別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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PRESS RELEASE(2018/05/16) 九州大学広報室 819-0395 福岡市西区元岡 744 TEL:092-802-2130 FAX:092-802-2139 MAIL:koho@jimu.kyushu-u.ac.jp URL:http://www.kyushu-u.ac.jp 九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授と名古屋市立大学薬学研究科の喜多泰之助 教 白根道子教授 金沢大学医薬保健研究域医学系の西山正章教授らの研究グループは 自閉症 の原因たんぱく質である CHD8( 1) が 脂肪分化や脂肪細胞における脂肪滴の蓄積に非常に重 要な役割を持つことを発見しました CHD8 は 自閉症患者において最も変異率の高い遺伝子です CHD8 遺伝子に変異を持つ自閉症で は コミュニケーション異常や固執傾向といった自閉症特有の症状の他に 痩せ型の人が多いと いう特徴が報告されています このことから CHD8 たんぱく質が神経発生だけではなく 代謝機 能や脂肪分化にも重要な機能を有していることが示唆されてきましたが その具体的なメカニズ ムは謎のままでした このたび本研究グループは 脂肪幹細胞 ( 2) 特異的に CHD8 遺伝子を欠損 させたマウスを新たに作成し このマウスでは脂肪分化や脂肪滴の蓄積が抑制されていることを 発見しました また 脂肪細胞における CHD8 の機能をトランスオミクス解析 ( 3) という新技術 によって調べたところ CHD8 は C/EBPβ( 4) という脂肪細胞分化に重要なたんぱく質と協調し て 脂肪分化や脂肪滴の蓄積に関わる脂肪関連遺伝子の発現を調節していることが分かりまし た さらに マウスの CHD8 遺伝子を人工的に欠損させると 高脂肪餌を食べても太りにくくなる ことが分かりました 自閉症における抗肥満メカニズムを解明 - 肥満症の新たな治療法開発に期待 - これらの結果は 脂肪組織において特異的に CHD8 を抑制することにより 肥満を治療できる可 能性を示すものです 本研究成果は 2018 年 5 月 15 日 ( 火 ) 午前 11 時 ( 米国東部時間 ) に米国 科学雑誌 Cell Reports で公開されました なお 用語解説は別紙を参照 研究者からひとこと : CHD8 が機能しないと 脂肪分化や脂肪滴の蓄積に必要な遺伝子群の発現が減少します そのため CHD8 を欠損させたマウスは 正常マウスに比べて高脂肪食による肥満に対して抵抗性を示します これらの知見から 肥満症の新たな治療法開発が期待されます [ 参考図 ]CHD8 は脂肪分化を調節する お問い合わせ 九州大学生体防御医学研究所主幹教授中山敬一 ( ナカヤマケイイチ ) Tel:090-3608-4654 Fax:092-642-6819 E-mail:nakayak1@bioreg.kyushu-u.ac.jp

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ 自閉症モデルマウス を世界に先駆けて発表し 自閉症および CHD8 の研究をリードしてきました 自閉症は胎生期における神経発生の異常が原因で起こる脳の疾患で 社会的相互作用 ( コミュニケー ション ) の障害や 決まった手順を踏むことへの強いこだわり ( 固執傾向 ) 反復 限定された行動な どの特徴を持ちます さらに CHD8 遺伝子に変異を持つ自閉症患者では 痩せ型の人が多いという特徴 が報告されています ( 図 2) このことから CHD8 たんぱく質が神経発生だけではなく 代謝機能や脂 肪組織の発生などでも重要な機能を有していることが示唆されていますが その具体的なメカニズムは 分かっていませんでした 自閉症における抗肥満メカニズムを解明 - 肥満症の新たな治療法開発に期待 - < 研究の内容 > CHD8 遺伝子に変異を持つ自閉症では痩せ型の人が多いという知見から 脂肪細胞の正常な働きに CHD8 が重要ではないかと考え 脂肪細胞における CHD8 の機能解析に着手しました まず 遺伝子操作で CHD8 を欠失させた脂肪幹細胞を作製しました 脂肪幹細胞は分化刺激を与えることによって 成熟脂肪細胞へ分化し 細胞内に脂肪滴を蓄積させることができます 定常状態では CHD8 を欠失させた脂肪幹細胞に異常はみられませんでしたが これらの変異細胞に脂肪分化の刺激を与えても成熟脂肪細胞への分化や脂肪滴の蓄積が起こらないことが分かりました ( 図 3) この結果は CHD8 が脂肪分化や脂肪滴の蓄積に重要であることを示しています 次に CHD8 の欠損が脂肪分化や脂肪滴の蓄積を阻害する理由を調べるために CHD8 を欠失させた脂肪幹細胞を用いて 細胞内の全遺伝子の発現状態を総合的に調べる新技術であるトランスクリプトーム解析を行いました その結果 CHD8 を欠失した脂肪幹細胞では 成熟脂肪細胞への分化に重要なたんぱく質である C/EBPβ の活性が顕著に低下していることが分かりました また CHD8 と C/EBPβ は細胞内で結合して機能しており 多くの脂肪関連遺伝子群の発現を協調的に調節していることが分かりました ( 図 4) さらに 脂肪幹細胞特異的にCHD8を欠損させたマウスを作製して CHD8の欠損が生体内の脂肪組織の発達に与える影響を調べました その結果 これらのCHD8 欠損マウスは 著しい脂肪組織量の減少を来しました ( 図 5) また マウスが成熟した後に 薬剤誘導的にCHD8 遺伝子を欠損させたところ 高脂肪食を食べても太らなくなることが分かりました ( 図 6) 以上の結果より 脂肪幹細胞においてCHD8の機能を抑制させると 脂肪関連遺伝子の発現が減少し 脂肪細胞への分化不全が起こることが明らかになり これがCHD8 遺伝子に変異を持つ自閉症患者における痩せを引き起こしている可能性があることが判明しました < 今後の展開と治療応用への期待 > 本研究結果は CHD8が神経分化だけではなく 脂肪分化にも重要な因子であることを示すと同時に CHD8 変異を持つ自閉症の病態に新たな知見を提供しました また 脂肪細胞でのみCHD8の発現を抑制することで肥満を抑えることができる可能性を示しました 今後はCHD8をターゲットとした阻害剤の探索を行うことで 肥満治療薬への応用を目指していきたいと考えています

< 参考図 > 図 1 CHD8 のクロマチンリモデリング活性染色体 ( クロマチン ) は DNA がヒストンというタンパク質に巻きついた構造 ( ヌクレオソーム ) が 高度に折りたたまれて収納されたものです CHD8 は この染色体の構造を変化させるクロマチンリモデリング活性を有しており 様々な遺伝子の発現を調節しています 図 2 CHD8 変異を持つ自閉症患者 CHD8 変異を持つ自閉症患者では 痩せ型の人が多いという報告があります 本研究結果は CHD8 に変異 があると なぜ痩せ型になるのかを明らかにしました 図 3 CHD8 欠損脂肪幹細胞では脂肪分化が障害される脂肪幹細胞は 脂肪組織の中にごく少量存在しています 正常の脂肪幹細胞は 脂肪分化刺激によって成熟脂肪細胞へと分化し 細胞内に脂肪が蓄積 ( 脂肪滴 ) します 一方 CHD8 欠損脂肪幹細胞は 脂肪細胞への分化が完全に阻害され 脂肪滴が形成されません

図 4 CHD8 欠損脂肪幹細胞では C/EBPβ の活性が顕著に低下している ( 左図 )CHD8 は 脂肪分化に重要なたんぱく質である C/EBPβ と協調して脂肪関連遺伝子の発現を調節しています ( 右図 ) トランスクリプトーム解析の結果から CHD8 を抑制した脂肪幹細胞では C/EBPβ の活性が顕著に低下していることが分かりました 図 5 脂肪幹細胞特異的 CHD8 欠損マウス 脂肪幹細胞特異的 CHD8 欠損マウスでは 脂肪組織が著しく減少します また 肥満に伴う脂肪細胞中の 脂肪滴の蓄積も減少します 図 6 薬剤誘導特 CHD8 欠損マウス 成熟マウスの CHD8 を薬剤によって欠損させたマウスでは 高脂肪食を食べさせることによって誘導さ れる脂肪組織の増大が抑制されます また 肥満に伴う脂肪細胞中の脂肪滴の蓄積も減少します

< 用語解説 > ( 1)CHD8: 染色体構造を変化させる作用を持つクロマチンリモデリング因子という一群のたんぱく質の一種です ( 2) 脂肪幹細胞 : 脂肪組織内に存在する組織幹細胞の一種です 脂肪 骨 軟骨 神経などへ分化する能力を持っています ( 3) トランスオミクス解析 : 遺伝子 遺伝子を調節する化学修飾 遺伝子から作られる転写物等を全て測定することによって 体内にどのような変化が起こっているかを総合的に調べる新技術です ( 4)C/EBPβ : 脂肪関連遺伝子の転写調節領域に結合することによって その転写を制御し 脂肪分化を促進するたんぱく質の一種です ( 5) クロマチンリモデリング因子 : 染色体 ( クロマチン ) 構造を変化させる ( リモデリング ) 作用を持つたんぱく質で 遺伝子の発現量を調節する働きがあります < 論文情報 > タイトル : The Autism-Related Protein CHD8 Cooperates with C/EBPβ to Regulate Adipogenesis( 自閉症関連因子 CHD8 は C/EBPβ と協調して脂肪分化を制御する ) 著者名 : Yasuyuki Kita, Yuta Katayama, Taichi Shiraishi, Takeru Oka, Tetsuya Sato, Mikita Suyama, Yasuyuki Ohkawa, Keishi Miyata, Yuichi Oike, Michiko Shirane, Masaaki Nishiyama, and Keiichi I. Nakayama 掲載誌 : Cell Reports, 2018 < お問い合わせ先 > ( 研究に関すること ) 中山敬一 ( ナカヤマケイイチ ) 九州大学生体防御医学研究所主幹教授電話 :090-3608-4654 Fax:092-642-6819 E-mail:nakayak1@bioreg.kyushu-u.ac.jp ( 報道に関すること ) 九州大学広報室電話 :092-802-2130 FAX:092-802-2139 E-mail:koho@jimu.kyushu-u.ac.jp 金沢大学総務部広報室広報係電話 :076-264-5024 FAX:076-234-4015 E-mail:koho@adm.kanazawa-u.ac.jp 名古屋市立大学事務局企画広報課電話 :052-853-8328 FAX:052-853-0551 E-mail:ncu-public@sec.nagoya-cu.ac.jp