<4D F736F F D208F8F95FB8BCE90AB95AA89BB95BD90AC E937890AC89CA2E646F63>

Similar documents
<4D F736F F D2090AB95AA89BB8EBE8AB38F898AFA91CE899E A E646F63>

専攻医教育プログラム6 2)性分化異常/生殖器形態異常

副腎皮質・性腺におけるステロイドホルモン合成経路

<4D F736F F D204E AB38ED2976C90E096BE A8C9F8DB88A B7982D1928D88D38E968D >

Microsoft PowerPoint

Microsoft PowerPoint - ACOG TB PDF17

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

2 はじめに 2006 年に米国小児内分泌学会 (Lawson-Wilkins Pediatric Endocrine Society (LWPES: 現 Pediatric Endocrine Society))とヨーロッパ小児内分泌 学会 European Society for Pediatr

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

系統看護学講座 クイックリファレンス 2013年7月作成


5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

総排泄腔遺残症 1. 概要総排泄腔遺残症 ( 以下本症 ) は女児の直腸肛門奇形の特殊型で 尿道 膣 直腸が合流し総排泄腔という共通孔を形成しその1 孔のみが会陰部に開口する特殊稀少疾患である 本症が難治性疾患とされる由縁は 直腸肛門形成の他に膣形成が必要な点である 幼少期に手術された膣は 長期的な

資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>

がん登録実務について

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

SNPs( スニップス ) について 個人差に関係があると考えられている SNPs 遺伝子に保存されている情報は A( アデニン ) T( チミン ) C( シトシン ) G( グアニン ) という 4 つの物質の並びによってつくられています この並びは人類でほとんど同じですが 個人で異なる部分もあ

出生前診断を検討している妊婦さんへ

体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常

検査項目情報 1223 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E040. メタネフリン分画 メタネフリン分画 [ 随時尿 ] metanephrine fractionation 連絡先 : 3495 基本情報 4E040 メタネフリン分画分析物


化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

<4D F736F F F696E74202D2090AB A838B B6979D8A778EF68BC DC58F4994C5>

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

はじめに このサポートブックは 出生前診断に関する情報を提供することで 妊婦さんやパートナー ご家族 今後妊娠を考えている方の不安や疑問を軽減することを目的に作成しました 出生前診断を受けた場合 胎児に異常が見つかることがあります その際 妊娠中から赤ちゃんの病気が分かったから 心の準備ができて良か

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

汎発性膿庖性乾癬の解明

Microsoft PowerPoint - 参考資料

第 20 講遺伝 3 伴性遺伝遺伝子がX 染色体上にあるときの遺伝のこと 次代 ( 子供 ) の雄 雌の表現型の比が異なるとき その遺伝子はX 染色体上にあると判断できる (Y 染色体上にあるとき その形質は雄にしか現れないため これを限性遺伝という ) このとき X 染色体に存在する遺伝子を右肩に

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認


Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

16_研修医講義.ppt

針刺し切創発生時の対応

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

事柄であるため まず 特例法と GID に関してここ 1 ジェンダー アイデンティティの判定 DSM- Ⅳ -TR や ICD-10 を参考にしながら 以下の で見ておきたい ことを中心に検討する ①自らの性別に対する不快感 嫌悪感を持つ 1. 特例法の概要 ②反対の性別に対する強く持続的な同一感を

2009年8月17日

PowerPoint プレゼンテーション

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 【資料3】届出マニュアル改訂について

遺 伝 の は な し 1

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

Transcription:

診断フローチャートと診断に必要な検査 性分化疾患は 通常 新生児 乳児期に外陰部異常所見により発見される. この時期では 社会的性 ( 養育上の性 ) を適切に決定する必要がある. 染色体検査と内分泌検査を含む必要な検査を行い 診断を確定することになる 代表的な疾患の診断手順を下図に示す T: テストステロン E2: エストラジオ ル 重要なポイント : 上記は一般病院で施行可能な検査に基づく しかし 遺伝子診断により 臨床診断が同一であっても その原因が極めて遺伝的異質性に富むことが判明してきた 例えば アンドロゲン受容体不応症患者の中で アンドロゲン受容体遺伝子に変異が検出されるのは 完全型で 80% 程度 不完全型で 30% 程度に過ぎない 正確な遺伝子型 - 表現型解析や遺伝相談を可能にするために 遺伝子診断の普及は極めて重要である 現在判明している原因遺伝子の一覧は 下記の付録 3,4 にまとめた < 病歴 > 家族歴は診断上の有力な情報である また 妊娠中のホルモン製剤使用の有無と妊娠中の母体の男性化の有無が重要である ホルモン製剤は 化粧品などに含まれることがあり 母親が知らない間に使用している可能性がある 母体の男性化は 胎盤アロマターゼ欠損症と POR 欠損症に特徴的である < 身体所見 > 外陰部の所見では 性腺 精巣の有無 陰茎長 尿道口の位置 陰嚢形成の程度 陰核の大きさ 膣口の有無 陰唇融合の程度などを評価する ( 付録 1) 女性型外性器を有する患者に性腺 精巣を鼡径部や陰唇に触れるときには 精巣成分を有する性腺形成障害または男性ホルモン産生障害 効果障害を疑う 触診上 精巣は弾力を有し 索状性腺や卵巣は硬い 精巣様構造が存在するときは 精巣計で容積を測定し 正常値と比較する 片側性無精巣症の場合 対側の精巣が肥大していることがある 陰茎長は 陰茎背側基部にある恥骨に定規 -3 -

をあて 陰茎を伸張して計測し正常値と比較する 陰核の大きさは 陰核包皮までを含め 外側から定規を当てて測定し 正常値と比較する 外陰部以外の所見では 色素沈着の存在は副腎性器症候群に特徴的で 生命の危険に陥り易く 迅速な対応が要求される 軽症では 軽度の色素沈着が口唇 乳頭部 外陰部のみに現れることがあり 注意を要する 奇形徴候の存在は 性分化異常を伴う染色体異常症や奇形症候群を示唆する所見で ターナー症候群 campomelic dysplasia Smith-Lemli-Opitz 症候群では特徴的なパタ ンが認められる また Xp の重複 9p モノソミー 10q モノソミーによる精巣形成障害では 種々の小奇形や発達障害が認められる < 主要臨床検査成績 > 電解質異常 ( 低ナトリウム血症 高カリウム血症 ) は塩喪失型副腎性器症候群を 血清コレステロール低値は Smith-Lemli-Opitz 症候群を 尿所見異常は Drash 症候群や Fraiser 症候群を示唆する所見である < 内分泌検査 > 性腺系と副腎系の検査が重要である 性腺系では テストステロン エストラジオール FSH LH の基礎値の検討 および GnRH test hcg test hmg test が行われる テストステロン産生障害を伴う疾患 ( ライディッヒ細胞低形成 先天性副腎リポイド過形成 3β- HSD 欠損 P450c17 欠損 17β-HSD 欠損 ) では hcg test におけるテストステロン反応の低下と GnRH test における LH/FSH 過剰反応が見られる 5α-reductase 欠損症では hcg 負荷後のテストステロンとジヒドロテストステロンの比が上昇する ( 正常男児の比 11±3) アンドロゲン不応症では ゴナドトロピンやエストラジオールの比較的高値がしばしば見られる ゴナドトロピン欠乏症では GnRH test における LH/FSH の反応低下が見られる 一方 エストラジオールを含む女性ホルモンの検討は 正常女性が思春期までホルモン産生細胞の発達に乏しいため 診断的価値は低い しかし hmg test でエストラジオールの反応が見られるときは 卵巣成分の存在が示唆される なお 新生児期のステロイドホルモンは 胎児副腎由来の様々な代謝産物により干渉され 正確な測定はしばしば困難である ( 付録 2) 副腎系では コルチゾール ACTH の基礎値の検討 および ACTH 負荷時の詳細な血中および尿中ステロイドホルモンプロフィールの検討を行う 性腺と副腎に共通するステロイドホルモン代謝異常による 先天性副腎リポイド過形成 3β-HSD 欠損 P450c17 欠損 P450c21 欠損 P450c11 欠損の診断に有用である < 画像診断 > 内性器の形態確認を目的として超音波検査 CT MRI などを行う 特に MRI ではかなり詳細なウォルフ管およびミュラー管構造物の情報がえられる これらの検査で内性器構造が判然としないとき 尿道 膣造影がおこなわれることがある しかし 性腺 特に腹腔内の索状性腺の同定はしばしば困難である なお 超音波検査は 機能低下精巣が微細石灰化や輝度の低下などの所見を呈することから 精巣機能の判定にも有用である < 腹腔鏡および性腺生検 > 画像検査において内性器構造が不明なとき あるいは外科治療の一環として行われる 卵精巣性 DSD や混合性性腺異形成の診断に有用である < 染色体検査 > 性分化疾患では必須の検査である 正常核型は 遺伝的性と性腺の性の不一致や男性ホルモン産生障害 効果障害で多く見られ 精巣性 DSD でも約 8 割に認められる (46 XX が 6 割 46 XY が 2 割 ) 異常核型は 性染色体異常症が大多数を占め ターナー症候群 混合性性腺異形成などが代表である ときに XY 性腺異形成において X 染色体短腕重複や 9p および 10q モノソミーが認められる -4 -

染色体検査は 通常 20-30 個の末梢リンパ球に行われる しかし 臨床症状と核型が不一致の場合 ( 例 ターナー症候群の表現型と 46 XY 核型の共存 ) 多数の細胞解析による低頻度モザイクの検討および複数の組織 ( 皮膚繊維芽細胞や性腺細胞 ) の細胞解析による組織特異的モザイクの検討が必要である < 分子遺伝学的検査 > 近年 分子遺伝学的検査が比較的簡単に行われるようになり 多数の遺伝子解析が可能となってきている 必要に応じてこれらの遺伝子解析を考慮すべきである ( 付録 3,4) 付録 1: 本邦における陰茎長 精巣容積の基準値 12 10 8 6 4 2 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 陰茎長基準値とミクロペニスに対する治療効果 精巣容積基準値 付録 2: 新生児テストステロン値のピットフォール新生児期では テストステロンを含む種々のホルモン値が胎児副腎由来のステロイド産物の干渉を受け 正確に測定できないことがある 特に 交叉反応のために偽高値を示すことがあり注意を要する 以下はその代表例である 例 :ECLIA 法 ( 抽出操作なし ) と LCMSMS 法 ( 抽出操作あり ) の比較 日齢 1 4 6 8 12 ECLIA 法 (ng/ml) 12.8 8.13 2.67 3.40 0.09 LCMSMS 法 (ng/ml) 0.01 0.03 0 0 0 これは 誤診を防ぐために重要な情報である -5 -

付録 3 性分化異常症に関わる遺伝子異常 : 46,XY 遺伝子 座位 遺伝形式 性腺 Müller 管 外陰部 疾患 その他の徴候 46,XY DSD 性腺形成異常 : 単一遺伝子異常 WT1 11p13 AD 精巣異形成 +/- F/A Wilms 腫瘍 腎疾患 性腺腫瘍 (WAGR,Denys-Drash, Frasier 症候群 ) SF1 9p33 AD/AR 精巣異形成 +/- F/A 重症型では原発性副腎不全 (NR5A1) SRY Yp11.3 Y 精巣異形成 +/- F/A /ovotestis SOX9 17q24-25 AD 精巣異形成 +/- F/A Campomelic dysplasia /ovotestis DHH 12q13.1 AR 精巣異形成 + F 神経障害 ATRX Xq13.3 X 精巣異形成 - F/A/M αサラセミア 発達遅滞 ARX Xp22.13 X 精巣異形成 - A 頭蓋骨異常 てんかん 体温調節障害 性腺形成異常 : 染色体異常に伴う候補遺伝子異常 DMRT1 9p24.3 モノソミー 精巣異形成 +/- F/A 発達遅滞 DAX1 Xp21.3 dupxp21 精巣異形成 / 卵巣 +/- F/A (NROB1) WNT4 1p35 dup1p35 精巣異形成 + A 発達遅滞 ホルモン合成 作用の障害 LHGCR 2p21 AR 精巣 F/A/ 矮小陰 Leydig 細胞低 ( 無 ) 形成 茎 DHCR7 11q12-13 AR 精巣 様々 Smith-Lemli-Opitz 症候群 STAR 8p11.2 AR 精巣 F 先天性リポイド副腎過形成症 CYP11A1 15q23-24 AR 精巣 F/A 先天性副腎過形成症 HSD3B2 1p13.1 AR 精巣 A 先天性副腎過形成症 CYP17 10q24.3 AR 精巣 F/A/ 矮小陰 先天性副腎過形成症 茎 POR 7q11.2 AR 精巣 M/A 複合型ステロイド合成酵素機能低下症 Antley-Bixler 症候群 HSD17β3 9q22 AR 精巣 F/A 思春期の部分男性化 SRD5A2 2p23 AR 精巣 A/ 矮小陰茎 思春期の部分男性化 AMH 19p13.3- AR 精巣 + 正常男性 Müller 管遺残症候群 両側停留精巣 13.2 AMHR2 12q13 AR 精巣 + 正常男性 AR Xq11-12 X 精巣 F/A/ 矮小陰茎 / 正常男性 完全型 部分型 遺伝形式 AR: 常染色体劣性 AD: 常染色体優性 X:X 染色体伴性 Y:Y 染色体伴性外陰部 M: 男性型 A: 中間型 F: 女性型 付録 4: 性分化異常症に関わる遺伝子異常 : 46,XX( 改変 ) 遺伝子 座位 遺伝形式 性腺 Müller 管 外陰部 疾患 その他の徴候 46,XX DSD 性腺 ( 卵巣 ) 形成異常 SRY Yp11.3 転座 精巣 M/A /ovotestis SOX9 17q24 dup17q24 検索なし M/A アンドロゲン過剰 HSD3B2 1p13 AR 卵巣 + 陰核肥大 先天性副腎過形成症 CYP21A2 6p21-23 AR 卵巣 + A 先天性副腎過形成症 CYP11B1 8q21-23 AR 卵巣 + A 先天性副腎過形成症 POR 7q11.2 AR 卵巣 + A 複合型ステロイド合成酵素機能低下症 Antley-Bixler 症候群 CYP19 15q21 AR 卵巣 + A 先天性副腎過形成症 Glucocorticoid-R 5q31 AR 卵巣 + A 先天性副腎過形成症 遺伝形式 AR: 常染色体劣性 AD: 常染色体優性 X:X 染色体伴性 Y:Y 染色体伴性 外陰部 M: 男性型 A: 中間型 F: 女性型 -6 -

現行治療方針要約 社会的性 ( 養育上の性 ) の決定 : 内 外性器の機能 性腺腫瘍の危険性を考慮して決定する 最も重要な点は 性的機能がより適合する性を選択することであり 染色体構成や遺伝子変異は考慮する必要はない なお 近年 脳の性分化状態を勘案して社会的性を決定することを模索されている ( 付録 1) 最も重要な所見は外性器の形態である 男児では陰茎長と陰嚢形成が 女児では膣形成の有無が重視される ( これらの形成は困難である ) 可能なかぎり 小児内分泌専門医 泌尿器科医 産婦人科医を含むチ ムによって 家族と共に判断すること望ましい 外科的治療 : 性分化疾患ではしばしば乳児期や思春期において外科的治療が必要となる 基本的に選択された性に不一致な構造物は摘出する (46,XX の卵精巣性性分化疾患は 稀に早期に精巣成分を摘出したときに妊娠可能となる ) 特に Y 染色体成分を有する索状性腺は 性腺腫瘍が発症しやすいため摘出すべきである ( 付録 2) アンドロゲン受容体異常症の精巣は エストラジオール分泌を介して二次性徴を生じるため思春期前の摘出は控えられていたが 近年 精巣腫瘍の発症が多いことから早期に摘出すべきとされている ( しかし アンドロゲン受容体異常症における性腺腫瘍発症の最年少患者は 14 歳であり それ程早くはない ) また 男児における尿道下裂や女児における陰核肥大などに対する外性器形成術を行う 外陰部形成術は 精神的影響を考慮して 1-2 歳が推奨されている 内科的治療 : 男児として養育する場合 小陰茎にたいして乳児期にデポ型テストステロン製剤 (25 mg) を 1-3 回投与する ( 付録 3 4) 立小便が可能な陰茎長 (3.0-3.5 cm 以上 ) を目標にする また 精巣腫瘍の発症を超音波などで定期的に観察する 思春期年齢で一度精巣生検をおこなうことも推奨されている 思春期年齢以降 デポ型テストステロン製剤 200 mg 程度を 3 ー 4 週毎に筋注して維持する 女児として養育する場合 思春期前にはホルモン療法は不要である なお 将来の性生活に備えて定期的に膣のブジー管理を行うことは 一時行われたが 現在では不要とされている 思春期年齢以降 エストロゲン製剤の投与 および子宮が保持されている場合には エストロゲン製剤とプロゲステロン製剤による Kaufman 療法を行なう ( 付録 5) また 男女共に ゴナドトロピン分泌不全による続発性性腺機能障害では hmg (FSH) と hcg 療法により 妊孕性確保が可能である なお 副腎ホルモン産生障害を伴う場合は 直ちに糖質および電解質ステロイド補充を行なう カウンセリング : 最も重要な点は 患者が最も信頼し 支えてほしい存在である両親から疾患については説明されることである ( 付録 6) これは 患者に受容感を与え その後の社会的自立をする上で大変強い支えとなる したがって はじめは医師から性分化疾患の説明があることが多いが その場合も可能な限り両親同席で話し その後 両親のみからきちんと話すことが重要である しかし 性分化疾患では 両親は話すことに抵抗を感じ しばしば両親に医療者と保護者が揃ってきちんと話すことの重要性を理解してもらうまでに時間を要する 何をどこまで話すかということは一概には決められない しかし 患者の医療面 健康面で重要なことは必須である 例えば ホルモン補充療法はでは きちんとその必要性を理解しなければ長期間継続できない 一方 社会的女性にたいして性染色体の話をすることは 本人が強く全てを知りたいという希望がない限り 不要である ( とわれわれは考えている ) なお 結婚が決まって心配になり 突然 性腺機能不全の話を聞くという事態は避けねばならない 受験など 社会的なイベントを勘案しながら年齢相当の内容を話してゆくことが重要である -7 -

付録 1: 性同一性障害の頻度 (12 歳以上 ): 文献データを要約 疾患 核型 養育上の性 総患者数 性同一性障害患者数 頻度 副腎皮質過形成 46,XX 女性 217 10 4.6% 男性 14 3 21.4% 不完全型アンドロゲン受容体不応症 46,XY 女性 46 5 10.9% 男性 35 5 14.3% 完全型アンドロゲン受容体不応症 46,XY 女性 98 0 0% 男性 0 5α レダクターゼ欠損症 46,XY 女性 117 69 59.0% 男性 26 0 0% 17β-HSD-3 欠損症 46,XY 女性 51 20 39.2% 男性 2 0 0% ミクロペニス 46,XY 女性 8 0 0% 男性 64 2 3.1% 陰茎切断 46,XY 女性 6 3 50% 男性 0 無陰茎 46,XY 女性 11 6 54.5% 男性 10 0 0% 総排泄腔外反症 46,XY 女性 21 6 28.6% 男性 5 0 0% 膀胱外反症 46,XY 女性 3 2 66.7% 男性 161 2 1.2% 付録 2: 胚細胞腫瘍の発症リスク : 文献データを要約 リスク 疾患 悪性化リスク 推奨される治療 研究数患者数 高リスク群 性線異形成 (+Y) 腹腔内 15-35 性線摘出 12 >350 PAIS 陰嚢外 50 性線摘出 2 24 Frasier 症候群 60 性線摘出 1 15 Dennis-Drash 症候群 (+Y) 40 性線摘出 1 5 中間リスク群ターナー症候群 (+Y) 12 性線摘出 11 43 17beta-HSD 28 モニター 2 7 性線異形成 (+Y) 陰嚢内 不明 生検と放射線? 0 0 PAIS 陰嚢内 不明 生検と放射線? 0 0 低リスク群 CAIS 2 生検と? 2 55 Ovotestis DSD 3 精巣成分除去? 3 426 ターナー症候群 (-Y) 1 なし 11 557 無リスク群? 5alpha-reductase 0 未解明 1 3 ライディッヒ細胞低形成 0 未解明 2? ポイント : これらは生殖細胞由来の腫瘍である このような腫瘍の発生は 体細胞障害により性腺異形成を招く ( 常染色体 ) 遺伝子変異において 生殖細胞発生障害により性腺異形成を招く ( 性 ) 染色体異常症よりも多いと推測されるが 正確なデータは存在しない -8 -

付録 3. 付録 4. 付録 5. 付録 6. -9 -

性分化疾患ケアチームによる管理体制試案 1. 性分化疾患ケアチーム結成の目的性分化疾患における社会的性 ( 法律上の性 養育上の性 ) の選択 その後の成長 成熟のフォロー 親子の心理的支援等 生直後より長期かつ多岐に亘るサポートを提供することを目的とする 2. 構成部門 診療科小児内分泌科 小児泌尿器科 小児精神科 周産期部門 ( 産婦人科 新生児科 ) 遺伝科を含めて構成されることが望ましい 性分化疾患患者にたいする最初のコンサルテーションは 小児内分泌医師になされるべきである 看護部門 ソシアルワーカーも家族のサポートのために参加することが望まれる 3. 性別選択の流れ 日齢 0( または入院当日 ) 性分化疾患 ( と思われる ) 児の出生 搬送小児内分泌科 ( あるいは他のメンバー ) からチーム全員に連絡ケアチーム第 1 回会合診察 : 特に外性器所見画像診断 : 超音波 MRI による性腺 内性器の確認採血 : 電解質 血糖 テストステロン ( 新生児期のテストステロンは RIA では必ずしも真の値をとらず しばしば偽高値を示すことに注意 ) ゴナドトロピン 染色体を検査する 症状により ACTH 17OHP cortisol SRY 検査 その他を追加する外科 副腎疾患の場合には治療を開始する親への心理的介入を開始する ( 社会的性が選択されるまで 出生の秘匿という方法もある ) 日齢 5 7 ( あるいは入院 5-7 日後 ) ケアチーム第 2 回会合染色体 ホルモンデータ等の結果確認 : この時点で十分なデータが揃っていれば 社会的性の選択を行う 検討が不十分であれば 検査項目を話し合い この時点では社会的性の選択は保留する 日齢 10 12( あるいは入院 10-12 日後 ) ケアチーム第 3 回会合社会的性選択保留例について話し合う 判定不能例については更に検討を重ねる 4. 性分化疾患のフォローアップ体制性分化疾患では 本人に対しては乳幼児期における外科的治療 小児期における成長発達 思春期における性成熟 生殖年齢における生殖能の評価と治療 そして 幼少時よりの心理的サポートが必要である 親に対しても出生時からの心理的サポートの継続が必要と考えられる 注 1 社会的性の選択は医学的かつ総合的評価の下に行う 注 2 選択した性は 選択理由とともに親に担当医 ( 性分化異常ケアチームの医師 ) から 提案 の形で伝え 決定は親に委ねるものとする 注 3 社会的性の決定は 出生届の期限の 14 日以内を目標とするが 拙速に判定し後に性変更等の混乱を来さないよう 慎重に行う このため 場合によっては性別保留のまま出生届を出すこともやむを得ない - 10 -

注 4 社会的性決定は 生後 1 ヶ月以内には完了するようにする 注 5 これらの検討の過程は文書にて保存する 注 6 必要に応じて遺伝子診断を行なう 注 7 患者会については 疾患の多様性から難しい点があるが 自然発生的に生まれたものについては これを支援する -11 -

戸籍の届出 戸籍法について 1) 届出戸籍法第四章第二節出生第四十九条出生の届出は 十四日以内 ( 国外で出生があったときは 三箇月以内 ) にこれをしなければならない 2 届書には 次の事項を記載しなければならない 一子の男女の別および嫡出子又は嫡出でない子の別二出生の年月日時分および場所三父母の氏名および本籍 父又は母が外国人であるときは その氏名および国籍四その他法務省令で定める事項 説明 : 上記の出生届が原則であるが 以下が可能である 1) 戸籍の未載について 男女性別は未載可 医師の証明書を添付し 追完 できる 名前も未載可 追完 できる ただし いずれの場合も 追完 の記録は残る 2) 届出そのものを遅らせることについて 14 日以内が原則であるが 遅れても受理はする ただしその場合 以下の過料が課せられる可能性がある 戸籍法第九章罰則第百三十五条正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は 五万円以下の過料に処する 3) 戸籍における性の変更について 医学的自由があり 妥当と認められる診断書が提出され家庭裁判所で認められれば性の変更は可能 変更の記録が残るが 転籍 結婚で性変更の記録は消える 4) 性同一性障害と性分化疾患における性同一性障害を伴わない性の変更の異同について性同一性障害者の性別については 厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書の提出などが定められている 基本的に性同一性障害を伴わない性分化疾患における性の変更 ( 診断の変更など医学的事由による ) とは区別して扱うべきである ただし 完全に別個に扱うことが不可能な事例もあることを認識して対処する 戸籍法第三章戸籍の記載第二十条の四性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律 ( 平成十五年法律第百十一号 ) 第三条第一項の規定による性別の取り扱いの変更の審判があった場合において 当該性別の取り扱いの変更の審判を受けた者の戸籍に記載されている者 ( その戸籍から除かれた者を含む ) が他にあるときは 当該性別の取り扱いの変更の審判を受けた者について新戸籍を編製する - 12 -