栄養生理学 生殖器系の解剖と生理 参考書 : 山本ら第 23~25 章 Mader 第 16 章 第 18 章
この講義で身に付けること 生殖器系の性別による解剖の違いについて理解する ホルモンが生殖器系に与える影響を理解する 外胚葉 中胚葉 内胚葉から作られる臓器を理解する 胎児の循環器系を理解する 発育 発達のメカニズムを学ぶ
生物の存在の意義 生物の存在意義は種を存続させること 生殖器系 = 種を存続させるための器官 ヒトは哺乳類 体内で一定まで発育させ 出産後は乳で育てる http://breakthroughtogod.files.wordpress.com/2009/05/16.jpg
生殖器系 精管陰茎 射精管前立腺 精巣 精巣上体 子宮 卵管卵巣 子宮頚部 陰核 膣 http://qigongweekly.com/wp-content/uploads/2009/10/2302_female_urogenital_system_450.jpg http://www.drstandley.com/images/male.gif
男性 : 男性と女性の生殖器系 精巣が男性の性腺 精子を産生 精巣上体で精子が成熟 貯蔵される 精液には精嚢 前立腺 尿道球腺 ( カウパー腺 ) からの分泌液が混ざっている アルカリ性 精子が長時間生存できる フルクトースを含む 精子のエネルギー源 プロスタグランジン (Prostaglandin) 子宮の収縮を促す 生理活性物質 元々前立腺由来と考えられた 約 3.5mL の精液に 4 億以上の精子
精巣上体 精巣 精細管 精子形成が行われる 中部にはミトコンドリア先体 ( ゴルジ体から形成 ) には卵子進入するための酵素 精子を産生する部位精巣には性細胞の支持と栄養補給をするセルトリ細胞がある精巣上体で成熟 貯蔵 核 先体 頭 精巣と精子の 解剖 中部 http://bio1152.nicerweb.com/locked/media/ch46/46_12testis.jpg http://www.infertilitybooks.com/onlinebooks/malpani/images/04b_sperm_cell.jpg
http://health.merrymall.net/cb16_02_shikyu.gif 卵巣は左右に一対 - 左右交互に毎月卵子を 1 個生成 ( 卵子形成 ) 女性の生殖腺 排卵された卵子を卵管に送る部位 子宮は逆洋ナシの形
性腺ホルモンの調節 視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン (FSH-RH と LH- RH Gonadotropin Releasing Hormone [GnRH]) が分泌 下垂体から性腺刺激ホルモン (FSH と LH) が分泌 性腺から性腺ホルモンが分泌 卵胞刺激ホルモン (FSH) 黄体形成ホルモン (LH) 黄体形成ホルモン (LH) 卵胞刺激ホルモン (FSH) 卵巣周期前半に分泌 卵胞発育促進卵胞発育でインヒビンが分泌 抑制エストロゲンと少量のプロゲステロン エストロゲン濃度上昇で LH サージ発生 排卵と子宮内膜発達プロゲステロンと少量のエストロゲン http://www2j.biglobe.ne.jp/~fkamiya/hb/images/f1504.jpg http://www2j.biglobe.ne.jp/~fkamiya/hb/images/f1508.jpg
男性におけるホルモン調節 性腺刺激ホルモン 卵胞刺激ホルモン (FSH) は精細管での精子の形成の促進とインヒビンの産生 黄体刺激ホルモン (LH) は ( 精細管の間質細胞である ) ランディッヒ細胞からのテストステロンの産生を促進
卵巣 月経とホルモン周期 一次卵胞 二次卵胞 胞状卵胞 成熟卵胞 ( 卵巣周期 ) 排卵 = 卵巣から胞状卵胞の卵娘細胞 ( 卵子 ) が放出されて卵管に入る過程 卵子の生存時間 ~6 から 24 時間 受精と受精卵の形成は卵管で行われる 卵子の放出後卵母細胞は黄体となる 卵巣周期には卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの影響を受ける
卵巣 月経とホルモン周期 卵胞刺激ホルモン (FSH) 卵巣周期前半に分泌 卵胞の発育を推進 成熟 インヒビン分泌 FSH 産生抑制 卵巣からエストロゲンと少量のプロゲステロン分泌 卵胞が成熟するとインヒビンを分泌 FSH 産生を抑制する 黄体形成ホルモン (LH) エストロゲン濃度の上昇によって黄体形成ホルモンの大量分泌がおきる (LH サージ ) 排卵開始 プロゲステロンと少量のエストロゲンの分泌 子宮内膜の発達
月経周期 卵巣 月経とホルモン周期 エストロゲンとプロゲステロンによる作用 28 日周期 月経期 : 卵巣ホルモンが減少し子宮内膜が剥離 血管が破裂 出血 増殖期 : エストロゲン産生量の増加 子宮内膜の肥厚 腺や血管の発達 分泌期 : プロゲステロン産生量の増加 子宮内膜が肥厚 粘液を分泌する子宮腺の発達 着床の準備を整える
卵胞期 黄体期 卵巣 月経 周期とホル モンの関係 性腺刺激ホルモン 黄体形成ホルモン 卵胞刺激ホルモン 4. 1. 卵巣ホルモン エストロゲン 2. 3. プロゲステロン 5. 子宮粘膜 月経期増殖期分泌期 体温 http://www.theholisticcare.com/cure%20diseases/images/menstrual%20cycle.jpg
卵子の構造 細胞膜 卵丘顆粒層細胞による放線冠 透明帯 卵子と合体することができる精子は 1 つだけ 1)1 つが卵子の透明体に触れる 精子の先体から酵素が放出 2) 精子が細胞膜に到達 卵子の細胞膜が脱分極 ( カルシウム ) 3) 表層顆粒からの酵素で透明帯から受精膜が形成 ( 透明帯反応 )
受精とカルシウム カルシウムは細胞内における情報伝達分子としての役割を持つ 受精の際に精子が卵子に入った部位でカルシウムチャンネルが開き 細胞内のカルシウム濃度が上昇する ( カルシウムウェーブ ) 脱分極 カルシウムウェーブと同時に受精膜が形成されることで 他の精子が卵子に侵入できなくなる http://www.mun.ca/biology/desmid/brian/biol3530/db_11/fig11_14.jpg
着床 = 胚が子宮内面に埋め込まれる現象 受精した卵子 ( 受精卵 ) が卵割すると 着床 胚と名称が変わる 受精 着床した胚の周囲からヒト絨毛性ゴナドトロピンが放出 子宮内膜の脱落が阻止 月経の停止 妊娠 子宮頚部 膣 子宮 子宮内膜の裏打ち 発達中の小胞 卵子 黄体 http://image.tutorvista.com/content/reproduction-in-animals/human-female-reproductive-organ-structure.jpeg
性分化 ( 性決定 ) のメカニズム 性の決定は受精時に行われる 男性は X と Y の性染色体ペアを持つ ( 女性では XX のペア ) 受精時に卵子がどの性染色体を持つ精子と一緒になるかで性が決定する http://www.fertilityasia.jp/images/prodmfzygotes_tcm28-551.jpg
不妊 男性 女性での理由が考えられる 男性で多い理由は精子の形成や成熟が適切に行えないこと 他には精子の輸送ができない 性機能障害がある 女性では排卵 受精 着床などのどれか一つでも適切に機能しないと不妊になる 栄養状態 健康状態も不妊の一因子 極端な痩せ 月経不順 肥満や糖尿病
30 代女性による出産率が増加 20 代女性の出産率が低下 30 代女性の出産率が増加 胎生期から卵胞細胞 ( 卵原細胞 ) を持つ (500~700 万 ) 思春期に 30-40 万個まで減少 高齢出産では卵胞細胞が高齢化 遺伝異常リスク http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/%e5%87%ba%e7%94%a3%e6%99%82%e3%81%ae%e6%af%8d%e8%a6%aa%e3%81%ae% E5%B9%B4%E9%BD%A2%E9%9A%8E%E7%B4%9A%E5%88%A5%E5%89%B2%E5%90%88%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB.jpg
人工授精 ( 体外受精 ) 1978 年 7 月 25 日世界で初めての体外受精児 ( 試験官ベビー ) がイギリスで誕生 不妊治療の手法 技術を確立した Robert Edwards ケンブリッジ大学名誉教授が 2010 年 10 月にノーベル医学生理学賞を受賞 http://blog-imgs-17.fc2.com/t/o/d/todaywatch/725.jpg http://onefootwalking.files.wordpress.com/2010/03/homunculus.jpg http://www.irishtimes.com/newspaper/breaking/images/2010/1004/262107_1.jpg?ts=1286194531
発生の過程 卵割 ( らんかつ : 細胞分裂 ) 形態形成 ( 胚の形の変化 ) 分化 ( 特殊な細胞に分かれる ) 成長 外 中 内 栄養膜 胚盤胞腔 桑実胚胞胚原腸胚 受精後 1 日に 1 回の割合で分裂 3 週目には原腸胚に
原腸胚の細胞層 外胚葉中胚葉内胚葉 表皮筋消化管 神経系真皮気管 肺 眼球結合組織肝臓 内耳血管膵臓 鼻腔 口腔などの粘膜 腎臓 歯のエナメル質生殖器膀胱 甲状腺 副甲状腺 胸腺 Mader, p365
形態形成 発生は次の方向性を持っている 頭尾 : 頭から下に向かって発育 近遠 : 中心線から外に向かって発育 背腹 : 背中から前面に向かって発育 形態形成 : 組織や器官 生物の特徴的形態が作られる現象 原腸の形成後にそれぞれの組織や器官が遺伝的な情報に基づいて作られる 形態形成に関与する糖たんぱく質 カドヘリン 同種のカドヘリン同士が結合することで組織や器官が形成される
発育期間の名称 発育期間おおよその年齢 出生前期 0-280 日 卵子 0-14 日 胚子 14 日 -9 週間 胎児 9 週間 - 誕生 誕生 約 280 日 新生児 誕生後 4 週間 乳児期 最初の1 年 Hills の資料から http://www.torikyo.ed.jp/rika/seisyoku/a-b44.jpg
胚 胎児の周囲の膜 胚の周囲には栄養膜が取り囲んでいる 絨毛膜 羊膜 卵黄嚢 尿膜 胎膜 絨毛膜は胎盤 卵黄嚢 尿膜は臍帯 羊膜は羊水を作り 胎児の体を物理的 化学的な衝撃から保護する 先天異常の検査 http://www.reshealth.org/images/greystone/em_0259.gif
胎盤 胚が着床したあと 栄養膜は絨毛膜となる 母体側の血管腔と交通する 絨毛間腔が母体の血液で満たされる 物質交換が始まる 血液が混ざることは無い ( プラセンタルバリア ) http://www.happylife-support.com/file/11/taiban.jpg
胎児の循環器系 胎児の循環器系は成人とは別物 上大静脈 動脈管 胎盤は呼吸器 消化器 泌尿器の役割を兼務している 胎児特有 : 臍静脈 静脈管 卵円孔 動脈管 臍動脈 多くは混合血 卵円孔右心房下大静脈門脈臍静脈臍 左心房 胎盤 臍動脈 下行大静脈 http://a248.e.akamai.net/7/248/430/20080327144026/www.mercksource.com/ppdocs/us/common/dorlands/dorland/images/circulation_fetal%20c.(1).jpg
妊娠期の栄養 母体の変化と胎児の発育を考慮した栄養摂取が必要 妊娠初期 中期 末期と 3 分割して必要量を考える 低エネルギーは胎児の生活習慣病発症リスクを高める タンパク質やミネラル (K Mg 鉄 亜鉛 ヨウ素 セレン ) ビタミン (A B D 葉酸など ) それぞれの付加量を把握する 2015 年栄養摂取基準を参照
低出生体重児 の出生率は 国際的にも高い OECD による 2013 年統計データでは 9.6% と平均の 6.8% を大幅に超えている 日本では 1975 年から増加傾向 OECD Health Statistics 2013
低出生体重児は臓器の発達が未熟 腎糸球体数 /0.6mm 2 腎糸球体体積 μ 3 x 10 6 出生体重 (g) 出生体重 (g) Manalich et al. 2000 糸球体の数が少ないと一つ一つにかかる負荷が増加 体積が増加 ネフロンの数が減少すると高血圧のリスクが増加すると考えられる
妊娠期の生活習慣 母体の生活習慣 ( 外的因子 ) によって胎児に奇形が現れるリスクが高まる 催奇形 催奇形因子 アルコール 喫煙 薬物 農薬 放射線 ストレス 最も危険な時期 胚子期 ( 細胞分裂 分化が最も活発 ) 無脳症は妊娠 23-26 日の間の葉酸摂取が重要 http://www.jsoms.or.jp/public/kouku_geka/img/017_1.jpg http://www.news-medical.net/image.axd?picture=spina_bifida-web.jpg
妊産婦のための 食生活指針 2006 年 2 月に食事バランスガイドラインをベースに作成された 体重増加に制限をかけていない ( 現在の体重を考慮している ) http://www.mhlw.go.jp/ho udou/2006/02/h0201-3a.html#top
胎生期の栄養状態と誕生後の過剰なたんぱく質摂取は急激な体重増加に繋がる たんぱく質 早い発育 脂肪細胞化活動 Koletzko, Nestle Nutrition, 2006; Koletzko et al. AJCN, 2009
妊娠期から 2 歳までの適切な栄養の供給の重要性についての啓蒙活動が開始
授乳が知能に良い影響を与える 完全授乳の推進 授乳期間が長いと肥満リスクが低下 Anderson et al. Am J Clin Nutr. 1999 http://www.babble.com/cs/blogs/strollerderby/2009/04/breastisbestor.jpg V Kries et al. BMJ, 1999
完全授乳の推進 http://www.who.int/nutrition/publications/infantfeeding/9241541601/en/ http://s0.thejournal.ie/media/2012/05/time-mag1-310x415.jpg http://www.hannahdo.com/wp-content/uploads/2013/05/screen-shot- 2013-05-19-at-1.05.36-AM.png
スキャモンの成長曲線 免疫 リンパ系 脳 神経系 運動 消化器系など 生殖器系 Scammon (1930)
ヒトは発育に伴い プロポーションが変化する 一年目で体重が約 3 倍に増加 脂肪細胞は 6 歳までは細胞数が増加 その後は肥大が進む
発育の性差 緩やかな発育 年間の発育度は 5~6cm 体重は年間 2.5~3kg 女子 男子 Prof. Dr James Mourilyan Tanner 1 August 1920 11 August 2010 小児内分泌学者 Tanner Scale の開発者
食事内容と 発育のタイミングの 変化 Murata, 2011 最大発育速度が約 2 年前早く見られる http://www.coverbrowser.com/image/time/4057-1.jpg Kagawa and Hills, 2011
Rate of increment (cm/decade) 戦争の影響は思春期ほど大きい 8.0 6.0 女子 4.0 2.0 0.0-2.0-4.0 1900-1920/decade 1920-1940/decade 1940-1950/decade 1950-1960/decade 1960-2000/decade -6.0-8.0 6-7yo 7-8yo 8-9yo 9-10yo 10-11yo 11-12yo 12-13yo 13-14yo 14-15yo 15-16yo 16-17yo Age (years) Kagawa et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2011
未成年のセックス頻度と人工中絶の推移 http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2248.html http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2460.html
子宮頸がんの発症率推移 http://www.ohkubohospital.jp/shinryouka/what_img_02.gif
子宮頸がん罹患率 http://www.shikyu-keigan.com/images/cervical-cancer/img_glaph.gif
国別子宮頸がんの検診受信率 http://www.aigedison.co.jp/mytiara/study/situation.html
子宮頸がん予防 https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_e5b/aoisekai/gardasil20poster202.jpg http://www.asahi-net.or.jp/~cd3a-kmr/pict5/keigan.jpg
乳がんと子宮がんの検診受診率 http://sbs-smc.jp/special/images/b_hyou02.gif
前立腺がんの罹患率 http://www.taiho.co.jp/sign/prostate/index.html