森林資源の循環利用に向けた再造林の推進伐採と造林の一貫作業システムは 伐採に使用した高性能林業機械を用いて残された末木枝条を整理して地拵えを行ったり 搬出に使用したフォワーダを用いて苗木を運搬して 植栽を行う方法です 従来の人力による方法に比べ 林業機械を活用することにより伐採から地拵え 植栽までの

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再造林 育林の低コスト化に関する指針 育林の低コスト化に関する指針平成 27 年 3 月高知県林業振興 環境部 1 指針の目的平成 24 年 9 月に策定した 皆伐と更新の指針 では 伐採時期を迎えた人工林を皆伐した後 再造林の適地と判断される伐採跡地では 森林資源の持続的な利用を図るうえでも再造林

1 花粉症対策に資するスギ苗木の開発 供給等 (1) 都道府県は 国立研究開発法人森林研究 整備機構森林総合研究所林木育種センター ( 以下 林木育種センター という ) 等と連携を図りつつ 地域のニーズに応じた花粉症対策に資するスギ苗木の生産を進めるため 新たな花粉症対策品種の開発や 特定間伐等及

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種類諸元等特大ドローン( 特注品 ) 部品を海外から取り寄せて組立 諸元 : 大きさ約 250cm 重さ 30.0kg 用途 : 20kg 程度の資材運搬 ( 裸苗 240 本 コンテナ苗 80 本程度 ) 駆動時間 : 約 15 分程度大型ドローン( 市販製品 ) 空撮用に一眼レフをカスタマイズし

平成 30 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

図、表、写真等

平成 28 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

目 次 平成 27 年度九州森林管理局重点取組事項 1 公益重視の管理経営の一層の推進 1 森林資源の循環利用による多面的機能の維持増進 ページ 1 2 国民生活の安全 安心の確保に向けた取組 (1) 民国連携した治山事業 (2) 海岸防災林の整備に向けた検討 (3) 木材の利用推進及び生物多様性保

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Taro-H28 地域別変更計画(一斉変更)_281115

様式 2 作成年度 平成 28 年度 森林整備加速化 林業再生基金変更事業計画書 区分 : 強い林業 木材産業構築緊急対策 区分 : 林業成長産業化総合対策 福井県

利用することをいう (4) 林業事業者森林において森林施業 ( 伐採, 植栽, 保育その他の森林における施業をいう 第 12 条において同じ ) を行う者をいう (5) 木材産業事業者木材の加工又は流通に関する事業を行う者をいう (6) 建築関係事業者建築物の設計又は施工に関する事業を行う者をいう

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立木販売のご案内 ~ 多くの森林が主伐期を迎える中で立木販売を進めています ~ 四国森林管理局

図、表、写真等

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森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の運用のガイドライン 平成 20 年 6 月 13 日 20 林整整第 328 号林野庁長官より各都道府県知事 ( 独 ) 森林総合研究所あて最終改正 : 平成 29 年 3 月 24 日 28 林政企第 416 号 第 1 基本方針 1 基本方針の策定森林

( ) 頻度 % 含油率 (%) 図 1 選抜と交配の繰り返しによるトウモロコシの含油量の変化 (Allard 1960) 図中の番号は世代数を表す 図 2 林木の世代更新による品種開発の基本モデルと循環システム ( 栗延 1993 改編 ) 2 スギ ヒノキ第 2 世代精英樹の選抜関西育種場では

森林整備事業では 国土の保全 水源の涵養 自然環境の保全 林産物の供給の森林の有する多面的機能の維持 増進を目的に 対象森林に応じた 以下の2つの方針に基づき 造林や間伐の森林整備への支援を行っています 条件不利地や気象害の被害森林では 森林所有者との協定に基づき市町村が行う森林整備を支援 森林の多

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植栽については ヘクタール当たりの植栽本数を標準的な 本から 本や 本に減らす低密度植栽が各地で試行されている 低密度植栽は 苗木や植栽の費用の削減だけでなく 下刈の省力化や保育間伐の省略等 全般的な費用の縮減につながることが見込まれるが 植栽木の生存率や成長 材質への影響等の実績をみながら 取組を


条件不利地や気象害の被害森林では 我が国の人工林が利用期を迎える中 森林施業の集約化や路網整備を通じて施業の 低コスト化を図りつつ 森林所有者による適切な森林整備を進めることにより 森林の 有する多面的機能の発揮を図りつつ 林業の成長産業化を実現していくことが重要です 一方 奥地の条件不利地や 気象

機械化林業平成 29 年 6 月号掲載 大型機械による地拵の効果について 下刈の省力化による低コスト造林の可能性を探るー 北海道森林管理局森林技術 支援センター山嵜孝一 1. はじめに北海道の林床を特徴づけるササ類は 旺盛な繁殖力と強い適応性を持っています そのため 人工造林の主要樹種であるトドマツ

り植栽後の成長が悪くなる現象が見られました コンテナ苗では各キャビティの側面に根巻きを防ぐためのリブという突起やスリットという切れ目が縦方向に入っています また キャビティの底には穴が開いていて 底に達した根が空気に触れ成長が止まり 根が過度に伸長しない構造になっています コンテナ苗はキャビティ内で

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第 1. 基本的事項 1. 都道府県の森林整備及び林業 木材産業の現状と課題 1 森林整備の現状と課題本県の人工林面積の主な樹種別の構成割合は スギ 71% アテ 12% マツ 9% である 齢級構成は 10~11 齢級をピークとした偏った構成となっており 保育や間伐を必要とする 9 齢級以下のもの

緑の雇用 事業を開始するまでは 林業の新規就業者数は年平均約 2 千人程度でしたが 事業 を開始した以後は約 3 千 4 百人に増加し 平成 22 年度には 4,013 人となっています ( 図 ) 2

を行うために 林地の地表で経済性のある生薬原料等を栽培すること ( 林草間作 ) 退耕環林を行う農家の希望を十分に聞き 種苗 資金 管理 人力 技術について 丁寧に指導すること等を基本として実施されています また 環林に要する種苗代の支給 退耕環林によって耕地を失う農家への穀物と補助金の支給等 農民

(1) 森林の状況 森林蓄積の推移蓄積1 森林の現状と課題 我が国は世界有数の森林国 森林面積は国土面積の 3 分の 2 にあたる約 2,500 万 ha( 人工林は約 1,000 万 ha) 森林資源は人工林を中心に蓄積が毎年約 7 千万 m³ 増加し 現在は約 52 億 m³ 人工林の半数が一般

補助林道開設事業 108,737 効率的な林業経営の展開や森林の適正な維持管 理を図るための林道の開設や改良を行う 1 事業主体 市町 2 事業実施箇所 新規 (4) 継続(3) 3 事業内容 林道の開設 改良 橋梁点検 診断 路線名 市町名 事業内容 負担区分 大奴田 岩国市 林道開設 L=100

Taro-H27 課題2 繰上完了報告(任意様式)

欄の記載方法について 原則として 都道府県毎の天然更新完了基準に定められた更新調査 ( 標準地調査 ) の結果を元に造林本数欄に更新本数を記載する ただし 調査せずとも天然更新完了基準を明らかに満たしていると判断できる場合 ( 例えば 小面積の伐採等 ) には 造林地の写真その他の更新状況のわかる資

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平成 30 年度造林補助事業 (1- 四半期 ) の標準単価適用にあたっての留意事項 ( 共通事項等 ) 1 (1) ア イ ウ (2) アイウ エ (3) ア イ (4) 単価は 請負施行 請負施行以外 及び 消費税抜き の 3 通りとし その適用については次による 請負施行市町村 おかやまの森整

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はじめに 長野県林業総合センターは 本県の森林 林業の試験研究及び林業の担い手養成機関として昭和 36 年に林業指導所として始まり 森林 林業に対する社会的な要請が多様化したことに対処するため昭和 63 年には機能を拡充強化し 林業総合センターに改組され今日に至っております この間 林業生産技術の改

域1 2= 鬼怒川流1 日光森林管理署の管内概要 日光森林管理署は 栃木県内の日光市 宇都宮市 足利市 佐野市 鹿沼市及び益子町の 6 市町に所在する国有林 8 万 5 千ヘクタールを管理しています 鬼怒川 渡良瀬川等の上流部の森林で首都圏の水がめとなっていること 奥日光や鬼怒

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平成 30 年度九州森林管理局重点 7 項目 1 確実な再造林の実施に向けた造林コストの低減 2 生産性の向上による担い手の育成 3 深刻化するシカ被害への対応 4 優れた自然環境を有する森林の保全 5 森林総合監理士の活動等を通じた市町村林務行政の支援 6 森林景観を活かした観光資源の創出 7 被

第 3 章林業編 Ⅰ 基本的な考え方 1 目指す姿県産材 40 万 m 3 が, 社会において有効な資源として継続的に利活用されるとともに, 林業の利益率を改善することで, 産業として自立できる林業経営の確立を目指します 2 目指す姿の実現に向けた取組の方向性 県内に存する民有林のスギ ヒノキ人工林

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

Ⅲ 林業

森林科学59号表紙

4 奨励品種決定調査 (1) 奨励品種決定調査の種類ア基本調査供試される品種につき 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験その他の方法によりその特性の概略を明らかにする イ現地調査県内の自然的経済的条件を勘案して区分した地域 ( 以下 奨励品種適応地域 という ) ごとに 栽培試験を行うことに

木材産業等高度化推進資金とは 木材産業等高度化推進資金 ( 以下 推進資金 と呼びます ) は 木材の生産及び流通を円滑にすることや効率的 安定的な林業経営を育成することを目的に 運転資金を低利で融資する制度資金です ご利用には 合理化計画や林業経営改善計画を作成し都道府県知事の認定を受けることが必

アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

1. 労務単価 平成 30 年度 2 省協定単価 普通作業員 20,100 円 特殊作業員 22,300 円 特殊運転手 22,800 円 軽作業員 13,900 円 交通誘導警備員 11,300 円 2. 間接費間接費のうち現場監督費については 事業の実行に直接必要な作業が現場労働者により実施され

ウクライナ林木育種事情調査 ( 調査期間平成 23 年 11 月 21~22 日 ) 独立行政法人森林総合研究所森林バイオ研究センター長石井克明林木育種センター海外協力課長木村穣 1. はじめに 2011 年 11 月 21 日 ~22 日にかけてウクライナ生命環境科学国立大学を往訪し ウクライナに


かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン 第 1 目的等 1 目的 本ガイドラインは 近年の人工林における間伐作業の増加等を背景に かかり木の処理の作業における死亡災害が増加する傾向にあること等を踏まえ 労働安全衛生関係法令と相まって かかり木の処理に係る事前の実地調査の実施 新

森林法等の一部を改正する法律案の概要 国内の森林資源が本格的な利用期を迎えている中 住宅用など従来需要に加えて CLT( 直交集成板 ) や木質バイオマスなど国産材の需要の創出と拡大が進展 木材自給率は H14 年の19% を底に上昇傾向で推移し H26 年は31% まで回復 一方 木材価格の低迷


1 森林の立木竹の伐採 造林並びに間伐及び保育に関する事項 植林する樹木は 杉 桧に限らず広葉樹も計画的に取り入れた方が良いと思う 1 Ⅱ-1-(3)- アに示しているとおり 人工造林に当たっては 適地適木を旨としており 針葉樹に限らず広葉樹も含め 自然条件等に適合した樹種を選定することとしていると

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オーストリア林業から学ぶ 長野県林業大学校 いとう 2 学年伊藤 ひらさわ平沢 ほりべ堀部 けいすけ圭介 きみひこ公彦 たいせい 泰正 要旨私たち長野県林業大学校では 昨年の 7 月にオーストリアで 8 日間 森林 林業の研修を行なって来ました オーストリアは日本よりも狭い国土面積 低い森林率であり

平成31年度予算概算決定額 森林整備事業 治山事業 林野公共事業 (平成30年度1次補正予算額5,199百万円 182, ,049 百万円 平成30年度第2次補正予算額 32,528百万円) 臨時 特別の措置 として31年度概算決定額44,128百万円を別途措置 対策のポイント 林業の成

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CSRコミュニケーションブック

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皆伐と更新に関する指針(案)

1 アライグマの 分布と被害対策 1 アライグマの分布 1977 昭和52 年にアライグマと少年のふれあいを題材とし たテレビアニメが全国ネットで放映されヒット作となった それ 以降 アライグマをペットとして飼いたいという需要が高まり海 外から大量に輸入された しかしアライグマは気性が荒く 成長 す

Taro-花粉症対策の現状 -森林側

スライド 1

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萩地域森林計画書

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

資料 1 四国の森林 林業の現状と 四国森林管理局の対応について 平成 31 年 3 月 四国森林管理局

長野県林総セ研報第 25 号 (211) 表 -1 と調査工程一覧 樹種 面積調査工程 (ha) 伐倒木寄集材造材集搬 佐久穂 カラマツ 富士見 カラマツ 28.4 伊那 アカマツ 1.25 天龍 スギ 1.25 開田 カラマツ 塩尻 カラマツ 5.53 白馬 1 スギ 6.

平成20年度

強度に優れた カラマツ 北海道の木 エゾマツ 99%を供給 トドマツ 北限のスギ 道南スギ 北海道の林業 2018 木材供給基地としての 持続的発展に向けて 北海道遺産 森林鉄道蒸気機関車 雨宮21号 <遠軽町> 北海道遺産 根釧台地の格子状防風林<中標津町など> 林業遺産 蒸気機関車 雨宮21号

(2) 開発した囲いわなの概要 タイプ 7 について ( 写真 1) 部材に建築工事などで使用されるワイヤーメッシュを使用し ナットに鉄筋を通しボルトで固定することで組立 解体を容易にできるようにしました 林道端や里山周辺など平坦地であれば設置可能で 組立は二人で 10 分程度です ( 組立てた状態

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豚における簡便法を用いた産子数の遺伝的改良量予測 ( 独 ) 農業 食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所 石井和雄 豚の改良には ある形質に対し 優れた個体を選抜してその個体を交配に用 いることで より優れた個体を生産することが必要である 年あたりの遺伝的改良量は以下に示す式で表すことができる 年

平成 30 年度林野関係予算のポイント 1. 林業成長産業化総合対策 < 一部公共 > 意欲と能力のある林業経営体に森林の経営 管理を集積 集約化する新たな森林管理システムを構築することが見込まれる地域を中心として 路網整備 機械導入を重点的に支援するほか 主伐 再造林の一貫作業の推進 川下との連携

平成 30 年度林野関係予算のポイント 1. 林業成長産業化総合対策 < 一部公共 > 意欲と能力のある林業経営体に森林の経営 管理を集積 集約化する新たな森林管理システムを構築することが見込まれる地域を中心として 路網整備 機械導入を重点的に支援するほか 主伐 再造林の一貫作業の推進 川下との連携

抜本的な鳥獣捕獲強化対策 平成 25 年 12 月 26 日環境省農林水産省

資料 1-4 平成 31 年度林野関係予算及び税制改正事項 1 林野庁予算 ( 一般会計 ) 1 2 林野庁関係税制改正 21 平成 31 年 2 月林野庁

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( 別添 1) 平成 28 年度森林 林業白書の 閣議決定 公表までの経緯 平成 28 年 8 月 31 日 第 1 回施策部会 作成方針 ( 案 ) の検討 11 月 2 日第 2 回施策部会 平成 28 年度森林及び林業の動向 ( 構成と内容 ( 案 ) 主要記述事項 ( 案 )) 平成 29

機密性 情報 限り JICA 技術協力 ケニア共和国気候変動への適応のため の乾燥地耐性育種プロジェクト の概要 Project on Development of Drought Tolerant Tree for Adaptation to Climate Change in Drylands

平成 29 年度林野関係予算の重点事項 林業の成長産業化 森林吸収源対策の推進 総額 2,956 億円 (2,933 億円 ) ( ) 各事項の下段 () 内は 平成 28 年度当初予算額 1 次世代林業基盤づくり交付金 70 億円 (61 億円 ) 需要に応じた低コストで効率的な木材の生産 供給を

Chapter 3 3 章森林経営信託制度と木造化 木質化 ~ 岐阜県御嵩町の取り組み ~ P 岐阜県御嵩町における森林経営信託方式の紹介 P 森林経営信託方式と木造化 木質化 030

第 1 部森林及び林業の動向 森林 林業の再生に向けた新たな取組 東日本大震災 で森林 林業 木材産業に甚大な被害 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律 の成立 生物多様性に関する新たな世界目標 ルールの採択 国際森林年 林業 木材産業関係者が天皇杯等を受賞 木材の需要拡大の背景 ( )

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Ⅰ 福島県内国有林の概要 Ⅱ 重点取組事項 平成 年度福島県内国有林野事業の重点取組事項 東日本大震災からの復旧 復興への貢献 () 森林整備の本格的な再開 里山再生 () 里山再生の取組 () 海岸防災林の復旧 再生 () 森林事務所の再開 国民の森林 としての管理経営 () 花粉症対策苗木の本格

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平成 21 年度から あいち森と緑づくり税 を活用し 森林 里山林 都市の緑の整備 保全等に取り組んできた結果 第 4 章に示したとおり 一定の成果を上げることができました しかしながら 本県の森と緑を健全な状態で将来に引き継ぐためには 依然としてさまざまな課題があります 次ページ以降に 森と緑づく

森林吸収源対策について

[ 平成 29 年度予算の概要 ] 58 再生可能エネルギー導入等の推進 888(163) 百万円 対策のポイント地域主導で再生可能エネルギーを供給する取組等を推進し そのメリットを地域に還元させることを通じて 地域の農林漁業の発展を促進します < 背景 / 課題 > 地域の資源を活用した再生可能エ

はじめに本テキストは平成 27 年度文部科学省 成長分野等における中核的人材養成などの戦略的推進事業 で北海道大学が受託した 北海道に即した中核的林業技術者養成プログラムの開発事業 の一環として作成したものです 北海道林業を成長産業化するために 総合的な森林づくりのビジョンを描く森林総合監理士 (

Microsoft Word - 01 変更計画書

(2)里山の整備

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森林資源の循環利用に向けた 再造林の推進 戦後造成されてきた人工林が本格的な利用期を迎えており 伐って使ってまた植える という森林資源の循環利用を進めていくためには 造林コストの縮減による再造林の円滑な実施など様々な課題があります ここでは 造林コストの縮減につながる伐採と造林の一貫作業システム 低密度植栽や再造林に不可欠な優良品種の開発 シカによる森林被害への対策といった取組をご紹介します 3 2017.5 No.122 林野

森林資源の循環利用に向けた再造林の推進伐採と造林の一貫作業システムは 伐採に使用した高性能林業機械を用いて残された末木枝条を整理して地拵えを行ったり 搬出に使用したフォワーダを用いて苗木を運搬して 植栽を行う方法です 従来の人力による方法に比べ 林業機械を活用することにより伐採から地拵え 植栽までのトータルコストの縮減や省力化が可能となるとともに 森林所有者の負担軽減にもつながります また 一貫作業システムにおいては コンテナ苗の利用が進められています 通常の苗木よりも植栽適期が長いことで 再造林が実施可能な時期が拡大したり コンテナ苗植栽用の専用器具を活用することにより 地形条件によっては効率的な作業が行えるため 植栽の省力化が可能となります 伐採集材搬出 4 林野 2017.5 No.122 伐採と造林を別々に実施 伐採

森林資源の循環利用に向けた再造林の推進 伐採 集材に用いたグラップルで地拵え 一貫作業システム 伐採と造林を同時に実施 集材 地拵え 丸太を搬出したフォワーダで苗木を運搬 搬出 苗木運搬 コンテナ苗を専用器具 ( ディブル ) で植付 植付 従来の進め方 造林 ふもとから苗木を背負って運搬し 鍬で植付 植付 地拵え 作業員の人力による枝条整理 5 2017.5 No.122 林野

一貫作業システムで造林作業を低コスト 省力化写真 1 機械を活用した地拵え写真 2 機械を活用した苗木運搬我が国における従来の再造林では 従来の注1裸苗の植栽時期が春又は秋に限られていること 伐採を実施する林業事業体と再造林を実施する林業事業体が異なる場合が多いことから 伐採後 一定の期間を置いた後に注2地拵えを実施してきました また 地拵えや植栽現場への苗木運搬は人力で実施することが一般的であり 多くの労力と時間を要することとなっていました これに対して 近年 新たに導入されつつある 伐採と造林の一貫作業システム は 伐採に使用した林業機械を用いて 伐採してすぐにその跡地に残された末木枝条を除去して地拵えを実施したり(写真1) 搬出に使用した機械を用いて苗木を運搬(写真2)して 植栽を行います 省力化の効果として 国立研究開発法人森林研究 整備機構森林総合研究所の研究成果によれば 従来の方法による地拵え 植栽と比較して 7~9割程度に労働投入量が縮減された事例 林野庁の実証事業では 従来の方法による地拵えと比較して 6割程度に労働投入量が縮減された事例も報告されています このように 地形条件等によって効果が異なるものの 従来の方法と比較して 伐採と造林の一貫作業システム は 地拵えから植栽までの工程を省力化することとなり 全体として造林の作業コストを大きく縮減することが可能となります このため 林野庁では 国有林のフィールドや技術力等を活用し 伐採と造林の一貫作業システム の有効性についての実証や普及に取り組んでいます 注1裸苗:苗畑で育成された苗木で 根系が裸の状態で植栽地まで搬送される 注2地拵え:植栽した樹木や種子の定着 成長等を容易にするため 伐採跡地の草木を刈り払ったり 枝条等を片付ける作業コンテナ苗の活用と供給拡大 伐採と造林の一貫作業システム により効率化を図りながら年間を通じて再造林を実施していくためには 植栽適期を拡大していくための技術が必要です コンテナ苗 は裸苗と異なり 乾燥期や寒冷地の冬期を除き 従来の植栽適期以外でも高い活着率が見込めることが示されており 植栽適期を拡大できる可能性があります このことから 林野庁では 安定的かつ大量に生産できる施設の導入など コンテナ苗の供給拡大に向けた取組も併せて進めています 6 林野 2017.5 No.122 コンテナ苗コンテナ苗生産施設

森林資源の循環利用に向けた再造林の推進これまで主伐後の再造林は ヘクタール当たり3,000本程度植栽し 間伐を数回行う方法が主流でした そのような中 造林の低コスト化に向けては ヘクタール当たりの植栽本数を減らし 苗木代や間伐回数を減らすことで 造林 保育の低コスト化を図る低密度植栽技術への期待が高まっています しかし その技術についてはまだ十分に確立していないことから 林野庁では平成27 年度より5年計画で低密度植栽技術の導入に向けた調査委託事業を実施しています 低密度植栽は造林 保育の低コスト化が見込めるというメリットがある一方 植栽木の間隔が広がることから 地上空間を枝葉で覆う(林冠閉鎖)までに時間を要するため 草木が侵入しやすく その分下刈等の回数が増える可能性が高くなります これまでの調査の結果 成長の早い樹種は林冠閉鎖も早いことから 下刈等の回数を増やさずに低コストで一般的な形質の製材品を生産できる可能性が示されました 一方 成長の遅い樹種は 低密度植栽の可否についてまだ検討が必要なことから 今後も引き続き 低密度植栽技術の開発に向けて取り組んでいきます 徳島県でのシカによる林業被害は平成5年から急増し 平成7年には419ha まで達しました その後 柵の設置などにより減少したものの 毎年約100ha の被害が続いています そこで県では シカによる森林被害緊急対策事業を活用し 西部地域において 皆伐地でコンテナ苗木を通年植栽する林業事業体がシカの捕獲もできるような体制づくりに取り組んでいます 捕獲は防護柵に使用するネット等を使った囲いわなを使用しました(写真1) この ネット式囲いわな は 軽量で運搬がしやすく 傾斜地でも設置可能で ワナに入ったシカがネットに絡まることで注1保定され(写真2) 電気ショッカーを使って容易に止め刺しができる等の利点があります また メール送信機能付きセンサーカメラを設置し 見廻りの負担を軽減するとともに 状況に応じた捕獲体制(オスの成獣が捕れたら3人で行う)で行う等の工夫を凝らしています 平成28 年度には計37 頭を捕獲し(図1) 林業事業体でも捕獲が可能であることを実証しました 今後は 森林施業と一体的な捕獲の方法を検討し 県内での普及に取り組むこととしています 注1:動物を動かないように抑えておくこと低密度植栽技術の導入に向けた技術開発徳島県でのシカ捕獲の取組写真 1 ネット式囲いわな写真 2 シカの保定状況 7 2017.5 No.122 林野図 1 シカ捕獲頭数スギコンテナ苗1,500本/ha 植栽箇所愛媛県平成25 年4月植栽

樹 エリートツリーの選抜を進めています は 初期成長(5年次の樹高)だけでなく その後の成長も平均以上のもので 材質(材の剛性)にも欠点がないものが選ばれています (写真1)本稿では 国立研究開発法人森林研究 整備機構森林総合研究所林木育種センター(以下 林木育種センター)が 都道府県の試験研究機関等と連携してこれまでに開発してきた優良品種のうち 今後の森林づくりに役立つ主要なものを紹介します 森林づくりは苗木を植栽するところから始まります よい山づくりのためには よい苗木を用いることが大切です 苗木づくりには どのように苗木を育成するかに加え 遺伝的に優れたものを用いているかどうかが大きく影響します 苗木を遺伝的に優れたものに改良すること(林木育種)の重要性は古くから知られており 我が国の林木育種の歴史は400年以上前まで遡ります 今年でちょうど60 年を迎える国の林木育種事業は 成長がよく 幹がまっすぐで 病気や虫の害がない 優れた樹木 精英樹 の選出がスタートしたことから始まりました 現在は これらの精英樹の中で 特に優れたもの同士を交配して第2世代の精英林木育種の成果 優良品種優良品種とは 特定の性質(特性)が優れていることが明らかになった樹木のことで 品種の種類によりますが基本的に精英樹を対象として 特性の優れたものが選抜されます 例えば 育林経費の約4割を占めるのが下刈りですが いち早く周囲の雑草木から抜け出し 下刈りの省力化につながると考えられる 初期成長に優れた品種を開発しています この品種ています 少花粉品種は 平年では雄花が全く着かないか 又は極めてわずかしか着かない特性のもので(写真2) 低花粉品種は少花粉品種ほどではないですが 雄花の着花性が相当程花粉症対策品種林木育種センターでは 社会的な問題となっている花粉症への対策として 花粉の発生源となる雄花の少ない品種(少花粉品種と低花粉品種)と花粉を全く作らない無花粉品種を開発し森林づくりはよい苗木から 林木育種センターの取組 8 林野 2017.5 No.122 写真1初期成長に優れた第二世代品種 スギ林育2 70 写真 2 スギの系統による雄花の着花性の違い上 : 雄花着花量が多いスギ下 : 雄花着花量が少ないスギ写真 3 通常のスギと無花粉スギの雄花の断面左 : 通常のスギ 花粉がぎっしり詰まっている右 : 無花粉スギ 正常な花粉が見られない

森林資源の循環利用に向けた再造林の推進度低い特性のものです 平成28 年度までに全国のスギ ヒノキの精英樹の中から 少花粉スギ142品種 低花粉スギ11 品種 少花粉ヒノキ56 品種が開発されています 無花粉スギは 自然界に存在する 遺伝的な原因により正常な花粉を作らないスギ(写真3)で 林木育種センターでは2個体を発見し この内の1個体を2008年に 爽春 として品種登録しました 今年1月には 爽春 と精英樹との交配により 成長のよい無花粉スギ 林育不稔1号 を開発しました マツノザイセンチュウ抵抗性品種アカマツ クロマツは 古くから梁などとして寺社などの歴史的建造物に用いられてきました このマツに深刻な被害をもたらしているのがマツ材線虫病です この病気は 線虫(マツノザイセンチュウ 写真4右)が マツノマダラカミキリ(写真4左)の媒介によりマツに感染し マツを枯らせます 林木育種センターは マツに人為的に線虫を接種することにより(写真5) マツノザイセンチュウに感染しても枯れにくい抵抗性のアカマツ(246品種)とクロマツ(183品種)の開発を進めており これらの抵抗性品種から作られたマツの苗木が 全国各地の海岸防災林の造成等に活用されています 平成25 年に改正された 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法 により 農林水産大臣が特に優良な種苗を生産するための種穂を採取する樹木を 特定母樹 に指定する制度が始まりました 特定母樹の指定基準には 成長量 幹の通直性 材質(材の剛性) またスギとヒノキについては雄花着花性の基準があり これらの基準を全て満たすものが特定母樹となります 現在 スギで135 ヒノキで26 カラマツで49 グイマツで1の合計211系統(これらの約80 %はエリートツリー)が指定されています (写真6) 林木育種センターでは 特定母樹の原種苗を育成し 都道府県や認定特定増殖事業者への配布を始めています 都道府県等では これら原種苗を用いて採種園や採穂園を造成します 林木育種センターでは採種園 採穂園の造成や管理 運営が効果的に進むよう 技術指導も行っています 平成27 年度には 造林用苗木の約5割(スギ ヒノキでは7割)が今回紹介した優良品種などの原種苗から生産されています 現在 戦後植栽された森林が主伐期を迎えつつあり 伐採量の増大とともに 今後 優良な苗木の需要も拡大すると考えられます 林業の成長産業化 地球温暖化対策 花粉発生源対策の推進 マツ材線虫病被害の軽減など いずれも今後の森林づくりを進める上で対応していくべき重要な課題です 林木育種センターでは 国民や地域のニーズに応えるため 引き続き優良な品種の開発とその普及に取り組んでいきます 特定母樹とその普及ご紹介した優良品種や特定母樹の詳細については 林木育種センター(0294 39 7002)までお問い合わせください 9 2017.5 No.122 林野写真 5 マツノザイセンチュウを人為的に接種した試験の様子抵抗性品種の苗 ( 左 ) と一般的なマツの苗 ( 右 ) 写真 6 ヒノキの特定母樹 特定 26-44 写真 4 マツ材線虫病に関係するマツノマダラカミキリ ( 左 ) とマツノザイセンチュウ ( 右 )