為替相場展望2018年9月号

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為替相場展望2018年12月号

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株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

株式市場 米国株 国内外の政治動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 好調な企業決算発表を受けて上昇米国株式市場は上昇しました 月前半までは2017 年 1-3 月期の決算発表内容が総じて好調であったことが株価を支えました 月半ばには コミー前 FBI( 連邦捜査局 )

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

PowerPoint プレゼンテーション

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

株式市場 米国株 年末商戦や金利動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米中首脳会談への期待から上昇米国株式市場は上昇しました 前半は中間選挙の結果が市場の事前想定通りとなったことなどから安心感が広がり株価は上昇しました 中旬では一部のハイテク企業が需要見通しを引き下げたこと

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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

Invesco Premia Plus Fund

PowerPoint プレゼンテーション

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経済金融・情勢資料  15年7月 

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退職等年金給付積立金 平成30年度第2四半期運用状況

日経平均株価 22,27.3 NY ダウ工業株 3 種 25,9.32 米ドル 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1, 12, 1,,, 2, 22, 1, 1, 1, 21 年 月 2 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~

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ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

日経平均株価 22,97. 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1,, 1,,, 21 年 7 月 23 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~21 年 7 月第 3 週末 ) 短期 ( 日次ベース ) (217 年 1 月初

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

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今月の経済・金融情勢

日経平均株価 21,1. NY ダウ工業株 3 種 2,.31 米ドル 2, 2, 22, 円 2, 1, 1, 1, 12, 1,,, 22, 1, 1, 1,, 21 年 1 月 29 日発行休場の場合は直前の営業日までのデータ 長期 ( 週次ベース ) (27 年 1 月第 1 週末 ~21

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

目次 概況 p.1~ トピックス1: 米中貿易摩擦が本格化 p.3 トピックス :~6 月期以降 個人消費は持ち直しに転じる見込み 景気 金利見通し p. p.5 Fed Watch:18 年の利上げペースが注目点に p.6 調査部マクロ経済研究センター ( 欧米経済グループ ) 研究員長野弘和 (

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経済・物価情勢の展望(2016年10月)

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

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Microsoft Word - 21年度資産運用概況.doc

月例経済報告

今月の経済金融情勢2018年12月25日号

月例経済報告

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

スライド 1

変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

Outlook201501

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TFX_フィスコ通貨ウォッチャー

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

Microsoft Word ECB利下げ.doc

Microsoft Word - 44_2

Outlook201812

2013 年 8 月 19 日号

スライド 1

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

2012 年 10 月 15 日号

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第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

Outlook201609

PowerPoint プレゼンテーション

平成30年度第1四半期における運用状況等

特別勘定の内容 目標値 110% または 120% の場合の特別勘定 種類 特別勘定の名称 投資対象となる投資信託 TMA 日本株式インデックスVA * 運用会社 資産運用関係費用 ( ( 年率 ) 注 ) 総合型 世界バランス 40TMA TMA 外国株式インデックスVA * TMA 日本債券イン

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

PowerPoint プレゼンテーション

経済の見通し 欧州 欧州経済は グローバル経済の堅調さを背景とした外需セクターの回復 労働市場の回復を背景にした堅調な個人消費 従来に比べ拡張的な財政政策による成長押し上げ効果を背景に潜在成長率を上回る成長が続いています 物価については 労働市場や経済の回復を背景にコアインフレ率 賃金上昇率は今後緩

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

Microsoft Word doc

マネーマーケットマンスリー

Outlook201806

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人民元週間レポート 2019 年 3 月 29 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

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実際 ドル円相場と日米金利差の推移をみると概ね相関していると言え その相関係数は振れを伴いながらもとりわけ高い相関を示している時期もあることが確認できる ( 前頁図表 1 2) 一方 最近みられる傾向として注目されるのがドル円相場と日本株の相関の高さである 2. ドル円相場と日本株の関係 (1) 高

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Outlook201608

円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

Microsoft Word - 20_2

スライド 1

マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

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Outlook201901

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

平成 28 年度第 3 四半期退職等年金給付組合積立金運用状況 警察共済組合

Microsoft Word - 20年度資産運用状況.doc

平成23年11月1日

金融政策決定会合における主な意見

Transcription:

相場展望 2018 年 9 月 調査部マクロ経済研究センター https://www.jri.co.jp/report/medium/exchange

目次 回顧 p. 1 ドル円分析 : 貿易戦争下でも米国景気が好調な限り ドルが底堅く推移 p. 2 ユーロ分析 : トルコ問題の波及一服も 伊財政不安でユーロ下振れリスク p. 3 見通し p. 4 調査部マクロ経済研究センター副主任研究員井上肇 ( Tel: 03-6833-0920 Mail: hajime.inoue@jri.co.jp ) 本資料は 2018 年 9 月 3 日 9:00 時点で利用可能な情報をもとに作成しています 本資料は 情報提供を目的に作成されたものであり 何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません 本資料は 作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが 情報の正確性 完全性を保証するものではありません また 情報の内容は 経済情勢等の変化により変更されることがありますので ご了承ください

回顧 : 月前半は 円 > ドル > ユーロ 月後半は強弱が反転 8 月のドル円相場総じて ~111 円台で小動き 月前半は 1 トランプ政権が 2,000 億ドル相当の対中輸入品への制裁関税の税率を 10% から 25% に引き上げることを検討していると発表したこと 2 対米関係が悪化したトルコの通貨リラの急落をきっかけに新興国に対する不安が高まったこと などを受けて リスク回避の動きが強まり 13 日にかけて 円台前半まで円高が進行 その後 トルコ中銀による通貨防衛策の発表などから 111 円台まで円が弱含む場面はあったものの トランプ大統領が FRB 議長の利上げ路線に不満を表明したとの報道を手掛かりに 21 日に 円割れ 月末にかけては NA FTA を巡る通商協議で米国とメキシコが大筋合意したことなどを受けて 一時 111 円台後半まで円安ドル高に振れたものの トランプ政権が 2,000 億ドル相当の対中輸入関税の早期発動を示唆したことや 米国とカナダの通商協議に不透明感が残ったことなどから 円安の流れも続かず 8 月のユーロ相場対ドルでは 1 イタリア政権内で来年度予算を巡る対立が生じていると報道されたこと 2 トルコの通貨リラが急落するなか トルコ向け与信が大きい欧州金融機関の財務悪化が懸念されたこと などから 15 日にかけて 1.13 ドル台までユーロが下落 月後半は 1 トルコ問題が欧州の金融システム全体を揺るがすことはないとの見方が広がったこと 2 トランプ大統領が FRB の利上げを批判したこと などから 一時 1.17 ドル台までユーロが反発 月末にかけては イタリアの財政政策を巡る不透明感が払拭されないなか ユーロの上値が重い展開 対円では イタリア政権内での来年度予算を巡る対立や トルコ向け与信が大きい欧州金融機関の財務悪化が懸念されたことから 月半ばには一時 125 円割れ 月後半は トルコ問題が欧州の金融システム全体を揺るがすことはないとの見方が広がり 130 円台までユーロが買い戻されたものの イタリアの財政政策を巡る不透明感が払拭されないなか ユーロ買い戻しは一服 ドル円相場 ユーロ円相場の推移 140 ユーロ円相場 135 130 125 ドル円相場 115 105 100 2017/9 10 11 12 18/1 2 3 4 5 6 7 8 ユーロドル相場の推移 ユーロドル相場の推移 ( ドル ) 1.30 ユーロ高 1.25 1.20 1.15 ユーロ安 1.10 2017/9 10 11 12 18/1 2 3 4 5 6 7 8 ( 資料 )Bloomberg L.P. - 1 -

ドル円分析 : 貿易戦争下でも米国景気が好調な限り ドルが底堅く推移 貿易摩擦は続くも 米景気は堅調で利上げ継続ドル円相場は 今春以降 上値が重いながらも 徐々に底堅さを増す展開 中長期的な成長率やインフレ率の見通しを反映しやすい米 10 年国債利回りの伸び悩みがドルの重石となる一方 政策金利見通しを反映しやすい米 2 年国債利回りの緩やかな上昇がドルを下支え ドル円相場と米金利 株価の相関をみると 足許で 10 年国債利回りよりも 2 年国債利回りとの相関が高くなっているほか 株価との相関も高まる方向 先行き 米国では中国との貿易戦争が景気抑制に作用するとみられるものの 財政刺激策による下支えもあり 景気は堅調に推移する見通し 当面 F RB は着実に利上げを続けると予想され 2 年国債利回りの緩やかな上昇が続く見込み 米国株も 貿易摩擦に対する懸念などが重石となるものの 好調な企業業績が予想されることから 上昇トレンドが続く見込み インフレ率が顕著に高まる兆しはみられないなか 長期金利の上昇余地が限られると予想されることも株価を下支え 主要国のなかで相対的に高金利かつ高成長が期待できる米国に資金が流入しやすい状況下 基調としては円安ドル高の流れが続く見込み 来年にかけて米国景気のモメンタムは低下へただし 米国では 財政拡大や金融緩和の効果が減衰するにつれて景気減速が予想されるなか 政策金利が FOMC 参加者の想定する中立金利 ( 長期の政策金利見通し ) に接近する来年半ばにかけて利上げ打ち止め観測が高まりやすくなる見込み 米国株の上昇モメンタムの低下と米 2 年債利回りの頭打ちがドルの上値を抑える要因に 先行き 米 10 年国債利回りが伸び悩む一方 2 年国債利回りが上昇することで 長短金利差は一段と縮小する公算大 過去の経験則として 米国では逆イールドが発生後 景気後退に陥り ドル円相場では投資資金の巻き戻しなどにより 円高が進む傾向 FOMC 参加者の大半は逆イールドが発生しても 景気後退に陥ることを過度に懸念する必要はないとの立場であるものの 市場参加者がこうした懸念を強めた場合 円高が進みやすくなる可能性 3.2 2.8 2.6 2.4 2.2 1.8 18/1 2 3 4 5 6 7 8 7 6 5 4 3 2 1 米国金利とドル円相場 米 10 年国債利回り ( 左 ) 米 2 年債利回り ( 左 ) ドル円相場 ( 右 ) ( 資料 )Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 米国の政策金利と国債利回り 10 年債利回り 2 年債利回り政策金利 (FF 金利 ) FOMC 参加者の長期の政策金利見通し 114 112 108 106 104 0 1998 2000 02 04 06 08 10 12 14 16 18 ( 資料 )NBER FRB Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 ( 注 ) シャドー部は景気後退期 FOMC 参加者の長期の政策金利 見通しは中央値 ドル円相場と米金利 株価との相関係数 米 S&P500 米 10 年国債利回り 米 2 年国債利回り 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 17 18 ( 資料 )Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 ( 注 ) 相関係数は130 日相関から導出 米国の長短金利差とドル円相場 ドル円相場と米金利 株価との相関係数 (% ポイント ) 4 長短金利差 ( 左 ) 170 ドル円相場 ( 右 ) 160 3 150 2 140 130 1 0 100 1 90 80 2 70 85 90 95 00 05 10 15 ( 資料 )NBER Bloomberg L.P. を基に日本総研作成 ( 注 ) シャドー部は景気後退期 長短金利差は 10 年国債利回り -2 年国債利回り で算出 - 2 -

ユーロ分析 : トルコ問題の波及一服も 伊財政不安でユーロ下振れリスク 懸念はトルコ ショックから伊財政問題へ 8 月入り後 トルコの通貨リラが急落するなか 月半ばにかけてトルコ向け債権を多く保有する欧州金融機関の財務悪化に対する懸念が強まり ユーロ安が加速 実際 国際与信統計をみると フランス イタリア スペインの 3 ヵ国の金融機関だけでトルコ向け国際与信全体の約 6 割を占有 一方 これら 3 ヵ国の金融機関の対外与信に占めるトルコ向けの割合は平均すると 2% 程度 最大のスペインでも 4% 台にとどまる状況 月半ば以降は 欧州の金融ステム全体が不安定化する事態は回避されるとの見方が広がり ユーロが買い戻される展開に もっとも 当面はユーロ圏景気の方向感が見極めにくい状況下 ユーロの上値の重い展開が続く見込み ユーロ圏の景気モメンタムをみるうえで注目される総合 PMI は 年初から大きく水準を切り下げた後 足許にかけてようやく下げ止まった段階 今秋にかけては イタリアの財政不安次第でユーロが下振れするリスク 8 月には 自国金融機関のトルコ向け与信が大きいフランス イタリア スペインの国債利回りの対独スプレッドが拡大したなかで 同問題と財政不安が 共鳴 したイタリアの拡大幅が突出 9 月以降 新年度予算の年内成立に向けて 財政拡大を掲げるポピュリズム政党 五つ星運動 同盟 の両党首 ( 副首相 ) と財政規律を重視するトリア経財相との路線対立や EU の財政ルールの順守を求める欧州委員会との衝突が懸念される状況 一段落後はファンダメンタルズ回帰へ最終的に 欧州委員会がイタリアの難民受け入れと引き換えに若干の財政赤字拡大を許容するなどの形で予算が年内に成立する見通しとなれば 市場の関心はファンダメンタルズに向かいやすくなる見込み ユーロ圏では 非自発的パートタイム従事者などを含めた広義の失業率が低下するなか 賃金上昇率が高まる兆し 年末以降 景気が底堅く推移するなかで 賃金や物価の伸びが徐々に持ち直していけば 来年秋のECBの利上げ着手が意識されるなかで ユーロ高に振れやすくなる見込み トルコ向け国際与信に占める割合 ( 左 ) 70 対外与信に占めるトルコ向けの割合 ( 右 ) 5.0 60 50 40 30 20 10 0 フランスイタリアスペイン 3 ヵ国計 ( 資料 )BIS を基に日本総研作成 ( 注 ) 与信は最終リスクベース 2.5 1.5 0.5 ユーロ圏主要国金融機関のトルコ向け与信 ユーロ圏主要国債利回りの対独スプレッド 10 年国債利回りの対独スプレッド 0.0 17 18 ( 資料 )Bloomberg L.P. - 3 - フランス イタリア スペイン 4.5 4.0 3.5 2.5 1.5 0.5 0.0 ( ポイント ) 62 米国 61 ユーロ圏 60 59 58 57 56 55 54 53 52 51 50 49 14 15 16 17 18 ( 資料 )IHS Markit 広義失業率 ( 左逆目盛 ) 14 協約賃金 ( 前年比 右目盛 ) 4.0 15 1 人当たり雇用者報酬 ( ) 3.5 16 17 18 19 20 21 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 ( 資料 )Eurostat ECB 米欧の総合 PMI 主要国の総合 PMI ユーロ圏の広義失業率と時間当たり賃金 2.5 1.5 0.5 ( 年 / 期 )

見通し : 当面 ドル円は横ばい圏 ユーロは軟調地合い ドル円相場 : 狭いレンジでの推移財政刺激策の下支えなどにより 米国景気の順調な拡大が見込まれるなか 着実に利上げを進めるFRBと 金融緩和の出口に向けて容易に動けない日銀との金融政策の方向性の違いを反映して 基調としては円安ドル高の流れが続く見込み ただし 米国の対中追加関税や中国からの報復関税 米国とカナダとのNAFTA 再交渉の行方などに不透明感が残るなか 円安ドル高進行余地は限られる見込み 来年半ばにかけては 米国で財政拡大や金融緩和の効果が減衰するにつれて景気減速が予想されるなか FRBの利上げ打ち止め観測の高まりがドルの上値を抑える要因となる公算大 ユーロドル相場 : 当面はユーロ軟調地合い当面は 利上げを急がないECBと 着実に利上げを続ける米 FRBとの金融政策スタンスの差を反映して ユーロ軟調地合いが続く見込み イタリアの財政不安の高まりなどが折に触れユーロ安を加速させる要因に 来年入り以降は ユーロ圏景気の底堅い回復が続くなかで 秋以降の利上げ着手が意識されるE CBと 利上げの打ち止めが意識されるFRBという金融政策の局面の違いを反映して ユーロが堅調さを取り戻していく見込み ユーロ円相場 : 当面はユーロの上値の重い展開 ECBが利上げを急がない姿勢を示すなか 当面はユーロの上値の重い展開が続く見込み イタリアの財政不安やトランプ政権の保護主義に対する懸念の高まりが リスク回避の動きを通じて折に触れ円高ユーロ安要因に 来年入り以降は ユーロ圏景気の底堅い回復が続くなかで 金融政策の正常化を進めるECBと金融緩和の出口に向けて容易に動けない日銀との金融政策の方向性の違いを反映して ユーロ高基調に復していく見通し ドル円相場見通し 2018 年 2019 年 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 期中平均 109.13 111 111 112 112 ( 高値 ) 111.40 ~115 ~116 ~117 ~117 ~レンジ ( 安値 ) 105.66 107 107 108 108 ( ドル ) 2018 年 2019 年 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 期中平均 1.1907 1.17 1.17 1.19 1.21 ( 高値 ) 1.2415 1.22 1.22 1.24 1.26 レンジ ( 安値 ) 1.1508 1.12 1.12 1.14 1.16 2018 年 2019 年 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 期中平均 130.09 129 130 133 135 ( 高値 ) 133.49 ~136 ~137 ~140 ~142 ~レンジ ( 安値 ) 124.62 122 123 126 128 ドル円相場見通し 115 105 ユーロドル相場見通し ユーロ円相場見通し 100 17/6 9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 ( 年 / 月末 ) ( ト ル ) 1.30 1.25 1.20 1.15 1.10 17/6 9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 ( 年 / 月末 ) 145 140 135 130 125 17/6 9 12 18/3 6 9 12 19/3 6 ( 年 / 月末 ) - 4 -

内外市場データ ( 月中平均 ) _ 相場 国内市場 米国市場 欧州市場 商品市況 /$ / $/ 無担 O/N TIBOR 国債 日経平均 FF O/N LIBOR 国債 NYダウ S&P500 EONIA EURIBOR 独国債 英国債 ユーロ WTI COMEX (NY 終値 ) (NY 終値 ) (NY 終値 ) 3ヵ月 10 年物 株価 3ヵ月 10 年物 工業株 3ヵ月 10 年物 10 年物 ストックス50 原油先物 金先物 ( ドル ) ($/B) ($/TO) 15/9.09 134.95 1.1237 0.0734 0.17 0.36 17944.22 0.14 0.33 2.16 16339.95 1944.40 0.14 0.04 0.68 1.85 3165.46 45.47 1125.38 15/10.16 134.81 1.1220 0.0761 0.17 0.31 18374.11 0.12 0.32 6 17182.28 2024.81 0.14 0.05 0.55 1.81 3275.48 46.29 1157.86 15/11 122.63 131.56 729 0.0781 0.17 0.31 19581.77 0.12 0.37 2.26 17723.77 2080.62 0.14 0.09 0.55 1.94 3439.57 42.92 1084.99 15/12 121.58 132.51 899 0.0749 0.17 0.30 19202.58 0.24 0.53 2.23 17542.85 2054.08 0.20 0.13 0.60 1.88 3288.63 37.33 1068.83 16/1 118.29 128.54 867 0.0745 0.17 0.22 17302.30 0.34 0.62 8 16305.25 1918.60 0.24 0.15 0.51 1.74 3030.50 31.78 1096.42 16/2 114.67 127.31 1.4 0.0325 0.11 0.02 16346.96 0.38 0.62 1.77 16299.90 1904.42 0.24 0.18 0.23 1.44 2862.59 30.62 8 16/3 112.95 125.83 1.1142 0.0027 0.10 0.06 16897.34 0.36 0.63 1.88 17302.14 2021.95 0.29 0.23 0.22 1.47 3031.42 37.96 1243.96 16/4 109.58 124.25 1.1339 0.0366 0.08 0.09 16543.47 0.37 0.63 1.80 17844.37 2075.54 0.34 0.25 0.18 1.48 3031.18 41.12 1248 16/5 109.00 123.13 1.1298 0.0589 0.06 0.11 16612.67 0.37 0.64 1.80 17692.32 2065.55 0.34 0.26 0.16 1.44 2983.70 46.80 1256.37 16/6 105.46 118.55 1.1242 0.0553 0.06 0.16 16068.81 0.38 0.65 1.64 17754.87 2083.89 0.33 0.27 0.01 1.18 2910.80 48.85 1276.23 16/7 104.09 115.17 1.1064 0.0431 0.06 0.26 16168.32 0.39 0.70 1.49 18341.18 2148.90 0.33 0.30 0.09 0.79 2919.08 44.80 1339.84 16/8 101.31 113.51 1.5 0.0434 0.06 0.09 16586.07 0.40 0.81 1.56 18495.19 2177.48 0.34 0.30 0.07 0.61 2992.87 44.80 1338.44 16/9 101.83 114.18 1.1213 0.0516 0.06 0.05 16737.04 0.40 0.85 1.62 18267.40 2157.69 0.34 0.30 0.05 0.77 3019 45.23 1326.45 16/10 103.85 114.48 1.1024 0.0368 0.06 0.06 17044.51 0.40 0.88 1.75 18184.55 2142 0.35 0.31 0.04 4 3042.33 49.94 1265.84 16/11 108.63 117.09 786 0.0492 0.06 0.01 17689.54 0.41 0.91 2.15 18697.33 2164.99 0.35 0.31 0.24 1.34 3026.40 45.76 1234.22 16/12 116.12 122.35 538 0.0440 0.06 0.05 19066.03 0.54 0.98 2.49 19712.42 2246.63 0.35 0.32 0.29 1.39 3207.27 52.17 1150.49 17/1 114.92 122.17 632 0.0448 0.06 0.06 19194.06 0.65 3 2.43 19908.15 2275.12 0.35 0.33 0.35 1.37 3298.77 52.61 1192.47 17/2 112.99.23 641 0.0381 0.06 0.09 19188.73 0.66 4 2.42 20424.14 2329.91 0.35 0.33 0.32 1.25 3293.10 53.46 1234.97 17/3 112.92.67 687 0.0416 0.06 0.07 19340.18 0.79 1.13 2.48 20826 2366.82 0.35 0.33 0.39 1.20 3427.10 49.67 1231.31 17/4.04 117.93 717 0.0545 0.06 0.03 18736.39 0.90 1.16 2.29 20684.69 2359.31 0.36 0.33 0.25 6 3491.83 51.12 1271.21 17/5 112.24 124.09 1.1057 0.0527 0.06 0.04 19726.76 0.91 1.19 2.30 20936.81 2395.35 0.36 0.33 0.38 9 3601.87 48.54 1245.50 17/6.97 124.70 1.1238 0.0556 0.06 0.05 20045.63 4 1.26 2.18 21317.80 2433.99 0.36 0.33 0.29 5 3547.85 45.20 1259.99 17/7 112.38 129.59 1.1532 0.0542 0.06 0.08 20044.86 1.15 1.31 2.31 21581.25 2454.10 0.36 0.33 0.54 1.25 3483.89 46.68 1237.66 17/8 109.84 129.81 1.1818 0.0493 0.06 0.04 19670.17 1.16 1.31 2.20 21914.08 2456.22 0.36 0.33 0.42 1.10 3451.34 48.06 1284.21 17/9.81 131.93 1.1906 0.0579 0.06 0.02 19924.40 1.15 1.32 2.20 22173.41 2492.84 0.36 0.33 0.41 1.21 3507.10 49.88 1315.37 17/10 112.93 132.75 1.1755 0.0371 0.06 0.06 21267.49 1.15 1.36 2.36 23036.24 2557.00 0.36 0.33 0.43 1.35 3614.75 51.59 1280.89 17/11 112.82 132.48 1.1744 0.0483 0.06 0.04 22525.15 1.16 1.43 2.35 23557.93 2593.61 0.35 0.33 0.36 1.28 3601.43 56.66 1282.11 17/12 112.93 133.68 1.1838 0.0422 0.06 0.05 22769.89 1.30 1.60 2.41 24545.38 2664.34 0.34 0.33 0.35 1.22 3564.66 57.95 1267.01 18/1.97 135.28 1.2193 0.0396 0.07 0.07 23712.21 1.41 1.73 2.57 25804.02 2789.80 0.36 0.33 0.55 1.33 3612.16 63.66 1330.67 18/2 107.86 133.14 1.2344 0.0419 0.07 0.06 21991.68 1.42 1.87 2.86 24981.55 2705.16 0.37 0.33 0.72 1.57 3426.71 62.18 1331.70 18/3 106.10 130.87 1.2336 0.0617 0.07 0.04 21395.51 1.51 2.17 2.84 24582.17 2702.77 0.36 0.33 0.59 1.45 3374.30 62.77 1326.41 18/4 107.62 138 1.2273 0.0627 0.09 0.04 21868.79 1.69 2.35 2.87 24304.21 2653.63 0.37 0.33 0.55 1.44 3457.62 66.33 1335.00 18/5 109.71 129.59 1.1813 0.0612 0.10 0.05 22590.05 1.70 2.34 2.98 24572.53 2701.49 0.36 0.33 0.52 1.42 3537.09 69.98 1303.30 18/6.13 128.55 1.1672 0.0710 0.08 0.04 22562.88 1.82 2.33 2.91 24790.11 2754.35 0.36 0.32 0.40 1.32 3442.77 67.32 1280.40 18/7 111.47 130.27 1.1686 0.0700 0.09 0.05 22309.06 1.91 2.34 2.89 24978.23 2793.64 0.36 0.32 0.36 1.27 3460.89 70.58 1237.70 18/8 113 128.22 1.1548 0.0593 0.09 0.10 22494.14 1.92 2.32 2.89 25629.99 2857.82 0.36 0.32 0.36 1.31 3436.83 67.85 0.43