愛知学院大学法科大学院に対する認証評価 ( 追評価 ) 結果 Ⅰ 認証評価 ( 追評価 ) 結果 2009( 平成 21) 年度に本協会が実施した認証評価の結果において 貴大学法科大学院は 法令が定める科目の開設状況とその内容の適切性 ( 評価の視点 2-1) カリキュラム編成における授業科目の適切な分類と系統的 段階的な配慮 ( 評価の視点 2-4) 成績評価 単位認定および課程修了認定の客観的かつ厳格な実施 ( 評価の視点 2-26) 再試験の基準および方法の明示とその客観的かつ厳格な実施 ( 評価の視点 2-27) 法学既修者の認定基準 方法と認定基準の公表 ( 評価の視点 4-8) に重大な問題を有すると判断した結果 本協会の法科大学院基準に適合していないと判定したが 追評価の結果 上記の問題事項が概ね改善されたと判断した その結果 先の認証評価とあわせて 本協会の法科大学院基準に適合していると認定する 認定の期間は 2015( 平成 27) 年 3 月 31 日までとする なお 提言として指摘した事項については 一層の改善の必要があるため 次回の認証評価申請時において 報告を求めることとする Ⅱ 総評貴大学法科大学院 ( 以下 貴法科大学院 ) は そのディプロマ ポリシーとして 高い専門的知識と透徹した法的思考力を有するとともに 人間的洞察力に富み 社会的弱者に寄り添える 熱き心を持った高度専門職業人の養成を掲げ ( 愛知学院大学法科大学院ホームページ ) その教育のポリシーとして 1 豊かな人間性と幅広い見識 高度な専門的知識を備えた法曹の育成 2 地域市民のための法曹の育成 及び3 地域経済を支える法曹の育成を掲げている ( AGU LAW SCHOOL 2011 2 頁 ) 前回の認証評価に際しては こうした教育目標がホームページやパンフレットに明記されていないことを遺憾であるとしていたが この点については上記の通り ホームページやパンフレット等に適切に明記され 学内外に周知されていることが確認できた この事項は今回の追評価の対象ではないが 認証評価結果の総評における指摘事項であり その改善が認められることから ここに特記しておきたい 本協会では こうした貴法科大学院の理念 目的ならびに教育目標についての評価も含め 2009( 平成 21) 年度に 法科大学院基準に基づき認証評価を行った その結果 1
貴法科大学院は 法令が定める科目の開設状況とその内容の適切性 ( 評価の視点 2-1) カリキュラム編成における授業科目の適切な分類と系統的 段階的な配慮 ( 評価の視点 2-4) 成績評価 単位認定および課程修了認定の客観的かつ厳格な実施( 評価の視点 2-26) 再試験の基準および方法の明示とその客観的かつ厳格な実施( 評価の視点 2-27) 法学既修者の認定基準 方法と認定基準の公表( 評価の視点 4-8) に重大な問題を有すると判断した結果 本協会の法科大学院基準に適合していないと判定し 適切に改善するよう求めた 本協会の認証評価結果を受けた後 貴法科大学院は これらの課題を認識し 2011( 平成 23) 年度からのカリキュラムを改正し また 2010( 平成 22) 年 7 月 21 日の法務研究科委員会において 採点 成績基準の明確化 年度末特別試験と春学期の再試験の取扱い 再試験の際の成績について 各科目間の成績評価の目安 ( 教授会申し合わせ ) 等を審議 決定して 前段に述べた問題が適切に解決されるよう改善を図ってきた これらの点については 貴法科大学院から提出された資料の検証及び実地調査により 概ね改善がなされたことが確認できた しかしながら 以下の2 点については より一層の改善が必要であり 次回認証評価申請時において 報告を求めることとしたい まず 法医学 法歯科学 については 本協会の指摘の趣旨を踏まえ 適切な内容に変更がなされたことは評価できるものの 現在の内容に照らしてみても 基礎法学 隣接科目群への配置については 依然として適切であるとはいいがたく 展開 先端科目群への移設が望まれる ついで 特別選考入学試験 についても 原則として 各資格保有者に対し 法学既修者認定試験を課すこととしており 本協会の指摘を踏まえた改善がなされているものと認められるが 司法書士については 例外的に民法の試験を免除している しかし 法学既修者認定試験については 各法科大学院が客観的な認定基準及び認定方法を独自に検討 設定することが期待されるところであり 法律に関係する国家資格等で代替する方法は その出題範囲及び難易度を問わず 適切なものとはいいがたいことから 改善が必要である 以上の点の改善を図りつつ 今後も 貴法科大学院が 理念 目的ならびに教育目標の実現のために 不断の改善 改革に取り組むことを期待したい 2
Ⅲ 法科大学院基準の各項目における概評及び提言 1 教育内容 方法等 (1) 法科大学院基準の各評価の視点に関する概評 2-1 法令が定める科目の開設状況とその内容の適切性 2009( 平成 21) 年度の認証評価において 貴法科大学院の法令が定める科目の開設状況と内容の適切性については 次の点について勧告していた すなわち 1 2008( 平成 20) 年度入学者用カリキュラムにおいて 租税法 Ⅰ 租税法 Ⅱ 倒産処理法 Ⅰ 倒産処理法 Ⅱ 金融商品取引法 外国人法 企業法務 保険法 少年法 といった本来展開 先端科目に分類すべき科目を法律基本科目に分類していることは 平成 15 年文部科学省告示第 53 条第 5 条第 1 項第 1 号に照らして不適切であること 2 刑罰実務 民事法総合演習 が法律基本科目に分類されているが 内容からして法律実務基礎科目に分類されるべきであること 及び 3 基礎法学 隣接科目群の 法歯科学 は法医学の一部であり また 宗教哲学 坐禅 については 平成 15 年文部科学省告示第 53 号第 5 条第 1 項第 3 号の基礎法学 隣接科目に該当しているとは判断できず さらに授業のかなりの部分を坐禅実習が占めていることから 法科大学院においてその履修に2 単位を認定することは相応しいとはいえず 法科大学院のカリキュラムとしては適切でないことを指摘していた 上記の諸点については 貴法科大学院において 2010( 平成 22) 年 3 月の法務研究科委員会の決定により 次のように改善が図られた まず第 1に 法律基本科目に分類されていた 租税法 Ⅰ 租税法 Ⅱ 外国人法 企業法務 倒産処理法 Ⅰ 倒産処理法 Ⅱ 保険法 少年法 は 展開 先端科目群へ移設された ( 愛知学院大学大学院法務研究科( 法科大学院 ) 学則別表 1 ( 以下 学則別表 という )) 刑罰実務 についても同様に 法律基本科目群から法律実務基礎科目群へ移設された ( 学則別表 ) これらの科目の分類については 適切に改善がなされたものと判断される 第 2に 民事法総合演習 は 検討の結果 理論的要素を増やして 内容的に法律基本科目に相応しいものとすることを前提に そのまま法律基本科目に置くことにした とされている ( 追評価改善報告書 11 頁 ) その理由は 本科目は要件事実論をベースにするものであるため 初めて学ぶ要件事実論を実務家教員の指導の下で基本的にしっかり学ぶ その際 要件事実と関連する民法判例の理論的問題について研究者教員の下で学び 民法の解釈論を要件事実と関連づけて法律基本科目である民法の理論的要素を学 ぶことにあるとされる ( 実地調査の際の質問事項への回答 No.2) 平成 23 年度法務研究科シラバス集 50 頁の 授業の概要 の説明から見る限り 当該科目は 要件事実の展開という位置づけが相応しいように思われるが 本協会の提言の趣旨に沿って科目の内容及び配置についての検討を行い 一定の改善が図られたと評価することができる なお 民事法総合演習 は 3
2012( 平成 24) 年度からは 法律実務基礎科目群に移設し 3 年次の必修科目とすることを教授会で決定している ( 実地調査の際の面談調査 ) 第 3に 法歯科学 は 内容的に法医学が含まれていたが この点をさらに強化するとともに 名称が 法医学 法歯科学 に変更された ( 追評価改善報告書 11 頁 学則別表 平成 23 年度法務研究科シラバス集 98 頁 ) すなわち 具体的な授業内容の割合は 主として法医学に関わるものが2 講義 ( 法医学および法歯科学の ) どちらにも関わるものが5 講義 法歯科学に関わるものが5 講義である とされている ( 実地調査の際の質問事項への回答 No.4) 当該科目の開設の趣旨について 貴大学は 愛知県下有数の伝統をもつ歯学部を有しており 近年 歯科医師と患者との間に生じる医事紛争が多くなり 歯科治療に関わる裁判も増えているので 大学の特色を生かすとともに将来の法曹にとって不可欠な知識を与えるものとしている ( 実地調査の際の質問事項への回答 No.3) こうした科目の開設趣旨については 実地調査の際の学生面談により 受講生も理解していることが確認された ( 実地調査における学生面談結果 ) したがって 当該科目については 本協会の提言の趣旨に沿って科目内容の改善が図られていると評価できる ただし 現在の科目内容に照らしても基礎法学 隣接科目群への配置については適切とはいえないことから 展開 先端科目群に移設することが望まれる 第 4に 宗教哲学 坐禅 については 科目名称が 宗教哲学 に変更され 内容も 法という人間の行為を規律する規範を考えたとき 法とは別の人間の行為規範の源である宗教に対する理解が必要であるという見地に立ち 宗教哲学 仏教学及び禅思想の3 部構成として 3 人の教員による講義科目になり 坐禅実習はごく一部を占めるに留められた ( 追評価改善報告書 11 頁 平成 23 年度法務研究科シラバス集 88 頁 ) 受講生に課されているレポートの内容からも上記の趣意を確認することができる 本協会の提言の趣旨に沿って法と宗教の関係について考える科目として再編され 引き続き基礎法学 隣接科目に位置づけられたものと評価できる 以上のことから 科目分類になお改善の必要が見られる科目が存するものの 認証評価の際に重大な問題であると指摘した諸点については 概ね改善がなされたものと判断できる 2-4 カリキュラム編成における授業科目の適切な分類と系統的 段階的な配置評価の視点 2-1において既述した通り 認証評価時に法律基本科目に分類されていた 租税法 Ⅰ 租税法 Ⅱ 倒産処理法 Ⅰ 倒産処理法 Ⅱ 金融商品取引法 外国人法 企業法務 保険法 少年法 は 2010( 平成 22) 年 3 月の法務研究科委員会の決定により 展開 先端科目群へ移設された ( 学則別表 ) 認証評価時においては 上記の科目を法律基本科目として選択した学生が 展開 先端科 4
目群で別の科目を履修しなければならないという不利益を生じさせていたが 科目の分類が改善されたことにより 指摘されていた不利益は解消されることになった ( 追評価改善報告書 16 頁 学則別表 ) したがって 認証評価時に指摘した問題は 改善されたものと評価することができる 2-26 成績評価 単位認定および課程修了認定の客観的かつ厳格な実施 2009( 平成 21) 年度の認証評価時においては 成績評価に関して 次の点について勧告していた すなわち 成績評価については 法務研究科の統一基準がシラバス集に明記されているにも関わらず 異なる基準で評価する教員もおり シラバスにおいてもその旨が明確に示されておらず また 担当者ごとに成績評価の基準についての記述が必ずしも明確でなく 相当な差が見られることを重大な問題と指摘し 定期試験と平常点の配点割合及び具体的な平常点評価の指針をシラバスなどに記載し 学生への周知徹底を図るとともに 明示された基準に基づいて客観的かつ厳格な成績評価を行うことを求めた 成績評価については 2010( 平成 22) 年 7 月 21 日の法務研究科委員会において 統一基準が決定されている それによると 講義科目については 平常点 40 点 定期試験 60 点という配分を徹底する 法律基本科目については 授業態度 20 点 小テスト 10 点 レポート 10 点という配分とする 法律基本科目については 講義 演習を問わず 定期試験を行うことを必須とする その他の科目 ( 実務基礎科目群 基礎法学 隣接科目群 展開先端科目群の科目 ) において やむを得ず定期試験に代えてレポート 口頭試験等を行う場合には そのことをシラバスに明示し あわせて配点等も明示する こととされている ( 法務研究科委員会議事録(2010( 平成 22) 年 7 月 21 日 ) シラバス記載要領 ) また 必修科目については5 段階評価のうち A 以上は全受講生の3 割以内 AA( 秀 ) は全受講生の1 割以内とするなどである ( 追評価改善報告書 22 頁 平成 23 年度法務研究科シラバス集 1 頁 ) さらに 各教員は 成績評価にあたって平常点 定期試験等の評価区分が示された統一的な採点表を用いることとされている ( 採点表 ) 平成 23 年度法務研究科シラバス集 の記載においても 2010( 平成 22) 年度と同様に 上記の統一基準が守られていることを確認することができ 実地調査においても上記の諸点の運用が適切であると認められたため 厳格な成績評価に関する問題については 改善がなされたとものと評価することができる ( 平成 23 年度法務研究科シラバス集 2011( 平成 23) 年度シラバス執筆のお願い シラバス記載要領 実地調査の際の質問事項への回答 No.7~9) 2-27 再試験の基準および方法の明示とその客観的かつ厳格な実施 再試験については 認証評価時に次の点が問題とされた すなわち 2009( 平成 5
21) 年度より 1C 評価の科目についても再試験を受験し B 評価を得ることができるようになっているが 定期試験でB 評価を得た者との間で公平を欠くこと 及び2 学年末特別試験 は実質的な 再々試験 と解され 安易な救済策と解されることを重大な問題と指摘し これらの試験制度の実施方法や内容について抜本的な改善を求めた 再試験については 2011( 平成 23) 年 4 月 1 日より施行される 愛知学院大学大学院法務研究科修学規程 の改正により 受験することができるのは 定期試験又は追試験でDとされた科目に限り その成績評価はC 又はDの2 段階とされた ( 愛知学院大学大学院法務研究科修学規程 第 19 条 ) また 旧規程第 19 条 2 項但書に存在した ただし 定期試験 追試験の成績評価を下回ることはない という定めは削除された さらに 愛知学院大学大学院法務研究科修学規程 第 19 条の2に定めのあった 年度末特別試験 は廃止された なお 再試験制度の廃止についても現在検討中であるとされている ( 追評価改善報告書 23 頁 実地調査の際の質問事項への回答 No.13 実地調査の際の面談調査) 以上のことから 再試験に関する問題は改善されたものと評価することができる 今後は 廃止の是非も含め 再試験のあり方について 引き続き検討していくことが期待されるところである (2) 提言 1) 基礎法学 隣接科目群の 法医学 法歯科学 は その内容に照らして 分類が適切なものとはいいがたいため 展開 先端科目群へ移設することが望まれる ( 評価の視点 2-1) 6
1 学生の受け入れ (1) 法科大学院基準の各評価の視点に関する概評 4-8 法学既修者の認定基準 方法と認定基準の公表 2009( 平成 21) 年度の認証評価においては 2010( 平成 22) 年度入試から導入された 特別選考入学試験 に関し 公認会計士 司法書士 税理士 弁理士及び外国の法曹資格を有する者が この試験に合格すると 特段の試験を経ることなく 自動的に法学既修者として入学が可能であるとされている点について これらの資格を有する者の法学の知識及び素養には濃淡が存するところであり なんらの法学既修者認定試験も行わず 専門職大学院設置基準第 25 条に規定される 必要とされる法学の基礎的な学識を有する者 として扱い 法学既修者に認定することは不適切であると指摘した 貴法科大学院は この指摘を踏まえて 入試委員会での検討を踏まえた法務研究科委員会の決定により 特別選考入学試験 については 原則として 当該試験の対象となるすべての資格保有者に対して法学既修者認定試験を実施することとした したがって 特別選考入学試験 においても 原則として法学既修者認定試験を実施することとしており 当該問題は 概ね改善されたものと認められる ただし 司法書士については 例外的に その資格試験の際に民法について相当に広範囲な試験が課されており 十分に既修者としての資格を備えるものと判断し 既修者試験 6 科目のうち民法のみ免除することとした としているが こうした措置については問題なしとすることはできない 法学既修者認定試験については 各法科大学院が客観的な認定基準及び認定方法を独自に検討 設定することが期待されるところであり 法律に関する国家資格等で代替する方法は その出題範囲及び難易度を問わず 適切なものとはいいがたく 法科大学院基準 ( 平成 23 年 4 月 22 日改定 ) の評価の視点 4-9の 留意事項 に照らしても 次回認証評価時に容認されることではないため 改善していくことが必要である ( 追評価改善報告書 30 頁 2012( 平成 24) 年度愛知学院大学法科大学院学生募集要項 9 頁 AG U LAW SCHOOL 2011 23 頁 ) なお 2009( 平成 21) 年度の認証評価においては 法学既修者認定試験と認定科目との整合性について 問題点として指摘していた すなわち 法学既修者認定試験の科目が憲法 民法及び刑法の3 科目であり この試験に合格すると 1 年次に必修とされる法律基本科目 30 単位を修得したものと認められるが このうち 10 単位については 試験科目とされていない商法 行政法 民事訴訟法及び刑事訴訟法から 本人が申請した科目を自動的に修得したものと認めており 法学既修者の試験科目と認定科目との整合性について検討することが望まれると評価した この点についても 貴法科大学院は 認証評価結果を踏まえ 入試委員会での検討を行ったうえで 法務研究科委員会において 法学既修者認定試験については 7
1 年次に配当されている法律基本科目すべてを試験科目とすることを決定してい る したがって 法学既修者の試験科目と認定科目の整合性について検討がなされ かつ 両者の整合が図られたものと評価できる (2) 提言 1) 特別選考入学試験 において 司法書士については 既修者試験 6 科目のうち民法のみ免除することとされているが 法学既修者認定試験については 各法科大学院が客観的な認定基準及び認定方法を独自に検討 設定することが期待されるところであり 法律に関係する国家資格等で代替する方法は その出題範囲及び難易度を問わず 適切なものとはいいがたいため 改善が必要である ( 評価の視点 4-8) 8