客拡大を狙う さらに 顧客の暮らし全般をサポートする新サービスを

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御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法改正に関する意見書

力率 1.0(100%) の場合 100% の定格出力まで有効電力として発電し 出力できます 力率 0.95(95%) の場合は 定格出力の 95% 以上は有効電力として出力できません 太陽光発電所への影響 パワコンの最大出力が 95% になるので 最大出力付近ではピークカットされます パワコンの出

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( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

エネルギー規制 制度改革アクションプラン (11 月 1 日 ) の概要 重点課題と詳細リスト 現時点で政府が取り組むこととしている又は検討中の事項を 実施 検討事項詳細リスト (77 項目 ) として取りまとめ その中から 3つの柱で計 26 項目の重点課題を特定 1 電力システムの改革 (9 項

調査要領 1. 調査の目的 : 4 月からの電力の小売り全面自由化に対する会員事業所の意識及びその影響を把握し 今後の参考資料とする 2. 調査実施機関 : 甲府商工会議所 3. 調査実施時期 : 平成 28 年 3 月 24 日 ( 木 )~31 日 ( 木 ) 4. 調査対象 : 当所会員 30

内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

i-1 電気事業制度についてー 1 自由化 2000 年 3 月から大口需要家に対する電力小売が自由化 その後 2004 年 4 月 2005 年 4 月と 自由化範囲が段階的に拡大 さらに 電力システム改革専門委員会での検討を踏まえ 2016 年 4 月から小売全面自由化が開始された (j-3 参

大阪電力選べる環境づくり協議会

北杜市新エネルギービジョン

問 3. いつから小売の全面自由化が行われるのですか 答.2016 年 ( 平成 28 年 )4 月 1 日です 問 4. いつから小売電気事業者の変更申込みが可能となるのですか 答.2016 年 ( 平成 28 年 )1 月より小売電気事業者により変更申込みの事前受付が本格化し 来年 3 月以降

FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

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れなくなる 特に 小規模の新規参入事業者にとって このリスクに対応するシステムが設けられていなければならない すなわち 万が一 小売販売事業者が倒産した場合には 送電を担う旧電力会社の責任で電力供給が保証されることになっており そのためには 在来の地域独占の旧電力会社が その発電量を補償する仕組みに

新電力会社(登録小売電気事業者)の実態調査2018年

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スライド 1

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

例えば 全国に工場や店舗を持つ企業などは 地域に関係なく電力を調達できるようになるため 工場や店舗で使用する電力を一括して購入することが容易になる その場合 一括購入により 調達コストを削減したり 管理がしやすくなったりというメリットを享受できる あるいは 夜間に集中して電力を使用する企業などは 自

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

資料2-1 課税段階について

報告書の主な内容 2012 年度冬季の電力需給の結果分析 2012 年度冬季電力需給の事前想定と実績とを比較 検証 2013 年度夏季の電力需給の見通し 需要面と供給面の精査を行い 各電力会社の需給バランスについて安定供給が可能であるかを検証 電力需給検証小委員会としての要請 2013 年度夏季の電

問 19. 自由化後に新規参入のガス小売事業者と契約した場合 その後に引っ越しをすると どうなるのですか 海外への転勤などで契約廃止の手続をするにはどうすれば良いですか 問 20. 持ち家 ( 戸建住宅 マンション又は集合住宅 ) に住んでいるのですが 新規参入のガス小売事業者からガスを買うことはで

2 I. 電力小売自由化後の課題 II. 都市ガス自由化に向けての課題 III.LP ガスの課題 まとめ

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

種類以上 再生可能エネルギー 100% のメニューだけでも 5~60 種類あり 新規参入が低調になりやすい家庭部 門においても 豊富な選択肢が確保されている 表 1: 米国の全面自由化実施州における新規参入状況 自由化中断 廃止州 : 7 州 ( カリフォルニア ネバダ アリゾナ ニューメキシコ モ

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業務用・産業用のお客さま向け 大阪ガスグループの電気

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

H28秋_24地方税財源

表 1 小売電気事業者( 新電力とみなし小売電気事業者の総計 ) の平成 29 年 3 月分 販売電力量 ( エリア別 ) 販売電力量合計 ( 単位 :MWh) その他需要 合計 北海道 260,709 1,129,470 1,028, ,749 8,428 2,730,690 東北 1

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平成 28 年度エネルギー消費統計における製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) のエネルギー消費量を部門別にみると 製造部門で消費されるエネルギーは 1,234PJ ( 構成比 90.7%) で 残りの 127PJ( 構成比 9.3%) は管理部門で消費されています 平成 28 年度エ

1. 調査の目的 物価モニター調査の概要 原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響 物価動向についての意識等を正確 迅速に把握し 消費者等へタイムリーな情報提供を行う ( 参考 )URL:

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

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参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ

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2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

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スマートコミュニティと新しいビジネス ~エネルギー関連新規ビジネスを促進するために~

( 考慮すべき視点 ) 内管について 都市ガスでは需要家の所有資産であるがガス事業者に技術基準適合維持義務を課しており 所有資産と保安責任区分とは一致していない LPガスでは 一般にガスメータの出口より先の消費設備までが需要家の資産であり 資産区分と保安責任区分が一致している 欧米ではガスメータを境

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平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

宮下第三章

問 3. いつから小売の全面自由化が行われるのですか 答.2016 年 ( 平成 28 年 )4 月 1 日です 問 4. いつから小売電気事業者の変更申込みが可能となるのですか 答.2016 年 ( 平成 28 年 )4 月から 小売全面自由化が始まっており 既に申込みは可能です 問 5. 小売電


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問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

教師の持つ指導ポイント 評価規準 中国地方の送電線網の図を利用し, 発電所からの電力を消費地に届けていることを示す その際, 送電の途中では, 電線の抵抗のために電線が発熱して電気エネルギーが損失することを, 本単元の内容をもとに考察させる ( 自然事象への関心 意欲 態度 ) エネルギーは変換の際

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電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

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によるサポートなどを評価いただき ユーザー様の満足度も高い結果が得られております 今後もエネチェン ジ上で直接申し込める電力会社数を増やすことに注力し ユーザー様に対して利便性の高いサービスを提供し ていきます 以下は エネチェンジ社が保有するユーザーデータを解析した エネチェンジ電力自由化レポート

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電力自由化にともなう一般電気事業者の電気事業営業利益への影響に関する実証分析 内田浩史ゼミ B 新家史也 1 はじめに 日本では 1995 年から段階的に電気事業で自由化が行われた この論文では電力自由化にともない電気事業に新しく参入した特定規模電気事業者の存在が既存の電力会社である一

しかし その使途について 例えば 電源立地促進対策交付金は 道路や公共施設の建設等に限定されているなど 交付を受ける地方公共団体からは その使い勝手に不満も出ていた このような状況を受け 資源エネルギー庁では 平成 15 年 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律

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市町村から国への要望一覧 事項名要望内容改善案 ( 省庁名を記入してください ) いつまでに実施するか 効果 ( 現状との数値比較等 ) 再生可能エネルギーの導入促進 要望事項 1 政府は将来を見据えた責任あるエネルギー政策を実行するためにも エネルギー基本計画に掲げている再生可能エネルギーの導入量

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政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

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扉〜目次

第 3 章隠岐の島町のエネルギー需要構造 1 エネルギーの消費量の状況 ここでは 隠岐の島町におけるエネルギー消費量を調査します なお 算出方法は資料編第 5 章に詳しく述べます (1) 調査対象 町内のエネルギー消費量は 電気 ガス 燃料油 ( ガソリン 軽油 灯油 重油 ) 新エ ネルギー (

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Transcription:

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 第 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 1. 我が国のエネルギーの現状 (1) エネルギー消費 我が国のエネルギー消費は 経済の発展とともに増加してきましたが 世紀に入り経済成長がストップしたことや省エネが進んだことから 年度から 年度にかけてのエネルギー消費は 倍の増加に留まりました 同時期の が 倍と増加したことに比べると伸び率は低く 特に 年以降における節電志向の高まりがエネルギー消費の減少につながったものと考えられます ( 図表 ) 図表 最終エネルギー消費と実質 の推移 ( ) 兆円 年価格 ) ( 年度 ) 倍 運輸部門 家庭部門 業務他部門 産業部門 ( 年度 ) 出所 : 資源エネルギー庁 エネルギー白書 (2) 電力供給 我が国の電力供給は 当初は 石油依存度が高かったのですが 石油ショックや原油価 格の上昇を経て石油依存度が低減し 原子力 天然ガス 石炭などの発電電力量構 成比が高まりエネルギー供給の多様化が進みました その後 年の東日本大震災を 受けての原子力発電所停止により 原子力の代替として 石炭の構成比がさらに増 加しました 再生可能エネルギーについては 制度が導入され 徐々に増加していま すが そのペースは非常にゆっくりとしたものになっています ( 図表 ) 図表 我が国の発電電力量構成比の推移 出所 : エネルギー白書 等をもとに十六総合研究所にて作成 また一方で 主要国の化石エネルギー依存度を比較すると エネルギー白書 によ れば 日本は % であり 原子力や風力 太陽光などの導入を積極的に進めるフラン ス ドイツに比べても高い水準にあります 化石エネルギーのほとんどを輸入に依存する 我が国にとって その安定供給は大きな課題ですが 将来に向かって化石エネルギー依存 度を低減する努力も怠ってはなりません ( 図表 ) (%) 水力 図表 主要国の化石エネルギー依存度 原子力 日本米国英国ドイツフランス中国インド 出所 : エネルギー白書 をもとに十六総合研究所にて作成 再生エネ 天然ガス () 石油 石炭 天然ガス石炭石油 ( 注 1) 化石エネルギー依存度 = 一次エネルギー供給のうち原油 石油製品 石炭 天然ガスの供給 一次エネルギー供給 ( 注 2) 一次エネルギー : 自然界に存在する物質そのものをエネルギー源とするもの 石油 石炭 天然ガス 太陽光 地熱 風力 水力 原子力など 2 3 2 3

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 (3) 再生可能エネルギー 再生可能エネルギーとは 化石エネルギー以外のエネルギー源のうち 永続的に利用できるものであり 太陽光 風力 水力 地熱 バイオマスなどがあります また 新エネルギーの開発 普及を推進していくため 太陽光 地熱 水素エネルギー等について重点的に研究開発を進めていくとともに 年に 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法 が施行され 新エネルギーの利用に係る基本方針や 新エネルギーの導入事業者への財政的支援等が盛り込まれました さらに 年に施行された 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 に基づき 制度 ( 電気事業者に一定量以上の再生可能エネルギーの調達義務付け ) が導入され 再生可能エネルギーの導入拡大が進められました 年には再生可能エネルギーに係る固定価格買取制度 ( 制度 ) が導入され 調達が促されたことから 再生可能エネルギー発電量比率も 年度時点で約 % まで上昇してきています ( 図表 ) 図表 日本の年平均気温偏差 図表 日本国内における再生可能エネルギー発電量比率の推移 (%) % % % (4) 地球温暖化防止とパリ協定 % % 産業革命以降 長期にわたり化石エネルギーを使い続けた結果 大量の二酸化炭素の排出に起因する深刻な地球温暖化を招きました ( 図表 参照 ) ( 気候変動に関する政府間パネル ) の第 次評価報告書によれば 年の世界平均地上気温 ( 中央値 ) は 産業革命前の水準と比較して ~ 上昇すると予想されています 第 回気候変動枠組条約締約国会議において採択されたパリ協定 ( 年 月 ) では 産業革命前からの世界の平均気温上昇を 未満に抑えるとともに 未満を目指すことが目標として掲げられました 4 % % ( 年度 ) 出所 : 環境エネルギー政策研究所調査をもとに十六総合研究所にて作成 上記図表においては 出所調査における大規模水力 小水力 バイオマス 地熱 風力 太陽光の合計を再生可能エネルギーと捉え十六総合研究所にてグラフ化 出所 : 気象庁 気候変動監視レポート (5) エネルギー代金の収支平成 年版環境白書 ( 環境省 ) によれば 再生可能エネルギーのエネルギー源は 太陽光 風力 水力 地熱等 基本的にその土地に帰属する地域条件や自然資源であるため その導入ポテンシャルは 都市部より地方部において高くなっている とし 今後 特に地方部でポテンシャルが豊富な再生可能エネルギーの導入を始めとした気候変動対策により地域のエネルギー収支を改善することは 足腰の強い地域経済の構築に寄与し 地方創生にもつながる 再生可能エネルギーに関連する事業等により新たな雇用を生むことにより 労働力人口の域外流出を防ぐことにもつながる さらに 再生可能エネルギーの多くは自立分散型エネルギーでもあり 災害時の強靭さ ( レジリエンス ) の向上につながるため 国土強靭化にも資する効果が期待される としています 一方 各地域のエネルギー代金の収支をみてみると 約 割にあたる 自治体では地域内総生産の % 相当額以上 自治体では % 相当額以上の資金が地域外へ流出している状況にあります 東海 県では 岐阜県北部以外は 赤字 ( エネルギー代金の地域外流出 ) になっています ( 図表 ) エネルギー代金の地域外流出をできる限り防ぐ意味でも 地域内での再生可能エネルギー事業の推進が必要になってきます 5 4 5

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 図表 各自治体の地域内総生産に対するエネルギー代金の収支の比率 2. 電力システム改革 (1) 電力自由化への動きこれまで家庭や事業所の電気は 各地域の電力会社 ( 東京電力 関西電力等 ) だけが販売しており 家庭や事業所では 電力会社を選択することはできませんでした 年以上続いてきた電力大手 社の地域独占を廃止し 電力の需給を全面自由化する動きが 大規模工場への特別高圧の電力販売を対象として 年 月から始まりました その後 年には中規模工場向け高圧電力の販売にも拡大されました 年 月以降は電気の小売業への参入が全面自由化され 低圧区分のスーパーや家庭を含むすべての消費者が 電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました つまり ライフスタイルや価値観に合わせ 電気の売り手やサービスを自由に選べるようになったのです 図表 電力自由化スケジュール 契約電力 年 年 年 年 特別高圧 ( 以上 ) 大規模工場 ビル ショッピングセンター 自由化 高圧 ( 以上 ) 中規模工場 スーパー 中小ビル 自由化 出所 : 環境省 平成 年版環境白書 高圧 ( 以上 ) 低圧 ( 未満 ) 小規模工場 スーパー 中小ビル 小規模工場 スーパー コンビニ 家庭 自由化 自由化 1 電力小売供給の仕組み電力小売全面自由化後も 物理的な電力供給の仕組みに原則変更はありません 電力は 発電所 送電線 変電所 配電線の経路をたどり 各家庭まで供給されます 発電部門はすでに原則参入自由ですが 送配電部門は安定供給を担う要であるため 電力小売全面自由化後も引き続き 政府が許可した企業 各地域の電力会社 ( 東京電力 関西電力等 ) が担当します そのため どの小売事業者から電気を買っても これまでと同じ送配電ネットワークを使って電気は届けられ 電気の品質や信頼性は変わりません 停電の心配もありません なお 電気の特性上 電気の需要 ( 消費 ) と供給 ( 発電 ) は 分ごとに送配電線に入る量と出る量を合わせる必要があり 送配電ネットワーク全体で一致させないと ネ 6 7 6 7

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 ットワーク全体の電力供給が不安定になってしまいます そのため もし小売部門の事業者が 契約している消費者が必要とするだけの電力を調達できなかった場合には 送配電部門の事業者がそれを補い 消費者にきちんと電力が届くように調整します 2 電力会社を切り替えるには各社の家庭向けの料金プラン サービス内容が順次発表され 年 月より 電力会社の切り替えが始まりました 消費者は各社のメニューを比較し 自身にあった電力会社や料金プラン サービスを選択することができます 切り替え手続きは簡単です 切り替え先の電力会社のサービス窓口 電話 ホームページ等から切り替えの申し込みをすると 現在契約している地域の電力会社への解約手続きが 消費者の同意に基づき 切り替え先の電力会社により行われ スマートメーターへの交換が行われて完結します 3 電力小売全面自由化で何が変わるのか ( ア ) 競争による電気料金引き下げ 市部で % 程度切り替えが進んだ反面 地方都市ではまだ % 程度しか進んでいません 今後は 事業者競争の公平性 透明性を高めるため 年 月には発送電も既存の電力大手から分離される予定です (2) 電力自由化の現状 年 月の全面自由化以降 約 社があらたに参入し 新電力会社数は 年 月現在で 社となりました しかし 新電力の 社当たりの販売規模別シェアをみると 億 以上の事業者 ( 社 ) が全体の約 % を占めており 寡占市場にあります ( 図表 ) 最大手ガス会社と通信会社の共同出資のエネット - 丸紅新電力など 大手資本の出資子会社が 新電力会社の多くを占めています 図表 新電力会社の販売規模別シェア % % % 電力小売全面自由化により 様々な事業者が電気の小売市場に参入してくることで 新規参入の会社を含めた電力会社の選択が可能になりました 電気の小売事業への参入者が増えることで競争が活性化し 様々な料金メニュー サービスの登場が期 % 億 以上の事業者 千万 ~ 億 万 ~ 千万 待されます 例えば 電気とガス 電気と携帯電話などの組み合わせによるセット割引や ポイントサービス さらには家庭の省エネ診断サービスなどが登場しています % 万 ~ 万 ~ 万 ( イ ) 再生可能エネルギーの拡大や電力の地産地消 これまでは 大手電力しか選択肢がなかったのですが 再生可能エネルギーを中心に電気を供給する事業者から電気を買うことも可能です さらに 現在お住まいのエリア外で発電された電気の購入も可能です 例えば 都会に住んでいても ふるさとで発電した電気を選べる可能性が生まれています また 近くの自治体が運営する事業者から電気を買うなど 電気の地産地消も可能になります これまでの常識は 大規模発電所で発電し 巨大な送電線網を利用して 需要家に届ける仕組みでした これに対して 分散型エネルギー ( 比較的小規模で かつ様々な地域に分散している発電設備等から供給される電気や熱といったエネルギーの総称 ) は 需要家に近いところで発電するので 送電ロスが減り 排熱も有効に活用できます また 発電が各地区に細かく分散されるので 災害時への対応力が増します 一般家庭向け電力市場は ~ 兆円規模といわれ 通信 ガス 石油 コンビニ 鉄道会社などの大手企業が参入しましたが 実際の切り替え率は 東京 大阪等の大都 出所 : 資源エネルギー庁 電力調査統計 ( 年 月実績 ) 年の部分自由化以降 年以上にわたり 大口需要家向け特別高圧 高圧分野における新電力シェアは ~% 程度にとどまっていましたが 年度から大きく上昇し 現在 % 程度まで伸びています また 年 月に自由化された低圧分野の新電力のシェアは 約 % 程度になっています また 新電力の全体シェア ( 特別高圧 高圧 低圧 ) は 約 % まで上昇しています ( 図表 ) 8 9 8 9

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 図表 新電力シェアの推移 (%) 全体 ( 特別高圧 高圧 低圧 ) うち低圧 図表 卸電力取引所の取引量 取引価格の推移 ( スポット市場 ) 出所 : 経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電力 ガス事業分科会 第 回電力 ガス基本政策小委員会資料 電力小売全面自由化の進捗状況 出所 : 資源エネルギー庁 電力調査統計 (3) 固定価格買取制度 ( 制度 ) 新電力会社を分類すると以下の つに分類できます 全国展開型 都市圏中心型 そし て地域限定型です 第 分類 第 分類 第 分類 全国展開型 ( 社 ) 都市圏中心型 ( 社 ) 地域限定型 ( 社 ) 後述する自治体電力は この第 分類に区分けされます なお 年 月の小売全面自由化以降 卸電力取引所の取引量は大幅に増加してい ます 特に 年夏頃から目立って取引量が増えており 市場の活発化がみられます また 取引価格は あたり 円から 円の間で推移しています 電力自由化にあたり 政府は 再生可能エネルギーの発電を促進するため 大手電力会社は発電業者からの電力を将来にわたって長期間 固定価格で買い取る制度を創設しました これにより 図表 でみるように太陽光発電を中心に再生可能エネルギーが急速に増加しました この価格は 通常の大手電力会社の発電コストを大幅に上回っていたため 太陽光発電の場合 年に導入された時は あたり 円でしたが 年度は 円まで低下しました 太陽光発電の場合は 非常に有利な価格設定であり 一般事業者が申請に殺到し 枠取りを行いましたが 政府は 実態のない申請をチェックし いったん取り消すなどの措置をとりました そして 年に改正 法を施行し 制度の高度化を図りました 固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギーは 電気の使用者である消費者から毎月 再生可能エネルギー賦課金を徴収することでまかなわれます 賦課金は消費者が毎月の電気料金と合わせて 電力会社へ支払うことになります 10 11 10 11

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 図表 自然エネルギーの発電設備容量の推移 出所 : 認定 法人環境エネルギー政策研究所 自然エネルギー白書 注 ) 制度 電気事業者に対して 一定割合以上の再生可能エネルギーによる発電 を義務付けるもので 年から 年に実施され 以降は 制 度として実質的に継続しています 図表 買取価格の推移と見通し 単位 : 円 事業用太陽光 未定 住宅用太陽光 風力 地熱 据置 水力 バイオマス メタン 据置 バイオマス ( 木質 ) 据置 出所 資源エネルギー庁 エネルギー白書 偏ったこと 家庭への電気料金負担が増加していることなどがあげられます また 発電業者にとっても 大手電力会社の都合で 逆潮流ができない懸念があるなどの課題があげられます また 年問題についても触れておく必要があります それは 年に導入された家庭における の低圧電源の固定価格買取制度が終了するということです それ以降は 現状の 価格に準じた価格になりますから その電力をどう集めるのかが課題になります (4) 年発送電分離と電力システム改革 発電の自由化 年からの小売りの自由化 そして最後は 送配電会社の分離で 我が国の電力システム改革は 年に完成します 送配電会社の分離とは 送電線や配電網を大手電力以外にも使いやすくし 競争を活性化するため 大手電力会社の送配電部門を分社化するものです すでに東京電力は 年 月に発電 送配電 小売会社に分社化されました 年には 全国すべての大手電力会社は 東京電力のように発電会社 送配電会社 小売会社に分割されることになります しかし この分離は 発電会社と送配電会社が 同一グループ内で分かれる ( 法的分離 ) だけで 資本が異なる ( 所有権 = 経営分離 ) ではありません 完全な経営分離が行われないと 競争状況は旧来勢力に有利になり 送配電線利用料負担という重い課題が 新電力側に残ります 電力システム改革完成には 政府の強いシステム改革の推進姿勢が望まれます 図表 予想される 年以降の大手電力会社の事業構成 電力ネットワークカンパニー 発電カンパニー 販売カンパニー 中立 公正な送配電サービス こうして 再生可能エネルギーは大量供給される道が開かれました しかし 課題は山積みです 制度導入で 再生可能エネルギーによる発電が増え始めましたが そのレベルは水力発電と合わせても約 % 程度にしかすぎません 発電構成が太陽光に極端に 12 13 12 13

第 1 章 我が国のエネルギーの現状と電力自由化 (5) 長期エネルギー需給見通し東日本大震災の発生に伴う福島原発の事故を契機として エネルギーを取り巻く環境が大きく変化し 1 化石燃料依存度の増大 2エネルギーコストの上昇 3 温室効果ガス排出量の急増 4 需給構造の変化が エネルギー政策上の深刻な課題として 認識されるようになりました 政府は安全性を前提としつつ 以下の 項目を踏まえた 長期エネルギー需給見通し を 年 月に策定しました エネルギーの安定供給 ( 自給率を % 程度まで改善 ) 現在 再生可能エネルギーは 大型水力発電を含めても約 % しかなく 今後 導入量を大幅に増やしていく方策が求められています そのためには どのような取組が必要となるのでしょうか 地域における潜在的なポテンシャルを引き出していくためには どうしたらいいのでしょうか これまで 我が国の発電は 石炭 石油 天然ガスなどによる火力発電や原子力発電であり 大規模な発電設備と膨大な送電線網を備えた全国の巨大電力資本に委ねられました 政府の見通しを達成する新しいパラダイムが必要です それは 再生可能エネルギーを活用した地域経済循環の実現に向けた取組だと私たちは考えます 経済効率性の向上 ( 電力コストを現状より引き下げる ) 環境への適合 ( ) これによれば 化石燃料の 2 排出を減らすため 年度には 再生可能エネルギーの割合を現在の約 倍の % 程度 原子力の比率を % 程度に設定しています また 石炭は横ばいで が大幅に低減するという計画です 図表 将来のエネルギーの需給構造の見通し 原子力石炭 石油再エネ 出所 : 長期エネルギー需給見通し小委員会資料 年 月 14 15 14 15

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