始める 発芽体は匍匐糸状の十数細胞の雄または雌の配偶体に生長し, 夏を過ごす 10 月以降, 水温 23 以下になると雌 雄配偶体は成熟し, それぞれ生卵器と造精器を形成する 生卵器から出た卵 ( 径約 0.01mm) は球形で 雌性配偶体の先端にとどまり, 性フェロモ ンを放出して精子を誘引する 造精器から 放出された精子 ( 洋梨型,5 2μm) は卵 表面にタンポポの毛のように群がって, そ のうちの1 精子が受精する 受精卵は細胞 壁を形成し, やがて細胞分裂して発芽する 発芽体は雌性配偶体上にとどまり, 仮根を 発達させて冬から春へと胞子体として大き く生長する (2) 現 状 図 1 ワカメの生活環 ( 秋山和夫 1992) 表 2 わかめ養殖生産量の推移 年 経営 生産量 生産額 主産地 体数 ( トン ) ( 万円 ) 平 9 34 42 1,000 阿久根 10 36 41 1,100 出 水 11 33 54 1,135 加治木 ( 農林統計 ) (3) 養殖技術 養殖は種苗培養と養殖の2 工程に分けら れる 前者は陸上施設で種糸を育成し, 後 者はその種糸を漁場へ展開して養成し収穫 する 種糸を自家培養せず他所から購入し て, 養成する場合もある 1 種苗培養 ア 培養施設 100~ 2,000 ç水槽 ( ポ リ製またはFRP 製 ) を設置できる家屋 家屋は夏期の 高温を避けるため, できれ 図 2 ワカメの栽培工程図 ( 新村 巖 原図 ) ば北向きで, かつ通風 遮光の調節可能で, 海水の取水が便利な施設 イ 人工採苗 培養基質 ビニロン系単繊維の径 2mmの糸 ( 例 : クレモナ1 号 36 本 ) のケバ焼きしたものが一 般に使われている 糸は塩ビパイプ製の培養枠に約 1mm 間隔に巻き付け,1 枠が 100m 単位とする 母 藻 成育旺盛な母藻から成熟した胞子葉を採取 現場海水で汚れや付着珪藻類を洗い落とす 種糸 100m 当たり胞子葉 1~2 個が必要 1 晩陰干しする 採 苗 翌朝, 容器に胞子葉を入れ, 濾過海水をひたひたまでいれる 直射光を避けた明るいと ころが, 遊走子の放出を促進する 浸漬後 10~30 分で遊走子放出量を調べ, 海水 1 滴をスライドグ ラスに落とし, 顕微鏡 100 倍 1 視野に数個確認したら, 胞子葉を除去し, 胞子液を細目の網で濾す 100 ç水槽に種糸培養枠を縦に詰めて並べ, 胞子液 + 濾過海水をひたひたまで注いでから,1~2 時間静置して採苗する タンク培養 採苗した種糸枠は別の培養タンクへ移し,10cm 間隔に吊り下げて培養を開始する 培養照度は, 初期 2~3 週間は配偶体の生長を図る期間で約 3kluxを保ち, その後高温期は暗光下 (500 lux 以下 ) で珪藻類などの発生を抑制する 9 月以降, 水温下降期に配偶体の成熟促進として 再び明るくし, 換水とか栄養添加して培養する 水温 22 以下になると種糸上に発芽体 ( 胞子体 )
が形成されるまで培養を続ける 2 養 殖 ア 仮沖出し 漁場水温が20 になったら, 種糸枠のまま沖の筏に垂下し, 胞子体が1~2mm の肉眼視されるまで15~20 日間養成する その間, 付着珪藻類に覆われるので, 数日置きに種糸枠 を水面で叩くようにして付着珪藻類の洗い落としを繰り返す (11 月 ) イ 種糸巻付け 養殖縄 ( 径 10~20mm) に種糸を10~15cm 間隔に巻き付ける (12 月 ) ウ 養成管理 当初 (12~1 月 ) は幼芽の生長促進のため照度の大きい浅い水深で養成し,2 月 以降は養成水深を次第に下げていく エ 収 穫 生長にはムラがあるので, 生長の早いものから間引き採取していく 3 加工 出荷 生産初期には生わかめとして出荷する方法と, 盛期に乾燥わかめにして出荷する ( 出水地区 ) 大部分は塩蔵加工 = 熱水処理 ( ボイル ) 冷水処理 脱水 塩蔵 脱水 冷蔵によって長期保存で きるため, 流通が安定した 4 市 況 出水農林水産事務所調べ ( 平成 12 年 ) 生わかめ :40~45 円 /kg 乾燥わかめ :1,000 円 /500g 塩蔵わかめ : 約 150 円 /kg (4) 今後の課題 1 養殖技術 種苗培養において優良種苗の確保 保存と種苗生産の不作対策にはフリー配偶体 培養技術の普及が望まれる 2 藻場造成への応用 本種は大型の藻場構成種で, ウニ, アワビ等の磯根資源の増殖ばかりで なく海域の環境浄化機能も大きいことから, 沿岸資源の保護増殖のため, ホンダワラ類のガラモ場 造成と併行して, 漁協単位でワカメ場造成への応用が望まれる 3) おきなわもずく養殖 養殖技術の発祥は1970( 昭 45) 年以降, 鹿児島水試と同大島分場による養殖学的研究により開発 された (1) 生態特性 1 分 布 本種は奄美大島を北 限に, 沖縄県西表島を南限とする南 西諸島に分布し, 本県では 笠利湾, 焼内湾, 大島海峡の湾口域と与論島 の礁湖に多くみられる 生育地は外 洋水の疎通のよい内湾や礁湖の静穏 な浅海で, 低潮線下 0~5mによく 繁茂する 2 生活環 肉眼的な紐状体期 ( 胞子体世代 ) と微視的な配偶体世代 の異型世代交代をする ( 図 3) ア 配偶体世代 3~6 月頃十 分に生長した胞子体に単子嚢が形成され, これから放出された遊走子が発生して盤状型の雌 雄の配偶体となる 培養 30 日後には1 層細胞からなる径 1mm 内外の盤状体となり, その表面に直立した配偶子複子嚢を形成して, 配偶子を放出する 雌 雄 図 3 オキナワモズクの生活環 ( 新村 巖 1977)
配偶子は接合して胞子体へ発生する 接合せずに単為発生して再び配偶体へ生育するものもあり, このサブサイクルを繰り返す イ胞子体世代接合子は配偶子と同様に盤状型の発生 培養 30 日後, 径約 1mmの盤状体上に直立同化糸を密生, 同化糸は伸長分化して偽柔組織の髄層を形成し, 体長 5mmの直立幼体となる 約 3か月で体長 30cm 前後に成長する この世代では, 老幼にかかわらず無性生殖器官として同化糸先端部に中性複子嚢を形成し, 中性遊走子を放出する 中性遊走子は盤状型の発生経過をたどり, 胞子体へと成長する このように本種は高温環境下でも中性遊走子による小型胞子体のサブサイクルを繰り返し, 周年生育することが特徴である (2) 現状 1973( 昭 46) 年以降, 奄美水産改良普及所の指導や奄美群島水産業振興事業による養殖適地調査等で, 生産量が当初は 310トン ( 昭 56 年 ) まで伸びたが, 後発の沖縄県が広大な適地漁場を利用し1 万トン台の主産地へと発展したため市場価格の低迷をきたし, 本県では次第に減産傾向を示し一時は 30トン ( 平 5 年 ) となった その後, 技術の定着等で生産量は漸増しつつある 県水産振興課調べによると,1999( 平 11) 年は5 経営体, 生産量 83トン, 生産額 2,830 万円である (3) 養殖技術養殖は種苗培養 養殖網への人工採苗 育苗 養成 収穫の工程に分けられる ( 図 4) 1 種苗培養野外培養とタンク培養の2 方式がある ア野外培養奄美本島の漁場では周年にわたり中性遊走子で増殖し, 夏季に2cm 以下の天然藻体が生育することから, 夏季後半に種板 =ポリ フイルム ( 約 15 40cm) 数十枚を30cm 間隔に5mm ロープに挟み込んで種場の海底 ( 低潮線下 2~3m) に敷設する 10~11 月にポリ フイルムに着生した天然幼体 (2~3cm) 及び盤状体を母藻として人工採苗に利用する イタンク培養与論島では礁湖内漁場のためか, 沖縄県と同様に野外培養での種苗育成が成功しないため, 陸上タンクによる培養が行われている 5 月に養殖藻体から塩ビ板 (10 20cm) へ中性遊走子を採苗し, 越夏培養した盤状体を秋の人工採苗に利用する 母藻量 =5g/1 ç 2 人工採苗タンク採苗と野外ずぼ式採苗の2 方式がある アタンク採苗 1k ç容水槽で養殖網 20 枚が採苗できる 種板は網 1 枚当たり2 枚 通気は水 面が盛り上がるほどに強くする 毎日, 網の反転 着生胞子の確認は, あらかじめ浸しておいたポ リフィルム小片を顕微鏡で確認 採苗期間は1~2 週間 網糸 1cm 当たり 500 個以上が望ましい イ 野外ずぼ式採苗 資材 (2 20m 規格 )=ずぼ枠, 種苗固定網, ずぼ袋の3 点セット 1 回で養殖網 50 枚に採苗 ずぼ枠 ( 塩ビパイプ製筏 ) に網 50 枚を重ね, 種板を種苗固定網に配置してこれら全部をずぼ袋 ( ポリエチレン製, 円筒袋 ) ですっぽり包み込み, 中の空気を追い出す ここまでの作業は浅場で行い, 終了後水深 4~5m の漁場に沖出しアンカー留めして水面に浮かす 採苗期間は 1~2 週間 着生胞 図 4 オキナワモズクの栽培工程図 ( 新村 巖 1992)
子の確認はタンク採苗と同様 着生が薄いと10 日毎に換水する 3 育 苗 もずく養殖の成否は育苗技術に左右される 採苗後 30~45 日間に体長 1~3cmに育 てること 適地は潮通しのよい, 低潮線下 0.5~1m, 死サンゴ礫 ~ 大砂の底質 網は5 枚重ねで 潮流に沿って底張り展開 網の4 隅を砂袋で固定して接地し, 網の下 5~6 箇所に 沈み伸子棒 を取り付ける 期間中は浮泥に巻かれぬようポンプ洗浄が肝要 4 養 成 育苗した網は1 枚ずつ漁場に張り込む ( 本張りと言う ) 次の3 方式がある ア 底張り式 水深 1~2mの平坦漁場に, 網 10 枚を海底に20 20mの側ロープを固定し, 網を 並列に展開結着する 網には2m 間隔に浮伸子棒を取り付け, 底質との摩擦を避ける 潜水作業が 主体となる イ 浮き筏式 深い漁場が活用できる ロープ式浮き筏 ( 網 10 枚分 :30 20mの側張り) に浮き 玉を付け, 四隅をアンカーロープで固定する 側張り全体の水深を浮き玉の吊り綱と砂袋で加減で き, 季節による養殖網の水深を調整する 網は伸子棒で加減する 船上での作業が利点 ウ 杭建て式 沖縄方式 遠浅の砂浜漁場で鉄筋杭を2~3mおきに, 高さ30~50cm 打ち込み, ロープを併用して網を展開する 潜水作業が主体となる 5 収穫 加工 本張り後約 50 日 ( 採苗後 80~90 日 ) で藻体が30cmに生長した頃収穫する 芽付きの濃い網では2~3 回摘採できる 網 1 枚当たりの生産性は30~140kg, 平均 60kg 位である 省力化が進み摘採機 ( 回転剪断式と吸引式, 本県では前者が多い ) が普及した 摘採後は洗浄 雑 藻除去 脱水 塩蔵 (25%) の工程を経て1~5kçタンクに貯蔵される 品質保持が重要で, これ らの工程は機械化されているが, 雑藻除去だけが人手に頼る隘路となっている 6 流 通 流通形態は18kg 詰め容器の塩もずくである 一部地元消費で鮮度のよい無塩物もあ るが僅かである 1980( 昭 55) 年, 販路に行き詰まり, 県漁連を中心に共販制度を実施したが, 沖 縄県の生産増によって価格の下落と市場の混乱が続いている しかし, 奄美産は品質管理が徹底し て商社の評判もよく, 現在は生産者個々の取引を行っている (4) 今後の課題 1 生産の安定化 作柄は育苗期間中の海況変動に左右されるので, 不作対策として採苗時期を ずらした種苗網の育成確保が望まれる 4) ひとえぐさ養殖 本種は沿岸岩礁に自生し, 古くから採取し食用としてきた 本県での養殖は1910( 明 43) 年, 西 国分村 ( 現隼人町 ) であまのり養殖の 副産物としての記録がある 本格的な 養殖は1960( 昭 35) 年東町で試験養殖 したのが始まりである (1) 生態特性 1 養殖品種 東町と喜入町ではヒ ロハノヒトエグサが主養殖品種として 確認されている 南西諸島や外海地帯 ではヒトエグサと推察されるが精査さ れていない 2 生活環 肉眼的な葉状体期 ( 配 偶体世代 ) と微視的な球状体期 ( 胞子体世代 ) の異型世代交代をおこなう ( ヒロハノヒトエグサ : 図 5) 春から初夏にかけて成熟葉体( 雌雄異株 ) の縁辺の配偶子嚢から放出され 図 5 ヒロハノヒトエグサの生活環 ( 喜田和四郎 1992)
5) 藻場造成 藻場とは, 浅海底に生育する大型海藻の群落帯をいい, 有用魚介類の生産に大きく機能している しかし第二次大戦後, 内湾域の多くの藻場は干拓や埋立, 富栄養化や水質汚染などによって次々と 姿を消した また外海域では磯焼け現象によって消失が加わった 近年, 沿岸漁業振興の政策課題として, 藻場造成が沿岸資源の保護 増殖を図る上で重要課題と なっている (1) 生態特性 1 藻場の種類 大別して次の3 種類に分けられる ア アマモ場 海草 ( 海産顕花植物 = 花が咲く ) の単子葉植物 アマモ科に属する水草で, 静穏 な内湾域の水深 5m 以浅の砂地の海底に群生している 本県には3 種類が分布している アマモ 体長 30cm 以上 阿久根市脇本, 鹿児島湾奥部に規模の大きい分布あり コアマモ 体長 20cm 以下 小規模分布が多い 特に長島諸島, 笠沙町片浦, 志布志町夏井, 奄美 大島笠利湾 大島海峡にみられる リュウキュウスガモ 体長 30cm 内外 亜熱帯性 与論島大金久海岸に濃生域がある イ ケルプ場 褐藻類コンブ目に属するうち, 海中林を形成する種類 コンブ類, アラメ カジ メ クロメ アントクメ, ワカメ等の群落 本県には次の2 種が分布する ワカメ 養殖による伝播発生で, 小規模群落が各地にみられる 従来から天然わかめの産地とし て長島諸島, 阿久根市沿岸に大規模なワカメ場がある ( わかめ養殖の項参照 ) アントクメ 体長 0.5~1m 方言は北薩地区で かじめ, 志布志で ことっ, 西之表で こうとく という 北薩では広い群 落があるが, その他は稀少的分布で ある ウ ガラモ場 褐藻類ホンダワ ラ類の群落をいう 本県産のホンダ ワラ科は44 種が報告されているが, 普通にみられるのはヤツマタモク, マメタワラである 内湾域にはアカ モク, 外海域のうち県本土側でヒジ キ, ノコギリモク, ヨレモク, エン ドウモク, ウミトラノオ, 離島地区 ではイソモク, フタエモク, ラッパ モクのほか, 南方系の数種が藻場を 形成する 2 生活環 ガラモ場のマメタワ ラについて説明する ( 図 6) 藻体は核相が複相の茎部越年性の配偶体で, 春に1~2mに成長する 雌雄異株で,5 月頃成熟すると枝先に雌または雄の生殖器床ができる 放出された卵 ( 長径 0.2mm) は生殖器床の表面に付着したまま受精する 受精卵が発生した幼胚は仮根を形成して, 数日後生殖器床を離れ海底へ沈着する 母藻は初夏に茎と盤状の付着器を残して流失し, 秋になって 図 6 マメタワラの生活環 ( 寺脇利信 1993)
ç
â m3 ò
ò ò ò ò ò ò ò
â â â â â â
â â
â
ç
ò ò
μm μm μm μm μm μm
μm μm μm μm μm ã ã