リアルタイム スペクトラム アナライザの基礎 2017 年 8 月 23 日 キーサイト テクノロジー
リアルタイム スペクトラム アナライザとは 本セミナーでは リアルタイム性を 1. 信号の取りこぼしが無く かつ 2. 測定結果を瞬時に表示できると定義します すなわち リアルタイム スペクトラム アナライザは周波数が刻一刻と変化し あるいは発生頻度の低い信号やノイズを確実に捕捉し これを瞬時に表示することができます Page 2
信号の取りこぼしが無く かつこれを直感的に表示することにより 干渉波やノイズを発見し障害対策を迅速に行うことができます 掃引型スペアナ リアルタイムスペアナ (RTSA) Page 3
ホッピングを伴う通信の把握を周波数軸上 時間軸上で正確に行うことができます 9,000 ms W-LANも含めたISM帯全体の把握 90 ms Bluetooth信号の チャンネルホッピング詳細の観察 Page 4
電波環境を事前に把握することで 的確な障害対策を立案できます 空港監視レーダー (ASR) 2700 2900 MHz* 船舶無線航行用レーダー用 3000 3100 MHz* 広帯域移動無線アクセスシステム 2545 2655 MHz* 3.8 秒に一回の割合でレーダーが回転 * 総務省周波数割当表を参照 Page 5
内容 1. フーリエ変換 2. RTSA 動作の概要とオーバーラップ 3. 信号捕捉の限界 4. FMT( 周波数マスクトリガ ) とその応用 5. 製品紹介 6. まとめ Page 6
フーリエ変換 デジタルデータの場合 t * 詳細は参考資料 4. や 3. をご覧ください f 1 N 2 時間 フーリエ変換 DC f s /2 周波数 タイムレコード長 (T) = サンプル数 (N) x t 時間領域 スパン 周波数領域 範囲タイムレコード長スパン 分解能 t( サンプリング周波数の逆数 ) f( 分解能帯域幅 ) DFT: 離散フーリエ変換 (Discrete Fourie Transform) DFT: 離散フーリエ変換 (Discrete Fourier Transform) FFT: 高速フーリエ変換 (Fast Fourier Transform) Page 7
フーリエ変換窓関数 (Window function) Page 8
RTSA 動作の基本 処理の流れ : リアルタイム性の確保 入力信号 RF/MW/mmW フロントエンド *1 デジタルデータへの変換 デジタル演算処理 表示処理 所望の周波数へ同調 後段への信号レベルの最適化 アンチエイリアシングフィルタ *2 ADC サンプリング 確率密度表示 窓関数処理 スペクトログラム FFT 処理 オーバーラップ処理 1. 専用 HW を使用し N 点の FFT を N 回のクロックで処理 2. FFT の動作クロックをサンプリングクロック以上にすることによりリアルタイム性を確保 *1: 詳細は参考資料 1. をご覧ください *2: 詳細は参考資料 3. をご覧ください Page 9
RTSA 動作の基本 リアルタイム性の確保と窓関数の影響 タイムレコード 1 タイムレコード 2 タイムレコード 3 サンプリングクロック 時間 FFT クロック 演算処理 1 演算処理 2 演算処理 3 時間 スペクトラム 1 スペクトラム 2 スペクトラム 3 問題点 1. タイムレコードの端の方では窓関数の影響により信号の検知レベルが低下する 2. タイムレコードより短い時間で変化する信号に対する追従性が劣る Page 10
RTSA 動作の基本オーバーラップによる改善 タイムレコード 1.5 タイムレコード 2.5 タイムレコード 3.5 オーバーラップ タイムレコード 1 タイムレコード 2 タイムレコード 3 時間 演算処理 1 演算処理 2 演算処理 3 演算処理 1.5 演算処理 2.5 演算処理 3.5 スペクトラム 1 スペクトラム 2 スペクトラム 3 スペクトラム 1.5 スペクトラム 2.5 Page 11
RTSA 動作の基本オーバーラップによる改善 ( その 2) タイムレコード 1.5 タイムレコード 2.5 タイムレコード 3.5 タイムレコード 1 タイムレコード 2 タイムレコード 3 時間 演算処理 1 演算処理 1.5 演算処理 2 演算処理 2.5 演算処理 3 演算処理 3.5 スペクトラム 1 スペクトラム 2 スペクトラム 3 スペクトラム 1.5 スペクトラム 2.5 Page 12
RTSA 動作の基本 RTSA の測定画面例 Page 13
RTSA動作の基本 取りこぼしの無い表示 一秒当たり 292,969の ギャップの無い オーバーラップ した FFT Acq Time Acq Time Acq Timeで 設定した時間 ごとに連続的 に処理します 束ねる Acq Time Acq Timeごとに同じ処理を繰り返す ピクセル毎に 信号の有無を 871 x 225 pixel 数え出現頻度 を算出します Acq Time内の全FFT 結果の束ね方は detector type で決まります 通常 peakを使用 確率密度表示 ノーマルトレース Real time Trace 周波数軸を維 持し レベル をカラーコー ドします Slice Slice追加 Slice追加 スペクトログラム Page 14
信号捕捉の限界 :POI Minimum signal duration with 100% probability of intercept (POI) at full amplitude accuracy 信号の最短長 100% の確率で捕捉できる振幅確度を損なうことなく 1. オーバーラップが無い場合 :2X FFT 長 1 FFTポイント長 FFT 長 (1タイムレコード) 2. オーバーラップがある場合 :2X FFT 長 - 1 FFT ポイント長 オーバーラップ長 3. 窓長が FFT 長より短い場合 :FFT 長 + 窓長 - 1 FFT ポイント長 オーバーラップ長 詳細は参考資料 7. をご覧ください Page 15
信号捕捉の限界 : 感度低減を許容した場合 1.POI より短い場合 POI より短い信号も捕捉できるが信号のレベル確度は保証できない 信号とタイムレコードは同期していないので レベルの低減量は変動する この変動はオーバーラップ量が多いほど緩和される 2.POI に比べはるかに短い場合 信号が複数のタイムレコードにまたがる可能性が低いので窓関数を使う必要がない パルス長が数サンプリング分あれば周波数とパルス幅を概算できる * * 詳細は参考資料 2. をご覧ください Page 16
信号捕捉の限界 : 感度低減を許容した場合測定例 数ナノ ~ 数十ナノ秒の極めて短い単発パルスを捕捉することができます 上 : 1.00 GHz, 0 dbm, 100 ns 右 : 1.06 GHz, 0 dbm 8 ns Page 17
周波数マスクトリガ (FMT) - 特定の周波数成分のレベルでトリガ - 上限 / 下限 ロジックでのトリガ送信信号の突発的な変動 外部からの瞬間的な妨害波を捉えます Page 18
スペクトラム FMT を用いた RTSA と VSA の連動 RTSA の測定画面 時間波形 VSA でレコーディングし再生することにより RTSA では確認不可能な時間波形の遷移状態や各スペクトラムの発生タイミングを確認可能 スロー再生をするとより分かりやすく遷移状態が見えます Page 19
Keysight RTSA インナップ紹介 X- シリーズ シグナル アナライザに RTSA 機能を追加可能 お手許のスペアナが RTSA に ハンドヘルド レシーバーにも RTSA 追加 圧倒的なトラブル対応能力を提供 510MHz BW 510MHz BW 160MHz BW UXA 突き抜けたパフォーマンス超高性能に超広帯域 ミリ波領域で RTSA 機能の活用も可能 110GHz モデルでも 255MHz の RTSA をミリ波領域で可能 PXA 厳しい要求に対応するベンチマークモデル圧倒的な感度を持つ高性能機に 510MHz の超広帯域 RTSA 機能を搭載 MXA ワイヤレステクノロジーに最適な一台リーズナブルな価格に 160MHz の広帯域 RTSA 機能を搭載 FieldFox ハンドヘルド SA/NA バッテリー内蔵現場での障害対策に大きな威力を発揮 ベンチトップに匹敵する 100% POI 約 12us 最小感知信号長 1us の能力があり レアな信号も逃しません MXE EMI レシーバー EMI 規格試験だけでなく 85MHz 帯域の (3.6GHz まで ) の RTSA の追加可能 EMI 試験も対策も一台で 10MHz BW 85MHz BW 柔軟かつ多機能なポストプロセスにより記録した信号を解析 現象のより深い分析 理解をサポート 89600 VSA ソフトウェア Windows/X- シリーズ上で動く 業界標準の多機能で柔軟なベクトル シグナル アナライザ ソフト Page 20
まとめ 取りこぼしが無い の意味とその限界 : 窓関数 オーバーラップ POI 取りこぼしの無い膨大な量のスペクトラムの表示とパラメータ : 確率密度表示 スペクトログラム Acq Time スペアナで全体像把握 RTSA で信号やノイズを確実に捕捉 VSA でレコードし詳細に解析 Page 21
参考資料 1. スペクトラム解析の基礎, Application Note 150, 5952-0292JAJP: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5952-0292jajp.pdf 2. スペクトラム / 信号解析 - パルスド RF, Application Note 150-2, 5952-1039JAJP: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5952-1039jajp.pdf 3. ベクトル信号解析の基礎, Application Note, 5990-7451JAJP: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5990-7451jajp.pdf 4. The Fundamentals of Signal Analysis. Application Note 243, 5952-8898E: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5952-8898e.pdf 5. 発生頻度の低い信号の広帯域 / 高ダイナミック レンジ測定による複雑なシステム / 環境の特性評価, Application Note, 5992-0102JAJP: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5992-0102jajp.pdf 6. アジャイル信号とダイナミック信号環境の測定 5991-2119JAJP: http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5991-2119jajp.pdf 7. Understanding and Applying Probability of Intercept in Real-time Spectrum Analysis : http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5991-4317en.pdf Page 22
Keysight World Online シリーズ RF 関連セミナのご紹介 日時タイトル講師 9 月 20 日 ( 水 ) 10:30-11:30 10 月 18 日 ( 水 ) 10:30-11:30 11 月 15 日 ( 水 ) 10:30-11:30 ネットワークアナライザを用いたミリ波領域測定 ~ ミリ波部品測定の基礎と応用 ~ 新 Wifi 規格 802.11ax の基礎と RF 測定 ネットワークアナライザの基礎その 2 弊社アプリケーション エンジニア桜井昭寛 弊社アプリケーション エンジニア栗山有美 弊社コントラクトトレーナー島田寛之 12 月 20 日 ( 水 ) 10:30-11:30 スペクトラム アナライザーの基礎その 2 弊社コントラクトトレーナー飯銅隆幸 1 月 17 日 ( 水 ) 10:30-11:30 5G の基礎とソリューション 弊社アプリケーション エンジニア森下幹夫 申込みサイトセットアップ後本日のご参加者様にはメイルにてご連絡させて頂きます Page 23
ご清聴ありがとうございました Page 24