本文

Similar documents
個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

本文

【No

<4D F736F F D20819A819A8DC58F49835A C C8E816A2E646F63>

本文

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

本文

2017年夏のボーナス見通し

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

○ユーロ

2018年夏のボーナス見通し

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

月例経済報告

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

金融市場2018年12月号

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

Microsoft Word - jp1309(インターネット用).docx

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

[000]目次.indd

月初の消費点検(3/4)~消費税増税の判断を控えて~

第1章

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

本文

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

各商品の動きについて 新規出店を含めた全店ベースの前年比でみると 衣料品の減少と飲食料品の増加がここ数年のトレンドとして定着しており 7 年も衣料品は減少し 飲食料品は増加した 衣料品が減少傾向にあるのは 販売形態の多様化により 購入先として衣料品専門店や通販 インターネットショッピングなどの選択肢

( 平成 31 年 1 月判断 ) 平成 31 年 1 月 財務省北陸財務局 富山財務事務所 富山市丸の内 1 丁目 5 番 13 号 ( 富山丸の内合同庁舎 5 階 ) TEL(076) ( 財務課直通 )

Economic Indicators   定例経済指標レポート

資料1

2016年冬のボーナス見通し

Microsoft Word - 49_2

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

チーフエコノミスト : 高田創 [ 経済予測チーム ] 山本康雄 ( 全体総括 ) 米国経済小野亮 山崎亮

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

CW6_A3657D14.indd

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

平成10年7月8日

nichigingaiyo

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

2014~2016年度 東海経済見通し

金融政策決定会合における主な意見

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

untitled

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

Economic Indicators   定例経済指標レポート

月例経済報告

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

関西の景気動向 2013 年 5 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直している 輸出は 円安が進み 米国経済も回復基調をたどるなど 環境が

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

別紙2

(Taro-\222\262\215\270\225[.A4\207B.jtd)

エコノミスト便り

October vol

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

Newsletterむさしの_7.indd

中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

タイトル

CW6_A3657D16.indd

1 ( ) 4.1% 4.4% 4.% 1 ( ) 1.2%( ) 1.6% 3.8% 1( ) 5.6% 4, % 8 6.5% % 2 4.3% 47.8% 18.8% % 13 2, % 2.2% 13.% 218 ( ).

1. 総論 総括判断 都内経済は 回復している 項目前回 ( 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断回復している 回復している ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 1 月判断以降 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している ( 判断の要点 ) 個人消費

我が国中小企業の課題と対応策

部品メーカーの状況 自動車部品メーカー 75 社の 2017 年度通期 (2017 年 年 3 月 ) の業績は 以下のとおりとなった 1. 決算状況 1 日本基準適用企業 63 社 ( ) 前年同期差 前年同期比 売上高 14,135,817 15,044, ,912 +

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

第 70 回経営 経済動向調査 公益社団法人関西経済連合会 大阪商工会議所 < 目次 > 1. 国内景気 2 2. 自社業況総合判断 3 3. 自社業況個別判断 4 4. 現在の製 商品およびサービスの販売価格について 8 参考 (BSI 値の推移 ) 11 参考 ( 国内景気判断と自社業況判断の推


ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

本文

○ユーロ

本文

2017・2018年度経済見通し(17年8月)

月別の売上でみると 百貨店については 夏物衣料が好調だった 7 月と一部店舗で閉店セールを行った 9 月を除いて前年同月を下回っています 一方 スーパーについては 台風の影響があった 8 月を除いて 前年同月を上回っています 1,2 1-3 平成 28 年百貨店 スーパー販売額合計 ( 北海道 :

(Microsoft PowerPoint \201y\221\3461\216l\224\274\212\372_\225\361\215\220\217\221HP\224\305\201z.pptx)

中小企業の動向

Newsletterむさしの11.indd

<8A C52E786C7378>

本文

<貿易見通し>

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

3_2

月初の消費点検(1/4)~消費税増税の判断を控えて~

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

12月CPI

2019年の日本経済

01Newsletterむさしの7.indd

Newsletterむさしのvol_9.indd

Newsletterむさしの11.indd

Microsoft Word - レポート原稿.doc

Transcription:

Jun7,018 日本経済情報 018 年月 号 内容 1~3 月期は停滞も ~ 月期には持ち直し Summary 日本経済改訂見通し 輸出 : 欧米中心に持ち直し 個人消費 : 自動車や旅行は好調 設備投資 : 先行指標が拡大持続を示唆 消費者物価 : 上昇加速が一服 賃金上昇が個人消費回復を後押し 輸出の不確実性は高まる 消費増税による景気腰折れは回避 年初の停滞から持ち直し貿易摩擦や消費増税に挑む 1~3 月期の実質 GDP 成長率は 9 四半期ぶりの前期比マイナス成長となり 日本経済は年初に一旦踊り場を迎えたが ~ 月期には輸出や設備投資 個人消費の持ち直しによりプラス成長を取り戻す見通し 足元の状況を見ると 輸出は既に 3 月以降 欧米向けを牽引役に復調しつつある 設備投資は先行指標の機械受注が製造業を中心に大幅増を記録 当面の拡大持続を示唆した 個人消費は小売販売こそ低調ながら 生鮮品の価格下落によるところが大きく 自動車販売やゴールデンウィークの旅行の好調もあり 実質的には改善している模様 今後については 賃金の上昇がマインド改善を伴って個人消費の回復に寄与する見通し 輸出も欧米経済の堅調さに支えられ 基本的に拡大が続くとみられる ただ 米国が自動車関税を引き上げた場合 その影響は懸念材料である 一方で 019 年 10 月に予定される消費増税は そのインパクトが前回ほどではなく 政府による対策も予定されていることから景気腰折れには至らない見込み 実質 GDP 成長率は 019 年度に潜在成長率を下回り デフレ脱却に向 けた歩みは一時停止するが 00 年度には再び成長が高まり 日本経 済はデフレ脱却への最後のアプローチに挑むことになろう チーフエコノミスト武田淳 (03-397-37) takeda-ats @itochu.co.jp

1~3 月期は停滞も ~ 月期には持ち直し 月 8 日に改定された 018 年 1~3 月期の実質 GDP 成長率 ( 次速報値 ) は 1 次速報から変わらずの前期比 0.%( 年率 0.%) となり 9 四半期ぶりのマイナス成長 すなわち日本経済の回復が今年に入り一旦足踏みしたことが改めて確認された また マイナス成長となった背景が 1これまで景気拡大を牽引してきた輸出の大幅な減速 (10~1 月期前期比 +.% 1~3 月期 +0.%) 今後の景気拡大の主役を期待される個人消費の落ち込み (+0.3% 実質 GDP の推移 ( 季節調整値 前期比年率 %) 7 5 実質 GDP 3 設備投資 1 純輸出 0 個人消費 1 その他公共投資 3 015 01 017 018 ( 出所 ) 内閣府 0.1%) 3 設備投資の減速 (+0.7% +0.3%) によって 住宅投資 (.7% 1.8%) や在庫投資 ( 寄与度 +0.%Pt 0.%Pt) の減少をカバーすることができなかったためであることも 1 次速報から変わりはない さらに言えば 以下に詳述する通り 輸出や個人消費 設備投資はともに ~ 月期に持ち直し GDP 成長率はプラスに転じ 日本経済はデフレ脱却に向けた歩みを再開するという見方も不変である 輸出 : 欧米中心に持ち直し輸出は 5 月まで実績が確認できる通関輸出数量指数を見る限り ~ 月期には増勢を強めそうである ~5 月平均の輸出数量指数は 1~3 月期を 0.5% 上回った模様である ( 当研究所試算の季節調整値による ) 月の状況次第とはいえ ~ 月期の輸出数量指数は 1~3 月期の前期比 0.3% からプラスに転じる可能性が高く その分 サービスを含む GDP 統計の輸出は前期比で伸びを高めよう 輸出の動きを仕向地別に見ると EU 向けは ~5 月の水準が 1~3 月期を 3.% 米国向けは.5% 上回っており 欧米向けが輸出の拡大を牽引している 一方で アジア向けは 1.9% 下回っているが そのうち中国向けは 0.7% 上回っているため アジア向けの落ち込みは専ら ASEAN など中国以外の地域向けが主因である また 財別には 米国向けを中心に乗用車が好調なほか IC( 半導体 ) やプラスチックが下げ止まっている なお 鉄鋼は落ち込みが続いているが 国内向けの好調により輸出余力が乏しいためであり 米国向けが関税引き上げにより落ち込んではいるとはいえ そのインパクトは小さい 仕向け地別の輸出数量指数 ( 季節調整値 010 年 =100) 財別の輸出数量指数 ( 季節調整値 010 年 =100) 115 110 105 100 95 90 85 80 75 15 当社試算の季節調整値で最新期は~5 月平均 10 合計 鉄鋼 IC 乗用車 プラスチック 115 米国 EU 合計 アジア 70 ( 出所 ) 財務省 ( 出所 ) 財務省 110 105 100 95 90 85 80 当社試算の季節調整値で最新期は~5 月平均 75

個人消費 : 自動車や旅行は好調個人消費は 主要小売業態の販売動向に限れば 停滞感が強い ~5 月平均のスーパー売上高 ( 既存店 ) は前年同期比 1.8% となり 1~3 月期の+0.% からマイナスに転じた 主力の食品が生鮮品の価格下落などから落ち込んだほか 5 月は衣料品や日用雑貨の販売も低迷した また コンビニ売上高 ( 既存店 ) も 1~3 月期の前年同期比 +0.% から ~5 月平均は 0.3% とマイナスに転じた 客数の減少が続く中で 5 月は気温の低下が販売額を押し下げた 一方 ~5 月の百貨店売上高 ( 店舗数調整後 ) は前年同期比 0.% となり 1~3 月期の 0.7% からマイナス幅が縮小した 気温の低下により衣料品が低迷 価格下落により食料品が落ち込んだものの 外国人旅行客を中心に化粧品などの雑貨が好調であった 0 18 1 1 1 10 新車登録台数の推移 ( 季節調整値 万台 ) 主な総合小売業の販売動向 ( 前年同月比 %) 普通車小型車軽自動車 15 10 5 0 小売業計を除き直近期は ~5 月平均 百貨店 スーパーは店舗調整済 コンビニは既存店 小売計のみ消費税含む 小売業計スーパー コンビニ百貨店 8 当研究所試算の季節調整 5 10 ( 出所 ) 自動車工業会 ( 出所 ) 各業界団体 経済産業省 以上の通り ~5 月の小売販売額は 総じてみれば 1~3 月期に比べて前年比で伸びが鈍化した ただ 生鮮商品を中心に物価上昇率が低下した影響が大きく 物価上昇を除いた実質では比較的底堅く推移したと言える さらに 乗用車販売台数は 小型車や軽自動車の好調により 1~3 月期の 35.1 万台から ~ 5 月平均で.9% 万台へ約.3% 増加した ( 当研究所試算の季節調整値 ) また 国内旅行客が増加 1するなどサービス消費は堅調だったようであり 月以降の個人消費は小売販売動向が示すよりも良好であった可能性が高い 設備投資 : 先行指標が拡大持続を示唆設備投資は 018 年 1~3 月期まで前期比で 四半期連続の増加を記録しているが 先行指標である機械受注は引き続き拡大する可能性を示している 月の機械受注 ( 船舶 電力を除く民需 ) は 製造業からの受注が大幅に増加したことから前月比 +10.1% となった その結果 月の水準は 1~3 月 期を 8.0% も上回っており 内閣府が予想する ~ 月期の前期比 +7.1% の実現に向けて良好な スタートを切った 5 月以降の動き次第とはいえ 機械受注は 1~3 月期の前期比 +3.3% に続いて ~ 月期も増加し 設備投資の拡大が続く可能性が高まったことを示した 業種別の内訳を見ると 月の製造業からの受注が 1~3 月期を 10.% も上回る大幅増となり 製 機械受注の推移 ( 季節調整値 年率 兆円 ) 5.0.5.0 3.5 製造業 3.0 非製造業 機械受注の最新期は 月単月.5 005 00 007 008 009 ( 出所 ) 内閣府 1 事前調査 (/10) であるが JTB によると今年のゴールデンウィーク (/5~5/5) の国内旅行客数は前年同期比 +1.0% の,38 万人 平均費用は+1.7% の 3 万,00 円であった 3.5.0 5.5

造業の設備投資拡大が本格化する兆しが見られた 一方の非製造業も 月は 1~3 月期を 1.9% 上回っており 底堅く推移している 消費者物価 : 上昇加速が一服消費者物価上昇率は 月に総合 ( ヘッドライン ) で前年同月比 +1.5% コア( 除く生鮮食品 ) で+ 1.0% まで伸びが高まったが 5 月にはそれぞれ+0.7% へ鈍化した 内訳を見ると 食品 ( 月 +3.0% 5 月 +0.8%) 水道光熱(+.3% +3.1%) 教養娯楽(+1.3% 0.0%) で鈍化が顕著である 食品は前述の通り生鮮品 教養娯楽は主に家電製品など耐久財の価格下落が主因であり 日銀が物価目標のターゲットとするコア指数の伸びの鈍化は 専ら耐久財価格の下落によるところが大きい.0 消費者物価指数の推移 ( 前年同月比 %) 15 家計消費の財別動向 ( 季節調整値 013 年 Q1=100) 1.5 10 耐久財 半耐久財 1.0 115 非耐久財 サービス 0.5 110 0.0 105 0.5 100 1.0 95 総合 コア コアコア 1.5 90 011 01 013 01 015 01 017 018 01 013 01 015 01 017 018 ( 出所 ) 総務省 ( 出所 ) 内閣府 この背景として挙げられるのは 耐久財消費の低迷と円高の進行であろう 耐久財消費は 017 年半ば頃まで盛り上がりを見せたが 以降は増勢が一服しており 製品需給は緩んでいるとみられる さらに 018 年に入り 1 ドル=105 円前後まで円高が進行 輸入品価格が下落したことが 耐久財価格を押し下げた ただ ドル円相場は既に 1 ドル=110 円前後まで円安方向に戻している そのため 今後 耐久財消費が持ち直せば 耐久財価格も再び上昇に転じよう 賃金上昇が個人消費回復を後押し その耐久財を含む個人消費の先行きについては 消費者マインドや所得環境に改善が見られる点が明るい材料である 消費者マインドの代表的な指標である消費者態度指数は 月の 3. から 5 月は 3.8 へ小幅上昇し 悪化に歯止めが掛かる兆しを見せた 内訳のうち 収入の増え方 は悪化が続いているが 暮らし向き が ヵ月ぶりに改善し 雇用環境 も悪化傾向の中で 5 月は改善した 消費者態度指数の推移 ( 季節調整値 ) 消費者態度指数 8 0 38 3 013 01 015 01 017 018 ( 出所 ) 内閣府 さらに マインド面では悪化している収入について実際の数字を見ると 勤労者 ( サラリーマン ) 一人当たり賃金は 月に前年同月比 +0.% と前年を上回る水準が続いている 1~3 月期の前年同期比 +1.% と比べると伸びが鈍化してはいるが 1 ~3 月期は期末賞与の増加により大きく押し上げられた影響が大きい 1~3 月期は賞与や各種手当な 5 50 消費者態度指数収入の増え方雇用環境

どの 特別給与 が +10.9% もの大幅増となり賃金を押し上げたが 月は 8.5% と落ち込んでいる 一方で 賃金のベースを決める所定内給与 ( 基本給 ) は 1~3 月期の+1.0% から 月は+0.9% と小幅鈍化にとどまり 所定外給与 ( 残業代 ) は+0.9% から+1.8% へ伸びを高めている そのため 賃金の上昇基調は定着していると評価できよう さらに 連合の集計 ( 第 回 /7 発表 ) によると今年の春闘賃上げ率は.08% となり 前年の 1.98% を上回っている また 今年の夏のボーナスは 経団連の集計 ( 第 1 回 /1 発表 ) によると前年同期比 +.71% もの大幅な増加 対象がやや広い 労務行政研究所でも前年同期比 +.% となり 増加が見込まれている 今後を展望すると このところの株価の調整や 骨太の方針 で示された日本政府の厳しい財政状況がもたらす将来不安など 支出を抑制する要因もあるが 上記のような実際の収入増は 消費者マインドの改善を促し 個人消費の拡大持続をサポートすると見込まれる さらには 019 年 10 月に迫った消費税率の引き上げが 前回 (01 年 月 ) の増税時ほどではないとしても 駆け込み需要を作り出し 増税までの個人消費を押し上げることとなろう 勤労者一人当たりの平均賃金 ( 前年同期比 %) 1.5 1.0 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 特別給与 所定外給与 最新期は 月単月 所定内給与 総額.0 ( 出所 ) 厚生労働省 輸出の不確実性は高まる輸出についても 牽引役となっている欧米向けは 米国やユーロ圏の堅調な景気拡大が今後も続く見込みであり 基本的には引き続き拡大が見込まれる 米国経済は 今後 所得税 法人税の減税効果が本格化するとみられ 個人消費は堅調拡大を継続 企業の設備投資は増勢を強めると予想される 金融政策は正常化に向けて政策金利の引き上げが続いているが 景気に対して中立的な水準に達するのは 019 年に入ってからであり 当面は緩和的な状況が続き景気拡張を支援する 米国経済に陰りが見られるのは 早くても金融面でブレーキが効き始める 019 年後半になってからであろう ユーロ圏経済についても GDP 成長率が 018 年の % 強から 019 年には % 弱への減速が見込まれているが 潜在成長率を 1% 強とすれば 017 年第 四半期までの前期比年率 3% 程度は言うまでもなく 019 年においても実力以上の成長ということになる 成長の減速は これまで潜在成長率を上回る成長が長期 間続いたことから需給ギャップ ( 供給力 - 需要 ) は概ね解消し 実力以上の成長を続けるのが困難になるからに過ぎない 欧州中央銀行 (ECB) が 018 年内の量的金融緩和の打ち止めと 019 年からの利上げ開始を示唆したのは こうした背景からであり それだけ当面の景気は強いということである 日米欧の GDP 成長率の推移 ( 前期比年率 %) 8 日本米国ユーロ圏 0 こうした欧米経済堅調の中で 輸出の先行きを見 8 01 013 01 015 01 017 018 ( 出所 ) 内閣府 米商務省 Eurostat 経団連調査の対象は第 1 回の段階で東証 1 部上場 9 社 ( 回答ベース ) 一方の労務行政研究所は同じく東京 1 部上場で 17 社が対象 5

通す上での懸念材料は 米国による貿易障壁である トランプ大統領は 3 月に鉄鋼 アルミの関税引き 上げたが その影響は日本においては軽微であった 輸出量がさほど大きくないこと 米国において代替 が難しい製品が多いこと 鉄鋼はもともと輸出余力が乏しかったことなどが背景である 実際に 米国商 務省は 月 1 日 代替が難しい鉄鋼製品 品目を関税引き上げの対象外としており その一部は日本製 品も対象となる さらに審査は継続中であり 関税引き上げの対象外となる品目は今後増えるとみられる 懸念すべきは トランプ大統領が 5 月 3 日 自動車および部品についても関税を引き上げる方針を示した ことである 017 年度の対米自動車輸出 ( 部品 二輪を含む ) は 5 兆,57 億円 輸出全体 79 兆, 億円の 7.1% 名目 GDP58.7 兆円の 1.0% に相当する 仮に関税が引き上げられたとしても 米国向け自 動車輸出の全てが失われるわけではないが 税率は 5% とも言われており 対米輸出全体の価格弾力性 ( 価 格が 1% 上昇した場合の輸出減少率 ) を 1 程度 3 とすれば自動車輸出の 5% すなわち GDP の 0.5% 相 当が失われることになる もちろん コスト削減等によりある程度価格の上昇を抑えることは可能かもし れないが その分の利益 すなわち付加価値 (GDP) も失うことになる むしろ自動車産業の裾野の広さ を考えれば 自動車輸出減少の影響が波及的に広がることが見込まれ 日本経済全体に与える影響は GDP 比で 0.5% を大きく上回る可能性の方が高い 実際に関税を導入するためには その正当性 ( 通商法 3 条に基づく安全保障上の脅威の有無 ) を確認す るための調査を行う必要があり 終了期限は開始から 70 日以内とされている しかしながら ロス米商 務長官は調査を 7 月後半から 8 月をメドに終了させたいとの意向を示しており このスケジュール感が巷 間指摘されている通り米国の中間選挙を意識したものであるならば 自動車関税問題は米国にとって何ら かの成果が得られる形で決着することになり それは日本経済にとって不利益なものになるだろう 消費増税による景気腰折れは回避 以上を整理すると 今後の日本経済は 輸出が再 び増勢を取り戻し 設備投資は当面拡大を続け 個人消費が徐々に持ち直すことにより ~ 月 期は内閣府の試算で年率 1.1% とされる潜在成長 率を上回る成長を取り戻すとみられる 米国発の 貿易摩擦激化や北朝鮮を巡る情勢の悪化といっ た世界経済の混乱リスクについては 018 年度 中は大きな影響はない とみられる そのため 018 年度の実質 GDP 成長率は前年比 +1.3% と なり 017 年度の +1.% からは減速するものの 潜在成長率以上の成長を確保 デフレ脱却へ向け てさらに前進することになる 019 年度は 海外経済の堅調拡大が続くが貿易 摩擦の影響もあり輸出はやや増勢を弱める一方 設備投資は消費増税前の駆け込み需要が加わり 3 当研究所の試算によると 対米向け輸出数量指数の価格弾性値は 00 年以降 概ね 1 程度で推移している 仮に関税引き上げが決まった場合 増税前に駆け込み的な自動車輸出が見込まれ 年間で均せば大きな影響はないと想定 日本経済の推移と予測 ( 年度 ) 015 01 017 018 019 前年比,%,%Pt 実績 実績 実績 予想 予想 実質 GDP 1. 1. 1. 1.3 0.9 国内需要 1.3 0. 1.3 1.1 0.5 民間需要 1. 0. 1. 1.3 0. 個人消費 0.8 0.3 0.9 1. 0.9 住宅投資 3.7. 0.3.5.3 設備投資.3 1. 3. 0.8 0.7 在庫投資 ( 寄与度 ) (0.) ( 0.3) (0.1) (0.) ( 0.1) 政府消費 1.9 0.5 0.7 0.7 0. 公共投資 1. 0.9 1. 0. 1. 純輸出 ( 寄与度 ) (0.) (0.7) (0.3) (0.1) (0.3) 輸出 0.8 3...1 3. 輸入 0. 0.8.0 3. 1.3 名目 GDP 3.0 1.0 1.7 1.3.3 実質 GDP( 暦年ベース ) 1. 1.0 1.7 1.1 1.3 鉱工業生産 1.0 1.1.1 1.5 1. 失業率 (% 平均 ) 3.3 3.0.7..5 経常収支 ( 兆円 ) 18.3 1.0 1.7 1.9 1.8 消費者物価 ( 除く生鮮 ) 0.0 0. 0.7 1.1.0 ( 出所 ) 内閣府ほか 予想部分は当研究所による

小幅ながら拡大 個人消費は 10 月の消費増税実施により年間を通じて見れば減速するため 実質 GDP 成長率は前年比 +0.9% へ減速 潜在成長率を下回り デフレ脱却への歩みは再び足踏みすることになる なお 消費増税による負のインパクトは 前回 01 年 月の消費増税時に比べ 1 税率の引き上げ幅が小さいこと 賃金上昇率が高いこと 3 一部の商品に軽減税率が適用されること などから景気の下押し圧力は相当小さい さらに政府は その下押し圧力を緩和するための諸施策を打ち出す方針を示しており 消費増税によって景気が腰折れする可能性は低いと考えている そして日本経済は 消費増税による悪影響が一巡する 00 年度には景気拡大を再開し デフレ脱却に向けた最後のアプローチに挑むこととなろう 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 作成時点で が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが その正確性 完全性に対する責任は負いません 見通しは予告なく変更されることがあります 記載内容は 伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません 7