Bond Basics P I M C O モーゲージ債の解説 モーゲージ債 (MBS: Mortgage Backed Securities) とは 一般的に住宅ローンを担保として発行された証券をさします 主要なモーゲージ債の市場は米国となっており 米国においては過去 2 年間でモーゲージ債の市場規模は急速に拡大し 近年 その残高は米国債を上回る水準となっているほか 米国以外においてもモーゲージ債の発行残高は拡大傾向にあります 本稿では 米国のモーゲージ債を主に用いてモーゲージ債の仕組みと特徴を解説します (1 億ドル ) 25, 2, 15, 米国における債券セクター別市場規模の推移 その他資産担保証券モーゲージ債社債政府機関債米国債 1, 5, 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 21 23 25 出所 :Securities Industry and Financial Markets Association 図表 1 また モーゲージ債は債券インデックスにおいても主要なセクターのひとつとなっています グローバル総合インデックス ( 除く日本 ) におけるモーゲージ債のウェイトは約 16% 米国総合型インデックスでは約 35% のウェイトを占めています その他 9% ( 除く日本 ) その他 7% モーゲージ債 17% 米国債 23% 社債 19% 政府機関債 15% 国債 4% モーゲージ債 38% 社債 19% 政府機関債 14% 出典 : リーマン ブラザーズ 27 年 9 月末時点 For educational purposes only
Bond Basics モーゲージ債発行の仕組み モーゲージ債は米国が最大の市場となっていますが 米国におけるモーゲージ債の発行の仕組みは一般的に下記のプロセスとなります 住宅購入者は金融機関から住宅ローンを借入れますが 金融機関は個々の住宅ローンで同様の性質 ( 金利 償還期限等 ) を有するものを集め モーゲージ プール を組成します このモーゲージ プールを証券化したものがモーゲージ債となります 投資家は モーゲージ債の原資産である住宅ローンから発生する元利金を受け取ります このモーゲージ債に対する元利払いを保証しているのが政府系機関です 住宅ローン貸出 住宅ローンを集束 ( プールの組成 ) 投資 住宅購入者 金融機関 モーゲージ プール 市場 ( 投資家 ) 元利金返済 元利金 保証 元利金支払 政府系機関 ( ファニー メイジニー メイフレディ マック ) 政府系機関には以下の 3 つがあり それぞれファニー メイ フレディ マック ジニー メイという通称があります ファニー メイ <Fannie Mae> ( 連邦住宅抵当金庫 :Federal National Mortgage Association <FNMA>) 1938 年に政府金融機関として設立され 1968 年に民営化されました 民間金融機関の組成したモーゲージ プールを証券化するほか それを買い取って自ら組成 発行をすることもあります ファニー メイが発行するモーゲージ債に対する元利払い保証はファニー メイ自体によるものであり 米国連邦政府による保証ではありません フレディ マック <Freddie Mac> ( 連邦住宅金融抵当金庫 :Federal Home Loan Mortgage Corporation <FHLMC>) 197 年に設立された政府系金融機関で ファニー メイと同様にモーゲージ債の発行および元利払いの保証を行っています ジニー メイ <Ginnie Mae> ( 連邦政府抵当金庫 :Government National Mortgage Association <GNMA>) 1968 年に米国連邦政府 住宅都市開発省の全額出資で設立された政府機関です ジニー メイは元利金支払いの保証を行うのみで 住宅ローン債権の買取およびモーゲージ債の発行はおこないません なお ジニー メイのモーゲージ債は米連邦政府により保証されています なお 上記政府系機関以外に民間銀行が発行するモーゲージ債の例もあります
P I M C O モーゲージ債の大部分は パス スルー (Pass Through) と呼ばれる形態をとっています パス スルーとは 住宅購入者から支払われる住宅ローンの元利金返済がそのままモーゲージ債の元利支払いとなることを意味します ( ただし 手数料は控除されます ) モーゲージ債の保有者は 証券の原資産であるモーゲージ プールから発生するキャッシュ フローを保有割合に応じて受け取ることになります こうしたパス スルーの仕組みは モーゲージ債を特徴づける重要な要素となっています モーゲージ債の特徴 1 高い信用力 モーゲージ債はその大部分が政府系金融機関から発行 および元利金払いの保証がなされており その信用力は非常に高いもの (AAA 格 ) となっています 2 割賦返済 モーゲージ債はパス スルーの仕組みをとっているため 住宅ローンの元利金返済がそのままモーゲージ債所有者へのキャッシュ フローとなり モーゲージ債のキャッシュ フローは一般的な固定利付債に投資する場合のキャッシュ フローとは異なります 通常の固定利付債の場合 満期まで利子収入のみを受け取り 満期時に償還額を受け取りますが 住宅ローンは通常一定額を毎月返済しますので 支払額に占める利子 元本それぞれのウェイトは時間の経過とともに変化します これを反映してモーゲージ債についても投資家が受け取るキャッシュ フローには利子分のみでなく元本の返済が含まれます 支払開始から時間が経過するにつれ 元本返済部分が大きくなります こうしたキャッシュ フローの性質により モーゲージ債のデュレーションは同じ償還年限の通常の固定利付債と比較して短くなります 債権投資のキャッシュ フロー 支払額に占めるシェア (%) 12 1 8 6 4 2 通常の固定利付債元本償還クーポン 支払額に占めるシェア (%) 12 1 8 6 4 2 モーゲージ債元本償還金利 経過期間 経過期間 図表 4 3 期限前償還 モーゲージ債のキャッシュ フローに関するもう一つの重要な特徴は 期限前償還です 一般的に住宅ローンの借り手は期限前償還をする権利を有しており 毎月の元利金返済を繰り上げて一括で返済をしてしまうことが可能です 従って 市場金利水準が低下すると 既存の住宅ローンを繰り上げて一括返済し それまでよりも低い金利で住宅ローンの借り換えをおこなうケースが増えます パス スルーの仕組みにより モーゲージ債保有者がモーゲージ債から受けるキャッシュ フローは こうした住宅ローンの期限前償還の影響を受けます 債券投資
Bond Basics の枠組みでとらえれば 市場金利が低下し 期限前償還がローンの借り手により行使された場合 モーゲージ債のデュレーションが短期化します 逆に 金利が上昇すると 期限前償還が予想よりも減少し デュレーションが長期化する傾向にあります すなわち 金利の低下局面では デュレーションの短期化によりモーゲージ債の価格は通常の債券ほど上昇せず 金利の上昇局面では デュレーションの長期化によりモーゲージ債の価格は通常の債券よりも大きく低下する性質があるといえます モーゲージ債は 金利上昇時の価格変化 ( 下落幅 ) の方が金利低下時の価格変化 ( 上昇幅 ) より大きい 通常の債券は 金利上昇時の価格変化 ( 下落幅 ) の方が金利低下時の価格変化 ( 上昇幅 ) より小さい また このように 住宅ローンの借り手が期限前償還を行う権利を有していることは 住宅ローンの借り手が コール オプション ( 買い取る権利 ) を有しているのと同様の効果があります 従って モーゲージ債を保有することは 住宅ローン債務者にコール オプションを売却しているのと同様の効果を有し モーゲージ債にはコール オプション分のプレミアムがのっていると考えることができます 4 高い利回り水準 モーゲージ債への投資には通常の債券投資に伴う市場リスク 信用リスクに加え 上記期限前償還リスクを内包するため 投資家はそうしたリスク保有に見合う より高い利回りを得ることができます
P I M C O 最終利回り (%) 8 7 6 5 4 3 2 1 米国債 米モーゲージ債 21 22 23 24 25 26 27 年 出典 : リーマン ブラザーズ上記データ期間における米国債の平均デュレーションは 5.3 年 モーゲージ債は 3.2 年 TBA 取引とは モーゲージ債の取引においては TBA 取引 が頻繁に用いられます TBA とは To Be Announced の略で モーゲージ プールを特定しないで行われる取引をさします TBA 取引においては 売買当事者はモーゲージ プールの条件 ( クーポン 満期 発行体となる政府機関 等 ) のみを設定し 実際のモーゲージ プールは決済日の 48 時間前までに特定します TBA 取引は プールを特定することなく取引ができるという性質から モーゲージ債の取引量の増加 市場流動性の向上に寄与しています なお TBA として定めたモーゲージ プールの内容と 決済時の実際の内容には若干の乖離が生じる可能性がありますが 米国債券市場協会は許容される乖離の範囲についてのガイドラインを設定しています 結び モーゲージ債は 米国を中心に主要債券セクターの一つに位置付けられており 日本を含むその他の市場においても発行は拡大傾向にあります モーゲージ債はその流動性 信用力 また利回りの高さが魅力となっておりますが 期限前償還といった 通常の固定利付債とは異なる特徴を有しており モーゲージ債の運用に際しては 高い分析力および専門性が求められます
P I M C O 当資料は 情報提供を目的にピムコジャパンリミテッド ( 以下 弊社 ) が作成したものです 記載された情報は充分信頼できるものであると考えておりますが その正確性や完全性を保証するものではありません 記載された意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり 今後予告なしに変更されることがあります 当資料は資料中に掲げた個別の金融商品の売買の勧誘や推奨を目的とするものではありません また記載された投資戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません 当資料は法律 税務 会計面での助言の提供を意図するものではありません ご契約に際しては 必要に応じ専門家にご相談の上 最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します 運用を行なう資産の評価額は 組入有価証券等の価格 金融市場の相場や金利等の変動 及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します また 外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます 運用によって生じた損益は 全て投資家の皆様に帰属します したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく 損失をこうむることがあります また 過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません 債券市場の各セクターへの投資にはリスクが伴います モーゲージ債や社債は金利変動の影響を受けることがあります 一般的に金利上昇局面で債券価格は低下します 従って債券には担保引受人や保険業者がその責務を全しうるような確固たる保証は存在しません 米国債は利払い及び元本償還の約束はしますが ポートフォリオの時価価値はその保証の限りではありません また当然ながらハイ イールド債への投資は高格付けの債券よりもリスクをより伴うこととなります ポートフォリオ内で保有している債券の信用格付けは あくまでも個々の債券に対する信用を示すものであり ポートフォリオの安全性を意味するものではありません 弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は 締結される契約の種類や契約資産額により異なるため 当資料には具体的な金額 計算方法は記載しておりませんのでご了承ください 当資料および記載されている情報 商品に関する権利は弊社に帰属します したがって 弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製又はその他の方法で配布することはご遠慮ください ( 注 )PIMCO はパシフィック インベストメント マネジメント カンパニー エルエルシーを意味します ピムコジャパンリミテッド 15-1 東京都港区虎ノ門 4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス 18 階 金融商品取引業者関東財務局長 ( 金商 ) 第 382 号 加入協会 : ( 社 ) 日本証券投資顧問業協会 ( 社 ) 投資信託協会 For educational purposes only