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コンクリート構造物の補修 補強に関するフォーラム 2018 講演用資料 コンクリート構造物の劣化と補修技術 ~ 劣化メカニズムを考慮して補修工法の選定を ~ 一般社団法人コンクリートメンテナンス協会極東興和株式会社 江良和徳 1

本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害 中性化の劣化メカニズム 塩害 中性化の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 健康寿命を延ばすための着目点 3.ASR 補修の基本的な考え方 ASR の劣化メカニズム ASR の補修工法選定進展期 加速期 劣化期 健康寿命を延ばすための着目点 2

1. はじめに 3

急増するコンクリート構造物の劣化 高度経済成長期に大量に建設された社会資本ストックが まもなく 50 年を迎える その当時は 塩害や ASR に対する知見が十分でなかった 個々の状況に応じて最適な補修技術 補修材料を選定することが重要 4

2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 5

塩害 劣化メカニズム 技術資料 P.3 原 因 種々の原因で塩化物イオンがコンクリート中に浸入 浸入した塩化物イオンはコンクリート表面から内部へ浸透 劣化進行 塩化物イオンが鉄筋位置に到達 鉄筋位置の塩化物イオン量が一定量 ( 腐食発生限界 ) を超えると, 鉄筋の不動態皮膜が破壊され 鉄筋腐食が生じる 性能低下 ひび割れ コンクリートの浮き はく離 鉄筋露出など コンクリートと鉄筋との付着が低下 鉄筋断面の減少 6

塩害 劣化事例 技術資料 P.4 7

中性化 劣化メカニズム 原 因 大気中の二酸化炭素がコンクリート中 (ph=12 以上 ) に浸入 コンクリート中の水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成 その結果, コンクリート中の ph が低下 (ph=11 以下 ) する 劣化進行 中性化領域はコンクリート表面から内部に向かって進行する 中性化領域が鉄筋付近まで到達すると鋼材の不動態皮膜が破壊され, 鉄筋が腐食する 性能低下 ひび割れ コンクリートの浮き はく離 鉄筋露出など コンクリートと鉄筋との付着が低下 鉄筋断面の減少 8

中性化 劣化事例 壁高欄のコンクリートはく落 道路橋壁高欄 自動車の排気ガスによる CO 2 供給 はく離箇所以外の鉄筋も腐食 張出し床版下面の鉄筋露出 RC 上部工の張出し床版下面 もともと鉄筋かぶりが不足 早期に中性化領域が鉄筋位置に到達 9

塩害 中性化 鉄筋腐食の模式図 技術資料 P.3 アノード反応 : 電子 2 個を鉄筋中に残し 鉄がイオンとなって溶出する反応 カソード反応 : アノード反応によって生じる電子を消費する反応 この 2 種類の反応が同時に起こるのが鉄筋腐食反応 10

塩害 劣化過程 技術資料 P.5 各劣化過程では何が起こっているのか? 次の劣化過程に進行させないためには何をすればよいのか? 11

中性化 劣化過程 各劣化過程では何が起こっているのか? 次の劣化過程に進行させないためには何をすればよいのか? 12

塩害 中性化 一般的な補修工法と要求性能 技術資料 P.6 1 劣化因子の遮断 ( 塩化物イオン, 二酸化炭素, 水, 酸素の侵入を低減 ) 表面含浸工法 表面被覆工法 ひび割れ注入工法 2 劣化因子の除去 脱塩工法 ( コンクリート中に浸入した塩化物イオンを除去 ; 塩害 ) 再アルカリ化 ( 中性化したコンクリートのアルカリ性を回復 ; 中性化 ) 3 鉄筋腐食の抑制 ( 既に腐食が開始している鉄筋の腐食進行を抑制 ) 電気防食工法 鉄筋防錆材 ( 亜硝酸リチウム ) の活用 4 コンクリート脆弱部の修復 ( コンクリート浮き はく離 鉄筋露出部の修復 ) 断面修復工法 13

塩害 中性化補修の基本的な考え方 1. 潜伏期 劣化の状態 外観上の変化は見られない 腐食発生限界塩化物イオン濃度以下 ( 塩害の場合 ) 中性化残りが発錆限界以上 ( 中性化の場合 ) まだ鉄筋腐食環境には陥っていない 補修工法の主たる要求性能 塩化物イオンを侵入させない ( 塩害の場合 ) 二酸化炭素を侵入させない ( 中性化の場合 ) 鉄筋の腐食環境をつくらない この段階で何らかの対策を実施するのが最も上流の予防保全 塩化物イオン量 (kg/m3) 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 20 40 60 80 100 表面からの距離 (mm) 14

塩害 中性化補修の基本的な考え方 1. 潜伏期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 (1) 経過観察シナリオ しばらく様子を見る 劣化予測にて腐食発生限界を超えるまでの期間に余裕がある場合 点検強化 モニタリングによる継続的な状況把握が必須 (2) 要求性能を満たす表面保護工を定期的に行うシナリオ 劣化因子を遮断して鉄筋腐食環境を作らないための予防保全 適用する材料には耐用年数があるため 定期的に再補修を行う 劣化因子遮断性を途切れさせない 軽微な処置を繰り返すことで塩害劣化させない 15

塩害 中性化の補修 潜伏期で何を考える? 1 経過観察を選択した場合 変状が表れなければ補修費はゼロで済むしかし 変状が表れた時には既に加速期前期まで進行している 次の補修費はひび割れ注入 部分断面修復 表面保護を要する 2 予防保全的に表面含浸工を選択した場合 塩化物イオン 二酸化炭素がこれ以上侵入しない限り 変状は生じない劣化因子遮断性の維持のために表面含浸工を定期的に実施する 劣化グレードを進展期へ移行させない ( 変状を生じさせない ) 経過観察の段階で潜伏期から進展期への移行を捉えることは容易ではないが 簡易かつ微破壊の点検技術等を活用して 補修を実施すべき時期を判断 進展期に移行する前に予防保全として表面含浸工法を行うことで健康寿命を延ばす 16

表面含浸工法 目的 : 劣化因子の侵入抑制 シラン系含浸材 撥水効果付与 けい酸塩系含浸材 コンクリートの緻密化 技術資料 P.7 ハケ, ローラーにより塗布する 含浸深さは数 mm~ 数十 mm で, 使用材料によって異なる 外観を変えないためモニタリング性に優れる 17

参考 : 表面含浸工法 けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針 ( 案 ) P.27 より抜粋 本指針 ( 案 ) では けい酸塩系表面含浸工法が単独で適用できる範囲を 劣化過程が潜伏期までにある構造物を原則とした 18

参考 : 表面含浸工法 種別特長備考 シラン系 疎水性のアルキル基によりコンクリー 環境によっては中性化を促ト表層部に吸水防止層 ( 撥水層 ) を形成 進することもある 細孔を埋めないため呼吸性を損なわ 滞水する部位では適用困ない 難 けい酸塩系 反応型けい酸塩系 固化型けい酸塩系 けい酸ナトリウム系 けい酸カリウム系 水酸化カルシウムと反応し C-S-H ゲルを生成して空隙を充填する 水分供給により再度溶解 けい酸リチウム系 材料自体の乾燥固化により空隙を充填する 固化物は難溶性 微細ひび割れを閉塞 中性化が進行した領域ではカルシウム分が減少しており 反応困難 微細ひび割れを閉塞 表面硬度の向上 劣化因子遮断性はやや低い 19

塩害 中性化補修の基本的な考え方 2. 進展期 劣化の状態 外観上の変化は見られない 腐食発生限界塩化物イオン濃度以上 ( 塩害の場合 ) 中性化残りが発錆限界未満 ( 中性化の場合 ) 不動態皮膜の破壊 鉄筋腐食が開始 補修工法の主たる要求性能 塩化物イオン 二酸化炭素 水 酸素をこれ以上侵入させない 鉄筋腐食の進行速度を抑制する 鉄筋腐食を遅らせ 変状をできるだけ顕在化させない まだ変状が生じる前なので予防保全の範疇 塩化物イオン量 (kg/m3) 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 0 20 40 60 80 100 表面からの距離 (mm) 20

塩害 中性化補修の基本的な考え方 2. 進展期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 (1) 経過観察シナリオ 現時点で何ら変状が生じていないので しばらく様子を見る ただし鉄筋は腐食環境にあるため 将来的には変状が顕在化することを想定 それほど長くは放置できない (2) 要求性能を満たす表面保護工を定期的に行うシナリオ 劣化因子を遮断して鉄筋腐食進行を遅らせる 適用する材料には耐用年数があるため 定期的に再補修を行う 既に塩化物イオン濃度は腐食発生限界を超えているため 鉄筋腐食抑制効果を併せ持つ材料 工法を選択するのも効果的 21

塩害 中性化の補修 健康寿命を延ばすために進展期で何を考える? 1 経過観察を選択した場合 変状が表れなければ補修費ゼロで済むしかし 変状が表れた時には既に加速期前期まで進行している進展期であれば 加速期前期はもう目前かもしれない 次の補修費はひび割れ注入 部分断面修復 表面保護を要する 2 予防保全的に表面含浸工を選択した場合 塩化物イオン 二酸化炭素だけでなく 水 酸素の遮断が必要条件さらに鉄筋腐食抑制効果も考慮すべき劣化因子遮断性の維持のために表面含浸工を定期的に実施する 劣化グレードを加速期前期へ移行させない ( 変状を生じさせない ) 既に進展期であれば 変状が顕在化するまでの時間的猶予が少ない 健康寿命を延ばすためには 予防保全として表面含浸工法( 鉄筋腐食抑制型 ) を行うべき 22

参考 : 付加価値のある表面含浸工法の例 種別特長備考 鉄筋腐食抑制タイプ含浸系表面保護材 コンクリート表面に塗布するだけで深く浸透し 塩化物イオンの侵入を阻止する吸水防止層を形成 さらに 鉄筋のまわりに不動態皮膜にかわる保護層を形成し腐食を抑制 劣化因子遮断 + 鉄筋腐食抑制 亜硝酸リチウム併用型表面含浸材 1 層目の亜硝酸リチウム系含浸材により鉄筋不動態皮膜を再生して鉄筋腐食を抑制 2 層目のけい酸塩系含浸材が表面で乾燥固化し 劣化因子を遮断 塩化物イオン濃度に応じて亜硝酸リチウム塗布量を設定 劣化因子遮断 + 鉄筋腐食抑制 23

塩害 中性化補修の基本的な考え方 3. 加速期前期 劣化の状態 腐食ひび割れや浮きが発生 錆汁が見られることもある 既に鉄筋腐食が進行している ひび割れ 補修工法の主たる要求性能 塩化物イオン 二酸化炭素 水 酸素をこれ以上侵入させない 鉄筋腐食の進行を抑制する これ以上の変状の増大を防ぐ 既にひび割れ等が発生しているため ここからは事後保全 塩化物イオン量 (kg/m3) 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 0 20 40 60 80 100 表面からの距離 (mm) 24

塩害 中性化補修の基本的な考え方 3. 加速期前期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 (1) ひび割れ注入 表面保護 部分断面修復など最小限の補修を定期的に行うシナリオ 劣化因子を遮断して劣化の進行速度を遅らせる これらの対策では再劣化する可能性がある 外観変状がまだ比較的軽微な段階では本シナリオが LCC でも有利となることが多い 補修のイニシャルコストを最小とし 必要に応じて再補修を繰り返すという選択各工法に鉄筋腐食抑制効果を併せ持つ材料を選択するのも効果的 (2) 鉄筋腐食を根本的に抑制し 将来的な再劣化を許容しないシナリオ 電気防食工法 ( 鉄筋腐食を根本的に抑制 ) 亜硝酸リチウム内部圧入工法 ( 鉄筋腐食を根本的に抑制 ) 全断面修復 ( 塩化物イオンを含むコンクリートを完全に除去 ) これらの工法を適用すれば 再劣化のリスクを限りなく低減できる構造物の重要性や費用対効果を十分に検討したうえで適用 25

塩害 中性化の補修 健康寿命を延ばすために加速期前期で何を考える? 1 ひび割れ注入 部分断面修復 表面保護などの必要最低限の補修を選択した場合 補修後に再劣化しなければ 再補修費ゼロで済むしかし 再劣化が生じた場合には速やかに再補修設計 施工を要する再劣化までの期間 ( 補修耐用年数 ) の推定は非常に困難 再補修を繰り返すうちに劣化グレードは加速期後期へ移行する可能性あり 2 電気防食 亜硝酸リチウム内部圧入などの根本的な補修を選択した場合 補修後には基本的に再劣化しないため 再補修費ゼロ ( ただし 電気防食工法の場合はランニングコストを計上 ) 再劣化しないため 劣化グレードを加速期後期へ移行させない 健康寿命を延ばすためには 1の場合 許容される性能低下の下限値を下回らないように維持管理計画を構築 2の場合 健康寿命は延ばせるが費用対効果の見極めが重要 26

表面被覆工法 技術資料 P.7 コンクリート表面を有機系, 無機系などの材料にて被覆することにより, コンクリート表面からの劣化因子の侵入を防ぐ 仕様, グレードなど, 被覆材の種類が豊富 ハケ, コテ, ローラーにより塗布する 劣化因子の遮断性は表面含浸工よりも優れる モニタリング性は表面含浸工よりも劣る 27

ひび割れ注入工法 技術資料 P.8 ひび割れを閉塞することにより ひび割れを通じた劣化因子の侵入を遮断する セメント系, ポリマーセメント系, 樹脂系などの種類がある 適用可能なひび割れ幅 0.2mm~10.0mm 程度 ひび割れ注入工とひび割れ充填工 ひび割れ幅が大きいものには経済性の理由によりひび割れ充填工法 (U カット ) を適用する場合もある しかし 鉄筋腐食抑制の観点からはひび割れ充填工法よりもひび割れ注入工法の方が抑制効果が高いと考えられる 劣化要因に応じた工法選定を行うことが重要 28

断面修復工法 ( 部分断面修復 ) 鉄筋腐食によるコンクリートの浮き, はく離, 鉄筋露出が発生した箇所を部分的にはつり取り, 断面修復材 ( ポリマーセメントモルタル ) にて埋め戻す 施工規模は比較的小規模となりやすいため 左官工法で施工することが多い はつりとった範囲からは塩化物イオンが除去されている ( 限定的 ) 境界面付近にマクロセル腐食を生じる可能性もある 部分断面修復と全断面修復 浮き はく離 鉄筋露出など コンクリート脆弱部のみを抽出して 最小限の範囲のみハツリとり 断面を修復する工法を部分断面修復と称す 初期補修費用は最小となるが 断面修復範囲外にも塩化物イオンが侵入していれば 将来的に新たな浮き はく離が発生する可能性が残る 29

参考 : 再劣化までの期間推定の難しさ よくある質問 この補修工法を適用した場合 何年もちますか? 補修工法の耐用年数とは? 補修後の構造物に再補修を行う必要が生じるまでの期間 再補修が必要となる場面とは? 1 純粋に補修材料の寿命が尽きた時 ( 耐候性試験等で確認可能な場合もある ) 2 補修後に劣化が進行し 補修材表面に著しい変状が生じた時 ( 劣化の進行速度 程度によって期間が異なる ) 塩害やASRの場合には? 主に上記の2によって再補修が必要となることが多いそしてそれは1よりも短期間となることが多い全ての構造物の置かれている環境条件等によって異なるため 一概に言えない 30

塩害 中性化補修の基本的な考え方 4. 加速期後期 劣化の状態 ひび割れ本数 幅 長さの増大 コンクリートの浮き はく離 はく落が見られる 鉄筋腐食が著しく進行し その速度が最大 補修工法の主たる要求性能 鉄筋腐食の進行を根本的に抑制する 鉄筋腐食を抑制し 確実に構造物の性能低下を防ぐ 典型的な事後保全 31

塩害 中性化補修の基本的な考え方 4. 加速期後期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 (1) ひび割れ注入 表面保護 部分断面修復など最小限の補修を定期的に行うシナリオ 劣化因子を遮断して劣化の進行速度を遅らせる これらの対策では早期に再劣化することを覚悟 外観変状が甚大な段階では LCC で劣ることもある 残存供用年数が少ない場合などでは適用されることもある再劣化と再補修を繰り返すたびに 保有性能は低下し続けることを認識 (2) 鉄筋腐食を根本的に抑制し 将来的な再劣化を許容しないシナリオ 電気防食工法 ( 鉄筋腐食を根本的に抑制 ) 亜硝酸リチウム内部圧入工法 ( 鉄筋腐食を根本的に抑制 ) 全断面修復 ( 塩化物イオンを含むコンクリートを完全に除去 ) これらの工法を適用すれば 再劣化のリスクを限りなく低減できるイニシャルコストでは高価となるが LCC では優れる場合が多い 32

塩害 中性化の補修 健康寿命を延ばすために加速期後期で何を考える? 1 ひび割れ注入 部分断面修復 表面保護などの必要最低限の補修を選択した場合 補修後に再劣化しなければ 再補修費ゼロだが その可能性は低い再劣化が生じた場合には速やかに再補修設計 施工を要する 再補修を繰り返すうちに劣化グレードは劣化期へ移行する可能性があるそれは絶対に避けなければならない 2 電気防食 亜硝酸リチウム内部圧入などの根本的な補修を選択した場合 補修後には基本的に再劣化しないため 再補修費ゼロ ( ただし 電気防食工法の場合はランニングコストを計上 ) 再劣化しないため 劣化グレードを加速期後期へ移行させない 健康寿命を延ばすためには 1の場合 性能低下の下限値を下回らないように維持管理することが可能か否か 2は健康寿命を尽きさせないための最後の砦 33

電気防食工法 技術資料 P.11 通電期間 : 供用期間中電流密度 :1~3 ma/m 2 コンクリート表面に陽極材を設置する コンクリート中の鋼材を陰極として直流電流 ( 防食電流 ) を流す この防食電流が流れている期間は鋼材の腐食が進行しない 34

亜硝酸リチウム内部圧入工法 技術資料 P.48 1 コンクリートに φ10mm L=100mm 程度の削孔を 500mm の間隔で行う 2 カプセル式加圧装置にて浸透拡散型亜硝酸リチウムを部材表層部に内部圧入する 3 削孔箇所を充填材にて埋め戻す 不働態皮膜を早急かつ確実に再生する 亜硝酸イオンによる鉄筋腐食抑制効果のみを目的とした工法 35

断面修復工法 ( 全断面修復 ) 鉄筋位置での塩化物イオン濃度が腐食発生限界を超えている場合に かぶり範囲のコンクリートを全てはつり取り, 断面修復材にて埋め戻すことで 鉄筋と塩化物イオンとの縁を完全に断つことができる 劣化因子の除去 という要求性能を満たすための断面修復工法はこの全断面修復工法を指し 以後の鉄筋腐食進行を確実に抑制することができる 施工規模が比較的大きくなりやすいため 吹付け工法にて施工することが多い 部分断面修復と全断面修復 浮きやはく離の有無に関わらず 全断面をハツリとって全断面を修復する工法を全断面修復と称す 初期補修費用は大きくなるが 以後の再劣化のリスクは低い 36

塩害 中性化補修の基本的な考え方 5. 劣化期 劣化の状態 大規模なはく離 はく落 鉄筋の著しい断面減少 変位 たわみの発生 耐久性能だけでなく耐荷性能も低下 補修工法の主たる要求性能 耐荷性 剛性の回復 構造物の安全性を確保 補修だけでなく 補強まで必要となるまた 供用制限 架け替えなども検討 37

塩害 中性化補修の基本的な考え方 5. 劣化期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 構造物の安全性が損なわれている場合 維持管理シナリオを選択する余裕はない 工学的に必要と判断される対策を速やかに採るべき 38

3.ASR 補修の基本的な考え方 39

アルカリシリカ反応 (ASR) 劣化メカニズム 技術資料 P.26 原 因 コンクリート中は高アルカリ環境である コンクリート構造物は雨水や地下水などにより水分を供給されやすい コンクリートの骨材として反応性骨材が使用された 劣化進行 コンクリート中の反応性骨材が, アルカリ分と反応してアルカリシリカゲルを生成 アルカリシリカゲルの吸水膨張により, コンクリートにひび割れが生じる 性能低下 ひび割れ進展 白色ゲル析出 段差 異常変形など 圧縮強度 静弾性係数の低下 鉄筋腐食 鉄筋破断など 40

技術資料 P.26 アルカリシリカ反応(ASR) アルカリシリカゲルの模式図 第 1 ステージ アルカリシリカゲルの生成 第 2 ステージ アルカリシリカゲルの膨張 Na +,K + Na +,K + 水 水 概念図 反応性骨材 Si Na +,K + Na +,K + アルカリシリカゲル 水 反応性骨材 Si アルカリシリカゲル 水 反応式 nsio 2 + 2NaOH ( シリカ鉱物 ) ( アルカリ ) Na 2 O nsio 2 + H 2 O ( アルカリシリカゲル ) Na 2 O nsio 2 + mh 2 O ( アルカリシリカゲル ) ( 水 ) Na 2 O nsio 2 mh 2 O ( 吸水膨張!) 41

アルカリシリカ反応 (ASR) 劣化事例 技術資料 P.27 42

アルカリシリカ反応 (ASR) 劣化過程 技術資料 P.29 各劣化過程では何が起こっているのか? 次の劣化過程に進行させないためには何をすればよいのか? 43

技術資料 P.30 アルカリシリカ反応(ASR) 一般的な補修工法と要求性能 1 劣化因子の遮断 ( 外部からの水分の浸入を低減 ) 表面被覆工法 表面含浸工法 ひび割れ注入工法 2 ゲルの非膨張化 ( アルカリシリカゲルの膨張性を消失 低減 ) ASR 抑制剤 ( 亜硝酸リチウム ) の活用 3 コンクリートの膨張拘束 ( 外部拘束により ASR 膨張を物理的に抑制 ) 部材接着工法 巻立て工法 構造形式 対象部位によっては適用できる場合がある 44

ASR 補修の基本的な考え方 2. 進展期 膨張率 (%) 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 0 20 40 60 80 100 120 促進期間 ( 日 ) 膨張率 (%) 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 0 20 40 60 80 100 120 促進期間 ( 日 ) 劣化の状態 ASR ゲルの膨張が継続的に進行している コンクリート表面にひび割れが発生 ゲル生成過程から膨張過程へと移行 補修工法の主たる要求性能 残存膨張性が有害の場合 水分をコンクリート内部へ侵入させない ( 劣化因子の遮断 ) ASR ゲルの膨張性を消失 低減させる ( ゲルの非膨張化 ) 45

ASR 補修の基本的な考え方 2. 進展期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 ( 残存膨張性が有害の場合 ) (1) 経過観察シナリオ 変状が軽微な段階で耐久性能への影響が小さいうちはしばらく様子を見る 定期的な点検 外観目視調査による継続的な状況把握 補修対策を実施するための管理限界の設定が必要 (2) ひび割れ注入工 表面保護工など最小限の補修を定期的に行うシナリオ ASR 膨張が進行中であるため これらの対策では再劣化する可能性を考慮 補修のイニシャルコストを最小とし 必要に応じて再補修を繰り返すという選択 各工法にゲル膨張抑制効果を併せ持つ材料を選択するのも効果的 46

ASR の補修 健康寿命を延ばすために進展期で何を考える? 1 ひび割れ注入 表面保護などの必要最低限の補修を選択した場合 補修後に再劣化しなければ 再補修費ゼロで済むただし 再劣化が生じた場合には速やかに再補修設計 施工を要する 再補修を繰り返すうちに劣化グレードは加速期へ移行する可能性あり 2 亜硝酸リチウム内部圧入 膨張拘束などによる根本的な補修を選択した場合 補修後には基本的に再劣化しないため 再補修費ゼロ 再劣化しないため 劣化グレードを加速期へ移行させない 健康寿命を延ばすためには 1 の場合 許容される性能低下の下限値を下回らないように維持管理計画を構築 2 の場合 健康寿命は延ばせるが費用対効果の見極めが重要 47

ASR 補修の基本的な考え方 3. 加速期 膨張率 (%) 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 0 20 40 60 80 100 120 促進期間 ( 日 ) 膨張率 (%) 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 0 20 40 60 80 100 120 促進期間 ( 日 ) 劣化の状態 ASR による膨張速度が最大を示す ひび割れ幅 ひび割れ密度が増大 最も活発に ASR 膨張が進行 補修工法の主たる要求性能 残存膨張性が有害の場合 水分をコンクリート内部へ侵入させない ( 劣化因子の遮断 ) ASR ゲルの膨張性を消失 低減させる ( ゲルの非膨張化 ) 48

ASR 補修の基本的な考え方 3. 加速期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 ( 残存膨張性が有害の場合 ) (1) ひび割れ注入工 表面保護工など最小限の補修を定期的に行うシナリオ ASR 膨張性が顕著であるため これらの対策では早期に再劣化する可能性を考慮 外観変状が甚大な段階では LCC で劣ることもある 残存供用年数が少ない場合などでは適用されることもある再劣化と再補修を繰り返すたびに 保有性能は低下し続けることを認識 (2)ASR 膨張を根本的に抑制することで 将来的な再劣化を許容しないシナリオ 亜硝酸リチウム内部圧入工 ( ゲルの非膨張化による根本的な ASR 補修 ) 巻き立て工法 接着工法 ( 膨張拘束 ) これらの工法を適用すれば 再劣化のリスクを限りなく低減できるイニシャルコストでは高価となるが LCC では優れる場合が多い 49

ASR の補修 健康寿命を延ばすために加速期で何を考える? 1 ひび割れ注入 表面保護などの必要最低限の補修を選択した場合 補修後に再劣化しなければ 再補修費ゼロだが その可能性は低い再劣化が生じた場合には速やかに再補修設計 施工を要する 再補修を繰り返すうちに劣化グレードは劣化期へ移行する可能性ありそれは絶対に避けなければならない 2 亜硝酸リチウム内部圧入 打ち替えなどによる根本的な補修した場合 補修後には基本的に再劣化しないため 再補修費ゼロ再劣化しないため 劣化グレードを劣化期へ移行させない 健康寿命を延ばすためには 1 の場合 性能低下の下限値を下回らないように維持管理することが可能か否か 2 は健康寿命を尽きさせないための最後の砦 50

亜硝酸リチウム内部圧入工法 1 コンクリートに Φ20mm の削孔を行い, 圧入孔とする 2 油圧式圧入装置, 配管, パッカーを設置して, 浸透拡散型亜硝酸リチウムを部材全体に内部圧入する 3 所定の量の亜硝酸リチウムをコンクリート内部に圧入した後, 圧入孔を無収縮グラウト材にて埋め戻す リチウムイオンによる ASR 膨張抑制効果のみを目的とした工法 51

ASR 補修の基本的な考え方 4. 劣化期 膨張率 (%) 0.10 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 0 20 40 60 80 100 120 促進期間 ( 日 ) 劣化の状態 ひび割れがさらに増大 段差やズレも生じる 鉄筋腐食 鉄筋破断 コンクリート強度の低下 耐久性能だけでなく耐荷性能にも影響 補修工法の主たる要求性能 鉄筋破断への対応 コンクリート強度低下への対応 構造物の安全性を確保 52

ASR 補修の基本的な考え方 4. 劣化期 維持管理シナリオに応じた補修工法の選定 構造物の安全性が損なわれている場合 維持管理シナリオを選択する余裕はない 工学的に必要と判断される対策を速やかに採るべき 53

おわりに 補修工法の選定方法 劣化機構 ( メカニズム ) と劣化過程 ( 程度 ) に応じて補修工法を選定する なぜ劣化が生じているのか? 次の劣化過程に進行させないために何が必要か? 補修後の維持管理シナリオを考慮して補修工法を選定する 今後 どのように維持管理していくつもりなのか? 適切な維持管理にて構造物の健康寿命を延ばす 54

ご清聴ありがとうございました END 55