第42回優秀環境装置-本文.indd

Similar documents
第 40 回 優秀環境装置 日本産業機械工業会会長賞 株式会社石垣 1. 開発経過近年の下水道の普及及び下水処理の高度化に伴い 下水汚泥の発生量は 今後も増加するものと推察され 汚泥の安定的処理は 大都市のみならず新たに下水処理を開始した中小市町村においても緊急の課題となっている 下水汚泥の処理にお

<4D F736F F D C8E F DA8E9F816989FC31816A81402E646F63>

図 -1 汚泥減量設備外観 4. 技術の概要 4.1 原理本技術は, 酸化力を持つ薬剤 ( 酸化剤 ) を用いて, 余剰汚泥中の微生物の細胞を破壊し, 微生物の可溶化処理を行う この時の可溶化率 ( 可溶化による汚泥の固形物 (SS) の減少率 (%)) は, 処理前汚泥の固形物に対して 25% を

消化汚泥 ( 脱水機棟汚泥貯留タンクへ ) φ150 DCIP DCIP VP φ150 φ150 φ150 DCIP 重力濃縮汚泥 (No.1 消化タンク ( 既設 ) へ ) 消化汚泥 ( 脱水機棟汚泥貯留タンクへ ) φ150 DCIP( 将来 ) φ150 φ150 φ150 DCIP( 将

HV PHV EV 向け推奨点検について 一般社団法人日本自動車整備振興会連合会 近年増加傾向にあるハイブリッド車及び電気自動車等は 法定定期点検項目に設定されていない特殊装置が多く用いられており その性能の維持や安全性を確保するためには他の一般的な装置と同様に定期的な点検 整備が必要不可欠でありま

高粘度汚泥対応型汚泥乾燥機の開発,三菱重工技報 Vol.51 No.3(2014)

スクリーンフィルタ.indd

8

ACモーター入門編 サンプルテキスト

国土技術政策総合研究所 研究資料

フルコーンパターンノズル 品 名 型 式 フルコーンノズル.1 セパレート式 KSF, KSFG 一体式 KSFS, KSFHS, KSFH, KSFI フランジ式 KSF F 楕円吹ノズル.6 フルコーンパターンノズル セパレート式 一体式 角吹ノズル KSE, KSE S, KSE H KSE

第26号 技術報告集

01

浅深両用インバーターポンプ「スマート強(つよし)くん」シリーズ4機種を発売

ブラザー純正消耗品のご案内

indd

M シリーズモータポンプ 特長 V シリーズピストンポンプと電動機を一体にしたモータポンプです 形式記号説明 プレッシャコンペンセータ制御 M A E コンビネーション制御 ( 自圧式 ) M C H X E

01盤用熱対策機器_coolcabi.indd

国土技術政策総合研究所 研究資料

品 名 ホロコーンパターンノズル ホロコーンノズル 単孔式 KSC 多孔式 KSC ー, ホロコーンアトマイジングノズル QC ノズル 単孔式 多孔式 型 KSN 式 KSWC ー QC ー T, KSWC ー QC KSFC ー, KSWC ー QC ー EE C. C.5 C.7 ホロコーンパタ

スチームコンプレッサーユニット 仕様 接続 本体材質 型式 SC1-1 SC1-2 SC1-3 SC2-1 SC2-2 SC2-3 SC7-1 SC7-3 制御弁 COS CV-COS CV10 COS CV-COS CV10 COS CV10 最大吸入蒸気量 最高使用圧力 PMO 駆動蒸気圧力範囲

(Microsoft Word - \207V10\215\\\221\242\212\356\217\200P44-52.doc)

接触材特長 触面積流量計接材合併 産排 農集合併 産排 農集浄化槽用部材浄化槽用部材ダクト関連商品ダクト関連商品膜ユニット関連商114 物処理水処理関連商品ロハス関連商品サクションホース トヨックス 面積流量計 サクションホース D2 D1 バキューム OK トヨリング F バキューム OK トヨシ

反応槽 1m 3 あたりの余剰汚泥発生量 (kg/m 3 / 日 ) 2-(3)-2 高負荷運転による水質改善および省エネルギー効果について 流域下水道本部技術部北多摩二号水再生センター葛西孝司 須川伊津代 渡瀬誠司 松下勝一 1. はじめに 21 年度の制限曝気 A2O 法の調査 1 ) の過程で

一般揚水用立形多段うず巻インラインポンプ設備編 陸上ポンプ一般社団法人公共建築協会殿の 立形遠心ポンプ 評価品です TCR 型ポンプ 要部標準仕様 特殊仕様 ポンプ ラン 立 上記以外の特殊仕様につきましては最寄りの営業店迄お問い合わせください 特別付属品 JIS20K 相フランジ ( ボルト パッ

目 次 産業洗浄技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目 1 ページ 制定昭和 61 年度改正平成 28 年度 産業洗浄 ( 見直し ) 職業能力開発専門調査員会 ( 平成 25 年度 ) 氏名所属氏名所属 清滝一宏栗田エンジニアリング ( 株 ) 坂内泰英荏原工業洗浄 ( 株 ) 鷺谷洋一

<4D F736F F D2089C692EB BF B C838C815B CC AF834B E2895BD90AC E368C8E29>

リニヤポンプについて

NEW LINE UP No, NPPDF 3-02 小型部品組立てなどに最適な エアピンセット VTA&VTB ペン型の本体に真空パッドと真空発生器を内蔵 チューブ (ø4 mm ) を接続 圧縮エア (0.5MPa) を供給 穴またはボタン操作で真空発生 小型ワークを吸着 特性は 2 タイプを用

Lubricated Compressor

全油圧ポンプ仕様表:日本プララド

13. サーボモータ 第 13 章サーボモータ ロック付きサーボモータ 概要 ロック付きサーボモータの特性 油水対策 ケーブル サーボモータ定格回転速度 コネクタ取付

スラリー供給装置/スラリー配管内の定期的な洗浄(フラッシング)についてのお知らせ

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 点検チェックシ-ト(WEBアップ用).doc

3.3 モータ運転の留意点 ギヤモータをインバータで運転する場合 ギヤモータをインバータで運転する場合 以下のような注意事項があります 出力軸トルク特性に対する注意事項ギヤモータの出力軸トルク 9544 モータ出力 (kw) SI 単位系 T G = (N m) 出力軸回転数 (r/min) < ギ

タンク式浅井戸用インバーターポンプ「圧力強(つよし)くん」WT-P200Xを発売

OUTGAS 対策 GIGA フィルタシリーズ ULPA/HEPA フィルタ / 中高性能フィルタ GIGA FILTER 製品一覧 名称略称特長ウェーハ吸着有機物量ボロン発生量ボロン含有量 GIGA MASTER GM 低有機物 低ボロン 上記の数値は シリカ試験一般品との比較値を示す 次世代の半

7. 業務計画書及び作業報告書等 (1) 業務計画書業務実施前に業務計画書 作業計画書 緊急連絡体制表 作業従事者名簿 技術講習受講証明書を提出すること (2) 業務実施後は速やかに作業報告書を提出すること 報告書は機器製造者標準様式とする 8. 故障等の措置 保守業務において 機器の故障 破損その

B3.並列運転と冗長運転(PBAシリーズ)

を把握する 調査は処理場の処理機能を最優先させて行うことが原則としてあり また機器が設置 稼働している状態で調査を行うことが原則であるため 機器内部の劣化状況を確認するためにコンサル側で機器を分解し内部を確認するといったことはできない 表 1 保全区分の主な例 状態監視保全 予防保全 時間計画保全

<338BA492CA E6169>

<8D8291AC B837B B835E82CC8A4A94AD>

納入先 : 株式会社 RA の区分 :RA0: 要求事項の : 保護対策の妥当性 製造番号 : 型式 : - 目録番号 : 源事象対象者 関連書類 及び名称. お客様承認承認承認作成承認 RA0 RA1 2,1 餅米の投入 蒸された餅米 熱 ( 約 9 ) ⅰ ⅰ 13 Ⅲ

PowerPoint プレゼンテーション

様式1

Microsoft PowerPoint - 03 榇覆盋.pptx

西川町下水道長寿命化計画 ( 西川浄化センター ) ( 様式 1) 1. 対象施設及びその選定理由 1 対象施設の概要本町の下水道事業は 平成 6 年に公共下水道事業計画の認可を受け事業に着手し その後 4 回の変更認可により下水道整備を行ってきた 平成 22 年度末の整備状況としては 行政人口 6

第42回優秀環境装置-本文.indd

第26号 技術報告集

<4D F736F F D E291E887578BA492CA89F0939A82C882B52E646F63>


ダイハツディーゼル SCR Selective Catalytic Reduction システム 選択触媒還元装置 独自のバイパス一体構造で省スペース バイパス一体構造によりエンジンから SCR まで 1 本の配管で接続 特許取得済

ADTろ過装置カタログ

1.1 テーラードブランクによる性能と歩留りの改善 最適な位置に最適な部材を配置 図 に示すブランク形状の設計において 製品の各 4 面への要求仕様が異なる場合でも 最大公約数的な考えで 1 つの材料からの加工を想定するのが一般的です その結果 ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質

azbil Technical Review 2011年1月号

土壌含有量試験(簡易分析)

2 漏電遮断器 1 汎用品 (ES) シリーズフレーム 極数 基本形名 ES32AB ES33AB ES32A ES33A ES52A ES53A 外観 3φ3W, 3φ3W, 3φ3W, 相線式 ( 注 1) 1φ2W 1φ2W 1φ2W 1φ2W, 1φ3W

JASIS 2016 新技術説明会


Microsoft PowerPoint - 1.プロセス制御の概要.pptx

<4D F736F F D DB8EE78AC7979D955C8E86>

<4D F736F F F696E74202D208FE389BA908593B98D488A B8CDD8AB B83685D>

日本食品洗浄剤衛生協会 2018 年 10 月制定 食器洗浄機用洗浄剤 リンス剤供給装置の 取付ガイドライン 日本食品洗浄剤衛生協会 2018 年 10 月 2018 年 10 月制定

<4D F736F F D20837E836A837D E82CC88D98FED E12E646F63>

下水道計画に用いる諸元は 原則として計画策定時点の諸元とする 計画人口については 近年の人口減少傾向を踏まえ適切に考慮する なお 確定した開発計画等がある場合は それを考慮する (4) 小規模下水道の特性や地域特性 一般に流入水の水量 水質の年間変動 日間変動が大きい 維持管理が大中規模の処理場に比

V- リング 1 / 11 V- リンク の概要と機能について 概要フォーシェダ V- リングは回転軸用のユニークなゴムシールです 1960 年代に開発されて以来 世界中であらゆる業界の OEM や補修市場において幅広く使われてきました V- リングはベアリング内のグリースを保持したまま塵や埃 水ま

TX M - / T TX M - 20 / T X Y TXMTX

はじめに 構成シミュレーションと注文 受け取り 1

P01

H4

第1編 春日井市下水道事業の現状と課題

1

< CF68A4A94C5288D828DAA91F292AC825189F196DA816A2E786477>

搾乳関連排水 ( パーラー排水 ) 処理施設管理のポイント 栃木県農政部畜産振興課 環境飼料担当技師加藤大幾 掲載されている情報は平成 30 年 7 月 19 日現在のものです

(2) 現況水質等 A ポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表 -2 図 -2 に示す 表 -2 水質分析 計量項目 単位 計量場所ピット吐出口 BOD mg/l CODcr mg/l 硫酸イオン濃度 mg/l 全硫化物 mg/l

人間の視野と同等の広視野画像を取得・提示する簡易な装置

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

Micro Fans & Blowers Innovation in Motion マイクロファン & ブロワー 有限会社シーエス技研 PTB 事業部東京オフィス 千葉県市原市辰巳台西

No.84表紙①④.ai

PPTVIEW

様式第 1 ( 裏面 ) 第 5 条第 3 項関係 有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の別 有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の構造 有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の設備 有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の使用の方法 施設において製造され 使用され 若し

出力用 indd

Microsoft Word - koudoka-seika-004

目次 検索方法 3 種類の検索方法があります 1 品番で検索 品番を直接入力して検索します 1 の画面へ 2 特徴で検索 便器のタイプ 形状などの特徴 等で商品を絞り込んでいきます 3 シリーズ 販売時期で検索 シリーズ 販売時期から商品を絞り込んでいきます 2 の画面へ 3 の画面へ 検索結果画面

WGP150C/224C/300C/475C/615C WGP150C WGP224C WGP300C WGP475C WGP615C 4.03 / / / / /

様式第 3 号平成 29 年随意契約締結状況の公表 ( が 20 万円以上の随意契約 ) 6 汚泥脱水機シーケンサー及びタッチパネル更新工事 平成 29 年 10 月 18 日 汚泥脱水機の故障により早急に工事対応する必要があるため 美濃設備 ( 株 ) ( 平成 29 年 9 月 18 日 ~ 関

Microsoft Word _[性能]小規模EV_単体_

KYB 技報第 57 号 ガイド ASSY 側にはオイルダンパやスプリング等は なく, 作動油のみが入ったシンプルな構造となっている. 最終仕様について概要を図 1, 内部構造を図 2 に示す. このフロントフォークを実現するために, 強度 耐久性, 性能, 量産性, 設備投資を含む

排水の処理方法と日常の維持管理(1)

東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

untitled

Microsoft Word - 整備基本計画0319[1]

超音波土壌洗浄装置

平成 31 年度佐久合同庁舎空調設備保守点検業務仕様書 この仕様書は 佐久合同庁舎における空調設備保守点検業務の大要を示すものであるから 仕様書に示されていない事項であっても 空調設備保守に必要と認められる作業は 佐久地域振興局長の指示に従って 契約金額の範囲内で実施すること 1 対象施設 佐久市跡

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

 ガスヒーポン(GHP)

<4D F736F F D208E9197BF342D318AB4906B C815B834A815B939982CC8EED97DE82C693C192A528819A89EF8B638CE38F4390B38DCF E646F6378>

バリデーション基準 1. 医薬品 医薬部外品 GMP 省令に規定するバリデーションについては 品質リスクを考慮し 以下の バリデーション基準 に基づいて実施すること 2. バリデーション基準 (1) バリデーションの目的バリデーションは 製造所の構造設備並びに手順 工程その他の製造管理及び品質管理の

V6.5L20 の主な変更点 1. ScanSnap の最新の推奨動作環境 (CPU: Intel Core i5 2.5GHz 以上 メモリ容量 :4GB 以上 ) における PDF ファイルの出力 表示処理を全面的に見直しました ( 1) 特に ScanSnap Organizerの表示性能が大

Transcription:

第 42 回 優秀環境装置 あ 経済産業大臣賞 株式会社クボタ 1. 装置説明高効率型二軸スクリュープレス脱水機は 金属ろ材 ( ウェッジワイヤおよびパンチングメタル ) からなる外胴スクリーン 二本のスクリュー軸 背圧プレッサ 駆動装置 洗浄装置 及びフロキュレータ ( 凝集混和槽 : 図 2 設備フローの記載 ) から構成される 本脱水機の最大の特徴は 従来 1 本であったスクリュー軸を平行かつ縦に 2 本配置し それらを羽根の噛み合う軸間距離で配列した上で スクリューを互いに逆回転させた構造にある 凝集剤と混合されてフロックを形成した汚泥は一定圧力で機内に供給された後 外胴スクリーンでろ過され 低速 (~1 min -1 ) で回転するスクリューにより搬送される 汚泥は 2 本のスクリューの回転によって中央部に巻き込まれ 強い圧密 剪断脱水効果を受け低含水率化が促進される 加えて 上下のスクリュー間での適度な汚泥混合効果により 機内での脱水ムラを無くし脱水効率をさらに高めるとともに 従来のスクリュープレス脱水機で見られる汚泥の供回り ( 脱水機内の汚泥がスクリューと一体になって回転し 汚泥を排出部へ搬送できない現象 ) を防止し 安定した脱水運転が可能となった スクリュー軸 (2 本 ) 外胴スクリーン 防臭カバー背圧プレッサ 凝集汚泥 駆動装置 洗浄装置 ろ液 ( 分離水 ) 脱水ケーキ 図 1 高効率型二軸スクリュープレス脱水機概略構造図 -5-

汚泥 高効率型二軸スクリューフ レス フロキュレータ 流量計 分離液 脱水ケーキ 場外搬出等 汚泥タンク P 汚泥供給ポンプ FI 用水 流量計 FI 水処理へ ( 返流水 ) 用水タンク薬品溶解タンク洗浄水ポンプ P P 薬品供給ポンプ P 分離液タンク 図 2 設備フロー 写真 1 高効率型二軸スクリュープレスの外観写真 ( 側面防臭カバーを取り外した状態 ) -6-

2. 開発経緯 (1) 開発主旨一般的な下水汚泥の脱水機としては ベルトプレス脱水機 遠心脱水機 スクリュープレス脱水機等がある 近年 低動力で低コスト 維持管理性が良好等の理由からスクリュープレス脱水機をはじめとする金属ろ材系脱水機の採用が増加してきたが 脱水しやすい混合生汚泥の脱水性能と比べて 消化汚泥等の難脱水性汚泥を対象とした場合の脱水性能が劣り 金属ろ材系脱水機本来のメリットを十分発揮出来ない傾向があった このため 低動力でありながら難脱水性汚泥に対しても脱水性能が高い脱水機の開発が望まれていた 高効率型二軸スクリュープレス脱水機は これらの要望を踏まえ 低動力でありながら混合生汚泥はもとより難脱水性汚泥に対しても高い脱水性能を発揮できる脱水機を目指して開発を行った (2) 開発目標従来のスクリュープレス脱水機 ( 一軸式 ) と比べ 次の脱水性能を満足させる 消化汚泥 : 脱水ケーキ含水率を 2 ポイント以上低減混合生汚泥 : 従来と同等の脱水ケーキ含水率 (3) 開発経緯年月 ~ 平成 20 年 3 月平成 20 年 4 月 ~ 平成 22 年 3 月平成 21 年 9 月平成 22 年 3 月 概略経過新型スクリュープレスの開発に着手 機器改良を重ね 現在の二軸スクリュー構造の採用に至る 財団法人下水道新技術推進機構 ( 現 公益財団法人日本下水道新技術機構 : 以下 下水道機構 ) との共同研究による性能評価を実施 下水道機構より 高効率型二軸スクリュープレス脱水機技術マニュアル ( 初版 ) が発刊される下水道機構より 高効率型二軸スクリュープレス脱水機技術マニュアル ( 改定版 ) が発刊される 3. 独創性従来装置である一軸式スクリュープレス ( 以下 従来装置 ) の製造 販売を通じて 脱水ケーキの低含水率化というユーザーの要望に応えるべく 研究開発を続けてきた その中で 難脱水と言われる消化汚泥に対する脱水性能悪化の原因が スクリュー羽根から汚泥に効率的に圧力が加わらず 羽根の表裏においてケーキ含水率の大きな差異が生じているためであることを突き止めた 上記問題を解決するため 本装置は単にスクリュープレスのスクリュー軸を 2 本にしただけでなく 以下の工夫を行い 脱水性能の飛躍的向上を果たしている スクリュー羽根を多条化して汚泥と羽根の接触面積を広げ 汚泥への加圧力を増大させた -7-

2 本のスクリューを羽根が噛みあう軸間距離に配置することで 内部の汚泥は強制的にほ ぐされるため 従来装置では上記とトレードオフとなる汚泥の搬送性低下 ( 供回り ) を完全に回避させた 汚泥が適度に混合されることで 羽根表面の汚泥と裏面の汚泥を上下スクリュー間で入れ替え 汚泥全体に均一かつ高い圧密力が生じるようにした 羽根の多条化の副次的効果として スクリーン内面に付着した汚泥の緻密層のスクレーピング頻度を高めてろ過抵抗を減らし スクリーンからのろ過性を高めた 多条スクリュー羽根 図 3 構造図 ( 多条スクリュー ) 4. 特許本装置の関連特許は次のとおりである 登録番号 : 第 5219483 号 / 名称 : 汚泥脱水機登録番号 : 第 5518162 号 / 名称 : 汚泥脱水機登録番号 : 第 5653005 号 / 名称 : 多軸スクリュープレス登録番号 : 第 5143091 号 / 名称 : 凝集混和槽の監視装置登録番号 : 第 5631067 号 / 名称 : スクリュープレス登録番号 : 第 5660928 号 / 名称 : スクリュープレス公開番号 : 特開 2014-193437 / 名称 : 汚泥脱水機 -8-

5. 性能 (1) 脱水性能消化汚泥を脱水している国内某下水処理場における性能試験データの一例を図 4に示す 従来装置と比較して本装置のケーキ含水率は 同一の処理量負荷率の運転において 2~ 2.8% 低下し大幅な性能改善が図れることを確認した また四季にわたる性能試験の実施により 年間の汚泥性状変化に対する処理の安定性についても確認した 図 4 本装置の脱水性能 ( 従来装置との比較 ) なお本装置の消費電力については 0.05~0.16kWh/m 3 と非常に低く 従来装置とほぼ同 等の値となっている (2) 耐久性 安全性本装置は スクリューの回転が 1min -1 以下と非常に低速なため ( 例えば遠心脱水機などでは 3000min -1 以上 ) スクリュー等の汚泥接触部の摩耗がほとんど発生せず 耐久性が良好である また 駆動ギヤ等の回転部はカバー内に収納されており安全性が高い上 脱水部は密閉型の防臭カバーで覆われているため臭気対策が容易であり 作業環境が良好である (3) 運転 操作性本装置は 圧入圧力一定制御 1 および薬注比例制御 2 により自動運転が可能である 通常の運転監視においては フロキュレータにて凝集フロックの状態確認 簡易湿分分析器 ( ケット式含水率計 ) による脱水ケーキ含水率の測定 分離液清澄度の観察による回収率の判定を行い 通常と異なる変化が生じた場合は 以下に示す項目の運転調整を行う 1フロキュレータ回転数 2 薬注率 3スクリュー回転数 -9-

4 供給汚泥圧入圧力 5 背圧プレッサ圧力ただし上記の内 日常的に操作 調整する項目は 1および2 のみであり 3~5は納入時に調整すれば ほとんど変更する必要が無いため 操作は非常に簡易なものとなっている 1 圧入圧力一定制御 : 脱水機への汚泥投入圧力が一定となるように汚泥供給ポンプの吐出量を自動調整する制御 2 薬注比例制御 : 脱水機運転中に汚泥濃度や供給汚泥量の変動が生じても 脱水機に供給される汚泥の固形物量に対し 一定の薬注率となるように薬品供給流量を自動調整する制御 (4) 維持管理本装置の維持管理には 日常点検 定期点検 オーバーホールの 3 項目がある 本装置はスクリューの回転が非常に低速かつ構造が極めてシンプルで可動部分が少ないため 維持管理は容易であり費用も安価で済む またスクリュー軸が 2 本の構造となっているが 駆動装置は 1 台のため 従来装置と比較して維持管理の手間が増大することはない 1 日常点検日常点検は 一般的な項目である電動機の電流値確認や運転開始前後の状態確認 ( 目視 聴音 ) が主体となる 2 定期点検定期点検は 一定時間ごと (8h/ 日 5 日 / 週運転の場合 おおむね 1 年ごと ) に 消耗した部品の交換 分解清掃 各部測定を行う 3オーバーホールオーバーホールは 一定時間ごと (8h/ 日 5 日 / 週運転の場合 おおむね 4 年ごと ) に脱水機本体を分解し 定期点検では実施できない内部の消耗部品の点検 交換 各部測定を行い 必要があれば補修も行う なお 本装置のオーバーホールは全て現地での作業が可能なため停止期間が短く 処理場の汚泥処理運転への影響を極力小さくすることが出来る -10-

表 1 維持管理の主要点検項目一覧 点検場所点検項目日常定期オーハ ーホール 高効率型二軸スクリュープレス脱水機 補機設備 計装設備 現場制御盤 振動 異音の有無 脱水ケーキ排出状況の確認 凝集フロックの状態確認 背圧プレッサの作動状態 スクリュー回転数の確認 外胴スクリーンの損傷 目詰まり有無 駆動装置の電流値確認 フロキュレータの電流値確認 脱水ケーキ含水率, 固形物回収率測定 洗浄ノズル詰まりの有無 洗浄水量 水圧の確認 減速機用オイル量の確認 駆動装置の清掃点検 減速機用オイルの交換 スクリーン高圧洗浄 ( 必要により ) 消耗部品の点検 交換 消耗部品 予備品の交換スクリーン交換 ( 磨耗時のみ ) 減速機オーバーホール分解点検 清掃 組立各部寸法測定, 消耗部品補修 交換 振動 異音の有無 オイル量の確認 オイルの交換 外観, 周囲状態の確認 検出部異常の有無 指示値の補正 現場制御盤の内部状態確認 各表示灯の点灯状態確認 漏電遮断器の動作確認 VVVF, シーケンスコントローラ整備 6. 経済性高効率型二軸スクリュープレス脱水機の経済性を 計画日最大汚水量 10,000m 3 / 日の下水処理場を想定して評価した 本装置は従来装置と比較して小さいスクリュー径の機種を適用できるため イニシャルコストで約 15% ランニングコストで約 8% の削減 ( ケーキ処分費約 9% の削減 ) が図れる その他 16% の設置スペースの削減が図れるほか CO2 排出量も 11% 削減でき 環境負荷も小さくなることを確認した -11-

表 2 経済性比較 従来装置 本装置 計画日最大汚水量水処理方式 10,000m 3 / 日標準活性汚泥法 仕様 脱水機型式スクリュー径 φ600 スクリュー径 φ500 設置台数 2 台 2 台 運転条件 脱水対象汚泥脱水機運転時間 1 台あたり処理量薬注率 消化汚泥 7h/ 日 5 日 / 週 110kgDS/h 1.5% 脱水ケーキ含水率 80% 77% イニシャルコスト 100 85 ランニングコスト 100 92 ( 電力費 ) 100 98 経済性 ( 薬品費 ) 100 100 ( ケーキ処分費 ) 100 91 CO 2 排出量 100 89 省スペース 100 84 7. 将来性高効率型二軸スクリュープレス脱水機は 下水汚泥脱水機に求められる 1 高い脱水性能 2 低い消費電力 3コスト縮減への寄与という市場のニーズにマッチした将来性の高い脱水機である 今後は 国内下水分野のみならず 民間排水分野や 近年スクリュープレスの採用が増えつつある海外の下水処理分野などへも適用拡大を図りたい -12-