国連の気候変動に関するこれまでの交渉について

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参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

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間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

COP21合意と今後の課題

IPCC「1.5度特別報告書」の背景にある脆弱国の危機感

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二国間クレジット制度について

国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) とパリ協定の関係について 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) (1992 年採択 1994 年発効 日本は 1993 年に締結 ) 全国連加盟国 (197ヶ国 地域) が締結 参加 大気中の温室効果ガス濃度の安定化が究極の目的 全締約国の義務 温室効果ガス

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れまでの交渉経緯という一連のCOP/CMP 決定が採択された こQ1. 今年のカタール ドーハでの COP18 の焦点は何ですか? 今年のカタール ドーハでの COP18 では, 昨年の COP17 で合意されたダーバン合意を着実に前に進めることが重要であり,1 ダーバンプラットフォーム特別作業部会

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ン ノートとしてまとめる予定に くりのスケジュールに合意するこ させ パリ協定が発効するという なっています 今回のAPAセッ とでした 流れが想定されていました とこ ションで決定文書案としてCOPに もともとパリ協定は2020年か ろがパリ協定が記録的短期間で発 送られたのは 議題番号8 b で

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Monitoring National Greenhouse Gases

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気候変動と森林 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) から 2014 年 8 月 29 日 東京 第 3 回森林分野における国際的な動向等に関する報告会 林野庁森林利用課 佐藤雄一

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

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地域別世界のエアコン需要の推定について 年 月 一般社団法人 日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会ではこのほど 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果を まとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行 なっているもので 今回は 年から 年までの過去 ヵ年について主


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地域別世界のエアコン需要の推定について 2018 年 4 月一般社団法人日本冷凍空調工業会日本冷凍空調工業会ではこのほど 2017 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果をまとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行なっているもので 今回は 2012 年から 20

京都メカニズムの仕組み

国際連携の基本的方針 年 1 月に 国際連携に関する省内連絡会議 を設置 関係課室が連携して環境外交に取り組む体制を構築 関係部局へのヒアリングを踏まえ 省内の国際連携事業を評価 分析し 資料 年 3 月に 国際連携事業の概観と平成 27 年度以降の実施指針 を策定 関連

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特集 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について RITE Today 2015 IPCC 第 5 次評価報告書 (AR5) 第 3 作業部会 (WG3) 報告書について システム研究グループリーダー秋元圭吾 1. はじめに 気候変動に関する政府間パネル

背景と経緯

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数字で見る国連WFP 2014

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参考資料 5 ( 平成 26 年 10 月 24 日合同専門家会合第 1 回資料 4-1 より抜粋 データを最新のものに更新 ) 温室効果ガス排出量の現状等について 平成 27 年 1 月 23 日

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温暖化問題と原子力発電

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問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し


1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

早稲田大学外国人学生数集計 2017 年 11 月 01 日現在 ( 概況 1) 区分 合計 国際教養 1 年 プログラム 私費 国費 交換 総計

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日本のエネルギー・環境戦略

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

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NEWS 特定非営利活動法人環境エネルギーネットワーク 21 No 年 9 月 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) の概要 環境エネルギーネットワーク 21 主任研究員大崎歌奈子 今年の夏は世界各国で猛暑や洪水 干ばつ

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COP15 日本政府の交渉とこれからの課題

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企業会計審議会による海外調査を実施していない国における IFRS 適用状況についても調査するため 金融庁において IFRS 適用状況に関する調査を実施した 具体的には 一般的に 1 IFRS 適用国とされている国を参考に 122 カ国に対し 2011 年 12 月 21 日 現地の日本大使館を経由し

これま2005 年京都議定書発効(Q1. 今年の南アフリカ ダーバンでの COP17 の焦点は何ですか? (A) 先進国( 米国除く ) が温室効果ガスの排出削減義務を負っている京都議定書第 1 約束期間が来年 (2012 年 ) 末で終了します その後の2013 年以降の新たな法的枠組みをどうする

目次 1. コメ 1 2. 野菜 果実 2 3. 茶 3 4. 薬用植物 4 5. 牛乳 乳製品 5 6. 食肉 6 7. 水産物 7 8. 加工食品 8

国際会議等への参加のために行った受入れ状況

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日本の HDI は で データが算出されている 177 ヵ国中 第 8 位にランクされている ( 表 1 参照 ) 表 1 日本の人間開発指数 (2005 年 ) HDI 値 出生時平均余命 ( 歳 ) 初 中 高等教育の合計就学率 (%) 一人当たり GDP (PPP 米ドル ) 1

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

実績 実績 実績 京都議定書 中期目標検討委員会 (2009.6) ( 鳩山元首相 ) での見通し ( 現目標 ) 第四次環境基本計画 (2012) 温室効果ガス排出量 [ 二酸化炭素換算 100 万トン ] 低炭素社会の

Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

お知らせ

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年次報告書090903_入稿

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2012)のポイント|国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

UIプロジェクトX

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(別紙1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書統合報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(速報版)

IPCC 第 5 次評価報告書に向けた将来シナリオの検討日本からの貢献とその意義環境研究総合推進費 A 1103 統合評価モデルを用いた世界の温暖化対策を考慮したわが国の温暖化政策の効果と影響 藤森真一郎 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト一般公開

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援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

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PowerPoint プレゼンテーション

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サービス交渉 DDA のサービス交渉が停滞する中 2012 年 12 月 21 の有志国が今までの FTA 等で達成した水準を基に新協定 ( 新サービス貿易協定 :Trade in Services Agreement) を作成する交渉を開始することで合意 日 米 EU 諾 豪 加 香港 パナマ コ

Transcription:

第 6 回スクール パリ協定 2017 国連の気候変動に関するこれまでの交渉について 1 2017 年 10 月 26 日 ( 木 ) WWF ジャパン気候変動 エネルギープロジェクトリーダー小西雅子 COP22 マラケシュ会議にて (2016 年 11 月 )

21 世紀末の気温変化は? このままでは 2100 年には 4 度程度上昇の予測 過去 130 年に 0.85 度上昇した 気温上昇を 2 度未満に抑える道もある 2 出典 :IPCC AR5 WG1 SPM 気象庁確定訳

2 度未満に抑える道は残されているが, 2050 年に世界の GHG カ スを 40~70% 削減 (2010 年比 ) 2100 年には排出をゼロかマイナスに 3 出典 :IPCC AR5 WG3 SPM

IPCC は 2 度未満に抑えることは可能と言及 カギはエネルギー部門の変革 2030 年には 22% 2050 年にはエネルギーの 60% が低炭素エネルギーから供給低炭素エネルギー ( 再生可能エネルギー 原子力 CCS) 4 出典 :IPCC AR5 WG3 SPM

COP21 パリ会議 パリ協定 成立! 2015 年 12 月 5 COP21 会場 ( パリ 2015 年 12 月 )

パリ協定 法的拘束力ありあり 削減目標の達成 遵守 ( 目標を守らせる仕組み ) パリ協定とは? 義務ではない ただし 以下 2 項目は義務 1 削減目標の提出 2 削減達成のための国内施策の導入 1 遵守促進メカニズムあり 2 目標の達成状況を国際的に報告し 国際評価を受けることによって遵守を促す 京都議定書 義務 1 遵守制度あり 2 達成できなければ罰則あり 全ての国が参加する法的枠組みを作るため 6 目標達成が義務化されると 協定参加を躊躇する国が多くなって 参加国が少なくなるという矛盾の解消

1992 1997 2008~2012 13 15 20 2025/2030 92 年採択 交渉 気候変動枠組条約 97 年採択 気候変動に関する国際条約の歩み 京都議定書 批准 05 年発効 第 1 約束期間 05 年から交渉 第 2 約束期間 カンクン合意 11 年から交渉 15 年パリ協定採択! 批准 発効 パリ協定約束期間 議定書 ( 法的拘束力あり ) 自主的な合意協定 ( 法的拘束力あり ) 7 先進国と途上国間に明確な差 すべての国が対象 WWF ジャパン作成

気候変動交渉における区分 先進国 加盟国か否か 90 年時に OECD 8 開発途上国 出所 : 外務省 開発教育 国際理解教育ハンドブック

OECD 諸国 ( 先進国 ) と非 OECD 諸国 ( 途上国 ) の CO2 排出量の推移 ( 実績と見込み ) 9 億トン 400 350 300 250 200 150 100 50 0 45% OECD 非 OECD 非 OECD 比率 ( 右軸 ) 61% 70% 75% 1990 2013 2030 2040 移動発生源除く 100% 80% 60% 40% 20% 0% 出典 :IEA World Energy Outlook 2015 (2030/2040 は New Policy Scenario) から作成

背景としての世界の排出量の国別割合 南アフリカ 1% オーストラリア 1% メキシコ 1% カナダ 2% インド 3% 10 世界の二酸化炭素排出量 (1990 年 ) 日本 5% 韓国 1% その他 23% ロシア 10% 約 217 億トン 中国 11% アメリカ 23% EU28 か国 19% メキシコ 1% ブラジル 1% サウジアラビア 1% カナダ 2% イラン 2% 日本 4% 韓国 2% ロシア 5% 世界の二酸化炭素排出量 (2012 年 ) 約 338 億トン その他 22% インド 6% EU28 か国 11% 中国 28% アメリカ 15% 出典 :World Research Institute CAIT から作成

一人当たりの排出量に見る 衡平性 の問題 一人当たり二酸化炭素排出量 1990 年と 2012 年の比較 中国アメリカ EU28か国インドロシア日本韓国カナダサウジアラビア 11 tco2 ブラジルメキシコ 2.1 0.7 1.7 1.39 2.4 3.2 3.8 5.7 1990 年 2012 年 6.9 19.7 16.3 8.9 7.2 15.0 12.0 8.9 9.8 12.3 15.8 15.6 10.28 17.0 出典 :World Research Institute CAIT から作成

産業革命以降の世界の CO2 排出量の増加 歴史的責任 世界の CO2 排出量の推移 (1750 2010 年 ) 12 ( 出典 ) IPCC(2014)Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change: Summary for Policy Makers (WGIII Contribution). IPCC. http://www.ipcc.ch/report/ar5/wg3/

13 差異化 とは 何が 衡平か を反映すること 全ての国が協力して取組むべき問題 先進国 途上国 すべての国が行動 でもどうやって? どの国が どれくらい やるべきか

途上国には カエル飛び式開発が必要 = 低炭素型 適応などの技術移転と資金支援が必要 (C)u-ko. 途上国の今後の開発過程で 現在の先進国のような 温室効果ガス大量排出型の成長を経るのではなく 一気にカエル飛び式にジャンプして 低炭素型社会に移行すること

温暖化対策の国際約束作りはなぜ難しいか先進国 途上国の対立 パリに向けた交渉におけるそれぞれの思惑を表すと 先進国側 2020 年以降はすべての国が削減行動するべき ( 本音 : 新興途上国は排出削減の義務を負うべき ) でも自国の削減目標はできる範囲に留めたい 途上国への資金援助の約束は難しい 15 途上国側 先進国がまず自らの削減目標を深めるべき 途上国の削減には 先進国からの技術的 資金支援は義務 適応への支援も急務 新興途上国 ( 中国など ) 野心的な温暖化対策を 深刻な温暖化被害に資金 技術支援を早く! もはや適応も困難 自国の経済発展に制限を設けられたくない 積極的な中間途上国 ( ラテンアメリカ諸国等 ) 開発の遅れた国 ( アフリカ 島しょ国等 )

主要グループ G77+ 中国 この図は網羅的はありません また 一部 メンバー国の重なりを反映していません EU 16 BASIC ブラジル 南アフリカ 中国 インド サウジアラビア LMDC ボリビア キューバ ニカラグア ベネズエラ アンティグア バーブーダ ALBA AOSIS ツバル フィジー モルディブ等 約 40 カ国 LDC バングラデシュ ネパール エチオピア ソマリア等 約 50 カ国 AILAC チリ コロンビア コスタリカ ペルー パナマ グアテマラ EU28 カ国 アンブレラ グループ アメリカ オーストラリア 日本 ニュージーランド ロシア ウクライナ ノルウェー カザフスタン EIG 韓国 メキシコ スイス リヒテンシュタインなど

パリ協定成立には 先進国 途上国の枠を超えた仲間作りが功を奏した 17 Photos: IISD www.iisd.ca/

一目でわかるパリ協定!( 科学と整合!) 1. 気温上昇を 2 度 (1.5 度 ) に抑えるために 今世紀後半に人間活動による排出ゼロをめざす目標を持つ初めての協定 2. 先進国 途上国問わずすべての国が削減に取り組むが そのためには途上国への資金と技術支援を一部義務とした 3. 世界が本気で温暖化対策を進める意思を持つことを表すために 法的拘束力を持つ協定とした 4. ただし 厳しすぎて協定から抜ける国を作らないために 目標達成は義務としなかった 5. 目標達成を促すため 同じ制度の下で 算定 報告 検証させて 国際的に達成状況をさらす仕組み 6. 今の削減目標では 2 度は達成できないが 今後達成できるように 5 年ごとという短いサイクルで 目標を改善していく仕組み 7. 主な対策を 各国に国内で整備することを義務としており 多大なる宿題を各国に課している 18 * ただし 詳細ルールの多くを先送りしているため 今度の交渉で実効力を確保していくことが必要

パリ協定の全体像 緩和 気温上昇を 1.5 /2 未満に抑える世界 温室効果ガス排出量削減今世紀後半実質ゼロ 森林 メカ NDC( 国別目標 ) 適応 気候変動影響の軽減対応 各国の排出量削減目標 + 適応 資金 技術 キャパシティ ビルディング 損失と被害 発生被害への救済等 段階的な改善 (2025 2030 年以降も視野に ) 5 年ごとの見直し世界全体での進捗確認 資金 技術開発 移転 キャパシティ ビルディング ( 人材育成等 ) 透明性 枠組み 19 国連外の取り組み ( 企業 自治体 NGO) の取り込み

パリ協定における主要国の国別目標 EU アメリカ 日本 2030 年までに 1990 年比で GHG 排出量を国内で少なくとも 40% 削減 2025 年までに 2005 年比で GHG 排出量を 26~28% 削減 (28% 削減へ最大限努力 ) 2030 年までに 2013 年比で GHG 排出量を 26% 削減 中国 2030 年までのなるべく早くに排出を減少に転じさせる 国内総生産 (GDP) 当たり CO2 排出量を 05 年比で 60~ 65% 削減 ブラジル 2025 年に 2005 年比で GHG 排出量を 37% 削減 示唆的に 2030 年に 2005 年比で 43% 削減 インド 2030 年に 2005 年比で GDP あたりの排出量を 33~35% 削減 *2020 年に GDP あたり 20~25% 削減 (2005 年比 ) 20

パリ協定世界各国の国別目標を足し合わせても気温上昇は 2 度を超えてしまう これまでの目標草案を足し合わせると 100 年後は 2.5~2.7 度の上昇予測 成り行きケース 4 度 現状の政策維持ケース 3.3~3.8 度 出典 :Climate Action Tracker

脱炭素化 を掲げるパリ協定の遠慮深謀 2050 年に向けた長期的な削減戦略を掲げ そこへ向かって 5 年ごとに削減目標を深堀していくことによって脱炭素化へ向かう! 22 ( 出所 ) Climate Action Tracker (www.climateactiontracker.org;2016 年 11 月 6 日のデータ ) より WWF ジャパン作成 いずれのシナリオも中央値を使用

5 年ごとに目標を改善する仕組み 2015 2020 2025 2030 2035 カンクン合意 + 削減深化 パリ協定 2025/ 2030 年削減目標案提出 目標案の促進的対話 (2018) 2030 年目標 提出 & 更新 第 1 貢献期間削減実施 報告 検証 全体の科学的進捗評価 (2023) 第 2 貢献期間削減実施 報告 検証 なぜ 5 年サイクルが重要? 短いサイクルで目標を改善する機会を多く作り なるべく大幅な削減を進めるため 23 2025 年目標 ( 米など ) 2030 年目標 ( その他日本含む ) 目標年の違いは ここで 5 年ごとに収れんさせていく 2035 年削減目標案提出 全体の科学的進捗評価 (2028) 2040 年削減目標案提出 第 3 貢献期間削減実施 報告 検証 全体の科学的進捗評価 (2033)

パリ協定は 2016 年 11 月 4 日に発効! アメリカ ( 排出第 2 位 ) と中国 ( 第 1 位 ) が 9 月早々に批准 インド ( 第 3 位 ) も 10 月 2 日に批准 さらに欧州連合も 10 月 5 日に 域内 28 か国の国内手続きが終了する前に一括批准 COP22 マラケシュ会議 (2016) で第 1 回パリ協定締約国会議 (CMA1) の開催! パリ協定を活かしていこうという世界の強い意志 24 197 か国中 169 か国が批准 (2017 年 10 月 25 日現在 ) * パリ協定発効の条件 55% 以上の排出量を占める 55 か国以上が批准 ( 受諾 承認 ) した日の 30 日後に発効

パリ協定は 削減目標や適応 資金や技術援助 透明性 ( 国際報告とチェック ) などの包括的な協定なので それぞれの項目ごとにルールブックが必要 そのルールは 発効したあとのパリ協定第 1 回会議で採択する予定だった 25 パリ協定は発効したが パリ協定は大枠しか決めておらず どうやって実施していくか 詳細なルールを作らねばならない COP22 マラケシュ会議の結果 2016 年パリ協定の 1 回目の会合 (CMA1) は中断 2017 年再開してルール作りの進捗確認して中断 2018 年再開してルールを採択 = ルール作りの締切設定! 京都議定書のルール作りは 4 年かかった 京都議定書よりはるか に複雑なパリ協定のルール作りを今後 2 年で作ることに合意!

国連気候変動会議の構造 COP ( 国連気候変動枠組条約の締約国会議 ) COP/MOP ( 京都議定書の締約国会議 ) SBI ( 実施に関する補助機関 ) CMA ( パリ協定の締約国会議 ) 中断中 SBSTA ( 科学 技術の助言に関する補助機関 ) APA ( パリ協定特別作業部会 ) 26

WWF 気候変動 エネルギーグループ climatechange@wwf.or.jp 非常に複雑化している地球温暖化とエネルギーをめぐる全体像を 一冊で わかった! と理解が進む本 27 地球温暖化は解決できるか ~ パリ協定から未来へ ~ 小西雅子著岩波ジュニア新書 837