Microsoft PowerPoint - 問題提起1_日本総研.pptx

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

鳩山政権の経済政策の効果

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

H28秋_24地方税財源

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

資料9

第6回税制調査会 総6-3

2018年度税制改正大綱ポイント整理

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本要望に対応する縮減案 3 自動車の取得段階では消費税と自動車取得税が二重課税となっており 保有段階でも自動車重量税のほかに自動車税 ( 又は軽自動車税 ) の 2 つの税が課されており 自動車ユーザーに対して複雑かつ過大な負担を強いている 特に 移動手段を車に依存せざるをえず複数台を保有する場合が

第3回税制調査会 総3-2

(2) 消費税率 10% への引上げ時に導入が予定されている軽減税率制度については 消費税 地方消費税の引上げ分のうち地方交付税原資分も含めると 約 3 割が地方の社会保障財源であり 仮に減収分のすべてが確保されない場合 地方の社会保障財源に影響を与えることになることから 確実に代替財源を確保するこ

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

新今回の要望に合関理連性する事項設 拡充又は延長を必要とする理中小企業は地域の経済や雇用を支え 我が国経済全体を発展させる重要な役割を担っている 中小企業の設備投資を促進し 成長の底上げに不可欠な設備や IT 化等への投資の加速化や生産性の向上を図る ⑴ 政策目的 ⑵ 施策の必要性 昨今の中小企業の

(0830時点)PR版

Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

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海運関係事項

< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

PowerPoint プレゼンテーション

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一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

所得税 12 兆 6,14 億円 ( 歳入比 13.7%) これまで行われてきた度重なる税率構造の累進性の緩和や各種控除の拡充などにより 個人所得課税の負担は大きく軽減されてきています 所得税収の推移 ( 注 ) 所得税収は 21 年度以前は決算額 22 年度は予算額です なお 所得譲与税による税源

平成20年度税制改正(地方税)要望事項

女性が働きやすい制度等への見直しについて

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

第5回基礎問題小委員会 礎5-1

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参考 3 平成 27 年度税制改正に関する提言 ( 要約 ) 基本的な課題 Ⅰ. 社会保障と税の一体改革と今後のあり方 1. 社会保障制度のあり方に対する基本的考え方 我が国の社会保障制度は 中福祉 低負担 であり 高齢化社会の急進展により今後の社会保障給付は急速な増大が不可避とされることから 社会

< F31322D89FC90B390C C18F578D8692C7985E5B315D2E6A74>

残された税制の課題

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

平成 24 年度国民健康保険税税率改定案 1 医療保険分 ( 基礎課税額 ) 現行 改定 増減 伸率 所得割額 4.30 % 4.63 % % 資産割額 % 9.80 % % 税率等 均等割額 17,100 円 18,000 円 900 円 5.3%

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

市場と経済A

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

年金改革の骨格に関する方向性と論点について

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

平成23年度税制改正の主要項目

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

税・社会保障等を通じた受益と負担について

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第5回基礎問題小委員会 礎5-4

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

法人課税の現状と課題

配偶者控除の改正で女性の働き方は変わるか

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タイトル

税制について

[ 月 ] 金融財政ビジネス第 3 種郵便物認可応益性の概念外形標準課税は 03 年度税制改正大綱で導入が決定され 04 年度から適用が開始された 法人事業税の課税ベースを所得から外形的基準に見直すべきとの意見はそれ以前からあったものの それが政府内で議論の俎そ上じょうに載せら

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

Microsoft PowerPoint - (参考資料1)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について

政策目的に対する租税特別措置等の達成目標実現による寄与 中小企業の中でも 特に規模の小さい企業においては 経理担当の人員が少なく 適時適切な経営状況の把握もままならない状況である 資金調達環境や新規顧客開拓に困難を有する中小企業においては 少ない経理体制の中で効率的な事務を行うことが非常に重要であり

法人税 faq

今般の法人税改革のポイント 今般の法人税改革は 法人課税を成長志向型の構造に変えるもの より広く負担を分かち合い 稼ぐ力 のある企業や企業の計上に前向きな企業の税負担を軽減する 企業の収益力改善に向けた投資や新たな技術開発等への挑戦がより積極的になり それが成長につながっていく 改革を通じて 企業が

3 車体課税 自動車取得税の見直し 自動車取得税の税率 ( 一定税率 ) を以下のとおり引下げ ( 平成 26 年 4 月 1 日以降 ) 自家用自動車 ( 軽自動車を除く ) 5%( ) 3%( ) 営業用自動車 軽自動車 3%( ) 2%( ) いわゆる エコカー減税 について 環境性能に優れた

望の内容平成 28 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) ( 経済産業省経済産業政策局産業再生課 ) 制度名産業競争力強化法に基づく事業再編等に係る登録免許税の軽減措置 税 目 登録免許税 ( 租税特別措置法第 80 条 ) ( 租税特別措置法施行令第 42 条の

スライド 1

目次 Ⅰ 法人に対する課税のあり方... 1 (1) 減価償却制度の改革... 1 (2) 国際競争力に資する租税特別措置の維持 拡充... 2 (3) 国際租税制度について... 2 (4) 環境税 について... 3 (5) 連結納税制度について... 3 (6) 欠損金の繰戻還付再開... 3

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

H29租特評価書「産業競争力強化法に基づく事業再編等に係る登録免許税の軽減措置の延長」

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

表紙(資料5)

第 6 回地方法人課税のあり方等に関する検討会議事概要 1 日時平成 25 年 4 月 11 日 ( 木 ) 13 時 30 分 ~15 時 30 分 2 場所総務省 7 階省議室 3 出席者神野会長 鎌田委員 熊野委員 小山委員 中村委員 小西委員 関口委員 辻委員 中里委員 林委員 吉村委員 田

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について


第2回税制調査会 総2-2

地方税法等の一部を改正する法律案の概要 総務省 1 地方法人課税における新たな偏在是正措置 平成 31 年 10 月 1 日施行 都市 地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築の観点から 特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案 において特別法人事業税 ( 国税 ) を創設することに併

法人実効税率の引下げを始めとする税制改革の諸課題

Microsoft Word - こども保険に関するFAQ.docx

税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のよう

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

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2012 No

9 地方歳入中に占める地方税収入の割合の推移 ( その 1) 区 都道府県 分 昭和 2 年度昭和 5 年度昭和 10 年度昭和 15 年度 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 地方税

中小企業の退職金制度への ご提案について

握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

第9号様式(第10条、第19条、第20条関係)

第32回 通常総会議案書

平成20年度税制改正(地方税)要望事項

スライド 1

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

消費税 5% 引上げによる社会保障制度の安定財源確保 消費税率 ( 国 地方 ) を 2014 年 4 月より 8% へ 2017 年 4 月より 10% へ段階的に引上げ 消費税収の使い途は 国分については これまで高齢者 3 経費 ( 基礎年金 老人医療 介護 ) となっていたが 今回 社会保障

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

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日本総研シンポジウム税制抜本改革を考える ~ 法人実効税率引き下げを起点とする歳出 歳入一体改革 ~ 法人課税改革のあり方 - ネット減税か税収中立か - 2014 年 11 月 13 日 株式会社日本総合研究所調査部上席主任研究員西沢和彦 Copyright (C) 2014 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

政府 法人実効税率を 20% 台へ数年で引き下げ わが国の立地競争力強化等の一環として 来年度を初年度とし 数年で法人実効税率を現行 35.64% から 20% 台まで引き下げ 財源については アベノミクスの効果を含め 課税ベースの拡大等による恒久財源を確保 経済財政運営と改革の基本方針 2014 (6 月 24 日 ) 課税ベースの拡大等の候補 2015 年度 2017 年度 ~ 外形標準課税の拡大 7,500 億円 受取配当の益金不算入拡大 1,000 億円 繰越欠損金制度の見直し 3,000 億円 減価償却制度見直し 中小企業課税見直し? 安倍政権下で創設 拡充された租税特 別措置 ( アベノミクス税制 ) 廃止 ( 資料 ) 報道をもとに作成 ( 注 ) 金額は概算 10 月 8 日に財務省が与党税制協議会に提示した工程表案 1

わが国法人実効税率は先進諸外国比約 10% 高く わが国の35.64% は OECD 平均 25.2% より約 10% 高い 地方税の高さに特徴 近隣アジア諸国と比較するとその高さはさらに顕著 ( 図表 ) 法人実効税率の国際比較 (2014 年 ) (%) 40 30 20 < 主要先進国 > 地方税国税 (%) 40 30 OECD 平均 (25.2%) 20 < アジア諸国 > アジア平均 (21.9%) 10 10 0 0 ( 資料 )OECD ( 注 ) * は連邦国家 ( 資料 )KPMG 2

先進諸外国ほぼ一貫して法人実効税率引き下げ ドイツやスウェーデンは 90 年代以降 抜本的な税制改革の一環として法人税率を大幅に引き下げ 課税ベース見直しや消費増税も実施 (%) ( 図表 ) 各国の法人実効税率の推移 60 50 40 30 20 米国日本ドイツカナダスウェーデン英国 10 0 1990 1995 2000 2005 2010 ( 資料 )OECD ( 年 ) 3

わが国歳入 139.5 兆円 うち法人課税 17.4 兆円 法人課税は 社会保険料を含むわが国歳入体系の 1 つのパーツに過ぎず 法人減税 他の税目増税という歳入体系全体での税収中立の議論みえず ( 図表 ) わが国の歳入体系 (2012 年度 ) ( 単位 : 兆円 ) 国 地方 社会保障基金 計 個人所得課税 14.0 11.9 26.0 法人課税 12.1 5.3 17.4 社会保険料 58.0 58.0 うち被保険者 31.7 31.7 うち事業主 26.3 26.3 消費課税 18.2 6.7 24.9 うち一般消費課税 10.4 2.6 12.9 うち個別消費課税 8.0 4.2 12.2 資産課税 2.6 10.5 13.1 計 47.0 34.5 58.0 139.5 ( 資料 ) 財務省 平成 24 年度租税及び印紙収入決算額調 総務省 平成 24 年度地方税に関する参考計数資料 内閣府 平成 24 年度国民経済計算 をもとに日本総合研究所作成 ( 注 ) 社会保険料の被保険者負担には 個人事業主の負担分も含む 4

歳入に占める社会保険料 わが国一貫し上昇 わが国 1990 年の26.4% から2012 年は41.6% に 税のみならず社会保険料をあわせてみる必要 社会保険料の事業主負担は 商品価格か賃金への転嫁 輸出競争力に影響 かつ 賃金抑制的 (%) 50 ( 図表 ) 歳入に占める社会保険料の割合 日本 40 ドイツ 30 20 フランススウェーデン米国 10 英国 0 1990 1995 2000 2005 2010 ( 年 ) カナダ ( 資料 )OECD Revenue Statistics より日本総合研究所作成 5

外形標準課税に指摘されるメリット デメリット 単に法人実効税率の定義から外すための外形標準課税の強化ではなく 多様な視点からみた税としての是非を議論の起点に メリット 応益課税の性格 税収の安定性 税収の地域的な普遍性 企業の新陳代謝促進 デメリット 輸出競争力への影響 賃金課税の性格 現行資本金 1 億円超企業限定 応益課税として一貫せず 税制として複雑など 6

外形標準課税の拡大とは ( 試算 ) 現在 外形標準課税は 大企業 ( 資本金 1 億円超 ) に限定 全企業の約 1% 外形標準として 付加価値 ( 約 7 割が賃金 ) と資本金等 有力視されている案は 大企業限定のままの税率引き上げ しかし 応益課税であるならば 本来全ての企業への課税 試算 - 企業の税負担はどうなるか ( 税収一定を仮定 ) 有力案 ( 大企業の外形標準課税の割合を現行の約 3 割から 5 割に拡大 ) 大企業のみ変化 黒字企業 0.16 兆円 欠損企業 +0.16 兆円 全企業課税ケース ( 所得課税をすべて外形標準課税で置き換え ) 中小企業も含め変化 とりわけ中小欠損企業 +0.78 兆円 7

租税特別措置に指摘されるメリット デメリット 租特は 研究開発促進や設備投資活性化などの面で一定の効果が指摘される一方 税制の中立性 公平性などに反するという指摘も メリット 税制を多様な政策措置に利用できる 特定の産業 企業を効率的に支援できる 現金支出を伴わない デメリット 特定の産業 企業に恩恵が偏る 一旦創設されると既得権益化し 廃止が難しい 税制が複雑になるなど 租特透明化法 を活かし 政策効果を不断に検証する必要 8

租税特別措置整理による税収増効果 租特により約 1.8 兆円の税収減 主なものは 設備投資減税 研究開発減税 中小企業支援 ( 図表 ) 法人税関連租税特別措置による減収額 ( 試算 ) 項目 安倍政権下で創設 拡充されたもの ( 設備投資減税 所得拡大税制 研究開発減税の上乗せ措置など ) < 国 > 減収額 ( 億円 ) < 地方 > 6,800-6,800 中小企業支援 3,400 1,400 4,800 研究開発減税 ( 総額型 ) 3,700 0 3,700 その他 5,100 2,300 7,400 減収総額 ( 単純合計 ) 1.9 兆円 0.4 兆円 2.3 兆円 実際の減収総額 1.6 兆円 0.2 兆円 1.8 兆円 ( 資料 ) 財務省 租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書 政府税制調査会資料 (2014 年 4 月 14 日 ) 総務省 地方税における税負担軽減措置等の適用状況等に関する報告書 をもとに日本総合研究所試算 ( 注 1) 実際の減収額とは 減収額から特別償却や圧縮記帳 貸倒引当金などの課税繰延措置等による減収額を除いた額 ( 注 2) 安倍政権下で創設されたものについては 財務省による減収見込額 ( 国税のみ ) ( 注 3) 各項目の内訳等については参考図表を参照 9

法人税率引き下げを起点とし期待される経路 法人課税改革は 経済の好循環という最終目標に向けたあくまで 起点 最終目標実現のためには 下記経路がスムーズに流れるよう様々な面での制度改革が必要 法人税率の引き下げ 国内設備投資の増加 起業の増加 投資収益率の上昇 対内直接投資 / 証券投資の増加 企業や利益の海外流出抑制 賃金 配当の増加所得 消費の増加 製品価格の下落輸出の増加輸入の減少 経済成長率の引き上げ ( 資料 ) 日本総合研究所作成 10

他政策との連動が不可欠 法人課税改革は企業の収益力強化の一環 経済の好循環実現のためには これを 労働供給や移動を促す雇用制度改革 就労を下支えする社会保障制度改革などと連動させることが不可欠 企業の収益力強化 法人課税改革コーポレートガバナンス改革リスクマネー供給 雇用制度改革 労働供給および労働移動促進賃金引上げ 社会保障制度改革 子育て支援介護保険 老後所得保障積極的労働市場政策 11

まとめ 法人課税という狭い枠組みの下での税収中立にとらわれず 歳入体系全体の見直しのなかでの議論を 外形標準課税強化 租特見直しは 単に税率引き下げの財源目的にとどまらず それぞれがもたらす企業行動ひいてはわが国経済への影響を十分吟味した議論を 最終目標は 活力ある持続的な経済社会実現であるとすれば 法人課税改革はその起点あるいは 1 つのピース 他の政策との協調があってはじめて目標実現 この点銘記を 12