2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

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[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

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2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

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下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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相続税の小規模宅地等の特例特定居住用宅地等の取扱い 事例編 福田和仁相談部東京相談室 個人が 相続または遺贈により取得した財産のうち その相続の開始の直前において 被相続人等の事業の用に供されていた宅地等または居住の用に供されていた宅地等のうち 一定の選択をしたもので限度面積までの部分 ( 以下 小規模宅地等 ) については 相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上 一定の割合を減額します この特例を 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 といいます 今回は 小規模宅地等のうち 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 特定居住用宅地等 ) の平成 22 年度税制改正後の取扱いについて 1 二世帯住宅の宅地等 2 老人ホーム入居または入所 ( 以下 入居等 ) の宅地等 を解説します 特例改正の詳細は 経 View Point のバックナンバー 2014 年 6 月 2 日発行 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 の改正 ( 平成 25 年度税制改正事項 ) もご参照ください http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/view_point/pdf/sodan140602.pdf 1. はじめに 特定居住用宅地等で 一定の要件 ( 注 ) を満たすものがある場合は その宅地等の相続税評価額は一定割合が減額されます この特例の適用を受けるものとして選択した宅地等 ( 選択特例対象宅地 ) について 相続課税価格に算入すべき宅地等の価額は 330 m2の限度面積まで 20% の割合を乗じて計算した金額 ( 財産の評価額を 80% 減額 ) とすることができます 注 :1 被相続人の居住の用に供されていた宅地等で 被相続人と同居していた親族が取得し 相続税の申告期限までその家屋に居住し かつその宅地等を所有している場合 2 被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で その生計を一にしていた親族が取得し 相続税の申告期限までその家屋に居住し かつその宅地等を所有している場合 3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等で 被相続人の配偶者および被相続人の相続人である同居親族がいない場合で 相続開始前 3 年以内に国内の自己またはその配偶者の所有する家屋に居住したことがない親族が取得し 相続税の申告期限までにその宅地等を所有している場合 ( 以下 本稿では便宜上 家族なし特例 ) 被相続人の配偶者が取得した場合は 上記 1~3の要件を満たす必要がなく 原則として特例の適用が受けられます 1

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 A の所有する建物とその敷地を B が相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 敷地 建物 A 所有 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当します 区分所有でない1 棟の建物に被相続人とその親族が居住していた場合は 被相続人の居住の用に供していた宅地等の範囲には その敷地のうち被相続人の居住していた部分だけでなく 被相続人の親族 ( 親族も含む ) の居住の用に供されていた部分も含まれます また Bは特定居住用宅地等の取得者の要件である 相続税の申告期限における居住継続の要件と 所有継続の要件を満たす必要がありますが これらの要件も満たしています したがって 子 Bが取得した敷地全体が 被相続人の同居親族が取得した宅地等として特定居住用宅地等に該当することになります [2] 区分所有あり : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物があり 1 階には A が居住 2 階には B とその家族が居住しています ( 建物内部で行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 B が敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 区分所有 1 階 A 所有 B 取得 B 取得 2

A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当しません 区分所有の場合 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲は 被相続人が居住していた部分に限られます したがって このケースでは 被相続人が区分所有していた1 階部分に対応する敷地のみとされ そこに居住していなかった子 Bは同居親族に該当しません また 子 Bは生計を一にしていないため 生計一親族の居住の用に供されていた宅地等に該当する部分はなく さらにBは自宅として2 階部分を所有していることから 家なし親族 にも該当せず Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当しないことになります [3] 共有名義 : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物があり 1 階には A が居住 2 階には B とその家族が居住しています ( 建物内部で行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 B が敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 1/2 ずつ共有 1 階 A 所有 B 取得 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当します 建物が共有名義であっても 区分所有でない一棟の建物に被相続人が居住していたことに変わりはありません したがって このケースは [Q2] ではなく [Q1] と同様の取扱いとなり 敷地全体が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します また Bは特定居住用宅地等の取得者の要件である 相続税の申告期限における居住継続の要件と 所有継続の要件を満たしています したがって 子 Bが取得した敷地全体が被相続人の同居親族が取得した宅地等として特定居住用宅地等に該当します [4] 区分所有あり : 外階段 / 家なし親族 が取得した場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物 ( 建物内部で行き来ができない構造 ) が建ち 1 階には A( 配偶者はいない ) が単身で居住し 2 階には子 B とその家族が居住しています A に相続が発生し この敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を 別の場所で 5 年以上前から賃貸アパートに居住中の子 C(A とは別生計 ) が相続で取得し 相続税の申告期限まで所有している場合 C が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 3

2 階 子 Bと家族居住 1 階 A 所有 子 C 取得 C 取得 A. 子 Cが取得した敷地のうち Aが居住していた1 階部分の敷地が特定居住用宅地等に該当します 上記 [Q2] のとおり 区分所有の場合 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲は 被相続人の居住していた部分に限られ このケースでは被相続人が区分所有していた1 階部分に対応する敷地のみとされます Aの相続人である子 Cが宅地等を取得した場合は 1 被相続人 Aには配偶者がいないこと 2 親族の子 Bは 同居親族に該当しないこと から Cは 家なし親族 に該当します さらに Cは家なし親族としての取得者の要件である 相続税の申告期限における所有継続要件を満たしています したがって Cが取得する宅地等のうち 被相続人が居住していた1 階部分の敷地が 特定居住用宅地等に該当することになります 3. 老人ホーム入居等と特定居住用宅地等 [1] 引き続き居住する親族が取得する場合 Q. 要介護の認定を受けていた被相続人 A と子 B は A が所有する宅地の上に建つ A 所有の建物に同居をしていました A と B の生計は一でした A が老人ホームに入居等をすることになり その後 B は引き続きこの建物に居住していましたが A は一度もその建物に戻ることなく相続が発生し B がその敷地と建物を取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有しています B が取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当しますか A. 子 Bが取得した敷地全体は 特定居住用宅地等に該当します 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等であっても 被相続人が相続開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受け 老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居等をしていたときは その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等は 次の場合を除き 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとされます ここでいう 除かれる場合 とは 被相続人が老人ホーム等に入居等をした後に その宅地等が事業の用 または被相続人等 ( 老人ホーム等への入居等の直前において 被相続人と生計を一にし かつ その宅地等の上の建物に引き続き居住している被相続人の親族を含む ) 以外の者の居住の用 に供されている場合とされます なお 被相続人等以外の者の居住の用とは 新たに被相続人等以外の者の居住の用に供されたことをいいます 4

このケースでは 敷地は 被相続人等以外の者の居住の用に供されていないので 被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します そして Bは相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し かつその敷地を所有していることから 特定居住用宅地等の取得者の要件を満たしていますので Bが取得した敷地は特定居住用宅地等に該当することになります [2] 老人ホーム入居等の後に介護認定を受けた場合 Q. 被相続人 A と子 B は A が所有する宅地の上に建つ A 所有の建物に同居をしていました ( 下図 1) A と B の生計は一でした その後 被相続人 A は老人ホームに入居等をすることになりましたが B は引き続きこの建物に居住を継続していました ( 同 2) A は 入居等の後に介護認定を受け 一度もその建物に戻ることなく相続が発生し B が敷地と建物を取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有しています ( 同 3) B が取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当しますか 1 以前の状況 2 ホーム入居時 Aがホームに入居 Aの介護認定 3 相続発生時 建物:A 所有 A 居住 子 B 同居 建物:A 所有 B 居住 建物:A 所有 B 居住 敷地 建物 A 所有 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当します 要介護認定等の認定を受けていたかどうかは 老人ホーム入居等の時ではなく 相続開始時点で判定されます このケースにおける敷地は 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します また 子 Bは特定居住用宅地等の取得者の要件を満たしていますので Bが取得した敷地は特定居住用宅地等に該当することになります 内容は 2015 年 9 月 30 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にご相談ください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5