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Transcription:

博士論文 ( 要約 ) Incomplete KLK7 secretion and upregulated LEKTI expression underlie hyperkeratotic stratum corneum in atopic dermatitis ( アトピー性皮膚炎皮疹部の過角化を伴う鱗屑形成には KLK7 の不完全な分泌と LEKTI の発現亢進が関与している ) 旭川医科大学大学院医学系研究科博士課程医学専攻 井川哲子 ( 岸部麻里 堀仁子 本間大 辻村久 石川准子 藤村努 村上正基 山本明美 )

研究目的 アトピー性皮膚炎 (Atopic dermatitis, AD) は慢性の炎症性皮膚疾患で 近年小児はもちろん成人でも寛快せず長期間皮疹が持続する例が増加している そのような例の病理組織では正常とは異なる角層の肥厚がみられ これは角層の剥離異常を示唆する 角層の剥離には角層内の細胞接着構造であるcorneodesmosome (CD) の細胞外構成成分である desmoglein 1 (Dsg1) corneodesmosin (Cdsn) desmocollin 1 (Dsc1) が順序よく分解されることが重要で 多くのプロテアーゼやその阻害剤がその分解に関る (1) 我々はこれまで これらの構成成分の分解過程を免疫電顕 (2) や テープで剥離した角層に免疫染色を施すこと (3) で観察してきた 正常では角層最上層では CD 構成因子は角質細胞の辺縁のみに存在する (2) カリクレイン (Kallikrein-related peptidase, KLK) 7は層板顆粒から分泌されるセリンプロテアーゼの一種でDsc1とCdsnを直接分解し AD 皮疹部ではその発現や活性が亢進すると報告されている (4) 一方我々はAD 皮疹部でCD 構成成分が角質細胞の表面全体に発現し CD 分解の阻害が示唆されることを報告しており (3) 先に述べたKLK7 活性の上昇との間に矛盾が生じていた 今回われわれは この矛盾を解消すべく AD 皮疹部でみられる過角化の機序の解明を試みた その結果 AD 皮疹部でKLK7の発現は亢進しているが 層板顆粒からの分泌が不完全であること またその阻害因子であるLympho-epithelial Kazaltype-related inhibitor (LEKTI) の発現亢進を確認した また これまでより生理的な手法でKLKの活性を測定したところ AD 皮疹部のKLK 活性は正常角層と有意な差は見られなかった 材料 方法 角層検体採取 角層水分量 経表皮水分蒸散量 (transepidermal water loss, TEWL) 測定文書による同意を得たのち AD 患者の皮疹部 (AD lesion: 11 例 ) 治療中で軽度に湿疹病変が残る部位 (AD under treatment: 6 例 ) 無疹部(AD nonlesion: 11 例 ) 正常コントロールとしてADの既往のないボランティア(normal control: 11 例 ) から 粘着テープを用いて角層検体を採取した 同時に 角層水分量とTEWL も計測した 免疫染色診断目的で得られた AD lesion 及びnormal control 検体はホルマリン固定後包埋した テープ剥離で得た角層検体は未固定で使用した 一次抗体として抗 Dsg1 抗体 抗 Dsc1 抗体 抗 Cdsn 抗体 抗 KLK7 抗体 抗 LEKTI 抗体を用いた 二次抗体で染色後 共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察 撮影した テープ剥離角層の Cdsn 免疫染色像を用いて 角質細胞表面の染色パターンを過去の報告にならい (3) peripheral, dense diffuse, sparse diffuse, partial diffuseの4 種に分

類し AD lesionとnormal controlの染色パターンの比率を百分率で表した また テープ剥離検体のDsg1 免疫染色像から角質細胞の面積を計測した 通常電顕及び免疫電顕文書による同意を得て採取したnormal control 及びAD lesion 検体を通常電顕は 'half-strength' Karnovsky 固定液 四酸化オスミウムで 免疫電顕は 2% パラフォルムアルデヒドで固定後包埋した 免疫電顕は一次抗体に抗 KLK7 抗体を用い post-embedding 法 (5) で行った KLK7の層板顆粒からの分泌を観察するため 最深部の角質細胞 (SC1) を 細胞外 細胞質内 空胞内の3か所に分け 角質細胞の表面の長さ5μmを1 区画としてそれぞれの部位にある KLK7を標識した金コロイドの数を計測した Western blotting 診断目的で得られた AD lesion 及びnormal control 検体はディスパーゼで表皮を分離した テープ剥離で得られた角層検体は テープごとトルエンにつけてテープと粘着剤を除去した それぞれの検体から抽出したたんぱくを電気泳動で分離し Cdsn KLK7 LEKTIの発現を確認した In situ zymography テープ剥離角層検体に蛍光標識がついたカゼインを反応させ (6) KLK 阻害剤のあるなしでその角質細胞表面積当たりの輝度を求めた 阻害剤のないものから阻害剤のあるものの輝度を差し引いた差をKLKの活性として比較検討した 天然保湿因子計測テープ剥離角層検体を用い HLPC/MS で角層中の 2-pyrrolidone-5-carboxylic acid (PCA) urocanic acid (UA) を天然保湿因子として計測 角層中のタンパク総量との比で標準化した 統計学的解析 AD lesionとnormal control 群で 年齢 性別 テープ剥離検体採取時の室温 湿度に有意差がないことを確認し KLK 活性についてWelchのt 検定で解析を行った AD lesionとnormal controlそれぞれの角質細胞で Cdsnがdense diffuseパターンを示す割合を目的変数として Cdsn 分解阻害に関る説明変数の候補に角層中のアミノ酸総量 PCA UA 角質細胞表面積 年齢 性別 角層水分量 TEWL KLK 活性を用いて重回帰分析を行い P<0.05を統計学的に有意と判定した 結果 AD 皮疹部角層ではCD 分解に異常があるテープ剥離角質細胞においてCD 構成因子であるDsg1, Dsc1, Cdsnの分布を免疫染色で調べた結果 AD lesionの角質細胞表面全体に3 者とも密な分布がみられ この異常な分布は湿疹病変の改善に伴い正常の分布へ近づくことも判明した 通常電顕でも形態学的に AD lesion 角層最上部での異常な CD 残存を確認した Western blottingによる解析で AD lesionでは角層中のcdsn 分解パターンが正常と異なることが判明した 重回帰分析からはCdsnの分解阻害に寄与する因子はAD

lesion では TEWL 高値 角層水分量の低下 KLK 高活性だった In situ zymographyを用いたad 角層中のKLK 活性は正常と有意な差がない従来の系より生理的なKLK 活性測定法として テープ剥離検体を用いたin situ zymographyを行い KLK 特異的阻害剤添加の有無で生じる輝度の差を定量化し比較した結果 AD lesion 角層中のKLK 活性はnormal controlと有意な差がなかった AD 角層ではKLK7の角質細胞間への分泌が不完全である通常電顕ではAD 角層において 層板顆粒の分泌不全による角質細胞内の空胞を認める 免疫電顕を用いてADと正常でSC1の3 領域におけるKLK7の分布を確認したところ AD 角層では正常に比べ多くのKLK7が角質細胞質内や空砲内に取り残されていた しかし KLK7の60% 以上は細胞外に分泌されていた AD 角層ではKLK7 LEKTI 両方の発現亢進がある上述の結果から 角層剥離が遅延する理由として 角質細胞外のKLK7 活性を阻害するLEKTIの発現がADでは高まっている可能性を考え AD lesion と normal controlで比較した 免疫染色ではAD lesionでklk7 LEKTIともに発現が亢進し 正常と同様 LEKTIの後にKLK7が発現する順序は保たれていた また AD lesionと normal control 表皮を用いたwestern blottingでもadでklk7 LEKTIともに発現が亢進していた 考案 今回の検討で AD 皮疹部角層ではCD 分解の阻害があり これまで言われた角層の乾燥 (7) 以外に KLK7の層板顆粒からの分泌不全 KLK7インヒビターのLEKTIの高発現がこれに関与していると考えた 近年 頭皮の鱗屑でもCD 分解の阻害 セリンプロテアーゼとそのインヒビターの発現亢進が報告されており (8) セリンプロテアーゼとその阻害因子の不均衡を伴うCD 分解不全はAD 以外にもひろく鱗屑形成の機序への関与が示唆される さらに AD 角層では層板顆粒の分泌が不十分で角質細胞内にとどまるKLK7の割合が正常より高いため その高発現にも関わらず CD 分解に寄与する KLK7 が不十分となり その結果 CD 分解が阻害されて compact hyperkeratosisへ至る可能性が示唆された 結論 AD 皮疹部角層ではCDの分解阻害により過角化がみられる これは CDの分解に関与するKLK7が その高発現にもかかわらず 阻害剤であるLEKTIの高発現や KLK7 自体の分泌不全によって 十分に活性を発揮できていないことが一因と考えられた

引用文献 1. Ishida-Yamamoto A. et al., Order and disorder in corneocyte adhesion. J Dermatol. 2011. 38(7): p.645-54. 2. Igawa S. et al., Tight junctions in the stratum corneum explain spatial differences in corneodesmosome degradation. Exp Dermatol. 2011. 20(1): p.53-7. 3. Igawa S. et al., Aberrant distribution patterns of corneodesmosomal components of tape-stripped corneocytes in atopic dermatitis and related skinconditions (ichthyosis vulgaris, Netherton syndrome and peeling skin syndrome type B). J Dermatol Sci. 2013. 72(1): p.54-60. 4. Voegeli R. et al., Increased stratum corneum serine protease activity in acute eczematous atopic skin. Br J Dermatol, 2009. 161(1): p.70-7 5. Ishida-Yamamoto A. et al., LEKTI is localized in lamellar granules, separated from KLK5 and KLK7, and is secreted in the extracellular spaces of the superficial stratum granulosum. J Invest Dermatol 2005. 124(2): p.360 6. 6. Hachem JP. et al., Sustained serine proteases activity by prolonged increase in ph leads to degradation of lipid processing enzymes and profound alterations of barrier function and stratum corneum integrity. J Invest Dermatol 2005. 125(3): p.510 20. 7. Rawlings AV, Voegeli R. Stratum corneum proteases and dry skin conditions. Cell Tissue Res 2013. 351(2): p.217 35. 8. Singh B. et al., Retention of corneodesmosomes and increased expression of protease inhibitors in dandruff. Br J Dermatol. 2014. 71(4): p.760-70.