医療機器の安全対策の在り方 慶應義塾大学病院 医用工学センター 又吉徹
第 5 次医療法改正 医療機器に係る安全管理のための体 制確保に係る運用上の留意について により 医療機関における医療機器に 係る安全管理のための体制確保が明記された 医療機関は医療機器安全管理責任者 を配置し 医療機器安全使用のための 研修や保守点検の実施 情報の収集などが義務化された
医療機器安全管理責任者の業務 従事者に対する医療機器のい安全使用のための研修の実施 医療機器の保守点検に関する計画の策定及び保守点検の適切な実施 医療機器の安全使用のために必要とな る情報の収集その他の医療機器の安全 使用を目的とした改善のための方策の実施
特定機能病院では 人工心肺装置及び補助循環装置 人工呼吸器 血液浄化装置 除細動器 (AED を除く ) 閉鎖式保育器 診療用高エネルギー放射線発生装置 診療用粒子線照射装置 診療用放射線照射装置
医療機器の安全管理の在り方 安全使用のための研修の実施 計画的な保守点検とその適切な実施 情報の収集と改善のための方策の実施 医療者の意識改革
医療機器を安全に使用するための 研修と保守点検について 医用工学センター
医療機器を安全に使用するには 安全使用のための研修の実施 計画的な保守点検とその適切な実施 情報の収集と改善のための方策の実施
研修を実施しないと どうなる?
輸液ポンプ シリンジポンプでの事故原因
フリーフロー 輸液セット内の気泡を除去しようとクランプを閉じないで ドアを開放 ベッドに移動する際に 輸液セットが引っかかり クランプを閉じないで ドアを開放
クレンメを閉じてから外す
閉塞 気泡警報時の処置 1 まず 輸液ラインのクレンメを閉じる 2 ポンプのドアを開け チューブクランプを 解除する 3 閉塞の場合 : 輸液セット 三方活栓などの 点検を行う 気泡の場合 : 気泡除去を行う
輸液ポンプ使用中の患者さんが トイレに移動する際 転倒した 4 本足の点滴スタンドを使用していた 輸液ポンプの取り付け位置が高かった
倒れにくいスタンド 5 本足スタンド
除細動器でのトラブル 心室細動が発生した 除細動器を準備した 300J で充電した 充電完了した 除細動器が作動しなかった
R 波同期モードになっていた!
医療機器の研修 新しい医療機器を導入する場合は必ず研修を行ってください その研修の資料 参加者の氏名などを記録をMEセンターに提出してください 医療機器の研修について ご相談ください
保守点検しないと どうなる?
シリンジポンプ 輸液ポンプの場合
点検内容 日常点検 MEセンターによる使用前使用後点検外観 動作確認 警報機能確認 充電など 定期点検 ( 年 1 回 ) メーカーによる点検流量調整 警報機能調整 バッテリー交換 モーター交換など
事例 1 輸液ポンプを使用して高カロリー輸液を開始輸液を開始したところ 輸液が開始されなかった
原因 長期間 貸出中だった 何名の患者さんにも使用していた こぼれた高カロリー輸液が付着したまま放置され フィンガーポンプ駆動部が固着し 動か動かなくなった
対策 高カロリー輸液やブドウ糖は乾くとガチガチに固まってしまうため すぐに拭き取る 使用前に駆動部が動くか確認する 使用が終了したら ME センターに返却する
事例 2 輸液ポンプを使用して輸液を開始した 1 時間後に確認したところ設定した輸液量よ 1 時間後に確認したところ 設定した輸液量より多く輸液されていた
原因 使用前にポンプを落下させた 外観確認を行っていなかった 落下の衝撃により ドアヒンジにヒビがはいり完全にドアが閉まっていなかった
対策 使用前に外観確認を行う 落下などの衝撃が加わったポンプは使用せず ME センターに返却して 新しいポンプと交換する
除細動器の場合
事例 1 心室細動が発生した 200J で除細動を行った 除細動できなかったので 300Jで除細動した 除細動できなかったので 360J で除細動した 除細動できなかったので 再度充電した 充電できなかった
原因 電源に装着されていなかった 充電がされていなかった
対策 日頃から電源に装着し 充電状態を確認する 点検表への記録を残す
事例 2 心室細動が発生した 300Jで除細動を行った 除細動は解除された 患者胸部にやけどが確認された
原因 パドル部分に以前使用したときのゼリーが固着していた 日常確認を行っていなかった
対策 使用後には 必ずパドルのゼリーを拭き取る 日常確認を行う 点検表への記録を残す
医療機器を安全に使用するには 医療機器の安全使用のための研修を行う 新しい機器の導入時 新人教育など新 適切な保守点検を行う 特に使用前点検! 研修や点検の記録を必ず残す!
人工呼吸器のトラブル 医用工学センター
評価機構によるヒヤリハット件数 その他, 16 (H20) 電源, 4 酸素供給, 8 呼吸器本体, 8 設定 操作部, 16 回路, 36 加温加湿器, 25 人工呼吸器に関連した医療事故 財 ) 日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業平成 20 年年報より Copyright 2006 Keio University 38
人工呼吸器のトラブル内容 その他, 9 回路, 5 加温加湿器, 5 呼吸器本体, 8 設定 操作部, 3 Copyright 2006 Keio University 39
加湿器電源入れ忘れ 設定確認見落とし 呼気フィルター目詰まり 回路接続ミス 回路リークによる低喚起 報告内容 Copyright 2006 Keio University 40
発生要因の多くは 人為的なミス ( ヒューマンエラー ) に起因 人工呼吸器本体 加温加湿器および呼吸回路 挿管チューブ等に起因 電気 医療ガス等の医療設備に起因 発生要因 確認不足 取扱いの認識不足 Copyright 2006 Keio University 41
当院での事例 1 人工呼吸器のスタンバイ解除忘れ 2008.11.23 報告者 : 看護師 7 時 30 分 人工呼吸器を装着している患者に吸入と吸引を実施した 吸引は気管切開カニューレから人工呼吸器を外し吸引した その際人工呼吸器はスタンバイ状態にしていた 吸引後 再び人工呼吸器を装着したが スタンバイ状態を解除しなかった 日勤看護師が 8 時 30 分に患者の元へいったところ スタンバイ状態の人工呼吸器に気がつき 事故発覚に至った Copyright 2006 Keio University 42
他院での類似事例 2006.09.1009 読売新聞より 病院で医師 看護師ミス院長 作業見直し徹底 医師が人工呼吸器のスイッチを押し忘れて作動させないというミスが 病院で起きた 当日 部屋には医師 1 人と看護師 2 人がいた 医師は 人工呼吸器の一時停止状人工呼吸器の態を解除するためのスイッチを押す必要があったが 押し忘れた 今回のミスで 患者に状態にどのような影響が出たのかについて 院長は 一過性の血圧低下や酸素がいかなかったことが 脳にどのような影響を与えたかについて 我々は判断しにくい と述べ 警察の捜査に判断をゆ 警察の捜査に判断をゆだねる姿勢を見せた 担当医師と看護師の処分は 患者の経過を見ながら今後 検討するという Copyright 2006 Keio University 43
事例 1 の原因 人工呼吸器の作動確認ができていなかった 患者の状態の観察ができていなかった Copyright 2006 Keio University 44
事例 1 の対策 測定値 の確認 患者観察 の確認 Copyright 2006 Keio University 45
当院での事例 2 人工呼吸器の回路のリーク 報告者 : 医師 看護師 臨床工学技士 2009.03.2703 27 看護師がたまたま訪室し 娘と談笑中 患者の顔色が悪いのに気付いた 患者はチアノ-ゼがでており SpO2 44% であった 看護師は患者の急変をスタッフに知らせ 他の看護師 医師が駆けつけアンビューで用手換気 吸引を行いSpO2 100% に回復する その後人工呼吸器を装着するが胸郭が上がらず 1 回換気量は0であった 看護師が人工呼吸器の回路を点検し 気道内圧チューブ接続部のキャップが外れていることに気付いた Copyright 2006 Keio University 46
他院での類似事例 2000.08.19 読売新聞より 病院で人工呼吸器空気漏れ? 接続部にひび一時心肺停止 市民病院で十六日 八十歳代の男性患者に装着されていた人工呼吸器が正常に作動せず 患者が一時 心肺停止状態になる事故があったことが十八日 分かった 患者はこん睡状態が続いているという 事故当日は午後三時半ごろ 送られる空気量の低下を知らせる人工呼吸器の警報音が突然鳴ったため 医師が駆けつけ 五分後には手け動で呼吸処置を行ったという 事故後の調査で 加温加湿器の接続部分に長さ三センチほどのひびが見つかった 病院ではこの部分から空気が漏れ 空気量が低下した可能性があるとみて詳しい原因を調査している 問題の部品は週一回交換する使い捨てのもので 事故当日の午前中に交換したばかりだったという Copyright 2006 Keio University 47
事例 2 の原因 呼吸回路の接続不良によるリーク Copyright 2006 Keio University 48
事例 2 の対策 呼吸器回路 の確認 Copyright 2006 Keio University 49
人工呼吸器関連の事故を防ぐには 人工呼吸器使用中におけるヒューマンエラー 誘因事項の確認を的確に行う必要がある 対策 確認不足 チェックリスト 認識不足 マニュアル Copyright 2006 Keio University 50
保育器の安全点検について ー医療機器 安全使用の基準ー 51
平成 22 年 3 月医療機器安全管理責任者 : 印機製造部委託/内部確型認済名称式名売業者年月年月評価4 月5 月6 月7 月8 月9 月10 月11 月12 月1 月2 月3 月済 番号番号保守点検はアトムメ3ヶ月まではア保守点鎖式保育済済閉 年 月点検月点検トム 4/28 鎖式保育器月点月点検閉鎖式保育器点検計画書 平成 21 年 4 月 ~ 器管理製造販登録抹点外予定情報検消作済業の識別済 NICU A-1 XX XX XX XX カV-2100G ディ3ヶ月済器X ル6/8 月点検3 ヶ検3 ヶ内部印 ア閉XX XX NICU XX A-2 XX X トムメ年デV-2101G ィ カル3ヶ月点月済 検3 ヶ検3 ヶ保守点検 印
実際の点検
実際の点検
医療安全情報を共有する 医療機器安全情報を中心に
管理シートによる確認 設定値 警報設定値の確認
管理シートによる確認 呼吸器回路の確認
管理シートによる確認 患者観察!
もう一度 確認!
医療機器の安全管理の在り方
エラーと事故 ヒューマンエラーをゼロにすることはできない! 重大な事故 単独のエラーあるいは潜在化していたエラーが顕在化し チェーンを構成エラーチェーンエラー 1 情報収集 分析 エラー対策 エラーコントロール 人間特性 事故 29 ヒヤリハット 300 不安全行動 不安全状態心理組織の文化 風土 安全重視の文化 風土の構築 75
危機管理に必要な認識 人間はミスを犯す 医療機器は故障することがある 医療機器が正常でも 人間との関わり方 によっては危険なことがある 無事故が続くほど 自動化が進むほど 危険に対する警戒心や感性が低下する 新しい便利な機器ができると 必ず新しい 危機管理が必要となる 76
医療機器の安全対策の在り方 安全使用のための研修の実施 計画的な保守点検とその適切な実施 情報の収集と改善のための方策の実施 医療者の意識改革