第 10 章税法上の資本の部 法人税法は 資本の部の金額のうち 株主等が拠出した部分の金額と法人が稼得した部分の金額とを区別しており 前者を資本金等の額といい資本金の額と資本金の額以外のものから成り 後者を利益積立金額という 資本金等の額は 企業会計上の資本金と資本剰余金に相当するものであり また 利益積立金額は 企業会計上の利益剰余金に相当するものであるが これらは必ずしも一致するものではない この章では 資本金等の額と利益積立金額について学習する 税法上の貸借対照表 ( イメージ ) 参考 企業会計上の貸借対照表 負債 負債 資産 資本金 資本金の額 資産 資本金 等の額 資本金の額以外 資本剰余金 利益積立金額 利益剰余金 第 1 節資本金等の額 この節では 資本金等の額とは何かを学習する 学習のポイント資本金等の額を構成する資本金の額及び資本金の額以外のものとはどのようなものか 資本金の額とはどのようなものか法人税法においては特に独自の規定を設けておらず 会社法等の規定による金額となることから 資本金 又は 出資金 と同義である ( 法 2 十六 令 81 柱書 ) 資本金等の額のうち資本金の額以外のものとはどのようなものか資本金等の額のうち資本金の額以外のものとは 株主等から拠出された金額のうち 資本金の額には組み入れられずに留保されているものをいう ( 法 2 十六 令 81) 例えば 株式の発行価額のうち資本に組み入れなかった 株式払込剰余金 がある ( 令 81 一 ) なお 資本金等の額を増加又は減少させる取引は資本等取引に該当し 法人の所得金額の計算上益金の額又は損金の額に関係させない ( 法 225) -130-
利益積立金額第 10 章税法上の資本の部 第 2 節利益積立金額 利益積立金額とは 法人の所得の金額のうち留保されているものをいう ( 法 21 十八 ) この利益積立金額は 法人の所得として課税済みの金額であり それが株主等に配当等された場合には二重課税の調整を要し また 特定同族会社の留保金課税の計算の基礎となるなど 重要な意義を持つものである この節では 利益積立金額について学習する 学習のポイント 1 法人税法上の利益積立金額とはどのようなものか 2 利益積立金額の計算はどのように行うのか 1 利益積立金額とはどのようなものか利益積立金額とは 法人の各事業年度の所得のうち留保している金額から その事業年度の法人税及び住民税 ( 都道府県民税及び市町村民税 ) として納付することとなる金額などの合計額を減算した金額の累計額をいう ( 法 2 十八 令 9) 2 利益積立金額の計算はどのように行うのか利益積立金額の計算は 次の算式により計算した金額である ( 算式 ) 次に掲げる金額のうち法人が留保している金額の合計額 次の金額の合計額 1 各事業年度の所得の金額 1 法人税として納付するこ 2 受取配当等の益金不算入 ( 法 23) 還付 ととなる金額 金等の益金不算入 ( 法 26) 等の規定によ 2 都道府県民税及び市町村 り各事業年度の所得の金額の計算上益金 民税として納付すること = の額に算入されなかった金額 となる金額 3 繰越欠損金の損金算入 ( 法 57~59) の規 定により各事業年度の所得の金額の計算 上損金の額に算入された金額 など など 実務上は 申告書別表四及び申告書別表五 ( 一 ) で計算する -131-
第 3 節申告書別表四の機能 法人の企業利益と各事業年度の所得の金額が一致しないことは 既に述べたとおりである この一致しない点を調整し 企業利益から誘導的に所得の金額を算出するための明細書が申告書別表四である この節では 申告書別表四の機能及び作成方法について学習する 学習のポイント 1 申告書別表四にはどのような機能があるのか 2 申告書別表四の作成はどのように行うのか 3 留保 社外流出はどのようなものか 別表減算所得金額 1 申告書別表四にはどのような機能があるのか 申告書別表四 所得の金額の計算に関する明細書 は 企業利益から所得の金額を誘 導して計算するためのものであることから 税務上の損益計算書としての機能を有して いる また 同時に当期の利益積立金額の計算の基礎機能を有している ⑴ 所得金額の算出機能 これは確定した決算に基づく利益又は損失を基礎に所得金額を算出する機能であ る 原 価 当 期 純 利 益 費 用 損 失 収益加収益に算入 ( 益金算入 ) 四損益計算書 当期純利益原価算費用に不算入 ( 損金不算入 ) 費用 に算入 ( 損金算入 ) 損失 収益 に不算入 ( 益金不算入 ) 原価 損失 ⑵ 当期分利益積立金額の計算の基礎機能これは 申告調整の金額について その処分 ( 留保又は社外流出 ) の区分けを行い 当期の所得金額のうち社内に留保された金額 すなわち当期に発生した利益積立金額を算出するという機能である そして この算出された利益積立金額から当期の所得に対する法人税額及び地方税を控除して 特定同族会社の留保金課税 ( 法 67) の対象となる留保所得金額が求められる -132-
2 申告書別表四の作成はどのように行うのか申告書別表四は 損益計算書の当期純利益又は当期純損失を基礎として各種の申告調整を行い 当期の所得金額又は当期の欠損金額若しくは留保所得金額を計算するものである 申告書別表四は 法人が申告 ( 前年実績に基づく中間申告を除く ) をする場合には 申告書別表一及び別表五 ( 一 ) とともに 全ての法人が必ず作成しなければならないものである 3 留保 社外流出はどのようなものか ⑴ 留保とは 法人の内部に金銭など何らかの形で資産として残っているということである 例えば 減価償却資産の償却超過額は 法人計算の上ではその資産の帳簿価額の減額が行われているが 税務計算上は減額されなかったものとされ それだけ資産として残っているので利益積立金額を構成することとなる 同様なものに 繰延資産の償却超過額 引当金の繰入限度超過額 準備金の積立限度超過額がある また 帳簿上に表現されていなかった売上金額があった場合 当該売上金額に対応する売掛金なども同様に利益積立金額を構成する ⑵ 社外流出とは 留保以外をいい 所得の金額が法人内に留まることなく減少することをいい 配当 と その他 に区分されている 例えば 株主に対して剰余金の配当をした場合 所得金額に変動はないが金銭は法人内に留まることなく減少しているので社外流出となる ( 令 91 八 ) また 交際費等の損金不算入額が生じた場合 所得金額は増加するものの支払った金銭は法人内に留まることなく減少しているので社外流出となる 同様なものに 役員給与の損金不算入額がある なお 受取配当の益金不算入額が生じた場合 所得金額は減少するものの受取った金銭は法人内に留まっていることから 便宜的に社外流出 ( 課税外収入ともいわれる ) としている ( 令 91 一ロ ) 申告書別表四の作成方法は次ページの図のとおりである -133-
申告書別表四の記載要領 損益計算書の当期純利益の額又は当期損失の額を記載する 法人が費用又は損失として経理した金額で当期の損金の額に算入されないもの及び当期の益金の額に算入すべき金額で収益として経理しなかったものについて その項目及び金額を記載する ( 例 ) 繰延資産の償却限度超過額 引当金繰入限度超過額 売上の計上漏れ 交際費等の損金不算入額 役員給与の損金不算入額 法人が費用又は損失として経理しなかった金額で当期の損金に算入されるもの及び法人が収益として計上した金額で当期の益金の額に算入されないものについて その項目及び金額を記載する ( 例 ) 経費の計上漏れ 1-3 の金額を記載する 当該事業年度中にその支払に係る効力の生ずる剰余金の配当等の額を記載する 1 の金額のうち社外流出を伴うものの金額を記載する ( 例 ) 交際費等の損金不算入額 役員給与の損金不算入額 1 の金額のうち社外流出を伴わないものや翌期以降の損金に算入されるため資産性を有するものの金額を記載する ( 例 ) 引当金繰入限度額超過 売上 ( 売掛金 ) 計上漏れ 前払費用 -134-
第 4 節申告書別表五 ( 一 ) の機能 税務上の利益積立金額及び資本金等の額を算出するための明細書が申告書別表五 ( 一 ) である この節では 申告書別表五 ( 一 ) の機能及び作成方法について学習する 学習のポイント 1 申告書別表五 ( 一 ) にはどのような機能があるのか 2 申告書別表五 ( 一 ) の作成はどのように行うのか 1 申告書別表五 ( 一 ) にはどのような機能があるのか法人の企業利益と所得の金額が一致しないことなどから企業会計上の利益剰余金と法人税法上の利益積立金額にも差異が生じてくる そこで 法人の決算上の貸借対照表に表われていないものを含む税務計算上の利益積立金額及び資本金等の額の内容とその異動状況を示すのが申告書別表五 ( 一 ) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 である その意味において申告書別表五 ( 一 ) は 税務上の貸借対照表の機能を有しているといえる なお 利益積立金額は 特定同族会社の留保金課税の計算 清算所得金額の計算等に用いられるので その異動を常に申告書別表五 ( 一 ) で明確にしておく必要がある 2 申告書別表五 ( 一 ) の作成はどのように行うのか申告書別表五 ( 一 ) は 貸借対照表の 純資産の部 に計上されているもののほか 利益積立金額及び資本金等の額の計算の明細を記載するものであり 作成方法は次ページの図のとおりである -135-
前期の別表五 ( 一 ) の 4 欄の金額を移記する 原則として別表四の 12 欄 13 欄 18 欄及び 20 欄以下の 減算 の 留保 2 欄の金額を項目別に記載する 261 欄の金額を移記する 当期中の取り崩し額を記載する 当期中に納付した金額 ( 納税充当金の取り崩し 仮払経理 損金経理による納付税額の合計額 ) を記載する 株式資本等変動計算書の利益準備金の額を記載する 原則として 別表四の 7 欄以下の 加算 の 留保 2 欄の金額を項目別に記載する 株式資本等変動計算書の繰越利益剰余金の当期末残高を記載する 繰越欠損金の場合には 表示する 別表四の 5 の金額を移記する 当期の中間分発生額を移記する 当期の確定分発生額を移記する -136-
設例 甲株式会社の平 29.4.1~ 平 30.3.31 事業年度における決算状況は 次のとおりであった これに基づき 申告書別表一 ( 一 ) 一( 一 ) 次葉 四 五 ( 一 ) 及び五 ( 二 ) を作成しなさい ( 単位 : 円 ) ⑴ 貸借対照表 諸 資 産 502,500,000 諸 負 債 資 本 金 資本準備金 利益準備金 別途積立金 繰越利益剰余金 467,000,000 10,000,000 1,000,000 2,400,000 5,600,000 16,500,000 ⑵ 損益計算書の計数 売 上 高 等 税引前当期純利益 納 税 充 当 金 当 期 純 利 益 省略 15,500,000 5,000,000 10,500,000 ⑶ 別表五 ( 一 ) の期首現在利益積立金額 利 益 準 備 金 2,000,000 別 途 積 立 金 3,000,000 備品減価償却超過額 100,000 繰 越 損 益 金 13,000,000 納 税 充 当 金 1,373,000 未 納 法 人 税 1,000,000 未 納 県 民 税 100,000 未 納 市 民 税 273,000 ⑷ 当期中における剰余金の処分等の状況は 次葉の 株主資本等変動計算書 のとおりである ⑸ 租税公課に関する事項 ( 内書は地方法人税額である ) 1 納税充当金 3 損金経理による納付 前期末金額 1,373,000 当期中間分法人税 600,000 ( 内 26,400) 2 納税充当金の取崩し 当期中間分県民税 50,000 による納付額 当期中間分市民税 91,500 前期分未納法人 1,000,000 ( 内 44,000) 前期分未納県 100,000 前期分未納市民税 273,000 4 当期の確定地方税は 次の算式で計算するものとする 県民税 法人税額 4.2%( 法人税割額 )+ 20,000( 均等割 ) 市民税 法人税額 9.7%( 法人税割額 )+ 50,000( 均等割 ) ( 法人税額は千円未満の金額を切り捨て 確定地方税の税額割額は百円未満の金額を切り捨てる ) ⑹ 税務調整事項 1 受取配当等の益金不算入額 132,000 2 建 物 の 減 価 償 却 超 過 額 71,800 3 車 両 の 減 価 償 却 超 過 額 53,167 4 備品減価償却超過額の当期認容額 20,000 ( 前期から繰り越された償却超過額 ) 100,000 5 役員給与の損金不算入額 1,500,000 6 交際費等の損金不算入額 3,600,000 7 貸 倒 引 当 金 繰 入 超 過 額 175,000-137-
利益準備金が 400,000 円増加したのは 会 445 条が配当により減少する剰余金の額に 10 分の 1 を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならないとしているからである 株主資本等変動計算書と別表四 五 ( 一 ) とはどのような関係にあるか 株主資本等変動計算書は 平成 18 年 5 月の会社法施行に伴い従来の利益処分計算書が廃止され これに代わるものとして導入されたもので 株式会社の純資産につ いて 各項目の期首残高が期中変動を経て期末残高に至る過程を明らかにするものである ( 会 4352 会規 591) したがって 株主資本等変動計算書には 当該事業 年度中に行われた資本金 資本剰余金及び利益剰余金の変動の状況が記載される 申告書別表四との関係 申告書別表四の 当期利益又は当期欠損の額 の総額は この計算書の 繰越利益剰余金 欄の 3 当期純利益 の金額と一致する 同表四の 配当 の金額は この計算書の 利益剰余金合計 欄の 2 剰余金の配当 の金額 ( 絶対値 ) に一致する 申告書別表五 ( 一 ) Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 との関係 申告書別表五 ( 一 ) の期首 期末の 利益準備金 別途積立金 及び 繰越損益金 の金額とこの計算書の期首 期末の 利益準備金 別途積立金 及び 繰越利益剰余金 の金額とそれぞれ一致する 申告書別表五 ( 一 ) Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 との関係 申告書別表五 ( 一 ) の期首 期末の 資本金又は出資金 資本準備金 の金額はこの計算書の期首 期末の 資本金 資本準備金 の金額にそれぞれ一致 する -138-
答 1 加算項目 1 損金の額に算入されない租税公課 600,000 円 +50,000 円 +91,500 円 =741,500 円 2 納税充当金 3 建物減価償却超過額 4 車両減価償却超過額 5 役員給与の損金不算入額 6 交際費等の損金不算入額 7 貸倒引当金繰入超過額 5,000,000 円 71,800 円 53,167 円 1,500,000 円 3,600,000 円 175,000 円 合計 11,141,467 円 2 減算項目 1 受取配当等の益金不算入額 2 備品減価償却超過額の当期認容額 合計 132,000 円 20,000 円 152,000 円 3 確定法人税額等 1 確定法人税額 8,000,000 円 15%+13,489,000 円 23.4%=4,356,426 円 4,356,400 円未納法人税額 4,356,400 円 -573,600(600,000 円 -26,400 円 ) 円 =3,782,800 円 2 確定地方法人税 4,356,000 円 4.4%=191,664 円 191,600 円未納地方法人税 191,600 円 -26,400 円 =165,200 円 3 確定県民税額 4,356,000 円 4.2%+20,000 円 =202,952 円 202,900 円未納県民税額 202,900 円 -50,000 円 =152,900 円 4 確定市民税額 4,356,000 円 9.7%+50,000 円 =472,532 円 472,500 円未納市民税額 472,500 円 -91,500 円 =381,000 円これを 別表一 ( 一 ) 別表一( 一次葉 ) 別表四 別表五( 一 ) 及び 別表五( 二 ) で示すと 次のページのとおりである -139-
別表一 ( 一 ) 繊維製品の卸売業 10,000,000 甲株式会社 乙野太郎 2 9 4 1 3 0 3 3 1 確定 2 1 4 8 9 4 6 7 4 3 5 6 4 2 6 4 3 5 6 4 2 6 4 3 5 6 4 2 6 4 3 5 6 4 5 7 3 6 3 7 8 2 8 4 3 5 6 4 2 6 4 3 5 6 1 9 1 6 6 4 4 0 0 0 0 0 0 1 9 1 6 2 6 4 1 6 5 2-140-
別表一 ( 一 ) 次葉 29 4 1 30 3 31 甲株式会社 12 8,000, 1,200,000 13,489, 3,156,426 21,489, 4,356,426 4,356, 191,664-141-
別表四 29 4 1 30 3 31 甲株式会社 10,500,000 6,500,000 600,000 600,000 141,500 141,500 4,000,000 5,000,000 5,000,000 貸倒引当金繰入限度超過額 124,967 124,967 1,500,000 1,500,000 3,600,000 3,600,000 175,000 175,000 11,141,467 6,041,467 5,100,000 20,000 20,000 132,000 132,000 152,000 20,000 132,000 0 21,489,467 12,521,467 132,000 9,100,000 21,489,467 12,521,467 132,000 9,100,000 21,489,467 12,521,467 132,000 9,100,000 21,489,467 21,489,467 12,521,467 12,521,467 132,000 9,100,000 132,000 9,100,000 21,489,467 12,521,467 132,000 9,100,000-142-
別表五 ( 一 ) 29 4 1 30 3 31 甲株式会社 別途建物減価償却超過額備品減価償却超過額車両減価償却超過額貸倒引当金 2,000,000 3,000,000 100,000 20,000 400,000 2,600,000 71,800 53,167 175,000 2,400,000 5,600,000 71,800 80,000 53,167 175,000 13,000,000 13,000,000 16,500,000 16,500,000 1,373,000 1,000,000 100,000 273,000 1,373,000 1,600,000 150,000 364,500 5,000,000 600,000 3,948,000 50,000 152,900 91,500 381,000 5,000,000 3,948,000 152,900 381,000 18,100,000 12,278,500 19,576,567 25,398,067 10,000,000 1,000,000 10,000,000 1,000,000 11,000,000 11,000,000-143-
別表五 ( 二 ) 29 4 1 30 3 31 甲株式会社 28 4 1 29 3 31 1,000,000 1,000,000 600,000 600,000 3,948,000 3,948,000 1,000,000 4,548,000 1,000,000 600,000 3,948,000 28 4 1 29 3 31 100,000 100,000 50,000 152,900 50,000 152,900 100,000 202,900 100,000 50,000 152,900 28 4 1 29 3 31 273,000 273,000 91,500 381,000 91,500 381,000 273,000 472,500 273,000 91,500 381,000 1,373,000 5,000,000 5,000,000 1,373,000 1,373,000 5,000,000-144-