2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

第 5 章 N

Microsoft Word - 文書 1

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

1 口当たりの基準価額 口数 + 再投資されていない未収分配金 - 再投資されていない未収分配金に係る源泉所得税相当額 ( 注 ) - 信託財産留保額および解約手数料 ( 消費税相当額を含む ) 注 : 特別徴収されるべき都道府県民税の額に相当する金額 および復興特別所得税を含みます ( 以下同 )

2.配偶者控除の特例の適用を受ける場合(暦年課税)編

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海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

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相続税の小規模宅地等の特例特定居住用宅地等の取扱い 事例編 福田和仁相談部東京相談室 個人が 相続または遺贈により取得した財産のうち その相続の開始の直前において 被相続人等の事業の用に供されていた宅地等または居住の用に供されていた宅地等のうち 一定の選択をしたもので限度面積までの部分 ( 以下 小規模宅地等 ) については 相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上 一定の割合を減額します この特例を 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 といいます 今回は 小規模宅地等のうち 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 特定居住用宅地等 ) の平成 22 年度税制改正後の取扱いについて 1 二世帯住宅の宅地等 2 老人ホーム入居または入所 ( 以下 入居等 ) の宅地等 を解説します 特例改正の詳細は 経 View Point のバックナンバー 2014 年 6 月 2 日発行 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 の改正 ( 平成 25 年度税制改正事項 ) もご参照ください http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/view_point/pdf/sodan140602.pdf 1. はじめに 特定居住用宅地等で 一定の要件 ( 注 ) を満たすものがある場合は その宅地等の相続税評価額は一定割合が減額されます この特例の適用を受けるものとして選択した宅地等 ( 選択特例対象宅地 ) について 相続課税価格に算入すべき宅地等の価額は 330 m2の限度面積まで 20% の割合を乗じて計算した金額 ( 財産の評価額を 80% 減額 ) とすることができます 注 :1 被相続人の居住の用に供されていた宅地等で 被相続人と同居していた親族が取得し 相続税の申告期限までその家屋に居住し かつその宅地等を所有している場合 2 被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で その生計を一にしていた親族が取得し 相続税の申告期限までその家屋に居住し かつその宅地等を所有している場合 3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等で 被相続人の配偶者および被相続人の相続人である同居親族がいない場合で 相続開始前 3 年以内に国内の自己またはその配偶者の所有する家屋に居住したことがない親族が取得し 相続税の申告期限までにその宅地等を所有している場合 ( 以下 本稿では便宜上 家族なし特例 ) 被相続人の配偶者が取得した場合は 上記 1~3の要件を満たす必要がなく 原則として特例の適用が受けられます 1

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 A の所有する建物とその敷地を B が相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 敷地 建物 A 所有 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当します 区分所有でない1 棟の建物に被相続人とその親族が居住していた場合は 被相続人の居住の用に供していた宅地等の範囲には その敷地のうち被相続人の居住していた部分だけでなく 被相続人の親族 ( 親族も含む ) の居住の用に供されていた部分も含まれます また Bは特定居住用宅地等の取得者の要件である 相続税の申告期限における居住継続の要件と 所有継続の要件を満たす必要がありますが これらの要件も満たしています したがって 子 Bが取得した敷地全体が 被相続人の同居親族が取得した宅地等として特定居住用宅地等に該当することになります [2] 区分所有あり : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物があり 1 階には A が居住 2 階には B とその家族が居住しています ( 建物内部で行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 B が敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 区分所有 1 階 A 所有 B 取得 B 取得 2

A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当しません 区分所有の場合 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲は 被相続人が居住していた部分に限られます したがって このケースでは 被相続人が区分所有していた1 階部分に対応する敷地のみとされ そこに居住していなかった子 Bは同居親族に該当しません また 子 Bは生計を一にしていないため 生計一親族の居住の用に供されていた宅地等に該当する部分はなく さらにBは自宅として2 階部分を所有していることから 家なし親族 にも該当せず Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当しないことになります [3] 共有名義 : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物があり 1 階には A が居住 2 階には B とその家族が居住しています ( 建物内部で行き来ができない構造 ) A と B は別生計です この場合 B が敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を相続で取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有している場合 B が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 1/2 ずつ共有 1 階 A 所有 B 取得 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地全体が 特定居住用宅地等に該当します 建物が共有名義であっても 区分所有でない一棟の建物に被相続人が居住していたことに変わりはありません したがって このケースは [Q2] ではなく [Q1] と同様の取扱いとなり 敷地全体が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します また Bは特定居住用宅地等の取得者の要件である 相続税の申告期限における居住継続の要件と 所有継続の要件を満たしています したがって 子 Bが取得した敷地全体が被相続人の同居親族が取得した宅地等として特定居住用宅地等に該当します [4] 区分所有あり : 外階段 / 家なし親族 が取得した場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A と子 B がそれぞれ区分所有する建物 ( 建物内部で行き来ができない構造 ) が建ち 1 階には A( 配偶者はいない ) が単身で居住し 2 階には子 B とその家族が居住しています A に相続が発生し この敷地全部と建物のうち A が区分所有する部分を 別の場所で 5 年以上前から賃貸アパートに居住中の子 C(A とは別生計 ) が相続で取得し 相続税の申告期限まで所有している場合 C が取得した敷地は特定居住用宅地等に該当しますか 3

2 階 子 Bと家族居住 1 階 A 所有 子 C 取得 C 取得 A. 子 Cが取得した敷地のうち Aが居住していた1 階部分の敷地が特定居住用宅地等に該当します 上記 [Q2] のとおり 区分所有の場合 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲は 被相続人の居住していた部分に限られ このケースでは被相続人が区分所有していた1 階部分に対応する敷地のみとされます Aの相続人である子 Cが宅地等を取得した場合は 1 被相続人 Aには配偶者がいないこと 2 親族の子 Bは 同居親族に該当しないこと から Cは 家なし親族 に該当します さらに Cは家なし親族としての取得者の要件である 相続税の申告期限における所有継続要件を満たしています したがって Cが取得する宅地等のうち 被相続人が居住していた1 階部分の敷地が 特定居住用宅地等に該当することになります 3. 老人ホーム入居等と特定居住用宅地等 [1] 引き続き居住する親族が取得する場合 Q. 要介護の認定を受けていた被相続人 A と子 B は A が所有する宅地の上に建つ A 所有の建物に同居をしていました A と B の生計は一でした A が老人ホームに入居等をすることになり その後 B は引き続きこの建物に居住していましたが A は一度もその建物に戻ることなく相続が発生し B がその敷地と建物を取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有しています B が取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当しますか A. 子 Bが取得した敷地全体は 特定居住用宅地等に該当します 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等であっても 被相続人が相続開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受け 老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居等をしていたときは その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等は 次の場合を除き 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとされます ここでいう 除かれる場合 とは 被相続人が老人ホーム等に入居等をした後に その宅地等が事業の用 または被相続人等 ( 老人ホーム等への入居等の直前において 被相続人と生計を一にし かつ その宅地等の上の建物に引き続き居住している被相続人の親族を含む ) 以外の者の居住の用 に供されている場合とされます なお 被相続人等以外の者の居住の用とは 新たに被相続人等以外の者の居住の用に供されたことをいいます 4

このケースでは 敷地は 被相続人等以外の者の居住の用に供されていないので 被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します そして Bは相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し かつその敷地を所有していることから 特定居住用宅地等の取得者の要件を満たしていますので Bが取得した敷地は特定居住用宅地等に該当することになります [2] 老人ホーム入居等の後に介護認定を受けた場合 Q. 被相続人 A と子 B は A が所有する宅地の上に建つ A 所有の建物に同居をしていました ( 下図 1) A と B の生計は一でした その後 被相続人 A は老人ホームに入居等をすることになりましたが B は引き続きこの建物に居住を継続していました ( 同 2) A は 入居等の後に介護認定を受け 一度もその建物に戻ることなく相続が発生し B が敷地と建物を取得し 相続税の申告期限までその建物に居住し その敷地を所有しています ( 同 3) B が取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当しますか 1 以前の状況 2 ホーム入居時 Aがホームに入居 Aの介護認定 3 相続発生時 建物:A 所有 A 居住 子 B 同居 建物:A 所有 B 居住 建物:A 所有 B 居住 敷地 建物 A 所有 B 取得 A. 子 Bが取得した敷地は 特定居住用宅地等に該当します 要介護認定等の認定を受けていたかどうかは 老人ホーム入居等の時ではなく 相続開始時点で判定されます このケースにおける敷地は 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します また 子 Bは特定居住用宅地等の取得者の要件を満たしていますので Bが取得した敷地は特定居住用宅地等に該当することになります 内容は 2015 年 9 月 30 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にご相談ください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5