急患対応において 比較的頻度の高い卵巣出血や卵巣腫瘍の茎捻転などと考えられる状態の中にも 本症例のような術前診断と異なる疾患もあることを念頭において診療にあたる必要があると考えられる 4. 尿管周囲への進展がみられた深部内膜症の 1 例社会医療法人恵愛会大分中村病院産婦人科 産業医科大学産婦人科 〇

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含む ) 周産期 生殖 内分泌 女性のヘルスケアの4 領域を万遍なく研修することが可能となる 産婦人科専攻医の研修の順序 期間等については 個々の専攻医の希望と研修進捗状況 各施設の状況 地域の医療体制を勘案して 産婦人科研修プログラム管理委員会が決定する B. 産婦人科研修プログラムの具体例 専門

1) 専門研修基幹施設 藤田保健衛生大学病院 ( 総合型研修病院 ) 指導責任者 藤井多久磨 良性から悪性までの全ての婦人科疾患 母体 胎児救命を含む全ての周産期疾患 腹 腔鏡から体外受精まであらゆる生殖内分泌疾患 女性ヘルスケアなど非常に豊富な症 例をそれぞれの専門家による指導にて研修することがで

B. 自治医科大学専門研修プログラムの具体例 産婦人科研修プログラムは 自治医科大学附属病院の 4 年間の後期研修プログラムにおける専門コースの一部ではじめの 3 年間が本プログラムに相当する 専攻医は3 年間で修了要件を満たし ほとんどは専門医たる技能を修得したと認定されると見込まれる 修了要件を

特別講演 TLH での前方アプローチ 子宮動脈結紮は必須か 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 林茂徳 現在多くの医師が TLH を行うにあたりまず試みるのが倉敷流の前方アプローチからの子宮動脈結紮を最初に行う方法と思われる しかしながら多くの医師がこのステップを上手く行うことができず 結局子宮動脈

福島赤十字病院産婦人科における内視鏡下手術

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

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子宮頸がん 1. 子宮頸がんについて 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんです ( 図 1) 約 80% は扁平上皮がんであり 残りは腺がんですが 腺がんは扁平上皮がんよりも予後が悪いといわれています 図 1 子宮頸がんの発生部位 ヒトパピローマウイルス (HPV) 感染は子宮頸がんのリスク因子です

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第39回神奈川産婦人科内視鏡研究会抄録集

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

新入職医師のご紹介 2017 年 10 月より新たに常勤医 1 名が加わり 診療体制が充実しました 川崎幸病院婦人科飯田玲 認定資格等 日本産科婦人科学会専門医 平素より大変お世話になっております 本年 10 月より川崎幸病院婦人科で勤務しております 専門分野は婦人科良性疾患の手術 特に骨盤臓器脱手

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

その最初の日と最後の日を記入して下さい なお 他の施設で上記人工授精を施行し妊娠した方で 自施設で超音波断層法を用いて 妊娠週日を算出した場合は (1) の方法に準じて懐胎時期を推定して下さい (3)(1) にも (2) にも当てはまらない場合 1 会員各自が適切と考えられる方法を用いて各自の裁量の

研修計画

演題 1 腹腔鏡下子宮筋腫核出術 1 カ月後に腹腔内大量出血をきたした 1 例 所属 メディカルパーク湘南産婦人科 演者 上地栄里奈 共同演者 中山洋 田村俊男 田中雄大 抄録 症例 38 歳 女性 2 年前より指摘されていた子宮筋腫が 5cm 大まで増大し 過多月経も認めたため 手術の方針となった

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妊娠分娩と産褥期の管理 ならびに新生児の医療に必要な基礎知識とともに 育児に必要 な母性とその育成を学ぶ また妊産褥婦に対する投薬の問題 治療や検査をする上での制限な どについての特殊性を理解することはすべての医師に必要不可欠である 2. 行動目標 (SBO: Specific Behavior O

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子宮・卵巣

多量の性器出血があったとき 装着後数ヵ月以降に月経時期以外の 発熱をともなう下腹部痛があったとき 性交時にパートナーが子宮口の除去糸に触れ 陰茎痛を訴えたとき 脱出やずれが疑われる * 症状があるとき ( 出血や下腹部の痛み 腰痛の症状が続くなど ) * ご自身で腟内の除去糸を確認して脱出の有無を確

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U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

骨盤臓器脱の診断と治療 産業医科大学若松病院産婦人科 吉村 和晃

1. 重篤な不正出血の発現状況 ( 患者背景 ) (1) 患者背景 ( 子宮腺筋症 子宮筋腫合併例の割合 ) 重篤な不正出血発現例の多くは子宮腺筋症を合併する症例でした 重篤な不正出血を発現した 54 例中 48 例 (88.9%) は 子宮腺筋症を合併する症例でした また 子宮腺筋症 子宮筋腫のい

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網田, 五十嵐, 松川, 鈴木, 渡邉, 山谷, 永瀬 図 1. 腹腔鏡手術時の右卵管所見 A. 右卵管峡部 2 か所に腫瘤を認める ( 矢印 ) B. 腫瘤部位の卵管漿膜下にバソプレシン (0.1 単位 /ml) を局所注射した後に線状切開を加えた ( 矢印 ) 図 2. 卵管線上切開右卵管峡部の

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

妊よう性とは 妊よう性とは 妊娠する力 のことを意味します がん治療の影響によって妊よう性が失われたり 低下することがあります 妊よう性を残す方法として 生殖補助医療を用いた妊よう性温存方法があります 目次 はじめにがん治療と妊よう性温存治療抗がん剤治療に伴う卵巣機能低下について妊娠の可能性を残す方

日本産科婦人科学会雑誌第66巻第6号

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

リプロダクション部門について

柴田, 鈴木, 木村 図 1. 腹部 CT 検査所見 : 骨盤内の右側に境界明瞭 単房性で石灰化を伴う 50mm 大の腫瘤を認めた ( 矢印 ) 図 2. 腹部 MRI 検査所見 a) 骨盤内右側に境界明瞭 単房性 T1 強調像で低信号の 50mm 大の嚢胞性腫瘤を認めた ( 矢印 ) b)t2 強

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実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

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ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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婦人科がんの手術療法

Ⅰ. 女性性器の超音波検査 一般目標子宮 卵巣 卵管 腟 外陰の超音波検査における基本事項と正常および病的状態の超音波所見を理解し, 診断および治療に結び付けることができる. 解剖 生理 [ 子宮 ] (a-1) 経腹走査による子宮の超音波像を説明できる. (c-2) 経腟走査による子宮の超音波像を

これらの検査は 月経周期の中で下記のような時期に行われます ( いつでも検査できるわけではありません ) 図中のグラフは基礎体温の変動を示し 印は月経を示します 月経周期における検査の時期 高温期 低温期 月経 月経 血液検査 LH FSH E2( エストラジオール ) AMH 精液検査 排卵日 血

て それ以後は中止してください [ ショート法 ]short 法 月経 周期の1~ 3 日目 から点鼻薬 ( スプレキュア ) を開始する方法で 卵巣機能が低下 ( 卵胞発育不十分 35 歳 ~) の場合にこの方法で行うことがあります スプレー開 始の翌日か翌々日に卵巣刺激の注射 ( hmg 製剤

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腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

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体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常

補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊

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謔」閠・錐

群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会 _ 情報公開 通知文書 人を対象とする医学系研究についての 情報公開文書 研究課題名 : がんサバイバーの出産の実際調査 はじめに近年 がん治療の進歩によりがん治療後に長期間生存できる いわゆる若年のがんサバイバーが増加しています これらのがんサバイバ

日本産科婦人科内視鏡学会雑誌Vol.28 No.2; , 2012.

凍結胚の融解と胚移植の説明書 平成 27 年 8 月改定版 治療の必要性 / 適応について受精卵 ( 胚 ) の凍結は 体外受精または顕微授精において 以下のような場合に行なわれる治療です 新鮮胚移植後に 妊娠につながる可能性のある受精卵 ( いわゆる余剰胚 ) が残っていた場合 採卵数が多い 血中

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

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第 71 回日本産科婦人科学会学術講演会 (2018, 4, 11 名古屋 ) 専攻医教育セミナー 絨毛性疾患の疫学 診断 治療 名古屋大学 新美薫

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

1 卵胞期ホルモン検査 ホルモン分泌に関して卵巣や脳が正常に機能しているかを知る目的で測定します FSH; 卵胞刺激ホルモン脳の下垂体から分泌されて 卵子を含む卵胞を成長させる作用を持ちます 低いと卵胞の成長がおきませんが 卵巣の予備能力が低下している時には反応性に高くなります LH; 黄体化ホルモ

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

AID 4 6 AID ; 4 : ; 4 : ; 44 : ; 45 : ; 46 :

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

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「腎盂尿管がんに対する手術」説明および同意書

本文/一般演題_本田

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

遠隔転移 M0: 領域リンパ節以外の転移を認めない M1: 領域リンパ節以外の転移を認める 病期 (Stage) 胃がんの治療について胃がんの治療は 病期によって異なります 胃癌治療ガイドラインによる日常診療で推奨される治療選択アルゴリズム (2014 年日本胃癌学会編 : 胃癌治療ガイドライン第

43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料

女性用問診票

Transcription:

第 14 回九州産婦人科内視鏡手術研究会抄録集 1. 腹腔鏡下捻転解除術を行った ovarian fibromatosis 茎捻転の一例国立病院機構小倉医療センター産婦人科〇河村京子近藤恵美小野結美佳藤川梨恵浦郷康平櫻木俊秀北川麻里江黒川祐介川上浩介川越秀洋牟田満大蔵尚文 Ovarian fibromatosis は卵巣間質のびまん性の線維化により卵巣が増大する 良性の類腫瘍性の疾患である 今回 若年女性に発症した ovarian fibromatosis 茎捻転を経験したため 報告する 症例は 17 歳 未妊女性 月経周期 6 日目から下腹部痛を自覚し 近医産婦人科にて卵巣腫瘍を指摘され 月経周期 15 日目に当院に紹介となった 骨盤 MRI 検査では左側卵巣が 8cm 大に浮腫状に腫大していたが明らかな腫瘤性病変は認めなかった Massive ovarian edema 茎捻転の疑いにて同日腹腔鏡下手術を施行した 左側卵巣は 8cm 大に腫大し 720 度捻転していた 表面は平滑で白色調 明らかな腫瘍性病変や壊死は認められなかった 腫大した卵巣から 2 箇所楔状切除を行い 再捻転予防のため吸収糸にて後腹膜に 3 箇所固定した 術後病理組織検査の結果 ovarian fibromatosis の診断を得た 2. 卵巣充実性腫瘍を疑い腹腔鏡下術後に polypoid endometriosis と診断した症例宮崎善仁会病院婦人科〇米田由香里和田俊朗 症例 37 歳 G0P0 強い下腹部痛で〇年〇月受診 MRI で子宮腺筋症と その右後方に 5cm 大の内膜症性嚢胞と 隣接する 6cm 大の充実性腫瘤を認めた 以後 1 年以上受診なく〇年〇月再び強い下腹部痛で受診 子宮腺筋症悪化 内膜症嚢胞は増大し 充実性腫瘤は変化なし GnRHa を投与後 2 ヶ月に腹腔鏡下手術を施行 子宮腺筋症所見 左卵巣は正常所見 右卵巣はチョコレート嚢胞を認めた それ以外に子宮後壁右側下方からポリープ状に発育する 5 6cm の充実性腫瘤あり 迅速病理で endometrioid adenofibroma の疑いで悪性所見なし 腫瘤は 切断面から右広間膜前葉方向にも発育あり腹腔鏡下に切除した 術後病理は polypoid endometriosis であった 考察 子宮内膜症で充実性腫瘤を合併している場合 当疾患の可能性も考慮する必要がある 3. 術前診断が正しくなかった緊急腹腔鏡手術の 2 症例 - 子宮表面の血管破綻と変性有茎性筋腫の茎捻転 - 医療法人社団高邦会福岡山王病院産婦人科〇吉岡愛坂田暁子福原正生木原祥子小金丸泰子新谷可伸宮原明子岡智江上りか渡邊良嗣中村元一 最近では急患に対しても腹腔鏡での対応が一般化してきているが 通常診療との同時並行で 比較的短時間での診断が求められるのが実情である 今回 術前診断が正しくなかった 2 症例を経験したので報告する 症例 1 35 歳 G0P0 急性腹症のため近医を受診し CT で卵巣出血が疑われたため当院へ救急搬送となった 右卵巣出血の術前診断で腹腔鏡手術を行ったところ 子宮後壁表面から拍動性の出血を認め 子宮腺筋症の表在性血管の破綻による出血であった 症例 2 41 歳 G3P3 左下腹部痛のため当科を受診し MRI で骨盤内を占拠する多房性の巨大嚢胞性腫瘤を認めた 左卵巣粘液性嚢腫の捻転と診断し 腹腔鏡手術を行った 子宮底部より発生した嚢胞性腫瘤を認め 病理結果から変性有茎性筋腫の茎捻転であった

急患対応において 比較的頻度の高い卵巣出血や卵巣腫瘍の茎捻転などと考えられる状態の中にも 本症例のような術前診断と異なる疾患もあることを念頭において診療にあたる必要があると考えられる 4. 尿管周囲への進展がみられた深部内膜症の 1 例社会医療法人恵愛会大分中村病院産婦人科 産業医科大学産婦人科 〇西田純一 藤澤佳代 金城泰幸 内膜症深部病変の尿管への進展は稀ではあるが その対応は困難であり慎重さも要求される 術前評価が不十分であった尿管周囲内膜症を経験したので報告する 症例は 48 歳 G3P1 で主訴は下腹痛 右卵巣チョコレート嚢腫 子宮筋腫の診断で腹腔鏡手術目的に紹介された 骨盤 MRI 検査では深部病変 水尿管の指摘はなかった 術中に右卵巣窩から尿管周囲へ進展する深部病巣が判明した 子宮摘出を先行させ その後尿管周囲病変を主に鋏鉗子を用いて切除した 内膜症根治目的に両側附属器を切除した 尿管ステントの留置は行わなかった 手術終了時には右尿管口よりインジゴカルミンのジェット状の排出を確認した 術後 10 日目には軽度の水尿管がみられ右尿管口のジェットの確認できなかった 1 ヶ月目から 2 ヶ月目にかけて軽度の右水腎症を認めた 3 ヶ月目より水腎は軽快傾向を示し 5 ヶ月目には完全に正常となった 周術期の対応等に関して考察する 5. Y 染色体成分陽性の有経モザイク型ターナー症候群の 1 例福岡大学医学部産婦人科 山口赤十字病院産婦人科 〇宮原大輔 平川豊文 伊東智宏 南星旭 勝田隆博 四元房典 伊東裕子 金森康展 城田京子 宮本新吾 ターナー症候群は Y 染色体成分を有するモザイク核型となる場合ある 今回 Y 染色体成分陽性のモザイク型ターナー症候群と診断された症例に対し 両親を含めたカウンセリングやセカンドオピニオンを行い 腹腔鏡下性腺摘除術を行った経験を報告する 症例は 14 歳 12 歳時に低身長を主訴に小児科を受診し 染色体検査 (G-band FISH) で Y 染色体成分陽性のモザイク型ターナー症候群 (46,X,add(p22.33)[13]/45,X[7],ish dic(x;y)(p22.33;p11.) と診断された 初経は 12 歳で 内分泌検査にて FSH 上昇や E2 低下はなく MRI 検査で性腺に異常は認めなかった 予防的性腺摘出術を勧めたが 両親は先に卵子凍結を希望された 遺伝専門医や生殖医療専門医から卵子凍結に伴う事を説明し卵子凍結を行う事としたが AMH の低値などから採卵が困難であるため卵子凍結を断念した 複数回のカウンセリングを行い 15 歳で腹腔鏡下性腺摘除術を行った 現在はホルモン補充療法を行っている 6. 巨大漿膜下子宮筋腫茎捻転の 1 例空の森クリニック 高山尚子神山茂町田美穂中島章石垣敬子寺田陽子徳永義光佐久本哲郎 はじめに 子宮筋腫茎捻転は比較的稀な疾患である 今回多発性の巨大子宮筋腫の一つが茎捻転し 緊急で腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術 (LAM) を行ったので報告する 症例 39 歳 未経妊 腹腔鏡手術希望で当院紹介受診 前医の MRI で 114mm の有茎性漿膜下筋腫 ( 茎 20mm) 他 多発筋腫 (107mm 65mm 49mm 等多数 ) を認めた GnRHa を 6 回使用し LAM 予定とした GnRHa 5 回投与後 強い腹痛を認め前医救急外来受診 筋腫変性痛の診断で鎮痛剤処方と安静を指示された 同日当院受診し エコーで膀胱子宮窩に及ぶ腹水を認め 筋腫茎捻転または腹腔内出血を疑い MRI 検査施行 腹腔内出血なく 漿膜下筋腫茎捻転の診断で同日緊急手術 (LAM) 施行 有茎性漿膜下筋腫が 720 度捻転しており 茎部分を結紮し筋腫を核出した 根治術は 6 回目の GnRHa 投与後 予定的に施行した

考察 筋腫の茎捻転は非常に稀だが 有茎性漿膜下筋腫を有する急性腹症の場合 筋腫の捻転を疑って診療に当たる必要があると思われた 7. 巨大子宮頸部筋腫に対して腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行した 1 例大分大学医学部附属病院産科婦人科〇佐藤新平西田正和松本治伸楢原久司 子宮頸部筋腫は 子宮動脈や尿管の解剖学的変異をきたすことが多い 子宮頸部左側に発生した子宮頸部筋腫に対して腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行した症例を経験した 29 歳 3 妊 2 産 前回妊娠時に子宮筋腫を指摘され 分娩後の MRI 検査で約 10cm の子宮筋腫を指摘された 1 年間の経過観察中に徐々に増大したため 手術目的で当科を紹介初診した GnRHa 療法 6 サイクル後の MRI 検査では子宮筋腫は 12cm と増大していた 腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行し 術中に子宮頸部左側に発生した子宮頸部筋腫と判断した 後腹膜の展開と剥離に難渋したが 筋腫茎部にバゾプレシンを注入した後 筋腫を切開 核出した 特に合併症はなく 腹腔鏡下に完全摘出することができた 筋腫は細断し 臍部から体外に摘出した 手術時間は 2 時間 40 分 出血は 50 ml 検体重量は 330 g であった 術中対応について 諸報告と比較し検討した 8. 腹腔鏡下子宮筋腫核出術における pseudo capsule と正しい層 組織学的検討を加えて 済生会長崎病院産婦人科〇平木宏一梶村慈松本加奈子藤下晃 子宮筋腫核出術では正しい層で核出することが重要であると先輩医師から教えてもらい 開腹手術から筋腫核出術の手技を学んだが その当時は何が正しい層なのか明白に理解することができなかった 手術の教科書においても 正しい層で核出する や 正しい層で核出すればほとんど出血することはない と記載されている 筋腫結節の周囲に存在し 正常筋層と境界を有する組織を pseudo capsule( 偽カプセル ) と称し その内側で核出することを推奨する報告が散見される 筋腫核出術における正しい層を理解し実践するに当たり 偽カプセルと筋腫核出の正しい層の関係を意識した筋腫核出術の手技を供覧し 偽カプセルの組織学的検討を加えて報告する 9. ノットフリー縫合デバイスを用いた腹腔鏡下子宮筋腫核出術鹿児島市医師会病院婦人科〇山﨑英樹濵地勝弘大塚博文 近年 糸結び ( ノット ) 操作を必要としないノットフリー縫合デバイスが各社から上市されており 当院では主に腹腔鏡下子宮筋腫核出術における子宮筋層縫合に用いている 子宮筋層縫合を糸結び操作を必要としない連続縫合で行うことにより 手術時間の短縮や出血量の減少が期待できる 本邦では COVIDIEN 社の V-Loc TM クロージャーデバイス ETHICON 社の STRATAFIX TM Symmetric PDS Plus および Spiral Knotless Tissue Control Device が主に用いられている 今回われわれは 3 種類のノットフリー縫合デバイスを用いた腹腔鏡下子宮筋腫核出術を経験した 本研究会ではその手術動画を供覧するとともに それぞれの特徴や使用感について若干の考察を加え報告する 10. 当院における MORSAFE 挿入の工夫おもと会大浜第一病院女性腹腔鏡センター〇高橋美奈子上地秀昭徳嶺辰彦

当院では 腹腔鏡下子宮筋腫核出術や全腹腔鏡下子宮摘出術で経腟的回収が困難な場合に In bag morcellation を行っている MORSAFE は専用のイントロデューサーにより腹腔内への挿入が容易に出来るバッグである しかし 添付文書通りにインドロデューサーに開口部を格納すると 当科のように術者が左立ちで左下腹部からバッグを挿入した場合 腹腔内で開口部が患者の右側 テールエンドが左側に位置することになり 左下腹部から開口部を出す時に捻れることがある そこで テールエンド側から腹腔内に入るように逆向きにイントロデューサーにセッティングする方法を試みた 開口部を腹腔外へ出す時に 開口部とテールエンドが交差することが無いため 捻れることがなく 操作がより容易になった 当院の MORSAFE 挿入法は腹腔内でのバッグ操作をより簡便にすることが可能で術者のストレス軽減に寄与すると思われた 11. In Bag Morcellation の限界を考えるおもと会大浜第一病院女性腹腔鏡センター〇徳嶺辰彦髙橋美奈子上地秀昭 TLM や TLH における検体回収の方法としてインバッグモルセレーションが広く用いられているが 検体が大きくバッグに収まらないこともある 一旦トライした後に入らない事が判明すると手術時間も延長し高価なバッグも無駄になってしまう そのため術前にインバッグの可否を MRI にて評価する事ができないか検討したので報告する モルセーフ (L) の添付文書によると開口部の直径は 14. 5cm であったが 測定してみると入口より下方で直径 12cm( 面積 36πcm 2 ) に狭まっていた よって MRI 画像により 摘出物が通過する最大断面と考えられる面積を測定し 36πcm 2 以下であれば入口を通過できると推測された さらに バッグを膨らました際のバッグの長径は 20cm であるが モルセレートする空間を考え限界は 15cm と考えられた そのため 36πcm 2 以上または最大長径が 15cm 以上であればインバッグ不可と予想されるため 術前に十分なインフォームドコンセントが重要と思われた 12. ポート穿刺部位の皮下出血のため輸血を要した 1 例熊本赤十字病院内科 産婦人科 古川かなみ 荒金太 村上望美 井手上隆史 三好潤也 福松之敦 腹腔鏡下手術は低侵襲である一方で 腹腔鏡下手術特有の合併症があることも知られている 今回 われわれはポート刺入部位からの術後出血のため輸血を要した症例を経験したので報告する 患者は 52 才 近医にて子宮腺筋症を follow up されていた 多量の性器出血のため前医を受診し 輸血を受け EP 合剤で止血した後 加療目的に当科へ搬送となった 翌日 緊急 TLH を行った 手術時間は 1 時間 37 分 出血量 200 ml 摘出子宮の筋層は肥厚し子宮腺筋症の所見で 重量 654g であった 術後ショック状態となり輸血を行った 術翌日左下腹部のポート刺入部背側に皮下血腫を認め徐々に拡大したため この部位の出血と判断した 手術終了時には ポートからの出血のないことは確認しているが 術中に縫合糸の挿入のため ポートを数回刺し直しており その際 血管を傷つけた可能性があるため 不要なポートの抜去 再挿入は避けるべきと思われる 13. 腹腔鏡下子宮全摘術における腟断端縫合の工夫 腟内バルーン挿入法 産業医科大学第 1 生理学教室 小倉医療センター産婦人科 〇西村和朗 藤川梨恵 小野結美佳 浦郷康平 長尾弘子 熊谷晴介 櫻木俊秀 北川麻里江 黒川裕介 近藤恵美 川上浩介 河村 徳田諭道 川越秀洋 牟田満 大蔵尚文

腹腔鏡下子宮全摘術において 子宮摘出後に腟断端を腹腔鏡下で縫合する操作は重要であり 腟内操作をする 2 助手の役割も非常に重要となる しかし一般的に使用している Vagi- パイプ 挿入では Vagi- パイプ の向きにより腟断端の内膜側が内反する場合や Vagi- パイプ の先端が邪魔をして縫合操作がスムーズにできない場合がある そこで子宮摘出後 Vagi- パイプ の代わりに 腟内にバルーン ( 子宮マニュピレータ トータル の閉塞バルーンやサービカルバルーン ) を挿入し 腟断端を縫合閉鎖する試みをしている 腟内バルーン挿入では 腟断端面が一定に保たれ 腟断端内膜側がやや外反し 縫合操作が容易になる印象がある 今回 腟内バルーン挿入における腟断端の向きと腟断端縫合について考察した Vagi- パイプ での縫合が困難な場合は 腟内バルーン挿入が効果的な可能性もあり 選択肢の一つになると考える 14. TLH における子宮搬出についての考察宮崎善仁会病院婦人科 和田俊朗米田由香里 緒言 2014 年の FDA による 子宮筋腫治療における Laparoscopic power morcellation を推奨しない という勧告が出て以来 LM において国内外多くの施設で In Bag Morcellation など筋腫回収の工夫がなされている 筋腫の破片の飛散や残存 予期せぬ悪性の場合を考慮したことであろうが TLH の場合はどのような基準でどこまでおこなうべきであろうか 当院の現状 当院では 子宮筋腫核出においては筋腫をバッグに入れ やや拡張した臍孔より直接メスで morcellation して切り出し 残渣を残さないようにしている 一方 TLH においては 腟式細切が困難な症例が多いため 腹腔内に細めの長柄メスを直接入れ 経腟回収可能なサイズに切り分けて経腟回収することが多い 症例 症例は G2P2 45 歳 2014 年 2 月当科初診 72x65x57mm の子宮筋腫としてフォロー 2015 年 2 月筋腫 79x67x75mm 2017 年 4 月筋腫 137x114x77mm と非常に大きくなった 2017.4 MRI を行うと T2 は筋肉よりもやや高信号で内部は不均一で富細胞性子宮筋腫などの変異型筋腫や STUMP などが疑われた 開腹も考慮した子宮摘出手術を勧め GnRHa を 2017.5 より開始した 2017.8 術前検査時に腫瘤は 60x58x41mm と著明に縮小していた 患者さんと充分に話し合った結果 TLH をおこなうことにした 子宮を切離後 回収時に EZ パース ( 大 ) を拡げ その中で長柄のメスで子宮を切断して縮小 子宮組織片が他の体腔内組織と極力接触しないよう 袋内で経腟回収できた ( 子宮は 451g 出血は 80ml 139min) 病理組織検査結果は Cellular leiomyoma であった 考察 最近では TLH においても経腟子宮回収時にバッグに入れる方法などが取られているようだが 経腟回収法は術野が狭く時間がかかり合併症も起こりやすいので 腹腔内でのメスによる細切を多く行っている 細胞播種の可能性のある症例においても バッグを拡げた中でメスによる切開を行うことにより 危険性を軽減させられると考える 15. 子宮回収後の腟壁裂傷から術後大量出血をきたした 1 例大浜第一病院女性腹腔鏡センター〇上地秀昭髙橋美奈子徳嶺辰彦 症例 45 歳 2G2P( 帝王切開 2 回 ) 経過 過多月経 月経困難症を伴う子宮腺筋症に対し TLH を施行した 経腟的に子宮を回収した後に腟断端を確認すると 右側断端から 2-3cm 尾側にかけて出血を伴う T 字型の腟壁裂傷を認めた 腟断端は先に腹腔鏡下で 腟壁裂傷は断端縫合後に第二助手が経腟的に修復した 摘出子宮重量 269g 手術時間 149 分 術中出血 20g であった しかし 帰室して 4 時間後に 570g の血塊を認めたためコールがあった 血塊を除去して出血点を確認すると 腟壁裂傷の上端から出血を認めた ガーゼ圧迫のみでは止血は得られず 出血点の周囲を縫合して止血を得た 最終的な術後出血は約 1000g 術翌日の Hb は 8.7g/dl まで低下を認めたが 鉄剤内服で術後 6 日目に退院となった

反省点 T 字型の腟壁裂傷は裂傷交差部の止血を確実にするため先に腟壁裂傷を縫合 その後腟断端を縫合すべきであったと思われた 16. FUSE(Fundamental Use of Surgical Energy) ハンズオンを開催して独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO 久留米総合病院 畑瀬哲郎園田豪之介稗田太郎田崎慎吾 目的 手術時に使用する energy device の基礎から医療事故の起こるメカニズムを学ぶ 方法 当院講堂で 25 名が 6 台の電気メスを準備し 講義 実技を行う 有害事象を未然に防ぐ手術機器の保守 点検法を学ぶ 対象は院内の医師 手術室看護師に加え周辺の医療機関からの参加を促した 成績 久留米市 福岡市 北九州市 大牟田市に加え佐賀県 熊本県よりの参加者があり また職種も医師 看護師 臨床工学士 研修医 委託業者など幅広い参加者を得た 参加者全員にアンケートを行い その結果を分析した 結論 energy device の理解がより安全でスムーズな手術に結びつくと思われた さらにこの様な知識の普及の必要性が痛感させられた 17. LSC 導入後 4 年間における手術成績からみたスムーズな LSC 導入の工夫産業医科大学若松病院産婦人科 産業医科大学産婦人科 〇茗荷舞 星野香 吉村和晃 蜂須賀徹 LSC は平成 26 年 4 月から保険収載され 国内においても急速に広まりつつあるが 高い技術力が求められる術式であり 導入については工夫が必要である 当院では平成 26 年 8 月から LSC を開始し 平成 30 年 2 月までに 157 例施行した この 157 例について 手術時間や 出血 周術期合併症 再発などを後方視的に検討し スムーズな導入の在り方について考察する 導入当初は主に膀胱側のみにシングルメッシュを挿入 (A) し 手技に慣れるにつれ適応を拡大し 現在では必要な症例には膀胱側と直腸側にダブルメッシュを挿入 (AP) している 平成 26 年は平均 187 分 (A6 例 AP2 例 ) 平成 27 年は 137 分 (A18 例 AP2 例 ) かかっていたが 少しずつ時間が短縮でき 平成 28 年は 131 分 (A26 例 AP14 例 ) 平成 29 年は 131 分 (A28 例 AP41 例 ) で施行可能となった LSC の導入については 最初はシングルメッシュから開始し 少しずつ適応を拡大していくとよい 周術期合併症や再発についても併せて報告する 18. 子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術の導入と成績佐賀県医療センター好生館〇八並直子安永牧生 当院でも手術子宮体がんに対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を 2016 年より開始した 原則 類内膜腺癌かつ画像上 1A 期と思われる子宮体癌を適応としている 内視鏡学会の技術認定を取得し 既に開腹の子宮体癌手術を施行している医師が全ての手術を執刀し 術式は単純子宮全摘 両側付属器切除 骨盤リンパ節郭清としている 2018 年 1 月末までに 12 症例手術施行した 平均手術時間 162.5 分 平均術中出血量 54.3ml 平均摘出リンパ節数 31.4 個であり 術中合併症はなかった 術後合併症として骨盤死腔炎 1 例を認めた 同一術者により 2017 年までに施行された 進行期 1B 期以下 類内膜腺癌 G2 以下の子宮体癌開腹手術症例 34 例と比較した 手術時間 術中出血量 摘出リンパ節数それぞれについて Student s T test で検定したところ 開腹手術群と腹腔鏡手術群の間にいずれも統計学的有意差は認めなかった 導入より現在までは 開腹手術に比して遜色なく経過していると考えられた

19. 子宮マニュピレーターを使用せず Vascular Pseudo Invasion を認めた一例熊本赤十字病院産婦人科 吉丸崚荒金太村上望美井手上隆史三好潤也福松之敦 婦人科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術において 子宮マニュピレーターを使用した症例で Vascular Pseudo Invasion(VPI) が報告されている 今回我々は子宮体癌 ⅠA 期に対し子宮マニュピレーターを使用せず腹腔鏡下子宮摘出術を施行し VPI を認めた症例を経験したので報告する 症例は 38 歳 未妊婦人 性器出血と腹痛で当院に緊急搬送された 子宮内膜生検は Endometrioid carcinoma,g1 であり 骨盤造影 MRI 検査で子宮内に早期に造影される腫瘤を認めた マニュピレーターは使用せず腹腔鏡下子宮摘出術 + 両側付属器切除術 + 骨盤リンパ節生検を施行した 術後病理診断は Endometrioid carcinoma,g1 筋層浸潤 (-) 脈管内には Atypical endometrial hyperplasia の所見を散見し VPI と診断した 術後追加治療は行わず外来経過観察中である 20. 子宮体癌に対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清の経験九州大学産科婦人科 貴島雅子矢幡秀昭小玉敬亮山口真一郎八木裕史安永昌史大神達寛権丈洋徳小野山一郎兼城英輔奥川馨淺野間和夫園田顕三加藤聖子 子宮体癌に対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清は本邦でも 11 施設で先進医療として施行されており 今後もさらに広く普及していくと考えられる 当科でも臨床研究として当該治療を開始した 症例は 75 歳 3 妊 3 産 内科で施行した CT で偶発的に子宮腫瘤を指摘され 当科紹介受診した 各種画像所見 組織学的検査より 術前診断を子宮体癌 ⅠB 期相当 (endometrioid adenocarcinoma, G とし 腹腔鏡下子宮全摘出術 両側付属器摘出術 骨盤リンパ節郭清 傍大動脈リンパ節郭清を施行した 術中出血量 150g 手術時間 6 時間 26 分 術後病理組織診断は endometrioid adenocarcinoma, G1 脈管侵襲 (+) リンパ節転移 0/100 であった 術後 5 日目に退院し 外来経過観察中である 今回 経験した症例についての動画を供覧するとともに今後の課題について検討し報告する 21. 腹腔鏡下子宮体癌術後に出現した腹腔内播種性病変に対して腹腔鏡下手術で診断しえた腹膜癌の 1 例国立病院機構小倉医療センター産婦人科〇櫻木俊秀河村京子小野結美佳藤川梨恵北川麻里江黑川裕介川上浩介川越秀洋牟田満大藏尚文 緒言 婦人科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は年々増加傾向であり 今後さらに拡大が予想される 今回 腹腔鏡下子宮体癌術後 1 年 4 ヶ月目に腫瘍マーカーの上昇を認め 腹腔鏡下での組織生検で腹膜癌と診断できた 1 例を経験したので報告する 症例 66 歳 0 妊 0 産 既往歴 家族歴は特記事項なし 子宮体癌に対して初回手術で腹腔鏡下子宮体癌根治術を施行し 子宮体癌 ⅠA 期 (pt1an0m0 類内膜癌 G の診断で術後追加治療は行わなかった 術後 1 年 4 ヶ月目に腫瘍マーカー上昇 (CA125 407 U/ml CA19-9 348 U/ml) を認め CT 検査で大網に 2~3cm 大の腹膜播種様病変を多数認めた PET-CT では同部位に集積亢進を認め 子宮体癌 ⅠA 期再発 その他の悪性腫瘍を考えた 開腹手術での腫瘍生検も考えたが 術後治療が遅れる可能性も考え より低侵襲な腹腔鏡下での組織生検を行った 病理結果では High-grade serous carcinoma であり 腹膜癌 ⅢC 期 (pt3cnxm0) と診断した 現在化学療法中であるが再発所見は認めていない

22. 卵管峡部妊娠後の自然妊娠に伴う同側卵管間質部妊娠の 1 例産業医科大学産婦人科 産業医科大学総合周産期母子センター 〇網本頌子 栗田智子 森博士 金城泰幸 荒牧聡 蜂須賀徹 卵管間質部妊娠は比較的稀な疾患であり 卵管切除後の同側卵管間質部妊娠は異所性妊娠の中で 0.4 4% と報告されている 症例は 26 歳 3 経妊 1 経産 当科で右卵管峡部妊娠に対し 腹腔鏡下右卵管摘出術を施行した 約 1 年後 自然妊娠が成立し 最終月経から 5 週 3 日に下腹部の違和感と凝血塊を含む性器出血を認め 当科を受診した 子宮内腔に胎嚢はなく 凝血塊を疑う fluid の貯留を認めた 付属器の腫大はないものの腹腔内に液体の貯留があり 徐々に腹痛が増強した 血中 hcg は 3674mIU/ml であったため 腹腔内出血 異所性妊娠の疑いで腹腔鏡手術を行った 腹腔内に多量の凝血塊を認め右卵巣 左付属器は正常外観であった 子宮の右側 間質部から持続する出血と その中央に浮腫状の組織を認めた 間質部妊娠と判断し 子宮内容除去術および右卵管間質部楔状切開術を施行した 卵管切除後の同側間質部妊娠について文献的考察を加え報告する 23. 腹腔鏡下卵管切除術を行った子宮内外同時妊娠の 1 例福岡大学医学部産婦人科 山口赤十字病院産婦人科 〇宮本新吾 伊東智宏 南星旭 勝田隆博 四元房典 伊東裕子 宮原大輔 金森康展 城田京子 緒言 子宮内外同時妊娠は 自然妊娠の約 0.003% と非常に稀な疾患である 今回 凍結融解胚移植後の子宮内外同時妊娠に腹腔鏡下手術を行った症例を経験したので報告する 症例 自然排卵周期における凍結融解胚移植にて妊娠成立した 妊娠 10 週 3 日に下腹部痛 性器出血を認めた 近医での経腟超音波断層法にて 子宮内に胎児および右付属器領域に腫瘤影を認めたため 妊娠 10 週 5 日に当科を受診した 当科初診時の診察所見では 右付属器領域に内部に 36 22mm の胎児を含む腫瘤を認め 子宮内外同時妊娠と診断した 妊娠 12 週 0 日に腹腔鏡下右卵管切除術および左卵管切開術を施行した 術後経過は良好で 切迫流産徴候認めず 術後 5 日目に退院とした 結語 生殖補助医療の増加に伴い 子宮内外同時妊娠の増加が危惧され 継時的に付属器の観察していく必要があると考えられた 24. 不妊患者における子宮筋腫核出術および子宮腺筋症核出術後の癒着についての検討セント ルカ産婦人科 宇津宮隆史越光直子後藤裕子河邉史子甲斐由布子 当院では 子宮筋腫 子宮腺筋症患者には超音波断層法 MRI CA-125 などを行い挙児希望の有無や自覚症状などを考慮し治療法を検討している 妊孕性を考慮し 適宜 早期に手術を実行している 避妊期間を経た術後 3 か月目頃に MRI を行い 異常がない場合 妊娠許可をしている 挙児希望患者には妊孕性温存の為に 術後 7 日目頃に癒着剥離の為の腹腔鏡手術を行っている 開院以来 子宮筋腫核出術 432 例 子宮腺筋症核出術 46 例の開腹手術を行い 癒着確認の腹腔鏡手術を行ったのは子宮筋腫 314 例 (73%) 子宮腺筋症 26 例 (57%) 子宮筋腫核出術後では 癒着あり 217 例 (69%) なし 99 例 (31%) 子宮腺筋症核出術では 癒着あり 21 例 (81%) なし 5 例 (19%) であった 今回は当院の成績 術後の癒着および卵管への影響などについて報告する 25. 子宮筋腫核出術が及ぼす周産期予後の検討 福岡大学産婦人科 山口赤十字病院産婦人科

〇伊東裕子 倉員正光 南星旭 伊東智宏 勝田隆博 四元房典 宮原大輔 城田京子 金森康展 宮本新吾 目的 子宮筋腫は手術で妊孕性が損なわれないよう腹腔鏡下手術が適していると考えられ始めている 総合周産期母子医療センターである当院で 子宮筋腫核出術後妊娠の妊娠経過や周産期予後について後方視的に検討した 方法 2013 年 1 月 1 日から 2017 年 12 月 31 日までに当院で妊娠分娩管理を行った 2387 症例のうち 子宮筋腫核出術既往のある 54 例を対象とした 年齢 筋腫再発の有無 切迫早産治療の有無 分娩週数 分娩時出血量 産科合併症について検討した 結果 腹腔鏡 (LM)21 例 開腹 (AM)30 例 子宮鏡 3 例 母体年齢は 36.4/37.2 歳 (LM/AM) 筋腫再発 3/10 例 分娩週数 36.6/37.1 週 筋腫再発ない症例の周産期予後は 切迫流早産で加療を行った症例が 5/1 症例 早産 1/4 症例 出血 500ml 以上は 14/11 症例に認められた 結論 LM では切迫早産での治療が有意に多かったものの 早産や前期破水 骨盤位は差が認められなかった LM の周産期予後には今後も慎重な評価が必要であると考えられた 26. 帝王切開瘢痕症候群 (CSS) を有する移植頻回不成功例に対し 内視鏡的治療を経て妊娠しえた一例高邦会高木病院〇徳永真梨子野見山真理 緒言 CSS は帝王切開 (CS) 後に起こる月経異常の原因として報告され 近年続発性不妊症の原因として注目されている 症例 38 歳 2 経妊 1 経産. 腹式および腹腔鏡下子宮筋腫核出術 両側卵管留水症切除術の既往あり 術後初回 ART 妊娠後, 選択的帝王切開分娩 33 歳時, 第 2 子希望にて再診 胚移植 7 回するも妊娠に至らず 月経後に不正出血持続, 経腟超音波で瘢痕部筋層 2-3mm と菲薄化, 子宮腔に貯留液像を認めた 外来にて細径硬性子宮鏡施行し CS 瘢痕部の周囲内膜に黒褐色血性粘液の流出孔, 子宮腔への逆流および樹枝状血管 マイクロポリープの集簇を認め CSS と診断 子宮鏡下瘢痕部周囲内膜切除 凝固および腹腔鏡下修復術を施行し 術後不正出血 子宮腔貯留像は消失 術後 2 回目の凍結胚移植後妊娠継続中である 結論 今回 腹腔鏡および子宮鏡手術は CSS 症状を消失させ 着床環境改善に有効であった 27. 帝王切開瘢痕部症候群に全腹腔鏡下子宮全摘術を施行した一例産業医科大学産婦人科 産業保健学部広域 発達看護学 〇田尻亮祐 植田多恵子 網本頌子 遠山篤史 厚井知穂 栗田智子 鏡誠治 川越俊典 松浦祐介 蜂須賀徹 帝王切開瘢痕部症候群は子宮の帝王切開創部に生じた内膜面の陥凹性瘢痕に月経血などが貯留することにより 下腹部痛や不正出血など種々な症状を引き起こす症候群である 今回 帝王切開瘢痕部症候群に対し全腹腔鏡下子宮全摘術を安全に遂行した症例を経験したため報告する 症例は 43 歳 1 妊 1 産 28 歳時に帝王切開の既往あり 下腹部痛を主訴に当科を紹介受診し 経腟超音波断層法にて子宮頸部前壁部分に 42mm の内部点状エコーの血液貯留を疑う腫瘤を認め その内容が子宮内と交通する所見を認めたことから帝王切開瘢痕部症候群と診断した 月経直前に血腫が最も縮小しており GnRH アゴニストで月経コントロール後に全腹腔鏡下子宮全摘術を施行した 瘢痕部を確認したところ内子宮口より 1.5cm 程度のポケットの形成を認めた 本症は近年提唱され始めた疾患であり 治療方法は確立されていない 今後さらなる症例を蓄積し 治療方針について検討する必要があると考えられた