軟弱地盤における護岸復旧事例 ダイニチ技研 ( 株 ) 設計 調査部 小林靖朋仲田健治西村角栄 1. はじめに本事例は 平成 23 年 9 月 3 日 ~4 日にかけて四国 中国地方を横断した台風 12 号により被災した護岸の復旧検討を行ったものである 大型の台風 12 号は 勢力を保ちながらゆっくりと北上したため 長時間にわたり台風周辺の非常に湿った空気が流れ込み 西日本から北日本にかけての広い範囲で記録的な豪雨となった 鳥取県では9 月 3~4 日にかけて台風が縦断し 大山を中心とした山地部において24 時間雨量で783.5mmを記録した 本業務は 各地盤調査で判明した緩い砂質地盤の支持力確保を主眼に検討を行い 地形的制約のある中で最適な工法の選定を行ったものである 表 1-1 降雨記録 大山 ( 鳥取県 ) 気象庁発表値 要素名 / 順位 1 位 2 位 3 位 日降水量 524 341 313 (mm) (2011/9/3) (2011/9/2) (1990/9/19) 日最大 10 分間降水量 16.0 15.5 15.0 (mm) (2011/9/3) (2011/7/4) (2011/9/2) 日最大 1 時間降水量 90 67 63 (mm) (2005/8/15) (2009/7/19) (2011/9/3) 月降水量の多い方から 1400 761 750 (mm) (2011/9) (1990/9) (1994/9) 図 1-1 降雨量 2. 被災状況本被災地の状況は写真 2-1~ 写真 2-5のとおり 物置小屋の倒壊 家屋脇の護岸流出が発生した 本河川の流線は被災箇所で直角に近い角度で湾曲しており 局所的な洪水の乗り上がりによって護岸基礎地盤が洗掘されため 護岸の被災に繋がったと考えられる さらに 背後地からの多量の表面水の流入や 浸透水の湧水があることから これらが崩壊を助長したものと考えられる T 明間支 46 L4L417-2 至大山 382.45 380.14 B L4L413-1 県道赤松大山線 写真 1 377.62 377.69 381.93 BM.1 H=382.000 L4L417-1 381.63 381.70 381.86 As 379.94 378.13 378.03 380.94 380.58 377.74 NO.0 375.27 380.28 BM.2 380.25 H=380.253 As 379.81 379.98 377.87 380.60 377.80 376.91 NO.3 377.01 ドノウ EP 写真 3 写真 5 S ドノウ S 写真 4 374.00 373.03 374.04 372.92 写真 2 372.34 DHWL 371.95 H=374.852 明間川 375 写真 2-1 被災状況全景 図 2-1 平面図
写真2 2 写真2 4 下流側正面 写真2 3 下流側断面 写真2 5 上流側断面 上流側正面 3 復旧する護岸の構造 護岸の復旧は設計流速に対応する構造とし 併せて背後地からの浸透水排除を目的に がごマット 工を選定した 用水路復旧 0.50 護岸かごマット工 (H=50cm,B=100cm) 5 1. 1: 芝 張.5 3.00 1: 1. 0 1:0 1.50 3.00 DHWL 1.00 吸出防止材 DL=372.00 図3 1 計画断面図 5 1. 1: 芝 張
試験年月日 4. スウェーデン式サウンディングによる事前調査 被災箇所は応急対策として大型土のうによる仮復旧を行ったが 沈下を伴う変状が確認されたことから 簡易調査として2 箇所のスウェーデン式サウンディングを行った 本被災地は地質的に大山火山の支配下にあり 大山外輪山山体を侵食し谷間を埋めた火砕流堆積物で 弥山熱雲 の名称で呼ばれる火山岩塊 火山礫及び火山灰 (Na) である 結果は ロッドの自沈を伴う不良土層が河床付近から3m 程度確認された (1 箇所は礫当たりのため深度未確認 ) そのため 護岸の安定性を確保するうえで 詳細な地盤構成 地盤性状の確認が必要と判断し 追加でボーリング調査を行うこととした 弥山熱雲 火山岩塊 火山礫及び火山灰 更新世 溶岩流 普通輝石含有紫蘇輝石黒雲母角閃石安山岩 溶岩流 両輝石含有黒雲母角閃石安山岩 外輪山 凝灰角礫岩 新第三紀 無斑晶安山岩 無斑晶安山岩 図 4-1 地質図 JIS A 1221 調査件名 地点番号 ( 地盤高 ) スウェーデン式サウンディング試験台風 12 号災明間川 1 工区試験年月日スウェーデン式サウンディング試験 No.1 試験者 平成 23 年 10 月 6 日矢田, 小室 載荷装置の種類錘による載荷回転装置の種類人力による 1m 当たりの 深さ 荷重 W SW 半回転数貫入深さD 貫入量 L 半回転数 記事 m kn N a m cm N SW 0 0.05 0.10 10 0.50 0.15 5 1.00 0.75 60 0.25 1.00 25 1 0.75 1.70 70 0.25 1.85 15 0.75 1.90 5 1.00 2 2.00 10 20 1.00 7 2.18 18 39 2.18mで礫に 2 あたり空転 荷重 W SWkN 天候曇貫入量 1m 当たりの半回転数 N SW 0 0.25 0.5 0.75 0 50 100 200 300 400 600 3 4 5 図 4-2 SS 結果 (1) 写真 4-1 SS 状況 (1) JIS A 1221 調査件名 地点番号 ( 地盤高 ) スウェーデン式サウンディング試験 台風 12 号災明間川 1 工区スウェーデン式サウンディング試験 No.2 試験者 平成 23 年 10 月 6 日矢田, 小室 載荷装置の種類 錘による載荷 回転装置の種類 人力による 天 候 曇 1m 当たりの 深さ 荷重 W SW 半回転数貫入深さD 貫入量 L 荷重 W SW kn 貫入量 1m 当たりの半回転数 N SW 半回転数 記 事 m kn N a m cm N SW 0 0.25 0.5 0.75 0 50 100 200 300 400 600 0 0.05 0.20 20 0.25 0.25 5 0.50 0.30 5 1.00 0.42 12 1 0.75 0.80 38 0.50 1.50 70 0.25 1.75 25 0.50 1.80 5 0.75 1.85 5 2 1.00 1.90 5 1.00 2 2.00 10 20 1.00 5 2.25 25 20 1.00 6 2.50 25 24 3 1.00 3 2.75 25 12 1.00 8 3.00 25 32 1.00 16 3.25 25 64 1.00 12 3.50 25 48 4 1.00 9 3.75 25 36 1.00 6 4.00 25 24 1.00 12 4.20 20 60 1.00 20 4.25 5 400 5 1.00 50 4.40 15 333 1.00 30 4.45 5 600 4.45mで反発大 となり, 終了 6 図 4-3 SS 結果 (2) 写真 4-2 SS 状況 (2)
5 ボーリングによる追加調査 ボーリング調査の結果 基盤と呼べるようなものは確認できなかったが 硬質な亜円礫を含む砂礫 層が全域にわたって確認できたことから この砂礫層を護岸の支持地盤とするものとした ただし 砂礫層までの護岸根入れを確保するためには 河床から最大3mの床掘が必要で 背後地 盤の崩壊を助長する可能性が高い また 安価な置き換え工法においても同様に床掘が必要であるこ とから 床掘を必要とせず地表からの施工可能な地盤改良工法を採用するものとした 図5 1 図5 2 写真5 1 コア(BP.1) 写真5 2 コア(BP.2) 柱状図(BP.1) 柱状図(BP.2)
各試験結果を基にした地盤推定縦断図を以下に示す 図5 3 地盤推定縦断図(縦横比2:1) 6 改良工法の選定 工法の選定は 下表の道路土工 軟弱地盤対策工指針を基に 沈下対策のみならず 背後地盤の変 形抑制としてすべり抵抗の増加が見込めるものとして 固結工法のうち 一次選定として 深層混合 処理工法 薬液注入工法 を選定し 経済比較で 深層混合処理工法 を採用した 固結工法には他に 石灰パイル工法 凍結工法は が挙げられるが 前者は粘性土地盤で多く 用いられるもので 後者は仮設工法であるため選定から除外した 表6 1 軟弱地盤対策工の目的と効果 表6 2 軟弱地盤対策工の種類と効果 次に 支持地盤としての必要支持力 構造を設定し 室内配合試験を基にした設計配合量を決定を する
7. 構造決定及び配合設計深層混合処理工法はセメントなどの改良材を地中に供給し 現地盤の軟弱土と改良材を強制的に混合攪拌し これらが適度に固化することをねらった工法である 図 7-1 深層混合処理工法の概要 a) 必要とする地盤支持力地盤改良によって確保する地盤支持力は設置する構造物の地盤反力から決定する必要があるが かごマット工は比較的緩い地盤でも採用されている構造物である これは かごマットが柔構造であり 少量の地盤変形に追従できるためである そのため 一般的なブロック積み護岸のような堅固な支持地盤は必要とされないことから 改良目標値は 支持地盤として評価できる最低限の地盤強度以上 に設定した 必要とされる地盤強度は 工法 支持地盤の土質によって変わってくるが 砂質地盤の改良を行った場合においては粘着力を付加することが可能となるため 粘着力で評価する 粘性土地盤 として 道路土工 - 擁壁工指針より 粘性土地盤 - 堅いもの の一軸圧縮強度 quが100kn/m2を目標値とする 表 7-1 支持地盤の種類と許容支持力度 b) 形状の決定 1 地盤改良幅地盤改良幅の決定は 深層混合処理工法設計 施工マニュアル及び 道路土工 - 擁壁工指針より 次のとおりとする 1) 構造物基礎幅に左右それぞれ1m 以上拡げる 2) 荷重分散角は30 とする 3) 地盤改良深さは 支持地盤と見なすことできる砂礫層に到達する深さとし 0.50mラウンドで設定する
図 7-2 改良幅 図 7-3 荷重分散角 2 断面形状上記地盤改良幅及び 地盤改良深さから求まる形状は下図のとおりとなる DHWL 3000 1 1:1.0 深さ 30 支持 改良幅 図 7-4 断面形状 砂礫層 c) 配合設計配合設計においては 対象とする軟弱土を用いて室内配合試験を行い 改良目標強度を満足する固化材の適正添加量を求めるとともに 六価クロム溶出試験において 改良土からの六価クロム溶出量が環境基準に定められる基準値以下 (0.05mg/l) となることを確認する必要がある 本業務においては改良材に宇部三菱セメント社のユースタビラーを想定している 配合設計ではユースタビラーのうち 一般軟弱土用のユースタビラー 10と 六価クロム溶出量の少ない特殊土用のユースタビラー 50で配合試験を行ったが 本業務地の土質では一般軟弱土用のものでは基準値以上の六価クロムが検出されたため 特殊土用のユースタビラー 50を使用するものとした 固化材 添加量 (kg/m3) ユースタビラー 10 120 ユースタビラー 50 120 表 7-2 六価クロム溶出試験結果 六価クロム溶出量 (mg/l) 基準値 試験値 0.085 0.005 以下 0.05 判定 OUT OK 改良材添加量は一軸圧縮強度 quの目標値 100kN/m2を基に室内試験結果から決定するものとし 配合量は87kg/m3とした 設計基準強度 Fc=2c/Ap Fc: 設計基準強度 =2 50/0.78 ap: 改良率 ( 左図より78%) =128.2 130kN/m2 qu: 一軸圧縮強さ (c=qu/2よりqu=2c) 改良面積 Ap=0.78m2 縦断方向 横断方向 d1=1.00m d2=1.00m 図 7-5 改良率
379.00 379.36 377.62 374.17 382.45 377.69 374.15 381.93 As 379.94 374.71 374.53 381.70 378.13 378.03 381.63 381.86 380.94 380.58 377.74 374.53 374.12 375.27 374.67 374.49 380.60 E ダイセンレン47 T 明間支 46 370.73 As 379.98 ドノウ 371.35 379.81 371.95 376.91 377.01 372.34 380.14 372.92 ドノウ 373.03 380.25 377.80 374.00 380.28 377.87 374.04 6200 表 7-3 配合量 設計基準強度 130 kn/m 2 室内配合強度ユースタビラー 50 添加量 520 kn/m 2 87 kg/m 3 ユースタビラー 50 材令 28 日 固化材添加量一軸圧縮強度 qu No. kg/m 3 kn/m 2 1 416 70 2 430 X= 422 120 3 1 2 421 784 794 X= 754 3 1 685 1250 170 2 1342 X= 1313 3 1348 ユースタヒ ラー 50 一軸圧縮強さ (kn/m2) 1200 900 600 300 0 87 20 70 120 170 220 添加量 (kg/m3) 520 ここで 現場強度の平均値と室内配合強度の平均値の比は 陸上工事の場合 1/3~1/4とすることが多いことから 本業務では4 倍を室内配合強度とし 4.0 130=520kN/m2 その時の配合量 87kg/m3を設計配合量とした d) 配置計画以上の検討結果より配置計画を下図のとおりとした ここで 不良土の層厚は図 5-3のとおり下流に向かって薄くなっている 一方 深層混合処理工法は最低改良厚を 1mとしており 最下流まで改良を行うと不経済なものとなってしまう また 下流部は背後地との距離が離れ 上流側で制約となっている床掘が可能である よって これらの総合的な判断から 下流部については深層混合処理工法に代えてコンクリートによる置換えを採用した 災害復旧延長 L=60m 水路工 (B500) W=3.00 L=6.00 平面図 S=1:500 至大山 法覆工 ( 張芝 ) 土留かごマット工 (H=50cm,B=100cm) L4L417-2 深層混合処理工法 L=32.7m W=4.00 H=2.00 N=36 本 W=4.00 L=18.7 W=4.00 H=2.50 N=28 本 W=4.00 H=2.00 W=3.00 H=1.50 W=3.00 H=1.00 N=12 本 N=15 本 N=3 本 EP B 至赤松 L4L413-1 県道赤松大山線 県道赤松大山線 D2 L4L417-1 NO.0 375 BM.1 H=382.000 NO.0 明間川 明間川 S S NO.3 EP 375 375 コンクリート置換え深層混合処理護岸かごマット工 (H=50cm,B=100cm) BM.2 H=380.253 W=3.00 L=8.00 0.64 W=3.00 H=1.50 N=24 本 改良幅 B=3.0m 6200 凡 H=1.00 H=1.50 H=2.00 H=2.50 例 改良幅 B=3.0m 図 7-6 計画平面図 図 7-7 改良体配置図 8. おわりに軟弱地盤対策は その目的により種々の工法が存在するため 対策目的を明確にし 適切な工法を選定することが重要である さらに 周辺に及ぼす影響等の施工条件も選定のポイントとなるため注意が必要となる 最後に 1 点目のスウェーデン式サウンディングは礫当たりで終了としていたが 2 点目及び ボーリング調査の結果を見ると 地盤推定線の精度を向上させるには再調査が必要であった これについては反省すべき点として挙げられる