表 1 既存の現場打ち鉄筋コンクリート水路の断 面形状の設定値 10 ケース 内 高 H m 内 幅 B m 側壁 上 Tl m 側壁 下 T m 底 版 T3 m ハ ン チ T4 m 体 積 V m3/m 重 量 W t/m 1 0. 80 1. 00 0. 13 0. 13 0. 13 0. 00 0. 37 0. 93 0. 90 1. 30 0. 00 0. 51 1. 8 3 1. 00 1. 40 0. 66 1. 66 4 l. 0 1. 50 0. 18 0. 79 1. 98 内 高 H m 内 幅 B m 側壁 上 T1 m 側壁 下 T m 底 版 T3 m ハ ン チ T4 m 体 積 V m3/m 重 量 W t/m 6 1. 40 1. 80 1. 0. 56 7 1. 50. 00 1. l0. 76 8 1. 60. 0 1. 18. 96 9 10 1. 80. 00. 60 3. 00 0. 5 0. 5 0. 5 0. 5 1. 61 1. 80 4. 0 4. 49 図 鉄筋コンクリート開水路 国営造成施設 の水路幅と延長 1 出典 農林水産省ホームページ 一部加筆 既存鉄筋コンクリート水路の断面設定 プレキャスト水路の形状寸法は ある程度は規 格化されており 一部の製品価格が公表されてい 5 1. 30 1. 60 0. 18 0. 84. 11 る そのため 比較的容易に機能保全コストを積 算できる そこで 既存の鉄筋コンクリート水路 の断面形状は 後述するプレキャスト水路と同じ 内空寸法とした 3 プレキャスト水路製品の断面設定 新設する農業用用水路排水路で用いられるプレ 老朽化したと想定する水路の側壁と底版の部材 キャスト水路製品には 団体規格やメーカー規格 厚は 昭和 40 50 年代に適用された 鉄筋コン のものがある 団体規格の製品群には ①鉄筋コ 5 クリートフリューム標準設計 土地改良事業 ンクリートフリューム 7 ②鉄筋コンクリートベ 標準設計図面集 その1 水路工 6 を参考に決 ンチフリューム 7 ③鉄筋コンクリート水路用L 定した これらでは内空高は 前者が 0. 5 m 形 8 ④鉄筋コンクリート大型フリューム 8 など 1. 5 m 後者が 0. 5. 0 m までが標準図面化さ がある ①と②は JIS で規格化されており 水 れている これらをもとに プレキャスト水路の 路幅が 1m 以下の製品である ③と④は 社 内空幅と内空高に応じた鉄筋コンクリート水路の 農業土木事業協会で規格化されているものであ 断面形状を図 3 および表 1 に示すように 10 る ③は 側壁部分と底版の一部がプレキャスト 断面を設定した 製品で構成されており 底版の中央部分に現場打 ちコンクリートを打設するため 水路幅は現地条 件にあわせて施工することができる ④は 水路 幅が 1 m 3 m の比較的大型の水路製品であり ③のような現場打設の作業が不要であるため 施 工上の省力化が図られている 一方 メーカー規 格の製品では 地域の需要や現地の条件に応じた 多種多様な水路製品が規格化されている 本稿では ① ④のなかから 図 4 に示す 鉄筋コンクリート大型フリュームを使用して水路 図 3 現場打ち鉄筋コンクリート水路の断面形状 を更新 新設 するシナリオにした これは 1 既存の鉄筋コンクリート水路の施工延長の約半数 が水路幅 3 m 以下であり この幅までは製品規 56 JAGREE 83. 01 5
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鉄筋防錆処理および欠損等の補修を要する変状は 量が, 900 kg/ 個以下の場合は 市場単価 11 を 生じておらず 主に摩耗や経年劣化を受けた状態 採用し, 900 kg/ 個を超える場合は 鉄筋コン とする クリート大型水路機械据付歩掛 1 を採用した また 製造工場から当該地区までの製品運搬費や 撤去 更新コスト 諸経費なども計上している 1 撤去 更新のコスト算定方法 プレキャスト水路により更新する場合の施工フ 表 5 ローを図 5 に示す 撤去 更新コストは ①既 標準歩掛 存水路の撤去 ②水路据付工 ③土工 ④コンク 市場単価 リート殻の処分の経費に区分して計上した 下 ; 普通作業員 図 5 上 ; 世話役, 中 ; 特殊作業員, 1, 000 kg 1, 000, 000, 900 3, 500 5, 500 以下, 000 kg, 900 kg 3, 500 kg 5, 500 kg 7, 000 kg 50 m/ 日 35 m/ 日 5 m/ 日 6 m/ 日 6 m/ 日 4 m/ 日 設 置, 950 円 4, 450 円 5, 750 円 歩 掛 /m /m 水路新設のコスト 市場単価 土地改良工事積算基準標準歩掛 標 準 施工量 /m 1. 0 人 / 日 1. 0 人 / 日 1. 0 人 / 日 1. 0 人 / 日 1. 0 人 / 日 1. 0 人 / 日 3. 5 人 / 日 4. 0 人 / 日 4. 5 人 / 日 ③土工コスト 既設水路が設置されている状況によって 必要 となる施工機械や施工方法が異なることが想定さ プレキャスト水路更新の施工フロー れる そのため 土工に関する条件設定は本来な ら適切に試算しなければならない しかし 次節 ①既存水路の撤去コスト で示すように 土工コストはプレキャスト水路更 既存水路撤去の工事費は 市場単価 構造物と 新コストの総額に占める割合が高くはないことか 11 りこわし工 から算出した 主たる作業機械は ら 簡便のため図 6 の斜線部の土量を計上する 大型ブレーカ コンクリートブレーカ コンクリ ことにした 土工単価は 床堀り工は 350 円 /m3 ート圧砕機である 表 4 に示すように 撤去の 直接工事費は 機械施工では 11, 000 円 /m3 人 整地 床付面の整正 は 50 円 /m 埋戻し工は 1, 300 円 /m3 と設定した コンクリート殻 有筋 は 当該現場から中 力施工では 37, 500 円 /m3 である 間処理場まで 10 t ダンプで運搬するものとした 運搬距離 片道 を おおむね 10km とし 費用 図 6 土工で対象とした施工範囲 斜線部 は 1, 865 円 /m3 とした なお ここでの施工量 m3 は とりこわし前の体積である 表 6 表 4 既存水路の撤去コスト 市場単価 区分 規格 仕様 標準施工量 機械施工 3 10 m / 日 11, 000 円 /m 人力施工 3 37, 500 円 /m3 鉄筋構造物 4m/日 工種 市場単価 3 ②水路新設コスト プレキャスト水路の新設コストは ブロック重 58 土工コスト 土地改良工事積算基準標準歩掛 土木工事積算標準単価 規格 仕様 標準歩掛 バックホウ 0. 8 0. 6 m3 クローラ型 床 堀 り 障害なし 砂 砂質土 レキ質土 粘性土 350 円 /m3 整 50 円 /m 地 基面整正 床付面の整正 埋 戻 し バックホウ 0. 8 0. 6 m3 クローラ型 1, 300 円 締 固 め 振動ローラ 0. 8 1. 1 t /m3 JAGREE 83. 01 5
コンクリート殻 有筋 の産業廃棄物処理費は 1 表面被覆工法の補修工事費 秋田県を例にすると 概ね 1, 00 4, 000 円 /t の 範囲 3 補修工法の機能保全コスト ④コンクリート殻の処分コスト 13 ストックマネジメント ガイドブックに記述のある工法のなかで 相応 であり 費用の上限と下限では 3 倍程度 の差がみられる 参考までに 関東地方の処理費 の実績があり かつ 被覆の厚さと補修工事費が 9 記述されている工法をまとめると 図 9 のよう を表 7 に示すが このばらつきは同様の傾向に になる ある ここでは 産業廃棄物処理費を 4, 000 円 /t 表 7 m として積算した コンクリート塊 有筋 の処分費 関東地区の例 円 /t 東京 神奈川 千葉 埼玉 茨城 群馬 栃木 山梨 平均 下限,500 1,800 1,500,000 1,500,500 1,00 1,500 1,800 平均 4,700 4,900 3,000 3,000,300,900,000,100 3,100 上限 8,000 8,000 5,000 3,500 5,000 4,400 3,500 3,000 5,100 図 9 補修材 主材 の厚さと補修費 下地処理等の準備費は含まない 撤去 更新コストの算定結果 撤去 更新コスト算出結果を図 7 に示す 同 図には コスト総額を内空面の表面積で除算した 無機系被覆工法の被覆厚さは 6 30 mm 補 1 m あたりの金額 右軸 も示している コス 修費は約 8, 000 4, 000 円 /m である 有機系 トの内訳を図 8 に示す なお 新設するプレキ 補修工法の補修材厚は 1 5 mm 補修工事費は ャスト水路の目地の維持管理費は ここでは無視 約 1, 000 5, 000 円 /m である パネル工法は している パネル厚が 10 0 mm 補修工事費は約 0, 000 る側壁部と底版部の面積比から算出した 表面被覆工法の機能保全コスト 補修工事費と耐用年数をつぎのように設定して A C 工法の機能保全コストを試算する A工法 補修工事費11, 000円/m 耐用年数10年 B工法 補修工事費1, 000円/m 耐用年数0年 が異なる工法の補修費は 各ケースで想定してい 4, 000 円 /m である 側壁と底版で補修単価 m C工法 補修工事費8, 000円/m 耐用年数0年 図 7 撤去 更新コスト を乗じて算定し 機能保全コストは供用期間中の 総工事費とした それぞれ耐用年数が異なるので A 工法は供用期間 40 年間に 4 回 B 工法と C 工 法は 回の補修工事を要することになる 将来的 に発生するに工事費用は 社会的割引率 4. 0 図 8 ときの機能保全コストを図 10 に示す 1 回あ たりの工事費は 補修対象面積に補修工法の単価 側壁高 H 1. 5 m 補修対象面積 500 m の 撤去 更新コストの内訳 により 現在価値に換算して費用を計上している 補修費は B 工法 A 工法 C 工法の順であるが JAGREE 83. 01 5 59
機能保全コストは A 工法 B 工法 C 工法に 5 補修と更新のボーダーライン なり 補修費の大小だけではなく 耐用年数も有 用なパラメータとなることを示している 1 分岐点となる補修費 そこで 補修工法の耐用年数をパラメータとし て 分岐点となる補修費 補修による機能保全コ m ストと撤去 更新コストが一致する補修費 を式 4 から求めた この計算には 社会的 割引率 4. 0 と供用期間後 40 年後 の残存 価値を考慮している 補修費は ガイドブック記 載の補修工法と同じように補修面積1m あたり で算出した 図 10 補修工法の機能保全コスト 撤去 更新コスト 補修による機能保全コスト 4 機能保全コストの分岐点 補修工事費の合計 40 年後の残存価値 つぎに すべての側壁高について同様の計算を 補修回数 行い 前述の撤去 更新コストと比較した結果を i 1 [ 補修コスト 割引係数 i ] 図 11 に示す A 工法の機能保全コストは 撤 補修コスト 残存耐用年数 / 耐用年数 去 更新よりもコストが大きくなるため 撤去 割引係数 更新が優位になる 逆に C 工法の機能保全コス トは 撤去 更新よりもコストが小さくなり 補 式 から 撤去 更新コストと一致する補 修する方が優位になる B 工法は 側壁高が H 修コストは次式となる 1. 1 m のときに撤去 更新コストと補修コスト が一致している この水路規模が 既存水路を撤 補修コスト 去して プレキャスト水路を新設する場合の費用 撤去 更新コスト 補修回数 残耐用年数 割引係数 i 割引係数 耐用年数 i 1 と 既存水路を B 工法によって 40 年間に補修工 事を 回実施する場合の機能保全コストが等しい 状態であり 撤去 更新と補修の分岐点になる 3 これを補修面積 1 m あたりに換算すると 補修コスト コストが一致する補修費 補修面積 m m m 4 となる これらを踏まえ 以下に側壁高が H 1 m の ときの撤去 更新費と等しくなる補修費の計算例 を示す 図 11 撤去 更新と補修のコスト比較 60 補修工法の耐用年数 0 年の場合 撤去 更新費用は 図 7 から約 5, 700 千円で ある 割引係数は 式 1 から初年度が 1. 000 JAGREE 83. 01 5
ストックマネジメント 0 年後が 0. 456 40 年後が 8 である 40 年 ボーダーラインよりも下方にプロットされる表面 後の残耐用年数は 40 年 回 0 年 / 回 0 被覆工法の場合 その補修工事を実施するほうが 年である 補修面積は 側壁および底版とすると 優位となることを意味する 340 m である よって コストが一致する補修 費は式 3 と 4 から 3, 910, 000 コストが一致する補修費 340 11, 500 円 /m となる 補修工法の耐用年数 40 年の場合 割引係数は 初年度が 1. 000 40 年後が 8 である 40 年後の残耐用年数は 40 年 1 回 40 年 / 回 0 年である よって コストが一致 5, 700, 000 補修コスト 0年 1. 000 8 40 年 図 1 する補修費は 3, 910, 000 円 m 5, 700, 000 補修コスト 0年 1. 000+0. 456 8 40 年 機能保全コストが撤去 更新費と等しくな る補修費と耐用年数の関係 撤去 更新と補修のボーダーライン 3 仮設工事費を加算したときのボーダーライン 農地およびその周辺の土地利用形態の改変によ 5, 700, 000 円 って 撤去 更新のための工事用道路が必要にな 5, 700, 000 コストが一致する補修費 340 る場合がある しかし 工事用道路などの仮設工 事費は 現地施工条件や地域性により大きな差異 16, 800 円 /m があるため 一律に計上することは難しい ここ では つぎのように考えた 補修と更新のボーダーライン 仮設工事費として工事用道路の建設費 撤去 側壁高 0. 8 m 1 m 1. 5 m m のときの計算結 整地費 借地料を計上する 仮設道路は 幅員 3 m 果を図 1 に示す 側壁高 1. 0 m では プレキャ 盛土厚 50 cm 砂利舗装厚 10 cm とした 土砂運搬 ストによる更新と表面被覆による補修の分岐点は 距離は 11. 0 km 以下 DID 区間 1 とした これら 補修工法の耐用年数が 0 年では 11, 500 円 /m から 延長 1 m あたりの建設費は 4, 580 円 /m 撤去 耐用年数が 40 年では 16, 800 円 /m となり 図 整地費は 5, 00 円 /m とした 借地料は 国土 中に塗りつぶしの点で示している 交通省土地総合情報システム 17 に提示されてい 図中の曲線は 側壁高ごとの分岐点を結んだも る土地価格を参考に坪単価 15 万円として算出し のであり 撤去 更新と補修のボーダーラインを た 借地幅は仮置き場を含めて 10 m 借地期間 表している このボーダーラインよりも上方にプ は撤去工 水路据付工 土工の施工期間とした ロットされる表面被覆工法は その補修工事を実 施するよりも 撤去 更新した方が優位となり JAGREE 83. 01 5 算定結果を図 13 に示す 側壁高 1. 0 m では 分岐点は 耐用年数 0 年の場合で 13, 900 円 /m 61
耐用年数 40 年で 0, 00 円 /m となる 仮設工 流通していない地域の場合 事費を加算することで ボーダーラインが全体的 機械施工による解体ができない場合 に上方に移動する 補修工事を部分的に実施する場合 これらのケースでは 算定条件を変更して機能 m 保全コストを算出する必要がある 参考文献 1 農林水産省ホームページより引用 http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/ bukai/h_1/pdf/data3-.pdf 道路ポケットブック 003 国土交通省 3 数字で見る鉄道 003 国土交通省 4 農業水利施設保全補修ガイドブック 平成 3 年度 版 社 農業土木事業協会 5 鉄筋コンクリートフリューム標準設計 S45 農 林省農地局 6 土地改良事業標準設計図面集 その 1 水路工 S54 農林水産省構造改善局 7 JIS ハンドブック⑪土木Ⅰ コンクリート製品 日 本規格協会 011 8 鉄筋コンクリートフリューム規格 社 農業土 木事業協会 00 9 建設物価 財 建設物価調査会 011 10 農業水利施設機能保全の手引き 社 農業土木 図 13 機能保全コストが撤去 更新 仮設工事費 事業協会 009 と等しくなる補修費と耐用年数の関係 撤去 更新 仮設工事費と補修のボーダーライン 11 土木コスト情報 財 建設物価調査会 011 1 平成 3 年度 土地改良工事積算基準 社 農業農 村整備情報総合センター 6 まとめ 老朽化した鉄筋コンクリート開水路を撤去し て プレキャスト 次製品によって更新するほう が 水路表面に補修工事を実施して延命を図るよ りもコスト的に優位となるボーダーラインを求め た 図 1 13 に下地処理費や準備費を加えた 補修工事費とその工法の耐用年数の交点位置にプ ロットすることで 補修または更新のどちらが優 位になるかを判別することができる なお 現場 状況によって コストの算定条件が異なるので 図 1 13 を適用することには注意が肝要であ る 例えば 次の場合にはそのまま適用すること ができない 本稿で想定した規格型のプレキャスト水路が 6 13 実施単価表 秋田県建設交通部 農林水産部 平 成 年 14 平成 3 年度版土地改良工事の積算と施工 財 建設物価調査会 15 平成 3 年度版 土木工事積算標準単価 財 建設 物価調査会 011 16 ユニットプライス型積算基準 試行用 平成 年 4 月 農林水産省 農村振興局 17 国土交通省土地総合情報システム http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/mai nservlet 18 中 高橋 農業水利施設のマネジメント工学 養 賢堂 010 19 農業水利施設のコンクリート構造物 調査 評価 対策工法選定マニュアル 社 農業土木事業協会 007 0 コンクリートライブラリー 119 表面保護工法 設 計施工指針 案 土木学会 JAGREE 83. 01 5