2016. 1 2 15 カンキツ1 貯蔵管理⑴普通温州ミカン本年は 11 月から気温が高く降雨も多かったため 収穫が遅れてしまった場合には浮皮傾向になっていると思います 先月号に 未着色果実の着色促進目的での追熟予措 その後の予措を説明いたしました 収穫後20 日程度で3~5%の予措(果皮のしなび)をしないと予措の効果は出ません 予措は果皮をしなびさせて 果肉の水分を空気中に出さないようにして果肉のス上がりを防ぎます このため 1か月以上かけていたのでは予措になりませんので注意します (図1)点検では 腐敗果を排除することはもちろん 果皮の状況を手で握ってしっとり感や 耳元で果皮の音をききパリパリと音がすると果皮が生き過ぎ貯蔵力がないので風通しを良くします 果実は呼吸をしていますので密室にして酸素不足になると味が損なわれたり貯蔵庫には温湿度計を設置しておきましょう 中長期の貯蔵温度は5 程度であることから2月後半の換気は朝方の5 程度の時間に換気をします 湿度は85 %になるよう乾燥したら 濡れた新聞紙などを地面に入れて湿度を調整します ⑵中晩柑中晩柑は 追熟予措で完全着色管理を行った後 温州ミカンよりやや高い温度6~8 湿度85 ~90 %で管理をします 八朔 ネーブル 伊予柑を 換気しないで放置して置くと酸素不足となり 果皮に粘性が発生しますので定期的に換気をします また 冷たい風に当てるとヤケが発生しますのでミカン以上に温度には注意します 乾燥するようなら 果実の上に新聞紙を置いたり タイベックシート 有孔ポリシートをかぶせ乾燥防止対策をしましょう 2 中晩柑の収穫⑴本年の状況本年はミカン同様に中晩柑も酸の減少が早い傾向です 果実分析をもとにクエン酸が収穫基準になったら収穫時期を決定します また 1月から2月に収穫する場合は 最低気温がマイナス3 以下に7時間程度 マイナス5 では数時間で凍結しますので低温には注意します 最低温度は 日の出頃が一番最低気温となります ⑵はるみはるみは1月中下旬が成熟期となります 特に隔年結果性が強いことから裏年になると大玉果で 浮皮が発生しますので 大玉は1月中旬に収穫します ⑶不知火不知火は 初期の系統や乾燥した園地 樹の樹勢の弱い園地や高接ぎ樹では クエン酸が高い場合があります 収穫するより樹上に成らせておく方が減酸もやや早いため クエン酸が高い場合は 収穫時を3月上旬まで遅らせます ⑷あまなつあまなつの収穫時期は過去の減酸から1月下旬から2月上旬です 収穫が遅くなると陽光面が回青して淡黄色くなることから遅れないようにします 収穫後は4%程度の予措をした後 中晩柑の貯蔵管理をします 3 土壌管理1月から2月は土壌改良を実施する時期です 土壌条件が悪く夏季に 図 1 果皮の予措
2016. 1 2 16 強い乾燥をうけるとこはん症の発生原因となりますので例年こはん症が発生する園では土壌改良をします ⑴土壌pHの改良土壌の最適pHは5.5~6.5です 苦土石灰施用後数年経過すると酸性になりますので何年も施用していない園では本年は施用しましょう 葉の縁がチョコレート色の斑点が発生すると 土壌が酸性化して マンガン過剰の症状です 県内の多くのカンキツ園は 酸性化していると思われますので 石灰資材として苦土石灰 サンライム マリンカルのいずれかを10 a当たり100kg 200kg投入します (図2)⑵土質の物理性の改良土壌は 固層 気層 水層の3層からなりますが 水層が多すぎると湿害が発生して根が枯れます 固層(土)だけだと空気がないので根が伸びません このバランスが大切です 土に有機物をいれると 空気の層が増え 雨が降ると水層が多くなります このため 粘土質の土壌では砂や有機物(完熟たい肥を10 a当たり2t~3t程度施用)をいれ 粘りを少なくして気層を多くします また キッポーPXスーパを10 a当たり30 kg施用すると粘土質の土壌が団粒構造の土となり気層が増え根が活動しやすくなります カンキツの細根は 酸素要求量が高く 土壌表面に多く分布することから 細根の増加による樹勢の維持や品質向上を図ります 最近は 集中豪雨的な雨が多いことから 排水路をつくり湿害が発生しないようにします 4 園内作業道路の修復 作成昨年豪雨で 園内道路がくずれたり いびつになった園では冬季に修復しましょう また 収穫物の運搬 防除で管理作業道路があると仕事が楽で捗ります 園地を見直し作業道路を作りましょう (図3)5 間伐の実施植え付け時に初期収量を多くする目的で密植植えを指導していました その後 樹が混み始めると 縮伐もしくは 間伐を計画していましたがそのままであると樹の上部の枝にしか葉がない状況になります こうならないうちに伐採樹を決め伐採します 隔年結果が強い園ほど 樹冠が混んでいる場合が多くみられます 密植になると 防除や収穫 運搬 マルチ設置等の作業を困難にするばかりでなく過度な剪定により 徒長枝の発生を促し ミカンの品質が悪くなります 6 剪定について密植園は 5.間伐の実施 のように 間伐の実施を行います 樹相を見て早い所は 2月からの剪定となります 豊作樹は2月から取りかかり 新 図 2 主要果樹の生育に適した ph(h 2 O) 図 3 傾斜園地では 50 cm 1m の作業道を作成
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2016. 1 2 18 平成27 年産果樹は 台風11 号の強風で落果や樹体被害が発生し 作柄が予想以上にダウンした年でした 自然災害の積雪 風害 水害 乾燥害などに対する対策は収穫後の 今 実施します 落葉果樹根づくり(土づくり)落葉果樹の根は 早い品目は発芽前の2月中旬から活動します このため土づくりは1月中に実施しておきます 有機物の投入は ブドウの場合 生育期に敷きわらをする関係で比較的稲わらや牛糞堆肥を投入しています それ以外の品目は少ないようです 細根を増やし養分の吸収を多くすることで 収穫量を増やし 生理障害を少なくします 最近は長雨 強日射と天候異変などの発生が多いことから土壌表層の細根が少なくなっているようです 主幹基部近くには有機物を敷き土壌を乾燥させないようにします また タコツボ(スコップの刃の深さ刃の広さ)程度の穴を1樹当たり4個以上堀り そこへ堆肥と一緒に地表面近くの有機物を入れ そこに根を発生させます 土壌pH調整土壌の適したpHは5.5~6程度です 毎年10 a当たり 100kg~200kg程度サンライムやマリンカル または 苦土石灰のいずれかを施用します (表1 表2) 落葉果樹の生育状態本年は7月中旬の台風の影響で露地栽培の果樹では落葉が大発生し その後 8月に弱い遅れ芽が発生しましたが 黄緑色で充実不良のまま表 1 増肥係数地質および土性増肥係数和泉砂岩壌土 ~ 植壌土 混合土壌砂壌土 1.05 和泉砂岩壌土 混合土壌砂土 花こう岩壌土 ~ 植壌土 1.10 和泉砂岩砂土 花こう岩砂壌土 1.15 花こう岩砂土 1.20 表 2 ph を 1 上昇させるのに必要な石灰量炭カル消石灰 苦土石灰サンライムマリンカル備考砂土 60 36 60 66 苦土石灰は苦土成分補給の必要な時に使用します 壌土 80 64 80 88 腐植の多い壌土植壌土 100 80 100 88 腐植の多い植壌土 120 96 120 130 土壌の物理性 化学性の改良土壌改良資材くみあい樹皮堆肥 100 kg /10a アミノキッポ 40 kg ~60 kg /10a 堆肥 1~3t/10a キッポ 40 kg ~60 kg /10a 粒状サンライム 100 kg /10a キッポ PX スーパー 30 kg /10a マリンカル 100 kg /10a フミロン 100 kg /10a 粒状アヅミン苦土石灰 100 kg /10a ピートモス 1t/10a アヅミン 100 kg /10a 苦土石灰 100 kg /10a 粒状ジャンプ 067( 有機率 46%) 60 kg /10a 消石灰 100 kg /10a 液体ジャンプ 613 随時 /10a 土壌改良剤を数年施用していない園 もしくは ph の低い所では苦土石灰を 200 kg /10 cm施用します
2016. 1 2 19 現在に至っています この様な枝は寒さで枝枯れを引き起こします モモの花芽 ブドウの混合芽の充実が悪くなると 発芽不良や花の質が悪くなることが予想されますので 剪定時期を遅らせるとともに 芽を十分観察して剪定します ブドウ1月下旬に加温予定の場合は 1月上旬には剪定を終らせます 遅くなると切口から樹液が出て樹勢が弱ります 無加温栽培は1月20 日 トンネル栽培では2月20 日までには剪定をします 樹勢低下樹 枝の登熟不良 若木等の耐寒力の弱い樹の剪定は遅らせ 健全樹から開始します 短梢剪定の方法は 花芽の状況により決定しますが 基芽(小さく尖った芽) (写真1)1芽を残し2芽目の節で切ります シャインマスカットの若木の結実初期は花の質が悪くなり易い性質があります 1文字仕立てをしている場合も花房の質が悪い傾向です このような場合には 2芽残し3芽目の節で切ります また 1芽の向きが悪ければ2芽を残します 主枝延長枝を長く残しすぎ発芽しなかった場合には返し枝として3~4芽と長く残します シャインマスカットの剪定では 主枝先端に親指程度以上の太い枝を使うと芽なえが発生し 発芽しても芽が白くなり 枯死して芽とびが発生しますので 主枝延長枝は小指程度の細めの枝を15 芽程度で剪定します モモ1 剪定の考え方本年は落葉が早かったことから芽の質を十分確認してから剪定します 花芽や枝の充実が悪い場合には剪定時期は平年より遅らせます 昨年8月に入り発生した枝は芽飛びが発生しています (写真2)また 先が枯れている場合や シンクイムシの被害を受けている場合には 枝先から芽を見ながら葉芽がある所まで切り返し剪定をします モモの樹の特性として基部(根)に近い枝ほど強くなる性質があります 不要な太い枝を切ると癒合(カルスのまき)が悪く枝の枯れ込みが発生しますので 9月に切るか切る部分より先に小枝をひとつ残して切り 残した枝を弱らせないよう配慮します 樹齢が3~10 年程度は大変樹勢が強く1年間に1~2m程度は伸びます 主枝 亜主枝を確立させる剪定をします また 車枝を残すと先の枝は伸びが悪くなります よく伸びている若木時代は枝のバランスを考慮した軽い剪定とします 陰芽が殆んど発生しないので 1年生の内向枝を剪定する場合には基部の1葉芽は残し剪定します 2 剪定量9月に剪定をしていない場合に 冬季の剪定量が多いと 春に強い芽が多く発生することから幼果の肥大が悪くなります また 種と果実の肥大のバランスを崩し核割れの原因となりますので 剪定量は10 %~20 %の軽めにします 3 剪定する枝主枝と競合している太い枝 内向枝 横枝から立っている2年生以上の枝 かぶさり枝 枯れ枝 病気の枝 弱い側枝は枝元近くの強めの枝を予備枝剪定して発芽させ樹勢を強めます カキ1 剪定の考え方7月の長雨から炭そ病が発生し枝に病原菌が残っています この枝は黒くなっていますので先に剪定します 剪定では大玉生産を図るため主枝亜主枝を確立させ 側枝は亜主枝に近づけ短くして樹勢を強めます 結果習性は 前年伸長した新梢が結果母枝となります 花芽を着ける新梢は15 ~40 cm位の充実した枝の先写真 2 モモ 2 次伸長芽飛び枝写真 1 ブドウの芽
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