平成 20 年 2 月 19 日第 3 回東海フォーラム IAEA( 国際原子力機関 ) の査察技術開発への協力 - 日本発の技術で核不拡散に貢献 - 独立行政法人日本原子力研究開発機構プルトニウム燃料技術開発センター技術部次長高橋三郎 1
原子力開発を支える 4 つの車輪 核不拡散 原子力 核物質防護 情報公開 保障措置 安全確保 人類の豊かな生活へ 2
核不拡散 ( 核物質防護と保障措置 ) 核物質防護 : 核物質の盗取や施設の破壊を防ぐこと カメラシステム 車両ゲート磁気カードサーベランスシステム 監視室 侵入検知センサー 出入管理システム 保障措置 : 核物質の平和利用を世界に証明すること 3
保障措置の仕組み 国際原子力機関 (IAEA) 報告 評価結果 文部科学省 査察 報告 査察 核物質の計量管理 原子力施設 4
国際原子力機関 (IAEA) 原子力の平和利用を推進 原子力の軍事目的への転用を検知 監視 IAEA IAEA 本部本部 (( オーストリア ウィーンオーストリア ウィーン )) IAEA IAEAとエルバラダイ事務局長ノーベル平和賞を受賞 (2005 (2005 年 )) 5
計量管理 計量管理とは 原子力施設にある核物質の所在 量 形状 組成を厳密に管理すること ( 例 MOX 燃料施設の場合 ) 搬入量 移動量移動量移動量 搬出量 原料 粉末ペレット燃料ピン集合体 測定 記録 報告 国及び IAEA 6
査察ではどのようなことが行われるの? (1) 計量管理記録の検査 計量管理記録の確認作業 計量管理記録に不整合がないかの確認 7
王冠シール貯蔵容器査察ではどのようなことが行われるの? (2) 封印と監視 監視カメラ 貯蔵庫 貯蔵庫は常時監視されている 8
査察ではどのようなことが行われるの? (3) 重量測定と破壊分析 重量測定試料の採取と破壊分析 + 輸送 IAEA の標準分銅 IAEA 分析所 測定結果の解析測定結果の解析 高精度に核物質量を確認 核物質分析装置核物質分析装置 9
査察ではどのようなことが行われるの? (4) 非破壊測定 中性子 検出器 中性子の数で Pu 量を測定 短時間で核物質量を確認 10
核燃料サイクル工学研究所 ( サイクル研 ) (1) どのような原子力施設があるか? サイクル研において研究開発を実施している施設 MOX 燃料 転換 ウラン濃縮 MOX 燃料施設 高速増殖炉 ( もんじゅ 常陽 ) 次世代燃料 サイクル 高速炉燃料再処理 (R&D 施設 ) 軽水炉燃料サイクル軽水炉燃料再処理 燃料加工 廃棄物処理 処分 (R&D 施設 ) 軽水炉 高レベル放射性物質研究施設 ガラス固化技術開発施設 (TVF) 地層処分基盤研究施設 ( エントリー ) 再処理施設 11
サイクル研 (2) 再処理施設 査察の特徴 運転中 : 毎日査察を実施 ( 査察官が常駐 ) 停止中 : 毎月毎月 1 回の査察を実施 ( 査察官 1 人が人が5 日間日間 ) 12
サイクル研 (3)MOX 燃料施設 査察の特徴 毎月毎月 1 回の査察を実施 ( 査察官 7 人が人が2 日間日間 ) 13
サイクル研 (4) 査察の実績 プルトニウムを取扱う施設では ウランだけを取扱う施設に比べてより厳しい査察を実施 有意量 * 査察の頻度査察での測定数 プルトニウム 8 kg Pu 1 ヶ月毎多 ウラン 75 kg U235 (3% の濃縮 U の場合 2.5 ton U に相当 ) *: 核爆発装置 1 個の製造に必要な核物質のおおよその量 1 年毎少 日本 約 2,300 人 日 MOX 燃料施設約 500 人 日 その他の国 その他の施設 再処理施設約 600 人 日 世界の査察実績 ( 約 10,000 人 日 ) 日本の査察実績 14
保障措置技術開発 (1) その必要性 ( 施設の大型化 自動化への対応 ) 大型 自動化施設の特徴 核物質の取扱い量の増大 設備の自動化 従来の査察方法 IAEAが査察機器を持ち込み 核物質に直接接近して測定 従来の査察方法を踏襲した場合の課題 査察業務量の増加 施設停止日数の増加 査察に伴う被ばくの増加 自動化設備と調和した保障措置システムの開発 15
保障措置技術開発 (2) 査察官非立会測定システムの開発 中性子測定装置を核物質の自動搬送台車に組込むことにより 査察官がその場にいなくても 施設運転中に査察に必要なデータを自動的に取得できるシステム 貯蔵容器 世界で初めて開発及び実証 査察業務量の低減に寄与 世界の原子力施設において広く採用 移動監視装置 非破壊測定データ ( 移動方向 ) ( 中性子計数率 ) ( 時間 ) 自動搬送台車 貯蔵庫 容器番号読み取りカメラ 非破壊測定装置 画像データ 非破壊測定データ ( プルトニウム量 ) 貯蔵容器測定システム 日付 No.001 No.001A No.001 2001/1/23 2001/1/23 2001/1/23 時刻 計数値 01/1/23 10:01 3232±12.2 01/1/23 10:02 3216±11.8 01/1/23 10:03 3178±11.1 01/1/23 10:04 3265±12.1 16
保障措置技術開発 (3) 遠隔監視システムの開発 施設内に蓄えられた査察データを査察側事務所に伝送することにより 査察側が遠隔地で査察情報を自動的に取得できるシステム 世界で初めて開発及び実証 ( 非破壊測定情報 ) 査察官の施設訪問を不要 施設運転の透明性を向上 IAEA IAEA GPS 時間信号 インターネット データ評価用コンピュータ NDA データ機器情報データ MDS 収 集 転 送 防護評価暗号化 / 認証 JSGO国 VPN PCAS 計数装置 ( AMSR ) データ収集用コンピュータ データ転送用サーバ 遠隔監視システム データ評価用コンピュータ 17
保障措置技術開発の成果 (1) 核不拡散への貢献 1 IAEA 保障措置への貢献 査察業務量の削減に寄与 開発技術の他国での活用 (IAEA 査察技術の標準化 ) 2 解体核の検証への貢献 Pu Pu 在庫量と在庫量と IAEA IAEA 査察業務量の推移査察業務量の推移 88 年を 100 とした相対値 (%) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 フ ルトニウム在庫量査察業務量 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 ( 暦年 ) NPT 保障措置適用開始 第三開発室運転開始 Pu 転換,Pu 第一, 第二, 第三開発室を対象 米国とロシアの解体核の検証技術ワークショップの風景 18
保障措置技術開発の成果 (2) 六ヵ所核燃料サイクル施設への貢献 六ヵ所核燃料サイクル施設 ( 再処理施設及び MOX 燃料加工施設 ) への技術移転 サイクル研で開発された保障措置技術 六ヶ所 計量管理システム 廃棄物測定システム ガラス固化体モニタリ ングシステム 技術移転技術移転 東海 集合体測定システム 溶液モニタリングシステム ハルカスク測定システム 19
新しい保障措置への取組み (1) IAEA 保障措置の強化 イラクの核開発計画の発覚 (1991 年 ) 北朝鮮の核開発疑惑 (1993 年 ) それまでの IAEA のやり方では不十分 IAEA に新たな権限を付与 (1997 年 ) 新たな権限で強化された保障措置従来の保障措置申告された核物質及び原子力活動のみ確認 未申告の核物質及び原子力活動を探知 高度環境分析所 ( 原子力科学研究所 ) 日本でも強化保障措置を実施 (2000 年 ) 20
新しい保障措置への取組み (2) IAEA 保障措置の合理化 従来の保障措置 + 強化保障措置 両者を統合し運用すること 120 100 査察量の減少で 合理化を図る査統合保障措置 問題がない国については査察レベルを緩和 80 察量60 40 20 この分を 問題がありそうな国にまわすのじゃな! 0 従来の保障措置 統合保障措置 21
新しい保障措置への取組み (3) 日本における統合保障措置 IAEA は 2004 年 9 月に 日本に対して統合保障措置への移行を決定 その他の保障措置 8 北朝鮮 1 大規模な原子力活動を行っている国としては 日本が初めて統合保障措置への移行が認められた 従来の保障措置 + 従来の保障措置 77 IAEA の保障措置下にある国 156 ヶ国 強化保障措置 70 このうち 9 ヶ国 (*) が統合保障措置への移行が認められた (2005 年末現在 ) ウラン取扱い施設は適用開始 軽水炉 研究炉 ウラン加工施設 *: 日本 オーストラリア ハンガリー インドネシア ノルウェー ペルー ウズベキスタン ブルガリア スロベニア プルトニウム取扱い施設へのプルトニウム取扱い施設への適用方法を検討中適用方法を検討中 22
新しい保障措置への取り組み (4) 抜き打ち査察 プルトニウムを取扱う施設の統合保障措置手法 サイクル研が開発した技術の最適な組合せ ( 査察官非立会い検認システムや遠隔監視システム等 ) 抜き打ち査察の導入 さて 今日の抜き打ちはどの施設にしようかな? 抜き打ち査察とは? 抜き打ち査察は 直前 ( 短時間 ) の通告で いつでも どこでも立ち入り可能 効果 不正な原子力活動の抑止効果の向上 23
新しい保障措置への取組み (5) サイクル研の今後の役割 サイクル研は これまで開発してきた技術を基に 統合保障措置手法を構築し IAEA に提案 世界で初めて プルトニウム取扱い施設で統合保障措置を実証する ( 予定 ) サイクル研は今後も核不拡散分野において先導的役割を果たしていく 24