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48 表1 主な術前末梢 ll検査値 GPT 311U AFP ALP l8 l IU CA n9 nil 2n9 ml 2U m1 LDII 3361U CA125 Ou lni GOT 211U CEA RBC ALB 3 7g dl Ilb l2 09dl A G 1 42 Ht

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限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

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姫路赤十字病院誌 Vol. 39 2015 衛詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠鋭 副甲状腺関連蛋白 (parathyroid hormone-related protein :PTHrP) 産生に伴い高カルシウム血症を呈した卵巣癌の 2 例 産婦人科 西田友美 水谷靖司 清時毅典 依田尚之 佐藤麻夕子 松本典子 中山朋子 中務日出輝小髙晃嗣 疫詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠詠益 Key words: 高カルシウム血症 卵巣癌要旨副甲状腺関連蛋白産生に伴う高カルシウム血症を呈した 2 症例を報告する 症例 1 は70 歳女性 高カルシウム血症の原因検索のため施行したCTにて卵巣腫瘍を疑われ当科へ紹介受診 径 17cmの充実部主体の骨盤内腫瘤を認め 右卵巣癌の疑いで単純子宮全摘術 両側付属器切除術および部分大網切除術を施行 病理診断は卵巣癌 明細胞腺癌 GOG grade3 [TNM]T1aN0M0 stageⅠaであった 血清カルシウムは術後 9.6mg/dlと正常化した 術後補助化学療法は高齢もあり ご本人が希望されず 現在再発なく外来経過観察中である 症例 2 は49 歳女性 不正性器出血および下腹部痛を主訴に前医受診し 卵巣癌の疑いで当科へ紹介受診 径 11cmの多房性で充実部を含む骨盤内腫瘤を認め PET-CTにて多発肝転移 多発肺転移 多発リンパ節転移を認めた 左卵巣癌の疑いで試験開腹術施行 病理診断は卵巣癌 漿性腺癌と移行上皮癌の混合型 GOG grade3 [TNM]TXNXM1 stageⅣであった 術前より高カルシウム血症の加療行い 血清カルシウム10mg/dlまで一旦は低下 術後寛解導入化学療法を施行したが 術後 8 カ月に永眠した はじめに腫瘍随伴症候群には高カルシウム血症 白血球増多 クッシング症候群 イートンーラ ンバート症候群 ( 筋無力症様症候群 ) などがある 今回副甲状腺関連蛋白 (parathyroid hormone-related protein : PTHrP) 産生に伴う高カルシウム血症を呈した卵巣癌の 2 症例を経験したので報告する 症例 1 患者 :70 歳女性 3 経妊 2 経産月経歴 : 閉経 50 歳主訴 : 意欲低下 夜間頻尿既往歴 : 脳動脈瘤開頭クリッピング術後現病歴 : 4 カ月前より意欲の低下 記銘力の低下などから認知症の疑いにて前医を通院中であった 2 カ月前より血検査にて血清カルシウム 11.6mg/dlと高カルシウム血症を指摘され 原因検索目的に施行された腹部 CTにて卵巣腫瘍が疑われたため精査目的に当科へ紹介となった 初診時血生化学検査 :WBC 6100/ μ l, RBC 298 10 4 / μ l, Plt 31.3 10 4 / μ l, H b 7.6g/dl, H t 23.8%, N a 132mEq/L, Cl 94 meq/l, K 4.1 meq/l, 補正 C a 12.0 meq/l, AST 14U/ L, ALT 11U/L, LDH 161U/L, UN 14.4mg/ dl, CRTN 0.48mg/dl, CEA 2.2ng/dl, CA19-9 75.6U/ml, CA125 268U/ml, PTHrP 8.3pmol/l 画像検査超音波所見 ( 図 1 ): 子宮の後方左側に13 14cm 大の混合性パターンの不整形腫瘤あり 骨盤 MRI 所見 ( 図 2 ): 右卵巣に径 17cm 大の腫瘤を認め 内部は充実成分主体で一部に出血 壊死が広がっており 拡散強調像では高信 -46-

号を呈す部分あり P E T - C T 所見 図 3 腫瘤に一致して F D G の高集積を認めた 明らかな転移を疑う所見は 認めなかった 図1 c 造影 T1強調矢状断 脂肪抑制併用 d 拡散強調水平断 図3 PET-CT 超音波検査 a T2強調画像矢状断 卵巣癌の疑いで単純子宮全摘術 両側付属器 切除術および部分大網切除術を施行 右卵巣腫瘍は新生児頭大で内腔に壊死を伴う 黄色充実性の腫瘤であった 図 4 骨盤壁か ら子宮後壁にかけて癒着を認めた 腹腔内播種 病巣は認めなかった 病理診断は卵巣癌 明 b T1強調像矢状断 47

細 胞 腺 癌 G O G g r a d e3 [ T N M ] T1a N0M0 術後補助化学療法は本人の年齢 高齢の配偶者 s t a g e Ⅰ A であった と二人暮らしであることもあり ご本人が希望 されず 現在外来経過観察中であるが 現在の ところ血清カルシウムの再上昇なく 再発なく 経過している 症例 2 患者 49歳女性 2 経妊 2 経産 月経歴 周期28日 持続 4 日間 主訴 不正性器出血 下腹部痛 既往歴 特記すべきことなし 図4 現病歴 1 週間前に不正性器出血および下腹部 摘出標本肉眼所見 痛を主訴に前医受診 画像所見より卵巣癌が疑 病理組織学的所見 図 5 われ 精査目的に当科へ紹介となった 160 145 93m m の黄白色調充実腫瘤で内部に 初診時血生化学検査 W B C 6400/ μ l, R B C は出血 壊死がみられた 胞体の淡明な細胞が 422 104/ μ l, P l t 46.8 104/ μ l, H b 11.2g / d l, 管状 乳頭状 充実状胞巣を形成し h o b n a i l H t 35.9%, N a 141m E q / L, C l 104m E q / L, K a p p e a r a n c e があり また腺腔内に球状硝子様 4.8 m E q / L, 補 正 C a 12.6 m E q / L, A S T 12U / 物質を入れている像があった 胞体の好酸性細 L, A L T 8U / L, L D H 168U / L, U N 11.6m g / 胞もみられ 明細胞腺癌の像であった d l, C R T N 0.61m g / d l, C E A 0.5n g / d l, C A199 4012.9U / m l, C A125 214U / m l, P T H r P 39.8p m o l / l 画像検査 超音波所見 図 6 子宮前面に10 6 c m 大の 混合性パターンの不整形腫瘤あり D o u g l a s 窩にも 6 4 c m 大の混合性パターンの不整形 腫瘤あり 図5 病理組織所見 H E 染色 経過 術前高値は 8.3p m o l / l であった p T H r P は速 やかに1.0p m o l / l 以下と正常化し それに伴い 補正血清カルシウムも術前11.6m g / d l から 術 後9.6m g / d l と正常化した 術後 1 カ月で T V を 見るようになるなど意欲の向上を認め 夜間頻 尿や失禁がなくなり 自立歩行が可能となり Q O L が向上した 48 図6 超音波検査

d 拡散強調水平断 図8 PET-CT 図9 術中所見 a T2強調画像矢状断 b T1強調像矢状断 図 7 左卵巣に径12c m 大の 多房性で隔壁が明瞭な嚢胞性腫瘤を認め 内部 に信号がさまざまで明瞭な充実部を含み 同部 位は拡散強調像で高信号を呈した 右付属器にも 6 c m 大の充実部を含む病変を認 め 両側の付属器の病変は同一の病変が疑われ c 造影 T1強調矢状断 脂肪抑制併用 た P E T - C T 所見 図 8 多数の腹腔内播種 多 発リンパ節転移 多発肝転移 多発肺転移あり 49

術前より高カルシウム血症に伴う嘔気 腎機能 淡明で充実性部分が多く 一部に腺腔形成がみ 低下 C RT N 1.1m g / d l あり 高カルシウム られた ごく一部にやや好酸性で低乳頭状増殖 血症の加療 輸 利尿剤 ステロイド カル を示す部分も認めた 核の大小不同が目立つ低 シトニン製剤 ビスホスホネート製剤 を開始 分化な腺癌で 漿性腺癌と充実部分の大半は 左卵巣癌の疑いで試験開腹術を施行 大網には 移行上皮癌と考えられた 播種病巣と思われる腫瘤が複数あり 横行結腸 経過 にも播種病巣あり 一部浸潤を認めた 左卵 術前より行っていた高カルシウム血症の加 巣腫瘍は S 状結腸および直腸と強固に癒着あり 療行い 補正血清カルシウムは10m g / d l 腎機 図 9 大網および膀胱腹膜の播種病巣の摘出 能は C RT N 0.60m g / d l まで一旦は低下 術後 を行った 図10 寛解導入化学療法として術後12日目より d o s e d e n s e P a c l i t a x e l - C a l b o p l a t i n 療法 P T X 80m g / m2 d a y1 d a y8 d a y15 C B D C A A U C6 d a y1 を 開 始 し た が 2ク ー ル 目 に 画像評価にて P r o g r e s s i v e D i s e a s e と判定し I r i n o t e c a n 80m g / m2 d a y1 d a y8 d a y15 3クール G e m c i t a b i n e 1000m g / m2 1 クー ル施行したがいずれも奏功せず 高カルシウム 血症の加療を中心に施行 徐々に全身状態が増 悪し 術後 8 カ月に永眠された 考察 図10 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症 摘出標本肉眼所見 M a l i g n a n c y - a s - s o c i a t e d h y p e r c a l c e m i a M A H は発生頻度の高い腫瘍随伴症候群と されている その機序として P T H r P 産生によ るhumoral hypercalcemia of malignancy H H M と骨転移により骨吸収促進をきたす l o c a l o s t e o l y t i c h y p e r c a l c e m i a L O H の 2 つに大別される このうち H H M が80 90% を占めるとされている P T H r P は P T H に近い N 末端で骨芽細胞と腎尿細管に分布する P T H レセプターに作用し過剰発現することで高カル 図11 病理組織所見 H E 染色 病理結果は卵巣癌 漿性腺癌と移行上皮癌 シウム血症を引き起こす 副甲状腺でのみ産生 される P T H に対し P T H r P は正常人の皮膚の ケラノサイト 肺 肝細胞 消化管上皮細胞 の 混 合 型 G O G g r a d e3 [ T N M ] T X N X M1 乳腺 子宮などで微量分泌されているため こ s t a g e Ⅳであった れらの細胞を母地とする扁平上皮癌 肺癌 大 病理組織学的所見 図11 腸癌 乳癌 子宮癌などで比較的頻度が高い 異型細胞が胞巣を形成して浸潤性に増殖する 婦人科悪性腫瘍の中では卵巣小細胞癌 明細胞 c a r c i n o m a の像であった 腫瘍細胞は全体に 癌や子宮頸癌の報告が散見される H H M を呈 50

する卵巣腫瘍の組織分類としては小細胞癌 59% 明細胞癌 18% と続き 奇形腫の扁平上皮癌への悪性転化が 6 % との報告もある 日本人に発生頻度が高い明細胞癌では高カルシウム血症を認めることも多い 小細胞癌は若年者に多く それゆえ症例 1 のような高齢者の卵巣癌にHHM が合併した場合は明細胞癌を疑う根拠となる 明細胞腺癌で高カルシウム血症を認めることが多い原因としてPTHと末端領域において明らかな相同性をもつ遺伝子領域が指摘されているが いまだ原因究明には至っていない HHMは腫瘍の病勢と相関があり 予後不良である 血清カルシウムのコントロールが不良となると意識障害などの重篤な症状が出現するため 患者のQOLに直接かかわってくる つまり 高カルシウム血症のコントロールを行うことは 患者の生命予後にも大きく影響を及ぼすと推定される 一般に高カルシウム血症の治療として 輸 利尿剤 ステロイド カルシトニン製剤などが用いられてきたが 近年ビスホスホネート製剤の有用性が注目されている 同剤は単に破骨細胞の活性化阻害 骨吸収の抑制で HHMを改善すると考えられてきたが 破骨細胞の増殖抑制効果をもつこと 骨牙細胞の増殖抑制効果をもつこと さらに腫瘍自体に抗腫瘍効果をもつことも指摘されている 今回の 2 症例でもビスホスホネート製剤をはじめとして高カルシウム血症の加療を行うことで患者の QOLを向上することができた おわりに今回 PTHrP 産生に伴う高カルシウム血症を呈した卵巣癌の 2 症例を経験したので報告した 高カルシウム血症は腫瘍随伴症候群として時にみられ 病勢を反映するマーカーとなり また悪性腫瘍患者の予後にも影響する 高カルシウム血症をコントロールすることは患者のQOL 向上のために重要であると考えられる 参考文献 1 ) 小菊愛ほか :PTHrPとG-CSF 産生に伴い高カルシウム血症と白血球増多を呈した成熟嚢胞奇形腫悪性転化の 1 例. 臨床婦人科産科 68:1027-1032,2014 2) 高木篤ほか : 著明な高カルシウム血症を呈した副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTH-rP) 産生膀胱癌の 1 例. 西日泌尿 71:662-664, 2009 3) 洲脇尚子ほか :PTHrPにより高カルシウム血症を呈したと思われる婦人科悪性腫瘍の 3 例. 産婦中四 48:196-203,2000 4)Young RH et al :Small cell carcinoma of the ovary, Hypercalcemia type. Am L Surg Pathol 18:1102-1116,1994 5)Suva LJ et al :A parathyroid hormone-related protein implicated in malignant hypercalcemia.science 237:893-896, 1987 6)Body JJ :Current and future directions in medical therapy hypercalcemia. Cancer 88:3054-3058,2000 7) 林俊彦ほか : 卵巣明細胞腺癌の画像診断. 臨床放射線 44:1651-1656,1999 8) 川口里惠ほか : 高カルシウム血症をきたして発見された卵巣明細胞腺癌. 日産婦関東連会報 40:25-29,2003 9) 大和田倫孝ほか : 卵巣明細胞腺癌 39 例の臨床的検討. 産婦人科の実際 50:253-258, 2001-51-