3 改良灌漑稲作技術がインタボ灌漑スキームで普及される (4) 投入 ( 中間レビュー時点 ) ( 日本 ベトナム側 ) 専門家 : 日本人専門家 1 名 ( チーフアドバイザー ) ベトナム人専門家 4 名 ( 稲作栽培 種子生産 灌漑 通訳 ) を派遣 研修 :2011 年 8 月に本邦研修 (

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類似業務対象国 / 類似地域語学の種類 各種評価調査インドネシア / 全途上国英語 5. 条件等 (1) 参加資格のない社等 : なし (2) 必要予防接種 : なし 6. 業務の背景インドネシア政府は 食料安全保障や農家の所得向上を政策上の優先課題の一つとして位置付けており 2013 年 7 月に

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評価調査結果要約表 ( 中間レビュー ) 1. 案件の概要国名 : モザンビーク共和国案件名 : ザンベジア州ナンテ地区稲作生産性向上のための技術改善プロジェクト分野 : 農業一般援助形態 : 技術協力プロジェクト所轄部署 : 農村開発部乾燥畑作地帯課協力金額 ( 評価時点 ):4.2 億円 (JICA 予算ベース ) 協力期間 2011 年 1 月 ~2015 年 1 月先方実施機関 : 農業省農業サービス局 (DNSA) ザンベジア州農業局 (DPA Zambezia) マガンジャ ダ コスタ郡経済活動事務所 (SDAE Maganja da Costa) 日本側協力機関 : なし 1-1 協力の背景と概要モザンビーク共和国 ( 以下 モザンビーク 国と記す ) は 人口 2,037 万人 (2007 年 統計局 ) 国土 80 万 km 2 ( 農地 :18 万 km 2 ) を有し 農業はGDPの約 2 割 全就業人口の約 8 割を占めるモザンビーク国の基幹産業である コメはメイズに次ぐ主要作物であり 生産面積は20.4 万 ha 生産量は24 万 t(2009 年 平均収量 1.27t/ha) である 近年コメの消費量が年間約 55 万 tと増加する一方で 30 万 t 以上のコメを輸入しており 著しく低いコメの自給率向上が急務となっている こうした状況を受け モザンビーク国政府は 国内のコメ生産量の約半数を産出する稲作地帯であるザンベジア州のポテンシャルを活用すべく わが国及び熱帯での稲作栽培技術の経験を豊富に有するベトナム国に対し同州ナンテ地区のインタボ灌漑区において 対象地域に適した灌漑稲作技術パッケージの開発 展示 普及と インタボ灌漑区の灌漑施設維持管理能力を向上させ対象地域におけるコメの生産性及び生産量の向上を図るための支援を要請した わが国及びベトナム国政府はこれに対し プロジェクト全体のマネジメント 及び機材などについてはわが国が 稲作栽培技術にかかる点についてはベトナム国が専門家を派遣し モザンビーク国を三角協力により支援することで合意し モザンビーク国農業省をカウンターパートとする ザンベジア州ナンテ地区稲作生産性向上のための技術改善プロジェクト ( 以下 プロジェクト ) が2011 年 1 月から開始された 1-2 協力内容 (1) 上位目標ザンベジア州マガンジャ ダ コスタ郡ナンテ地区の稲作の生産性と生産量が増加する (2) プロジェクト目標灌漑稲作技術の改良によってインタボ灌漑スキームの生産性と生産量が増加する (3) 成果 1 改良灌漑稲作技術パッケージが開発される 2 インタボ灌漑スキームにおいて 水利組合の灌漑施設の操作 維持管理と営農支援活動に係る能力が改善される i

3 改良灌漑稲作技術がインタボ灌漑スキームで普及される (4) 投入 ( 中間レビュー時点 ) ( 日本 ベトナム側 ) 専門家 : 日本人専門家 1 名 ( チーフアドバイザー ) ベトナム人専門家 4 名 ( 稲作栽培 種子生産 灌漑 通訳 ) を派遣 研修 :2011 年 8 月に本邦研修 (1 名 ) 2012 年 9 月にベトナム研修 (2 名 ) を実施 供与機材 : 耕運機 灌漑ポンプ 試験用の籾摺機 精米機 パソコン等の事務機器など 現地業務費 : 労賃 建設資材費 ローカルコンサルタント契約費 車両維持費 通信費など ( モザンビーク側 ) カウンターパート :11 名 (DNSA DPA SDAE) プロジェクト事務所と専門家宿舎の建設と提供 ( マガンジャ ダ コスタ ) (5) 裨益対象者及び規模等ザンベジア州マガンジャ ダ コスタ郡ナンテ地区インタボ灌漑スキーム ( 稲作面積 : 実測約 270ha) 農民約 1,325 戸 DPA 技師及びSDAE 普及員 2. レビュー調査団の概要 調査団 ( 日本 ベトナム側 ) 担当分野 氏名 所属 総括 岩谷寛 JICA 農村開発部計画 調整次長 灌漑稲作 富髙元徳 JICA 国際協力専門員 南南協力 1 宇井望 JICAベトナム事務所所員 南南協力 2 Mr. Nguyen Ba Suong ハノイ市農業農村開発局 計画管理 渡辺広毅 JICA 農村開発部乾燥畑作地帯課 評価分析 奥田浩之 合同会社適材適所コンサルタント ( モザンビーク側 ) 担当分野 氏名 所属 総括 Mr. Daniel Manuel Maduma 農業省農業サービス局 Mr. Braz Edward Anselmo Mr. Carlos Nedson ザンベジア州農業局 ザンベジア州農業局 調査日程 2013 年 1 月 13 日 ~2 月 3 日調査種類 : 中間レビュー ii

3. 進捗の確認 3-1 成果達成状況の確認 (1) 成果 1 2011 年 5 月にベースライン調査が実施された 2011 年 12 月 ~2012 年 6 月の作期では パイロット圃場において 品種 ITA312を対象に栽植密度や施肥量に関する試験 また水稲 7 品種 (Chupa Caga Mocuba ITA312 C4-63 Limpopo Macassane) の栽培比較試験が実施された さらに 次作期試験用に 優良品種であるLimpopo Chupaの純系穂が選抜された (2) 成果 2 老朽化した灌漑施設の修復 改善 具体的には沼地化した導水路の修復工事 (35,000 個のレンガによる導水路のライニング ) リクング川洪水予防堤防の護岸工事( 修復 3km 及び新築 2km) スキーム内アクセス道路用橋等の構造物( 橋や用排水路 ) の修復が農民参加型で行われた また 新しい電動灌漑ポンプが2013 年 1 月に調達された さらに 本プロジェクトによる研修や栽培指導をとおして水利組合の能力強化も進んでおり 水利組合の総会がこれまで2 回開催された (3) 成果 3 郡経済活動事務所 (District Services of Economic Activities:SDAE) 普及員や専門家により 改良技術 ( 種子の浸漬 催芽 苗床準備 畦づくり 圃場均平 田植え 灌漑施設管理など ) に関する研修やセミナーが実施され ポルトガル語による資料も作成された また 他郡の関係者 州レベル農家やNGOも参加して 一般公開向けのワークショップが2011 年 5 月 2012 年 4 月の2 回開催され プロジェクト情報や2011 2012 年作期のプロジェクトの成果が共有された 3-2 プロジェクト目標の達成に向けた進捗 PDM(Project Design Matrix) では プロジェクト目標と各成果において プロジェクト終了時に達成度を測るための指標が設定されている 現時点における進捗では 既に達成された指標もあり ( 指標 1-1: パイロット圃場での平均収量の増加 ) その他の指標についても 確実とはいえないものの引き続き達成に向けた進展が見込まれる ( 指標 2-1: 農家の水利組合への満足度 指標 3-3: 農家による新たな技術の採用程度など ) 各指標については 現在のPDMでは一定の幅をもって提示されていることから 明瞭で分かりやすい指標設定になっているとはいえない 3-3 プロジェクトの実施プロセス日本 ベトナム モザンビーク三国の 三角協力 ( 南南協力 ) による実施であり 日本がプロジェクト管理 ( チーフアドバイザー 業務調整員の派遣 ) と供与機材 現地業務費を提供し ベトナムが技術サービス ( 技術専門家の派遣 ) を担当している プロジェクト実施については JICAとモザンビーク農業省との間のR/D 署名 (2010 年 11 月 2 日 ) に続き JICAとハノイ市農業農村開発局 (Department of Hanoi Agriculture and Rural Development:DARD) との間でM/M(2010 iii

年 12 月 24 日 ) が署名されている 4.5 項目評価の概要 4-1 妥当性プロジェクトの妥当性は高い 2011 年 5 月に承認された農業開発戦略計画 (Plano Estrategico de Desenvolvimento do Sector Agrario:PEDSA) では農業生産性の向上が第一に掲げられ 国家灌漑院 (Instituto Nacional de Irrigação:INIR) が2012 年 5 月に設立されるなど モザンビークにとって灌漑農業の推進は優先度が高い またプロジェクトは アフリカ稲作振興のための共同体 (Coalition for African Rice Development : CARD ) のもと策定中のモザンビーク国家稲作振興戦略 (National Rice Development Strategy:NRDS) 実施にも貢献することから プロジェクトの妥当性の高さは開始当初より変わっていない 4-2 有効性プロジェクトの有効性は高い プロジェクトの3つの成果は プロジェクト目標を達成するために必要なコンポーネントであり これら成果とプロジェクト目標の関係は明確である プロジェクト実施の前提条件としてPDMに掲載されている 灌漑ポンプが稼働し灌漑水 ( 設備 ) が利用できること については その条件が整っていなかったことから 成果 2においてプロジェクト活動として取り組んでいる状況である そうしたなかにあって プロジェクト活動は各成果レベルで着実に進展しており プロジェクト期間内での目標達成を見込んでいる 4-3 効率性プロジェクトの効率性は中程度である 日本人 ベトナム人専門家の貢献については高い評価の声が聞かれ また言葉の違いはあるものの 専門家間及びカウンターパート間のコミュニケーションは良好である モザンビーク政府からは専門家宿舎や事務所の建設など プロジェクト立ち上げ時に多大な支援があった その一方で 業務調整員が2012 年 3 月から不在の状況が続き またモザンビーク側カウンターパートの人数が少ない (DPA 4 名 SDAE 3 名 ) ことによる問題が指摘された 4-4 インパクトプロジェクトのインパクトは 現時点ではまだ低い 上位目標 ( ナンテ地区全体の稲作の生産性向上 ) の達成に向けた進捗といった期待されるインパクトについては 中間レビュー調査時点ではまだ発現していない なお 毎年 1 月 ~2 月のリクング川増水期にはコミュニティが洪水被害を受けていたが 2012 年にプロジェクトが実施したリクング川護岸工事により 2013 年 1 月の増水時には洪水を防ぐことができている iv

4-5 持続性現中間レビュー調査時点では まだ見込みを評価する段階には至っていない 農家やカウンターパート機関の現時点での技術的 人材的なキャパシティは限られており 財政的にも限界があることから プロジェクト関係者の間では 特に2015 年 1 月プロジェクト終了後の改良技術の維持 展開が大きな課題であると広く認識されている 4-6 プロジェクトの効果発現を促進 阻害した主な要因 (1) 促進要因 : 厳しい環境のなかで着実にプロジェクトの成果を出しつつある日本人 ベトナム人専門家の努力は著しい (2) 阻害要因 : 洪水による灌漑スキームの湛水や故障した灌漑ポンプなどにより灌漑稲作の前提である水管理が不可能であったことから プロジェクトはまずこの前提条件の整備から取り組む必要があった 5. 評価結果の要約 5-1 結論プロジェクトは PEDSAを中心とするモザンビーク農業セクターの開発政策に合致しているだけでなく CARDといった国際的な取り組みとも整合しており その妥当性は高い プロジェクトは適切に組み立てられ 灌漑施設の修復 改善を進めつつ各成果レベルで着実に進展していることから その有効性も高い プロジェクトの効率性は中程度と判断されたが これは業務調整員が2012 年 3 月から不在の状況が続き またモザンビーク側カウンターパートの人数が少ないことによる問題が指摘されたためである 上位目標の達成に向けた進捗など 期待される正のインパクトについては中間レビュー調査時点ではまだ低い プロジェクトの持続性の見込みは本中間レビューの時点ではまだ評価する段階には至っていないが 活動の持続性については プロジェクト後半において取り組むべき重要課題の1つであると広く認識されている 5-2 提言 (1)PDMの変更現行のPDMについて これまでの実績に基づき 指標の変更 幅の統一を行い また研修の対象となる農家数の根拠や灌漑稲作面積をPDM 欄外に明記し PDM 修正案を提案した (2) 灌漑ポンプの運営 維持管理 2012 年 6 月に開催された合同調整委員会 (JCC) における決定に基づき プロジェクトが新規購入した灌漑ポンプは 現在設置のための最終段階にある 当ポンプ設置による安定した灌漑水の供給は プロジェクト対象地域における灌漑稲作の前提条件であり 2012 年 7 月にSDAE 水利組合 プロジェクト間で結ばれた運営 維持管理に係る合意文書の順守が必要である v

(3) 水利組合の能力強化プロジェクトが新規購入した灌漑ポンプの適切な運営 維持管理には その中心となる水利組合の能力強化が不可欠である そのため 年間灌漑計画策定や適切な水管理に係る研修実施など 水利組合の能力のより一層の強化が求められる (4) 実施機関カウンターパート (SDAE 普及員 ) の関与プロジェクト実施中及び終了後における改良灌漑稲作技術の普及は 主にSDAE 普及員とリーダー農家に期待される役割である そのため 過去のJCCにおいてもプロジェクトでは SDAE 普及員の体制強化 ( 増員 空席の補充など ) を繰り返し要請してきた しかし 根本的な改善を短期間で見込むことは現実的には難しく またプロジェクト側からは普及員に求められるのは人数ではなく 訪問頻度やコミットメントであることが示された そのため 現在インタボ灌漑地区を担当している2 名の普及員をインタボ灌漑地区の専任とすることが望ましい (5) 改良灌漑稲作技術の普及プロジェクト関係者の継続的な活動により 実験圃場における平均収量は既に目標となる3.5t/haを達成している 今後の課題は 実験圃場からインタボ灌漑地区へどのように普及していくかである プロジェクトは 既に水利組合により選定されたリーダー農家が運営する展示圃場を通した普及活動を開始している また 農業技術移転総合プログラム (Programa Integrado de Transferencia de Technologias Agrarias:PITTA) によりSDAE 普及員 2 名の展示圃場 (2ha) もある 今後の改良灌漑稲作技術の普及のため リーダー農家 普及員官に対するより一層の支援 及び綿密なコミュニケーションが求められる (6) 州農業局 (Direcçâo Provincial de Agricultura:DPA) 主導によるプロジェクト成果の普及プロジェクトの知見は 灌漑稲作マニュアル や 灌漑施設維持管理技術マニュアル へ集約される 農業省は 改良灌漑稲作技術のプロジェクト対象地域外への普及を強く望んでおり 2011 年 7 月 10 日に開催された第 2 回 JCCにおいては プロジェクト成果をザンベジア州全体に普及するため DPA 主導によるカウンターパート活動を強化することが確認された また オランダORIOなどインタボ灌漑地区近隣への灌漑稲作に対する投資計画も存在することから PDAの強いリーダーシップによるプロジェクト成果普及が求められる (7) 他イニシアティブとの連携強化モザンビーク国における国家農業セクター包括戦略であるPEDSAは 農業生産性向上に高い優先度を与えている また PEDSA 実施のための投資計画である 農業セクター国家投資プログラム (Programa Nacional de Investimento do Sector Agrario:PNISA) も策定された DNSAが世界銀行支援により実施中の 持続的灌漑開発プロジェクト (ProIRRI) は この枠組みのなかに位置づけられ 日本政府もPHRD 基金より一部拠出している ザンベジア州はProIRRI 対象地域の1つであることから 本プロジェクトとProIRRIの連携 ( 特に機械化 市場アクセス 水利組合に対する能力強化など ) をDNSA 及びDPA 主導で進めて行くこ vi

とが望ましい (8) 改良灌漑稲作技術導入にかかるコストプロジェクトが開発した改良灌漑稲作技術がインタボ灌漑地区に普及するか否かは 農民が経済的利益を得ることができるかによる プロジェクトは 改良稲作技術パッケージの段階ごとに導入にかかるコストを計算し ( 圃場整備 施肥 除草 水管理 収穫など ) また収穫米のうち 自給用を除いた販売米の市場 価格などについて調査することが求められる (9) ベトナム国におけるカウンターパート研修 2012 年 8 月 9 月に第 1 回目のカウンターパート研修が実施され 参加した2 名のSDAE 普及員に対し正のインパクトを与えた 今後は灌漑稲作におけるベトナムとモザンビーク両国の意見交換や プロジェクト成果の拡大などの機会としてとらえることも含め 本研修の更なる有効活用が望まれる vii